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11月
30日
(tue)
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書き忘れましたが29日にOUTDEX更新、柳美里の「女学生の友」と文藝別冊「Jコミック作家ファイル・BEST 145」を「BOOK」に追加、KOZUE THE CRUEL・室内旅行・W.A.M.W.・Parking!を「LINK 2」に加えました。最近、本体であるはずの「OUTDEX」よりもこの日記のアクセスの方が100以上多くなりだして、僕にとってだけ深刻な問題です。
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BECKの「MIDNITE VULTURES」は、音が耳にゴツゴツ当たってくる従来のイメージとは違い、えらく聴きやすくて驚いてしまいました。しかもソウルフル。サウンドの細部に耳を傾けると相変わらず相当に変なのだけれど、それらが散在しているのではなくて、楽曲の中心に向かっているかのような鳴り方です。変な音を鳴らすならば簡単なのだけれど、この音楽としての圧縮度がBECKのすごいところ。ちょっと80年代のPRINCEを連想したものの、音の粒子はBECKの方がもっと細かく、脈絡を越えた音楽的な引き出しの膨大さに気が遠くなるのです。闇鍋をアメリカ製ミキサーにブチ込んだようなサウンドを飾るアートワークは、ボアダムズのアイによるものでした。
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11月
29日
(mon)
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上野公園には警察関係のものものしい車両が何台も停まっていて、「こりゃ警察官が集まるオフ会があるんだよ」などと冗談を言っていたら、道沿いに人が集まっているのでつい人の壁の一部に。耳にイヤホンを差した私服警官はやけに愛想がよく、「10分に出発なので12分ごろにここを通られます」と細かいスケジュール設定をうかがわせます。
すっかり黄色に染まった銀杏に青空、そして次第に沿道に人が集まってくるのは、人がそこに集まっているから。
かくして午後1時12分、道の向こうから黒塗りの車が数台現れました。デジカメ片手に肝心の車はどれかと迷っていたら、周囲から「あの菊の旗が立ててある車ね」との声が。なるほど。ファインダーを右目で覗き、左目で前から2台目の車を見つめます。
そして目の前に…何の含みもなく「和やか」と形容するのがふさわしい笑顔で手を振るその人が見えたのでした。その瞬間、意外なことに僕はドキリという微かながら確実な衝撃を受け、シャッターを押すタイミングがほんの一瞬遅れてしまったのです。それは、僕の意識下で彼の存在が思いのほか深く刻まれていることを物語っているかのようでした。
デジカメの画像を表示させると、車の進行方向である右寄りに彼の姿は映っていて、僕の動揺もそのまま映し出していることが少し苦々しくもありました。それを確認すると、予期せず訪れた一瞬の機会に興奮して笑顔で声をあげ続ける連れや周囲の人々に溶けて混ざっていくような気持ちに僕もなんとなくなり、その場を離れたのでした。
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11月
28日
(sun)
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やまむらはじめの短編集「未来のゆくえ」は、ずっと待ち焦がれていた一冊です。彼の作品には青臭さが漂ってはいるものの、そこにはモラトリアムで内向的な湿気はなく、断絶を醒めた目で眺める視線があります。
その乾き具合が最高なのが「最後の夏」。怪我によって試合で走れなくなった陸上選手が、後輩のコーチを通して、諦めがいいと思っていたはずの自分に走ることへのこだわりが残っていると気づく物語です。山場は、後輩の転倒に動揺し女友達に抱きつくけれど、彼女が抱きしめ返してはくれない場面。その現実に彼は大きな落胆を見せはしないけれど、手にあったタバコを握りつぶし、松葉杖のままグラウンドのコースを歩いて行きます。流れる汗と入道雲。断絶の中にいても、それを静かに受けとめている姿が爽快なのです。
登場人物同士の縮まらない距離は「最後の夏 〜Second take〜」や「よるのむこうに」にも存在していて、物語自体よりも刺さり具合の深さの描写が印象的です。やまむらはじめは、場面によってキャラの黒目を白くも描いていて、特に負の感情の描写において迫力を感じさせます。
そして説明的な描写を極力排するやまむらはじめの姿勢が端的に現れているのが「肩幅の未来」。男の元へ泊まりに来た女は余命が少ないことが遠まわしに表現され、しかしそんな不幸の予感とは裏腹に、他愛なく過ぎて行く時間の描写が延々と続きます。1ページを4分割したコマ割りと、パースのかかったアングル。必要最小限まで削ぎ落とされた描写のために、本当は必要な説明まで抜け落ちているのではと思わせられるまま終わりますが、気がつけば過ぎ行く時間の愛おしさがしっかりと残されています。
青臭くも乾いた感覚、表現への実験。よしもとよしともとの類似点も指摘できそうです。
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11月
27日
(sat)
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トモミチさん編集のミニコミの打ち合わせで、中野のファミレスに9人集合。今日集まった執筆者は、OGAIさん・シバタさん・タロウさん・ノボルさん・ユウタくん、あと僕は今日が初対面だったかおりんさんとムチョさん。音楽を中心にしたミニコミで、このメンツからしても濃度の高いものになりそうです。出るのは来年2月中旬の予定ですが、さて?
