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【高橋乗宣の日本経済一歩先の真相】

「核の傘」にお墨付き与える中国の資源帝国主義

【政治・経済】

2010年10月1日 掲載

レアアース禁輸はWTO違反

「核抑止力は我が国にとって引き続き必要」
 8月6日の原爆の日、菅首相はこう言った。場所は広島。平和記念式典で「核兵器のない世界の実現に向けて先頭に立って行動する」と表明しておきながら、その後の会見で核を認めたのだ。広島出身の小生でなくても、多くの人が、拍子抜けしたのではないか。
 しかし、尖閣諸島を巡る中国の傍若無人ぶりを目の当たりにすると、残念なことに菅首相を批判できないように思えてきた。船長釈放後も謝罪と賠償を求め、尖閣諸島周辺に漁業監視船を向かわせ威嚇を繰り返す。クリントン米国務長官が「尖閣諸島には日米安保が適用される」と言っても、お構いなしだ。もし日本が丸腰であったなら、一戦交えかねない状況である。
 20世紀後半から続いたパックスアメリカーナは、終焉(しゅうえん)を迎えている。米国は、かつてのような存在感を示そうにも、経済は足踏みでドルは値打ちを下げ続けている。ニューヨークの決済システムの優位性だけで持ちこたえているようなものだ。こんな米国の地盤沈下が、中国をイケイケドンドンにさせているのは間違いないだろう。
 温家宝首相は「永遠に覇権は唱えない」と強調していたようだが、実態は「資源帝国主義」と言わざるを得ない。尖閣諸島はもちろん、フィリピンやベトナムなどと領有権で衝突している南沙諸島や西沙諸島も、海底に油田などの資源が眠るとされている。東シナ海のガス田だって日本を無視してやりたい放題だ。
 WTOは自国の産品を特定の国に輸出しない行為を禁じている。中国のレアアース禁輸は明らかにルール違反だが、ストップさせたのが鉱物資源というのも、この国の姿勢を鮮明にしているのではないか。
 聞く耳を持たず、自国の利益のみを強硬に主張する中国を見ていると、第3次世界大戦が絵空事でなくなる危機感すら覚えずにいられない。
 日本を取り巻く環境は決して明るくない。9月の日銀短観では、企業の景況感を示す業況判断指数は大企業・製造業がプラス8と6期連続で改善したものの、中小企業は製造業、非製造業ともにマイナスで改善が遅れている。国税庁の調べでは、平均給与は前年から23万円超の大幅ダウン。政治は混迷し、その上、天気までスッキリしない。
 気がめいることばかりである。
【高橋乗宣】
~2010年10月1日以前の記事~