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【プロ野球】マートン 213安打 ついにイチロー超え2010年10月6日 紙面から
◆阪神17−4ヤクルト新記録は“代名詞”である、センター返しで決めた。2回2死満塁。阪神・マートンはヤクルト・中沢の2ボールからのチェンジアップをきれいに二遊間へはじき返した。中前への2点適時打は、今季211本目の安打。94年、イチローがマークした210安打を抜き、シーズン最多安打の日本新記録を樹立した。 「真弓監督やコーチ、仲間、スタッフみんなに感謝したい」。まず周囲への感謝の気持ちを口にしたマートン。続けて前記録保持者になったイチローへも思いをめぐらせ、「彼がもし日本に残って144試合の中でやっていたらもっと打っていただろう。記録が破られても、彼が素晴らしいことに変わりはない」と尊敬の念を示した。 主に1番を打ちながら、本塁打も17本。パワーも併せ持つマートンだが、一番の長所は、最後までボールを呼び込むことだ。外国人助っ人はとかく力に頼りすぎ、自身の打撃を見失うが、マートンはいつでもセンター返し。結局、この日24度目の猛打賞で積み重ねた213安打の内訳は、左前打が50本に対し、中前打が61本、右前打が62本と左方向が一番少ない。 右打者でありながら、添える右手へ細心の工夫もこらしている。松やにを塗るバットは、右手部分にだけ離しやすくするように、土をこすりつけ調整。またいつも半袖アンダーシャツでプレーするマートンだが、右腕だけは薄手の伸縮性に優れたサポーターを着用。適度な締め付けで、より力をボールに伝えるためで、関係者によれば「右手にはめるのは、それだけ押し込む意識が強いからでしょう」と説明した。 03年のドラフト1巡目でレッドソックスに指名されながら、メジャーでレギュラーとしてプレーしたのはカブス時代の06年のみ。それが日本で大ブレーク。「ロッキーズ時代の昨年終盤、コーチと打撃を変え、手応えはあった。(記録達成は)レベルの高い所で毎日出場できる機会を与えられたから。両親からも『神を信じて、導いてくれた道を行け』と言われた。瞬間、瞬間でベストを尽くすだけ」。実直に、信念を貫き、自身の技術も信じて、マートンは日本球界の頂点に立った。 (大久保晋)
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