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熱中症の死者、埼玉県が突出
この夏の猛暑で、熱中症による死者が相次いでいる。中でも多いのが埼玉県だ。
11日現在で47人。疑い例を含めると70人に迫る勢いだ。総務省消防庁が集計する全国の死者数(7月~8月8日)は112人で、その突出ぶりが目立つ。埼玉だけがどうして?
地球温暖化などを調査する「気候問題研究所」(茨城県守谷市)の清水輝和子副所長は、山に囲まれた地形や都市化の進行、東京都心のヒートアイランド現象の影響を指摘。「熱の行き場がなくなっているのでは」と推測している。
確かに埼玉には、3年前に国内観測史上の最高気温40・9度を記録して一躍有名になった熊谷市もある。しかし、気象庁の担当者に聞いても、「埼玉が例年と比べて特別暑いというわけではありません」との答え。今季(12日現在)の国内最高気温39・4度は岐阜県多治見市で観測された。気象データからは、多数の死者を出すような特異な数字は見当たらない。
実は、埼玉県内の熱中症による死者数を集約しているのは、殺人事件などを担当する県警捜査1課だ。「変死事案の最重要事項は事件性の有無」と位置づける捜査のプロ集団が今季から、事件性のない「熱中症死」を取りまとめるという仕事に乗り出した。担当幹部によると、「周囲が気を配れば、防げたはずのケースが多い。警察が積極的に注意を促せば、『人ごとではない』と感じてもらうことができる」との思いがあったという。
救急搬送を行う消防機関の情報だけで熱中症事例を把握する他の都道府県とは、当然、差が出る。消防庁のデータは、救急外来の初診時に死亡が確認された人に限られるが、埼玉県警は、発見現場で死亡が確認されるなどして医療機関に搬送されなかった死者まで集計するからだ。
7月23日に初めて公表された死者数は衝撃的だった。他の都道府県が軒並み1~3人だったのに対し、埼玉は梅雨明け後6日間で17人を数えた。
埼玉で今年、「熱中症死」に分類されるケースの中には、従来なら「心不全」「多臓器不全」などとして処理された例が含まれているという。県警が7月中旬以降、死体検案書を作成する医師に「死因は熱中症かどうか、明確にしてほしい」と、現場レベルで声をかけるようにした結果だった。
県警幹部は「警鐘を鳴らそうと努力した結果、統計上、埼玉が突出する形になった」と打ち明ける。
昭和大医学部の三宅康史・准教授(救急医学)は、埼玉県警の取り組みについて「解剖せずに熱中症を死因と特定するのは難しさもあるが、積極的な注意喚起は大いに評価できる」と指摘している。(森田啓文、木口順晶)
(2010年8月13日 読売新聞)
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