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ノーベル化学賞、根岸英一氏・鈴木章氏ら3人に

2010年10月6日23時11分

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写真:ノーベル化学賞の受賞が決まり、会見を開く北海道大学へ向かう鈴木章・名誉教授=6日午後6時53分、北海道江別市ノーベル化学賞の受賞が決まり、会見を開く北海道大学へ向かう鈴木章・名誉教授=6日午後6時53分、北海道江別市

写真:米インディアナ州で6日、自宅に来たパデュー大のコルドバ学長から祝福される根岸英一さん=AP米インディアナ州で6日、自宅に来たパデュー大のコルドバ学長から祝福される根岸英一さん=AP

写真:リチャード・ヘックさん=AP
リチャード・ヘックさん=AP

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 スウェーデンの王立科学アカデミーは6日、今年のノーベル化学賞を、根岸英一・米パデュー大特別教授(75)、鈴木章・北海道大名誉教授(80)、リチャード・ヘック・米デラウェア大名誉教授(79)に贈ると発表した。3人は金属のパラジウムを触媒として、炭素同士を効率よくつなげる画期的な合成法を編み出し、プラスチックや医薬品といった様々な有機化合物の製造を可能にした。

 日本のノーベル賞受賞は17、18人目となる。化学賞は6、7人目。

 業績は「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング」。

 薬でも液晶でも、分子の骨格は炭素同士の結合でできている。炭素同士をいかに効率よくつなげるかは有機化学の大きなテーマだ。その方法の一つとして1970年代ごろから注目を集めていたのが、異なる二つの有機化合物の炭素同士をつなぐ「クロスカップリング反応」だった。

 ヘックさんは、有機化合物の合成反応を仲介する触媒にパラジウムをいち早く使った「ヘック反応」を確立し、根岸さんがこれをクロスカップリング反応に応用した「根岸カップリング」を開発。亜鉛化合物やアルミニウム化合物を使った反応などにバリエーションを広げて、使いやすい形に改良した。亜鉛を使うと反応が安定し、合成できる物質の種類が増えた。

 さらに、鈴木さんは北海道大教授だった79年、亜鉛の代わりにホウ素を使って改良した「鈴木カップリング」を開発し、実用化に結びつけた。従来のカップリング反応は特別な溶液中などで行う必要があったが、鈴木さんの反応はこの弱点を克服した。特別な条件を整えなくても反応が進み、毒性が強い化合物を使わずにすむ。

 クロスカップリング反応は「世界中のありとあらゆる化学メーカーが恩恵を受けている」(三菱ケミカルホールディングス)という。

 鈴木カップリングの製薬への応用で有名なのは降圧剤バルサルタン(商品名・ディオバン)。血圧を下げる働きが強く、日本で最も売れている薬の一つだ。販売元の製薬会社ノバルティスファーマによると昨年の国内売上高は約1400億円(薬価ベース)。調査会社CSDユート・ブレーンによると、世界の大型医薬品の中で昨年、6位の売上高だった。

 農薬では、果樹や野菜など農業で使われる独BASF社の殺菌剤ボスカリド(商品名・カンタス)にも鈴木さんの反応が使われている。

 液晶テレビにも欠かせない。液晶材料の製造で世界のトップシェア争いをしているチッソと、独メルク社がいずれも採用。この結果、国内外の多くの液晶テレビやパソコン用ディスプレーで使われることになった。

 チッソによると、同社は1990年代半ばにTFT液晶の開発にこぎつけた際、鈴木さんのアドバイスを受けた。鈴木カップリングは「ロスが少なく、コストダウンにつながった。液晶の世界が伸びた大きな役割を果たした」(広報担当)という。画質が優れた新世代の有機ELディスプレーでも、EL高分子の製造に使われている。

 授賞式は12月10日にストックホルムである。賞金の1千万クローナ(約1億2千万円)は受賞者3人で分ける。

    ◇

■根岸英一(ねぎし・えいいち)氏の略歴

  1935年、旧満州(中国・長春)生まれ。58年、東京大卒業、帝人入社。63年に米ペンシルベニア大で博士号取得、66年に米パデュー大研究員、79年同大教授、99年に同大特別教授。

■鈴木章(すずき・あきら)氏の略歴

 1930年、北海道生まれ。54年、北海道大理学部卒。61年に同大工学部助教授、63年に米パデュー大博士研究員、73年に北海道大工学部教授、04年に日本学士院賞受賞、09年、英化学会特別会員に選ばれる。

■Richard F.Heck(リチャード・ヘック)氏の略歴

 1931年、米マサチューセッツ州生まれ。54年、カリフォルニア大ロサンゼルス校で博士号取得。化学メーカー・ヘラクレス社を経て71年、デラウェア大へ転出し、教授を務める。

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