トモミチ編集長が台割り片手に各執筆者と打ち合わせた後は、モクモクとタバコの煙を上げながらお絵描き大会。
タロウさんやユウタくんがDJをやるハンサム白書、マンスリーイベント化で次は12月4日だそうです。12月18日には、かおりんさん・ムチョさん・シバタさん・トモミチさんによるDig or Dieもありますよ。
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11月
26日
(fri)
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ムーンライダーズが、MP3による新曲の無料配信を25日から開始しました。「Pissin' till I die」と「Pissism」の2曲で、タダにしたぶん好き勝手にやった結果でしょうか、ライダーズらしいクセが色濃く出ています。これだったら「Piss」なんて言葉の表層的な刺激に頼らなくていいじゃない、なんて言うと小便ぶっかけられるんですか?
日を同じくして、昨年出た「月面讃歌」のオリジナル音源を収録した「dis-covered」も発売されました。ムーンライダーズのオリジナル音源を他のミュージシャンがリプロダクションした例のアルバムの元ネタが蔵出しされたわけです。比較的素直なアレンジですが、時代を意識したものの逆にズレを露わにしてしまった「月面讃歌」よりもずっと自然に楽しめます。つまり「月面讃歌」の失敗を再確認するためのCDかも。ボーナストラックの2曲はまさに「リミックス」で、あの時欲しかったのはこういうサウンドの刺激でした。
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11月
25日
(thu)
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やっと熱もおさまったので夜には外出できました。NHK-FM「ライブビート」の収録を観覧するため、MASAさんと渋谷NHKへ。病み上がりでいきなりソウル・フラワー・ユニオンのライヴですよ。
収録中に何度か「やりづらいわぁ」ともらしていた中川敬ですが、彼の歌声は邪悪なほど勇猛です。顔の表情は豊かさを通りすぎて千変万化で、それこそ物の怪を集めてしまいそうなほど。なんだかんだ文句を言っても、バンドの演奏もダイナミックにして整合性があり、音に対しての生真面目さを感じさせました。また、生で聴くと演奏の随所にジャズ的なフィーリングが感じられます。しかし横ノリのソウル・フラワー・モノノケ・サミットとは対照的に、ユニオンは終始立てノリ。終盤はかなりヒートアップしてきて、ステージではチンドン太鼓が鳴るし、客は「エエジャナイカ」と歌いながら踊るしの盛り上がりでした。そして、それが正しくロックンロールでもあるという混沌ゆえの快感が生まれていたのです。今年の初めに出た「WINDS FAIRGROUND」もいいアルバムだったけど、ライヴで演奏する時には「WATATUMI YAMATUMI」や「ELECTRO ASYL-BOP」といった大上段に構えたアルバムの曲の方が熱いことにも気づきました。
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11月
24日
(wed)
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朝起きたら体温計が挨拶代わりに38.7度を表示。病院に行った以外はおとなしく静養していました。
かちゃくちゃさんからTHE WASEDA etceteraが送られてきたので、ベッドで拝読。僕にとってメインの記事は鶴見済と山崎浩一の対談で、社会システムにおける情報のあり方が語り合われています。これを読んだら、鶴見済は山崎浩一を本当に慕っているのだと納得がいきました。欄外の鶴見済モノローグ「生物、人間、地球」では、彼が生物社会学に凝っているという意外な面を知ることができます。
この雑誌は早稲田大学のミニコミで、こうした対談や乙武洋匡や森毅のインタビューなど有名人が登場する記事がある一方、学外も含めて大学生たちにスポットを当てた記事も混在しています。いい意味でミニコミらしくて、しかも人に読ませることをかなり意識している誌面という印象を受けました。ホームページから通販も可能のようです。
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11月
23日
(tue)
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外を歩いていたらどうも体が浮いているような感じがして、これは風邪薬を飲んだからに違いない、ここ数ヶ月薬物は摂取していなかったからなぁ…と考えていたのが昼間の話。夜になったら胃の中の物が大逆流を開始して、勢い余って鼻からも吐瀉物が噴出される事態になってしまいました。しかもそんなことが2度。一昨日あたりから鼻の奥の粘膜が痛みだしたけど熱は出ないだろうと思っていたのに、体温計は次第に表示温度を上げていきます。全身の肌が過敏になって痛みに近い感覚すらするようになり、意識は朦朧としてきました。パソコンで少年隊の「仮面舞踏会」を流したらそれを止める気力も体力もなくなって延々と聴くことになり、カモン!とかイェー!とか合いの手を聴きながら意識を失ったのでした。
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11月
22日
(mon)
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OUTDEX更新、「鶴見済 -対談- 宮台真司」を「EVENT」に、NHK教育「課外授業−ようこそ先輩」庵野秀明編を「OTHER」に追加しました。今日は体調が悪いので、短いですがこれで失敬。
