【なぜ親は一線を越えるのか】(4)「マムズ・ボーイフレンド」 ママの彼氏…虐待リスクに
産経新聞 9月24日(金)7時56分配信
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1歳女児が虐待により死亡したマンション。交際相手が主導した=東京都葛飾区(古厩正樹撮影)(写真:産経新聞) |
【表でみる】親の「しつけ」をめぐる法律
「最初はかわいがろうとしたが、テレビを見ていて泣きやまなかったり、食べものを吐いたりするのを見て、しつけのつもりで頭をたたくようになった。言うことを聞かないとき、いらっとして手を出した」
男はキャバクラで「母親担当」のボーイだった。出勤を確認したり「仕事がんばれ」と励ましたりする中で、前夫と離婚したばかりだった隆雅ちゃんの母親との交際が始まったという。母親のマンションで同居を始め、自分は仕事を辞めた。虐待は母親が仕事に出ている夜間に起きた。
しつけと称する虐待に、母親は「怒るときは私が怒る」と一度は抗議したというが、周囲に打ち明けることはなかった。男は調べにこうも供述したという。
「隆雅には悪いことをした。他人の子だからやってしまったのかもしれない」
■母性より「女性」
「マムズ・ボーイフレンド(ママの交際相手)」
米国では母子家庭へ同居する交際相手、内縁の夫をこう呼び、高い虐待リスクが指摘されているという。
「子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク」理事長の山田不二子医師(50)は「母子家庭の女性は一度男性を失っており、わが子もかわいいが新しい男を失いたくないとの心理が働く。男も父親を無理に演じる。男が再婚して継父となれば住民基本台帳にも載るが、内縁関係は外から見えづらく、行政が把握するのは至難の業となる」。
虐待死を検証する厚生労働省の専門委員会によると、平成21年3月までの2年3カ月間に死亡した145人のうち主な加害者が実父母の場合は115人と8割を占めた。
交際相手と実母は15人で1割にすぎないが、しばしば重大な結果を招いているのが実情だ。
東京都葛飾区で1歳の長女を虐待により死亡させた母親も、きっかけは一緒に起訴された男との同居だった。東京地裁の裁判長は判決で「共犯者に気に入られたい一心で、共犯者と理不尽な暴行を繰り返した」と指摘し、こう述べた。
「被告は共犯者に嫌われたくないとの思いから、いわば『女性』を『母性』に上回らせ…」
■動物とは違う
血のつながっていない子供を虐待するのは、動物的な本能なのだろうか。
動物行動学研究家で作家の竹内久美子さん(54)によれば、動物にも「交際相手」による虐待がある。サルのハヌマンラングールやライオンではオスが群れを乗っ取った際、メスを一刻も早く発情させるため、先代のオスの乳飲み子をすべて殺してしまう「継子殺し」がよく知られている。
竹内さんは「こうしたオスの行動は、動物が自分の遺伝子を残すために行動するという進化論の『利己的遺伝子』の考え方から説明できる。メスもそれを受け入れる」と説明する。
だが、動物と人間には決定的な違いがある。
竹内さんは「人間という動物は複雑な社会生活を営んでおり、世間の評判や報復も考慮している。そのためもあり、継父や交際相手はほとんどの場合、母親の子供を立派に育てている」とし、こう続けた。
「動物は子供を虐待している意識もなければ防ごうともしない。子供を傷つけてしまうのも人間ならば、虐待を回避するため努力するのもまた人間なのです」
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最終更新:9月26日(日)20時18分
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