阪神・星野仙一オーナー付シニアディレクター(63)が5日、楽天の来季新監督候補に一本化されたことが明らかになって以降、初めて口を開き、正式オファーがあった際はまず阪神と話し合った上で楽天との交渉の席に着く考えを明かした。阪神のレギュラーシーズン終了後の8日にも、坂井信也オーナー(63)のもとを訪れる。信義を重んじる闘将らしく、まずは阪神に対してきっちりと「筋」を通す。
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進むにしても、止(とど)まるにしても順序は間違えたくない。自分を来季新監督として請うてくれている楽天の熱意は心に届いている。だが話し合いのテーブルにつくのは2番目になる。監督候補の一本化が明らかになって以降、初めて口を開いた星野SDは「そういう話があれば、まず阪神が先。阪神と話してから、そういう席について、話に乗るなり、断るなりすることになる」ときっぱり言い切った。
2年間の監督生活を含めて阪神に籍を置き、今年で9年目を迎える。愛してやまない虎に、不義理をするわけにはいかない。楽天側から正式交渉の連絡が入れば、まず真っ先に坂井オーナーのもとを訪れる。交渉入りへの許諾を自ら求める。それが信義を重んじる闘将のやり方、生き方である。
もちろん交渉時期にも気を配る。阪神は現在、クライマックスシリーズへの2位進出をかけて、残り2試合を懸命に戦っている。そんなチームに個人的なことで迷惑をかけたくはない。「まだ順位も決まっていないわけだから」。阪神との話し合いは早くてもレギュラーシーズン終了翌日の8日。それまで動くつもりはない。
一方でこの日、大阪市内の電鉄本社で取材に応じた坂井オーナーは、4日に楽天の三木谷会長と会談したことを認めた。「顔を合わせたことは事実です。『(水面下での交渉準備を)やらせてもらっているけどいいですか』と。『結構です』と言いました」。星野SDとの交渉入りを「容認」する意向を伝えた。「(本人からの)連絡を待つか、何か言われた時に対応するだけです」と、当面は事態の推移を見守る構えだ。
楽天の招請を受けるか、否か‐。まだ正式なオファーを受けていないとする今、当然のことながら星野SDの心も決まっていない。オファーを受ければ「失礼だから」と交渉の席には必ずつく。だがその前に、まずはしっかりと阪神に「筋」を通す。