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11月
21日
(sun)
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「UNGA!」の原稿を書いた時に渡されたのはカセットだったので、PIZZICATO FIVEの「PIZZICATO FIVE」購入。音がラフミックスとはいろいろ違っていたのはもちろん、今回もパッケージがすごいです。ノートみたいに螺旋の金具で閉じられたブックレットにCDが入ってる形式で、相変わらず収納に困る規格外品。突然1曲だけボーカルが交替になる「パーフェクト・ワールド」は、弘田三枝子の歌謡曲っぽい喉の絞り方がいいです。名作「カップルズ」に収録されていた「連載小説」の再演は、原曲の物憂げで不器用そうな雰囲気が消えて余裕しゃくしゃくの歌と演奏で、それがちょっと淋しいような。
readymade entertainmentのページもできてて、こちらでは小西康陽の活動(特にDJとTシャツ制作)が分かります。
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11月
20日
(sat)
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「MUSIC MAGAZINE」12月号ではSUN RAの記事が嬉しかったけれど、最も目を引いたのは六本木WAVEの閉店を告げる広告でした。12月25日で閉店だそうで、売り尽くしセールが12月4日から始まるとか。あのビルの中から全部撤退しちゃうのでしょうか、不況とはいえ淋しいもんです。
最近はたまにしか行かないけれど、高校生だった頃は六本木WAVEと青山ブックセンター六本木店はワンセットでよく足を運びました。特に3階のワールドミュージック・コーナーは充実していて、僕が大学生だった頃はたしか音楽評論家の原田尊志さんが売り場を担当していたはずです。プエルト・リコのCDの内容とかをあの人に聞きましたし。ワールドミュージックが盛り上がった90年前後には、3階奥のあの一角は輝いていた…というのは誇張しすぎかもしれませんが、その方面のマニアが必ず通っていた場所だったのです。
そのうちワールドミュージックのブームも落ち着いてきて、パリ経由で数多く発売されていた輸入盤も減り、国内盤の発売も減少、レコード屋における売り場面積も狭くなってきました。現在も新宿ヴァージンと渋谷タワーレコードは品が揃っていますが、六本木WAVEが無くなるとまたワールドミュージック系のアルバムを入手できる場所が減ってしまうわけで、渋谷と新宿のディスクユニオンからワールドミュージックのフロアが消えて以来の痛手かもしれません。
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11月
19日
(fri)
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皆さんお待ちかね(断定)の岡村靖幸のニューシングルが発売されました。「セックス」というタイトルは単刀直入すぎて表現能力の減退かと心配してしまいそうですが、ジャケットもラブホテルの部屋案内パネルという単刀直入さ。やたら室内の装飾がケバいのが気になりますが、これが楽曲の雰囲気と合ってます。相変わらずファンクの粘液の中でもがくかのようなサウンドで、演奏する方も聴いてる方も窒息寸前になりそうな濃度。96年に発売された「ハレンチ」ほど一聴した際のインパクトはないし、シングル向きの曲ではないでしょうが、健在であると同時に彼が全く懲りていないことを示すのに充分な作品となっています。同時に収録されている「セックス(old version)」と比べ、サンプラーあるいはテープ編集と思われる装飾音を排して太いビートを強調するアレンジとなっているのも、彼がまだ時代の音に意識的であることを物語っているかのようです。
カップリングの「せぶんてぃーん」は、一転してシンプルな演奏に。彼の公式ページの最新VOICEで発表されている、ギターの弾き語りによる曲と同様の感触です。そして、自分を常に保護してくれる女性を歌うマザコンっぽい雰囲気が濃厚な歌詞。95年に「禁じられた生きがい」発表された頃、彼は援助交際や熟女ヌードに対する嫌悪感を表明していた記憶があるのですが、性の現実を露悪的なほどに突きつけてくる「セックス」といい、どうも岡村靖幸は倒錯的なようでいて実は性に対する禁忌が強いのではないでしょうか。しかしその一方で自分の欲望は否定しないために抱えてしまった、やり場のないジレンマが歌に潜んでいるように感じられるのです。
針が振り切れんばかりにエモーショナルなボーカルには、玉置浩二との共通点発見。
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11月
18日
(thu)
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「ネットアイドル」という言葉に新たな概念を持ち込んだてるみさんが雑誌に載ると知って驚愕し、その雑誌がゲームラボと聞いて妙に納得、そして記事を読んだら書いているのはカルメンさんで再び衝撃を受けました。
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友達に誘われていた「Demagogue」のイベントに行けなかったのは、ぶんか社の「独立王」でマンガ紹介の原稿を書くことになったため。今日出た「DOS/V magazine CUSTOM」3号では、サニーデイ・サービスの「MUGEN」について書かせてもらってます。
