日本の正直さは大切だが、
したたかな中国に弱みを見せてはいけない
今回の騒動でもう1つ見逃してならない点は、わが国政府のいかにも稚拙な対応姿勢だ。
まず、レアアースについては、かなり以前から中国への依存度が異常に高いことが指摘されていた。それにもかかわらず、政府はほとんど具体的な政策を実施して来なかった。
今年に入って、中国が「輸出枠を40%減少する」と通知してきた以降、慌てて経産相や外相が北京に飛んで行った。しかも、条件として提示したのは、環境問題に関する技術供与だったという。
それでは、いかにもしたたかな中国政府に、弱みを見せるだけの意味しかなかっただろう。自国内のマウンテン・パス鉱山の再開を決めると同時に、WTO(世界貿易機構)への提訴をほのめかして交渉を進める米国や、中国国内の環境問題や少数民族の人権問題などでジワリと圧力をかけることを狙っている欧州諸国とは比べ物にならないほど、わが国の外交手法は稚拙と言わざるを得ない。
重要なポイントは、「中国政府にはわが国の常識が通用しない」という基本的な出発点を明確にすることだ。海外のファンドマネジャーの1人は、「日本人の正直さは大切だが、それでは中国政府にやりたいようにやられてしまう」と指摘していた。
その通りだろう。わが国政府は、自分の主張を明確にして、相手と対峙することを念頭に置くべきだ。そして、したたかさを身に着けるべきだ。
それができないと、わが国の国民はいつまでも損をし続けなければならない。それは、何とか避けて欲しいものだ。