アフガンで駐留米軍撤退に向け、現実とのはざまで揺れる兵士や住民を密着取材しました。
アフガニスタンでは開戦から丸9年たち、なお熱い戦いが続いています。
駐留アメリカ軍は、2011年7月に本当に撤退を開始できるのか、冷酷な現実とのはざまで揺れる兵士や住民を密着取材しました。
アフガニスタン東部のロガール州では、連日、アメリカ軍によって、「IED」と呼ばれる手製の仕掛け爆弾の発見と処理が行われている。
駐留米軍は、住民に「今から、見つかった地雷を爆発させるので、離れてください」と話した。
「わかった。どっちに行けばいい?」と話す住民に、「1分後に爆発させるので、急いでここを離れてください」と話した。
そのIEDを次々と仕掛けているのが、タリバンなどの反政府武装勢力。
タリバン司令官は「仲間の戦士は、全国で戦っている」と話した。
終わることのない武装勢力の脅威。
その活動範囲は、むしろ拡大しているとの見方もある。
アメリカのオバマ大統領は4月、「2011年には撤退が必要だ。アフガニスタンの人々に、さらなる権限移譲を始めていくべきだ」と話していた。
激しい戦闘が続くアフガニスタンだが、アメリカは、ここからの撤退を予定している。
開始予定は2011年7月と、わずか9カ月後。
撤退までに、アルカイダとつながるタリバンを排除したいアメリカ。
一方で、勢力拡大をもくろむタリバン。
カメラは、アフガニスタン東部のある村で、爆発物を捜索するアメリカ陸軍工兵隊の活動に密着を許された。
爆発物除去小隊のモルフィン軍曹は「このあたりには、反政府勢力がいるよ。山の近くで日中をやり過ごして、そして夜にやって来て、IEDを仕掛けるらしいんだ」と話した。
タリバンなどの活動とアメリカ軍の作戦は最近、イタチごっこの様相を見せているという。
この結果、村はいわばゲリラ戦の場となりつつあり、村とアメリカ軍との間では問題も起きているもよう。
村人は、「(アメリカ兵が)夜中に家に押し入ってきたり、住民を殴ったり、けったりするのはやめてくれ」、「(アメリカ兵が)高い建物の上に陣地を作るのも、われわれにとって危険だ」、「タリバンのロケット攻撃が外れて家に落ちたら、謝っても許さないからな!」と話した。
神出鬼没のタリバン、高まる住民とのあつれき、そして、絶えることのない爆発物による攻撃。
爆発物除去小隊のモルフィン軍曹は「(駐留軍はいつまでアフガンに?)ニュースでは、撤退は来年(2011年)と報道しているけど、最低でも2〜3年はかかるだろうね」と話した。
しかし、アメリカ軍の撤退開始は、予定通りなら2011年7月で、撤退後を引き継ぐのは、アフガニスタン国軍になる。
そのアフガニスタン国軍は今、アメリカの支援などによって急速に規模を拡大しているという。
取材を許されたのは、カブールにある新兵訓練所だった。
カブールの訓練所では、およそ1万4,000人の新兵が訓練を受けている。
取材時に行われていたのは突入訓練で、4人1組で敵の潜む部屋を制圧する訓練。
教官は「一緒に入るんだ! 入ったら1列に並ぶ!」と話した。
チームがどのように動くのか、教官が細かく指導する。
しかし、ある兵士は弾丸が切れたことに気づいていないなど、まだまだ不慣れなようだった。
ここで平均5週間に及ぶ基礎訓練を終えたあと、彼らはそれぞれの地域に配属されていくという。
そこでは、激戦が続いているかもしれない。
果たして、アフガニスタン国軍は、駐留軍の後ろ盾がなくなっても、タリバンに対峙(たいじ)できるのか。
アフガン国軍のアフザル准将は、国軍の能力は向上しているとしながらも、その内実について、「われわれ国軍だけで、アフガニスタンが直面している戦いに立ち向かうのは、人数や装備の面、そして技術の面でも不可能です」と語った。
タリバンたちの活動は続いている。
取材の移動中にも、燃料を積んだタンクローリーが激しく炎上する場面に遭遇した。
タリバンの攻撃を受けたとみられる。
今回入手したタリバン支配地域での映像では、首都カブールからさほど遠くない地区で、大胆にもタリバンたちが、武装したまま日中に活動していた。
彼らが活動できる事情について、タリバンの広報官は「警察や国軍の組織内には、タリバンに協力してくれる人物がいます。作戦計画などの重要な情報を事前に教えてくれるのです」と語った。
アメリカ軍の撤退へのカウントダウン、そして同時に進む戦争のアフガン化。
しかし、その戦略は成功するのか、アフガニスタンの将来は、砂じんにかすむ地平線のように不透明だ。
(10/07 00:44)