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11月
16日
(tue)
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柳美里の「女学生の友」に収録された
「女学生の友」と「少年倶楽部」は、ともに昔の子供向け雑誌の名前から引用されています。それぞれで描かれているのは、援助交際をしようとする女子高生と、レイプ未遂事件を起こす男子小学生。皮肉というより悪意すら感じさせる題名です。
淀んだ空気や湿った欲求を描写する彼女の力量は相変わらず。たとえ他人の笑顔を見てもその裏を探るかのような心理描写は、露悪的な快感すら与えてくれます。
父の事業が倒産寸前となり援助交際をしようと決めた女子高生と、定年退職してから妻もないまま性欲を肥大させていく老人の物語である「女学生の友」は、ちょっと意外なほどユーモラスな展開です。しかし、老人は社会の外側へ押し出されて途方に暮れることに。その一方、「少年倶楽部」の主人公である少年は、社会の秩序に取り込まれることで安心感を得ます。問題が何ひとつ解決しないまま迎える両作品の皮肉なラストは、やはり巧いのです。
しかし、「ゴールドラッシュ」でも感じたのですが、最近の柳美里の小説はドラマツルギー過剰気味で、一歩間違えばベタベタになりかねません。「少年倶楽部」では、父親が浮気をしたり暴力を振るったり、あるいは在日朝鮮人であるためにいじめを受けたりと、小学生の性衝動を暴走させる原因がこれでもかと明示されています。そして、時代性を持たせるべく頻出する固有名詞は気恥ずかしくなるほど。現代社会と対峙しようとする彼女の決意は全編から感じられるものの、現在において本当に不気味なのはそうした明確な原因を越えた曖昧模糊とした何かから事件が起きることなのではないかとも思い、少し空回りしている印象を受けました。
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11月
15日
(mon)
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「CCさくらの雪兎ってアニオタっぽいですよね」と言ったら、「そういえばムネカタさんって雪兎に似てますよ!」と初めて会った女の人に言われました。夕空へ早目に藍色を招き入れる11月の雨が冷たかったです。
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TAGROさんの「コールドメディシンA錠」、久我山リカコの「クロコダイル娘。」購入。
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悪憂斗出X(ラトルコープ表記)を更新しました。今週は「BOOK」に、枡野浩一・「インドア・ポップ・サイクル」・桑島ユウキ・宮台真司の4冊を追加です。
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11月
14日
(sun)
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クラブイベントには盛り合った頃に行けばいいのに、どうもスタートの時間から遅れた頃には会場に居てしまいます。というわけで、蒲田Studio80での「メガネスクール☆卒業式」では客第1号に。ヨシキさん主催で、中西さんや田口さんもDJをするイベントでした。ヨシキさんはサンプラーを使ったミニライヴもやってて、その音だけではなく動きもアグレッシヴ。初めて会った田口さんは乱れた長い髪にヘッドフォンをつけてヒップホップを流すのがかっこ良すぎで、もう反則モノでしたよ。また、スキルの高いDJが多くて、客の耳を引く和物のネタ(演歌含む)を適度に流しつつ、ネタを出し惜しみせずにワンコーラス程度で次の曲につなげていく手法や、素早いミキサーの操作に感心しっぱなしでした。特にモーリさんとテツオさんのDJぶりにほれぼれ。ヨシキさん、これで最終回なんて言わず次もよろしく。
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11月
13日
(sat)
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Paddy McAloonの歌声はいつまで経っても青年っぽいと思っていたけれど、PREFAB SPROUTの2枚組ベスト「38 Carat Collection」を聴くとちゃんと落ち着いてきていることが分かります。それぞれ時間軸に沿って曲が並べられた2枚のディスクには、アルバム未収録曲や92年のベスト盤「A Life of Surprises」にのみ収録されていた2曲も収録。ストリングスを導入したりしながら成熟していく過程がよく分かる一方、ファーストである「Swoon」だけ持っていない僕には、初期のこなれていないボーカルと荒さの残る演奏が撒き散らすヒリヒリとした感じも新鮮でした。僕が彼らの曲の中で一番好きな「Wild Horses」が収められていないのは残念至極ですが、「The King of Rock 'n' Roll」「Life of Surprises」「We Let the Stars Go」などの名曲が詰まっていて、これが輸入盤なら3000円以下で買えてしまうとは贅沢な話じゃないですか。Thomas Dolbyがプロデュースしたあたりの音源はキーボード音が古臭く感じられるけれど、そんなことはこの美しい楽曲の数々の前ではたいした問題ではありません。感情の隙間に入り込んでくるようなメロディーに浸ってみるのもたまにはいいものですね。
