新伝説 東京入りしたマートンは笑顔でサムアップ=東京駅(撮影・飯室逸平)
シーズン210安打の日本プロ野球記録に並んだ阪神のマット・マートン外野手(29)は、新記録にあと1本と迫っているが、チームの勝利を最優先とする考えを改めて示した。
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Hのランプをともすごとに集まる周囲の注目。そして金字塔を目前としたいま、そのボルテージはついに最高潮に達した。
「1日でも1打席でも早く決めて解放されたいという思いはあるね」
苦笑いを浮かべながら、マートンがつぶやいた。熱烈な声援と称賛に感謝する一方で、早く普段の状態に戻りたいと願う思いもある。理由はただ一つ。残された3戦に集中するべく、すべての雑念を振り払いたいからにほかならない。
「大事なのはチームが勝つことだからね」。CS進出こそ決めたものの、順位はまだ確定していない。優勝を逃した今、ペナント2位通過は日本シリーズ進出への絶対ノルマだ。イチローに並ぶ210安打を達成した3日の広島戦の試合後にも「チームが勝ったことが一番」と言い切ったマートン。勝利を最優先とする考えは、今も変わらない。
練習休日のこの日、マートンは午後から陸路東京に移動。翌日から始まる最後の3連戦に備えた。新記録まであと1本。快挙達成はもはや疑う余地がない。それでも達成時期については「それは神様がすべて決めること。なるようになるし、ならないものはならない」と、これまで同様に自然体を貫いた。「自分にできることはベストを尽くすことだけだよ」。ついに手を掛けた新伝説の扉。気負いなく、力みなく、一気に開け放つ。
(2010年10月4日)