騒動に紛れたレアアース産業の「実像」
日本の技術供与が促した中国のシェア拡大
今回起きた騒動の背景には、どんな事情があったのか。もう少し詳しく考えてみよう。
現在中国は、レアアースの世界シェアを約90%も握っている。その背景には、大量のレアアースを必要とするわが国が、中国国内の開発を支援し、それに伴う技術も提供してきた経緯がある。
しかし、「中国のレアアースは、日本企業のお陰で開発できた」などと言ってみたところで、現在の中国に通用するはずはない。
一時期中国は、安価な価格を武器にレアアースの輸出を促進したこともあり、米国やロシアなど他の産出国の企業を押しのけ、異常なほど高いシェアを確保するに至った。ところが、中国自身の消費量が増えると、中国政府は国内需要を優先する方針を明確にし、輸出枠を徐々に減らし始めた。
今年になると、中国政府は、一挙に40%も輸出枠をカットすると通告してきた。それに対して、わが国の経済産業相や外相が相次いで北京を訪問し、中国政府に譲歩を要請した。
しかしわが国政府は、中国の環境問題に関する技術協力を条件としたこともあり、「かえって中国政府に足元を見られた」と言われている。
そして今回、尖閣諸島問題への対抗策として、一時わが国に対する事実上の全面的な輸出禁止措置にまで発展した。短期的に見るとその影響は大きい。一部のレアアースについては国内に相応の備蓄があるようだが、それとても長い期間持ち堪えるだけの量はないだろう。
日本の産業界は、今後、代替物の確保やレアアース自体のリサイクルを真剣に考えることが、必要になる。