ちなみにアルバムのライナーにもURLが載ってる公式ページはまだ工事中です。
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11月
12日
(fri)
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東京に来襲したniwaさんを迎え撃つべく開催された「niwanight in tokyo 〜デストーショナルディスチャージツアー1999」。酒飲みの元に集まった酒飲みのオフ会、と端的に表現しては身も蓋もありません。たしか総員14名だったはずですが、僕がniwaさん以外で知っている参加者は0C7さんと旅人さんさんだけで、しかも酒が強烈な睡眠誘導剤として働く僕は恐々としつつ参加。待ち合わせ場所でniwaさんが背負っていた迷彩色のリュックを見た時には「この中にもきっと酒瓶が…」と身を震わせましたが、中身は中華街で買ったフカヒレとのことでした。でもきっと酒を飲む時用です。
以前から「ページのまんまだって言われますよ」と言っていたniwaさんですが、感動するほどその通りの威勢の良さでした。僕と同い歳なのに姉貴と呼びたくなるような。でも彼女としては、1年以上の付き合いを経て初対面した僕はページのイメージと違っていたそうで、具体的なことは秘密にしとかなきゃいけません。
niwaさんは予想していたほど飲まないというか酔わないな〜と感じていたのですが、1次会終了の頃にはすっかり彼女の日記通りのniwaさんに! 飲み屋のサンダルのまま出てきたり、「佐々木」という名だけど絶対日本人じゃない飲み屋の客引きを相手に拒絶バトルを展開したり、2次会の店で持ち込みの菓子を堂々と出して参加者に強制的に食わせたり、皮のコートを着て店内で写真撮影を始めたりの振る舞いに、思わずハート型の両目で彼女を見てしまいそうでした。でも話してると、たぶんすごく分別のある人なんだろうと感じるんですよ、実はすごく大人だと思う。
2次会を出たところで、「カラオケ行きませんか」との客引きに「行きません!」と間髪入れず返すniwaさんは素敵でした。いつかまた必ず遊んでくださいね。
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11月
11日
(thu)
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椎名林檎の台湾盤CDを見たのですが、デビュー以降の3枚のシングルに収録された曲と、それと重複している曲を抜いた「無罪モラトリアム」全曲が入っていてお徳そうでした。なぜかSAKURAとかYukieとか我那覇美奈とか関係ない人の曲までボーナスで入っていてダメ押し。持ち主によると入手は鹿嶋市のスーパーだったそうです。
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その人からBjorkの「unplugged」というCDを借りてきたのですが、こちらは正真正銘の海賊盤。MTVでのアンプラグド・ライヴを勝手にCD化したもののようです。曲は「Debut」に収録されているもの中心ですが、ガムランによる伴奏の「One Day」を始め、驚くほどインチキ臭い東洋神秘主義的アレンジ。Talvin Singhが叩くタブラも重要ですが、なにせ海賊盤ゆえ「tavin singh」と名前の綴りを間違われています。ハウスがあまり好きじゃない僕には「Debut」は平板にも感じられたので、同じ曲でもこの「unplugged」のサウンドの方が面白かったです。忘れた頃に正式に出ないかな。
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11月
10日
(wed)
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「インドア・ポップ・サイクル」の影響で、JIM O'ROURKEの「Eureka」を今頃になって聴きました。これまでは友沢ミミヨによるジャケットがどうも好きになれなかったもんで。
前作「Bad Timing」は、繊細なインストが多いので集中力をえらく要求されて疲れるアルバムでもありました。それに対して「Eureka」は、歌モノが多くて驚くほど叙情的。遠く近く揺らぎながら鳴る電子音と生ギターによって包まれた歌が胸にしみます。その一方で、サックスやヴァイオリンの響きが泣かせる「Through The Night Softly」や、瑞々しい「Please Patronize Our Sponsors」なども。日当たりのいい草原と真夜中のベッドルームを行き来するような、開放性と内省感を併せ持っています。そして1曲が終わっては次の曲へ緩やかにつながれて、1枚の絵画のようなアルバム。前作に比べてずっと作り手の内面を見せている印象で、派手さはないものの控えめであるがゆえに切なさを増すかのような音楽でした。
でもやっぱりアートワークは…。
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11月
9日
(tue)
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松本隆の作詞活動30周年記念ライブ「風待ミーティング」は、この上なく豪華なイベントだったとか。行けた人がうらやましいです。
