昨年8月の総選挙で当選した衆院議員480人の資産報告書が8日、公開された。注目は、資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反(虚偽記載)事件で、嫌疑不十分で不起訴となった民主党の小沢一郎幹事長の資産。夫人名義を含めた推定総額は19億7390万円に上る。東京地検特捜部も関心を寄せた、小沢氏側の資産家ぶりが明らかになった。
「小沢先生が大金を持っていることを隠すためだった」
事件で逮捕・起訴された小沢氏の元私設秘書で衆院議員、石川知裕被告(36)は、特捜部の調べに虚偽記載の理由をこう供述したとされる。確かに、小沢氏の蓄財ぶりは興味深い。
今回、公開対象となったのは、昨年8月30日の任期開始時点の本人名義の土地、建物、預貯金、有価証券など。共同通信が、小沢氏の公開資産に、夫人の所有分を加え実勢価格に換算すると、推定総額は19億7390万円に上った。
まず、預貯金はゼロだ。小沢氏は事件で、土地購入原資として個人資金4億円を用立てたと説明したが、今回も含め、これまでの資産公開で預貯金や金銭信託は常に0。話題となった「タンス預金」は報告義務がない。
一方、所有不動産は圧巻というしかない。
資産報告では、小沢氏が所有する不動産は東京都世田谷区深沢の自宅(1619平方メートル)や、岩手県奥州市の自宅(967平方メートル)、沖縄県宜野座村に2005年に購入した土地(5194平方メートル)、静岡県東伊豆町の土地(1190平方メートル)など。
沖縄県の土地は、日米両政府の2006年の合意で米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の移設先とされた名護市に隣接している。土地購入の経緯や目的に関する報道各社の取材に、小沢事務所は回答していない。
また、小沢氏は今回、東京・南青山のマンション1室(33.17平方メートル)を所有していると新たに報告した。不動産登記などから、かつて陸山会が所有していた物件を小沢氏が個人購入したとみられる。
07年の政治資金規正法改正で、資金管理団体の不動産所有が禁じられて以降、陸山会は今回を除いて都内のマンション4戸を不動産会社などに売却・贈与しており、その一環で売却された可能性もある。
自民党の「小沢幹事長・不正資産追及チーム」の後藤田正純座長は先月21日、陸山会の所有する複数の不動産を視察し、「政治資金でこれほど多くの不動産を買うのは論外だ。小沢氏は国会の場で国民に明確に説明すべきだ」と批判している。
日本大学の岩井奉信教授(政治学)は「政治団体の不動産所有に対する批判が高まり、小沢氏が個人として購入したのではないか」と語る。
夫人の所有不動産も注目だ。不動産登記によると、夫人は東京の自宅に隣接する土地(567平方メートル)と秘書寮(433平方メートル)、長野県茅野市や千葉県勝浦市に別荘を持っている。
夫婦で6都県に8件の不動産を所有する小沢氏。不動産会社によると、周辺の売買価格から換算した土地の価格は、深沢の自宅が9億8000万円で沖縄は6284万円。自宅隣接地は3億4329万円、秘書寮は2億3622万円、別荘は計1993万円になるという。
有価証券では夫人に軍配。夫人は、東証1部上場の中堅ゼネコン「福田組」の創業者一族で136万3000株を持つ大株主。小沢氏も1万6320株を所有する。報告時の昨年8月末時点の株価は計2億7310万円という。
また、小沢氏は千葉県市原市の名門コース「浜野ゴルフクラブ」など3つのゴルフ会員権を持っている。
議員の資産公開は本人分のみが対象。閣僚の資産公開は家族分も公開するが、小沢氏が自治相を務めた1985年当時は家族分は公開対象外で、夫人の資産が公開されたことはない。
政治評論家の小林吉弥氏は「なぜ、小沢氏がここまで不動産にこだわるのかがよく分からない。永田町を見回しても、突出している。『恩師・田中角栄元首相の影響』という指摘もあるが、角栄氏はこれほどではなかった。世論調査を見ると、先の事件に対する説明責任を求める声が多い。ぜひ、不動産購入に関する説明も聞きたいものだ」と語っている。