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リミックスという行為においては安っぽさも重要なエッセンスなのではないかと考えたのは、「YMO REMIXES TECHNOPOLIS 2000-01」を聴いたため。小西康陽による「TECHNOPOLIS」のリミックスは、音を厚くするならばいくらでも可能である彼があえて随所に安い小技を仕込んでいて、YMOを単なるネタとして扱ってしまえる自信すら感じさせます。同じアルバムでMotor Headphone (from Dragon Ash)やDJ HASEBEが手掛けているトラックの安さとは違うんですよ。テイ・トウワの「RYDEEN」もドラマチックでいいけど、ちょっと背後のYMOの存在を気にしているような。ケン・イシイの「TIGHTEN UP」と砂原良徳の「SEOUL MUSIC」は比較的オリジナルを尊重しているけど、いい具合にリミキサーの色が出ています。ファンタスティック・プラスチック・マシーンによる「BEHIND THE MASK」は、ボーカルを足しちゃっててソウルフル。森俊彦による「PURE JAM」はラウンジ解釈で面白いです。
世に溢れるリミックス盤同様とっちらかった内容ですが、原典を一通り聴いた人なら、怒ったり嘆いたりしつつも楽しめるんじゃないでしょうか。こういうCDが出るのもアルファがこけたおかげということで。
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11月
8日
(mon)
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OUTDEX更新、レインボーパレードについての文章を「EVENT」に追加しました。「LINK 2」に加わったのは、うさみみじごくパンチパンチキック!・すてれおたいぷ?・日々のうたかた。です。
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空気公団のミニアルバム「ここだよ」は、録音機材の関係かモコッとした質感の音に包まれています。表現力が巧みというわけじゃないけれど、ボーカルはそんなサウンドとの相性が良くて、70年代っぽいメロディーは感情と真っ直ぐにつながっているかのようです。タイトル曲「ここだよ」での微かな緊張感を浮きあがらせるアレンジからすると、ヘタウマのように見えて実はけっこう器用な人達なのでは。「退屈」で気持ちよく響くハンディクラップを聴いていると、単純に比較は出来ないけれどサニーデイ・サービスの新作「MUGEN」に通じる雰囲気も感じました。ジャケットはもちろん、ホームページのセンスもすごく好きです。
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11月
7日
(sun)
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有明でコミティア。U-ROさんのサークルで売り子をすべくサークル入場をしたのですが、当のU-ROさんが一向に来ません。サークル入場終了間際に、もうひとりの売り子・こばこ嬢が現われたものの、我々だけでは本もないし何の準備も出来ないので、缶ジュースで茶話会。何も置かれていないテーブルで開場時間を迎え、しばらく経ってU-ROさんが来るまでそのままなのでした。
今日本を購入したサークルは、アラビア魔人・渦巻蝶蝶・GRAIL・DARUMAYA FACTORY・BEAT POP・東山神兵・プロパガンダユニオン・みるく☆きゃらめる・山川直人・山本内燃機。会場内を一通り見たのですが、ちょっと少なめです。
minamiさん、TAGROさん&ichiさん、志賀さん、檜木さん、本をありがとうございました。ペーパーをくださった皆さんにも感謝。あと、三五千波さんがペーパーに書いていた「ホームページはありません」という言葉が新鮮でした。
終了後、U-ROさん・TAGROさん・ichiさん・こばこ嬢とお疲れ会。
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11月
6日
(sat)
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紀伊国屋書店が性描写のあるマンガを自主規制しはじめたという情報が、編集の仕事をしているという方によって複数のマンガ関係の掲示板に書き込まれました。現在僕が確認したのは、OHP掲示板・マスノ短歌教信者の部屋・
同人誌生活文化総合研究所掲示板の3ヶ所。詳しくはそれぞれの掲示板での6日22時前後の書き込みを読んで欲しいのですが、児童ポルノ法案の施行によって、18才未満のキャラクターによる性行為もしくはそれに準ずる行為を描いているマンガを紀伊国屋書店が店頭から一斉に外してしまったというものです。
にわかには信じがたい話なので直接紀伊国屋書店に確認したのですが(ネット情報は可能なら自分で確認しましょう)、あっさりと「その通りです」との回答が。週末で担当者が休んでいるので詳しいことは聞けませんでしたが、大筋では掲示板情報の通りのようです。この措置は児童ポルノ法案が施行された直後(つまり11月1日)からだそうで、店内のポスターでも告知しているとのことでした。
掲示板情報の細部までは確認が取れていないので触れませんが、18才未満のキャラクターによる性描写があればいわゆるエロマンガもそれ以外も店頭に置かないのは事実であるようで、この措置には愕然とします。児童ポルノ法案こと児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待を処罰するとともに児童の保護措置を定めたものです。マンガでは「明らかにモデル(被害者)が実在し、それがビジネスとして行われ」るような場合以外は処罰対象にならないことは、’99自治体政策集政策Q&Aにも明記されています。
この一件が我々に突きつけるのは、我々が注視すべきは法案の拡大解釈による適用だけではなく、制作・流通側による自主規制でもあるのだという事実です。こうした事態が加速すれば、法律がその本来の効力以上の影響力を持ち得てしまいます。4日の「鶴見済 -対談- 宮台真司」で語られていた、不健康図書指定が事実上の発禁処分につながりうる構造と併せて考え、暗澹とした気持ちになりもしました。
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(追記:11月9日)
小田中さんのすきまページや、OHP掲示板での志賀さんからの情報によると、撤去されるとの情報があった「バガボンド」などの商品はまだ紀伊国屋書店の店頭にあるとのことです。ただ、志賀さんによると新宿南口店では品揃えに一部変化が見られたとか。いまひとつ紀伊国屋書店の基準が分かりません。
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11月
5日
(fri)
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久しぶりに中野ブロードウェイへ行ったところ、3階がすごいことになっていました。その筋に人にはまんだらけとタコシェ、マニアックな古本を扱うTRIOが有名ですが、アニメショップも数件できていたし、中古コスプレ衣装店クリームキャストも非常に狭い空間に店を構えています。ここのフロアだと、普通のおもちゃ屋もオタク臭く思えてくるから不思議です。音楽方面でも、中古CDを扱っているエービックや中華ポップス専門店・ジャスミンティーなどが。数年ぶりに来たらすっかり濃度が上がっている印象で、なんでこんな状況になっているのかと思うほどです。もちろんフロア全部がこうした系統の店ではなく、婦人向け洋品店なんかも多いわけで、それらの店の人はこの特殊な店舗構成状況をどう考えているのだろうかと思いつつ、地下1階でアイスクリームを食ったりタコ焼き買ったりしてきました。
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11月
4日
(thu)
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早稲田大学大隈講堂で、早稲田大学人物研究会主催の講演会「鶴見済 -対談- 宮台真司」。かちゃくちゃさんと待ち合わせ、ちょうどキャンパスに来ていたユウタくんとも合流。運良く最前列に席を取ったら、さにさんも来ていて声をかけてくれました。
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「完全自殺マニュアル」の不健康図書指定が、事実上発禁処分と同じであるという話題から対談はスタート。ただでさえ取次ぎは書店からの直接注文という特殊な形態で「完全自殺マニュアル」を扱っていたのに加え、条例で規制されれば未成年に売った書店は逮捕されるし、規制された本を置くことによって地域住民との軋轢が生じる可能性もあるため、そんなリスキーな本を書店は置かなくなる。こうして取次ぎ・書店・住民がそれぞれに圧力を分担する形で、本来は発禁処分の実行性を持たないはずの不健康図書指定がそうした影響力を持ってしまう。そもそも自殺は違法行為ではないはずなのに、なぜこうした事態になってしまうのか。安楽死と自殺が全く別のものとして論議されているのも不思議で、このままでは死をめぐるコミュニケーション全般がタブーになってしまう、というのが鶴見の主張でした。
続いて宮台。統治権力に対して規制するものが憲法であり、国民に対して規制するものが法律であるが、このような構造は理解されていない。それと同様に、行政がある書物を規制するのと、市民がある書物に対して批判的であることは全く異質であるのに混同され、その問題性が認識されないまま今回の不健康図書指定が行なわれていると解説します。
そして、未成年の基本的人権は本当に存在するのかと鶴見が提起。共同体的伝統の保持のため、自己決定権を認めることを回避しているのが日本の現状である。政治家は権力基盤の維持のために自己決定権を認めない。そして、現状を改革することすら不可能な構造に陥っているのが問題だ。こうした鶴見の話も、この辺から話のスケールが大きくなっていきます。
不健康図書指定にせよ児童ポルノ法案にせよ、結局は未成年を口実にしているだけではないか。その未成年たちは参政権も無いので代弁者すらおらず、社会的発言力を持ちようもない。そうした鶴見の訴えは、質疑応答での「僕は未成年のためのマルコムXになりますよ」という強烈な発言につながっていくのでした。
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こうまとめると両者とも真面目くさって対談をしていたようですが、さすがに鶴見済は違います。禁煙の講堂で煙を吐き、学生に抗議されると「裁判で決着をつけましょう」。たえず落ちつきなく裸足の足を動かしながら、あげくはテレカで何か粉末をすりすぶして吸引し始めます。満員の大隈講堂にどよめきが。終了後に語ったところによると、「あれは処方された薬を挑発的に飲んでみただけ」とのことでしたが、摂取後に急に明晰になった印象だったために本当に覚醒剤でもやったのかと思いましたよ。でも、恐らく鶴見済は鶴見済の役割を適切に認識して演じている部分もあるのでしょう。
ところどころ論理の隙というか飛躍も見せ、説明の途中で投げやりになったりもする鶴見の一方で、宮台真司は社会学的な分析を加えつつ話題を発展させていて、見事なサポートぶりでした。しかも、鶴見の発言を解説するのに終始するのかと思いきや、しっかり自己決定権という得意技に持ち込んでいましたし。
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イベント終了後、鶴見済×山崎浩一の対談を次号に掲載するワセダエトセトラについて打ち合わせるかちゃくちゃさんに同行して、鶴見さんに謁見。諸般の事情で実現はしなかったのですが、このミニコミで鶴見さんへのインタビューを僕らがするはずだったのです。生で会った鶴見さんは、もらった花束を見て「変な花ー!」とはしゃいだり、めちゃくちゃ愉快な人でした。
そして、会場の外で待っていたファンにフレンドリーこの上なく応対している彼を見ていると、未成年者の代弁者になるという発言もかなり本気なのではないかと感じました。彼の発言を聞いた時には、未成年を持ち出すのも計算された戦略の一環なのではないかと勘ぐったのですが、ひょっとすると彼はさらに難儀な道に踏み込む覚悟を固めているのかもしれません。自分の読者を背負い込もうとするらならば、その重さはかなりのものであるはずです。必然的に反社会的なスタンスを明確にしていくことは間違いなく、そこに生じる軋轢は社会との妥協点を模索できる程度に収まるのか、それとも既存の価値観との決別を貫くのか。そこに穏やかならぬ胸騒ぎも感じたのです。
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11月
3日
(wed)
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レコード屋に置かれているフリーの音楽雑誌「UNGA!」で、pizzicato fiveの新作「Pizzicato Five」のレヴューを書かせてもらってます。
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「飲むと止まらないから、適当な所で止めてね」と言われたのを忘れてヨシキさんと飲んでいたら、彼のジョッキは次々と空いていくではないですか。「5+5=10」と繰り返して酔いを否定しつつも、僕を帰してくれません。いつかメガネスクール☆卒業式で細野晴臣ナイトをやって、各DJはそれぞれ1回ずつ安田成美の「風の谷のナウシカ」を流そうと計画したり、仮に我々が単行本を作るならどんな企画にしようかと8冊分考えたりして盛り上がったのですが、ヨシキさんは脈絡なく一言「結論としてフリージャズっていいよね」。たぶん今頃は、僕と飲んだことも忘れているような…。
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11月
2日
(tue)
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「J文学」という言葉の裏には、コンプレックスに起因するストリート的なものへの幻想や、サブカルチャーへの過剰な意識があったのでしょう。同時代的であろうとしつつ、商業的戦略としての一面も認めて開き直る姿勢には魅力もあったけれど、「文藝」の誌面には微かな無理も感じられます。
そして今度は「Jコミック」。文藝別冊「Jコミック作家ファイル・BEST 145」でのセレクションは、ほとんどが知っている作家、しかも新進作家よりはすでに安定した作家が多く、保守的な印象すら受けました。同じ版元から初単行本を出した山口綾子が載っているのは商売上手だとは思いますが。また、それぞれの評者が挙げると思われる「MY BEST 3」は、単行本化されたものを含めるかどうかがバラバラで、人によっては同じ作品を巻ごとに挙げていたりします。ガイドブックにしようとするなら、基準を揃えられなかったのでしょうか。
誌面では各作家についての評論が長めですが、あからさまな文字数埋めや、その作家の作品をいくらも読んでいなかったりするものがあるのには閉口しました。晄晏隆幸の文章のクオリティは相変わらずの高さ。また川口俊の指摘によれば、鈴木志保の「船を建てる」はRobert Wyattの「Ship building」という曲からの引用だそうです。いい話を聞きました。
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11月
1日
(mon)
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OUTDEX更新、「MUSIC」に佐野元春のライヴリポート、「OTHER」にCOSPAの話を追加しました。「LINK 2」に加わったのは、存在の耐えられない軽さです。
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「COMIC CUE」もVol.7ともなると、初期の頃にあった「特別な雑誌」というイメージはすっかり薄れてきました。今回はロボット特集ですが、地下沢中也や水野純子などはそれとは関係なく(いや地下沢中也の作品にはロボットが出てくるけど)前の号からの続き物です。地下沢中也の「忘れないで」は一気に闇の中へ。水野純子の「ドリームタワー」も話がどんどん厚くなっています。あと、とり・みき・中川いさみ・おおひなたごうのギャグもいいですね。少年少女向けSF小説を狙ったという小原慎司の「HONG KONG-A」は、展開が都合良すぎるけどなんか許せちゃうムードです。そして大活劇を展開するのが黒田硫黄の「鋼鉄クラーゲン」。線が太いから戦闘シーンだと何がなんだか分からなかったりするのですが、植民地時代を舞台にして海軍・海賊・巨大生物が繰り広げるこの物語が一番面白かったです。
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