=名前のこと(etc.) そのサン=




エルフ語にはなべて意味があります。人名も然り、地名も然り、物の名前にも然り。調べれば調べるほど、その細かさ、奥深さには驚嘆すべきものがあります が 。 原語のままなら目にも耳にも麗しい響きが、直訳に耐え得るとは限らないんであります。無情なり言葉の壁。特に目立つのが人名ですよね。親が子につける名前としてはソレどうよ、と思わずツッコミも入ります。甲乙つけがたいので思いついた順に箇条書きでご紹介。



○ニエノール(哀悼)

エルフ語と言っておきながらもトップバッターは人間です。瑣末はさておき。(言い切った)
彼女が生まれる前に父フーリンは敵方に捕えられ、捕虜となってしまったため(この時から長らく後にいたるまで、彼の生死は妻子には伝わっていなかったものと思われます)「哀悼」と名づけられたトゥーリンの妹御。最初の妹がラライス、「笑い」の意だったことを考えると、ちょっとちょっとモルウェン!!(汗)袖のひとつも引きたくなります。正直すぎるよ実際。せめて意訳で「忘れ形見」あたりに留めといていただきたく。
それに比べてトゥーリンのつけたニーニエル、「涙乙女」はかわいらしいv 母と息子のネーミング合戦はどうやら息子の圧勝にございます。トゥーリンはドリアスで徹底的にエルフ語を叩き込まれたんでしょうね。自身に対しても多くの名をつけてます。むしろ自称しすぎです。普通は通り名って周囲がつけるもんでしょうに(苦笑)
にしてもこの兄弟は、ほんとうに……(涙) トゥーリンの章は何度読み返しても涙がじんわりにじみます。ふたりとも末期の台詞がぐっと来るんですよね。

「ああ、死ぬのが仕合せです!」
「これだけが足りなかったのだ。これで夜が来る」

かつての父フーリンの名台詞、「昼再び来たらん!!」と考え合わせるとこの台詞は本当に泣けます…。真昼の光を呼び戻さんとした父、夜を渇望した息子。何も悪いことしてないのに!! ……いや、うん、トゥーリンはさておき。(目を逸らす) ……彼、けっこう衝動殺人してます よ ね ……;;; カッとくると手近なものをなぎたおしてしまうアツい漢、その名もトゥーリン・ネイサン・ゴルソル・アガルワイン・モルメギル・森野人(ここだけ激しく異質…)・トゥランバール。長いよトゥーリン。



○グロールフィンデル(金髪)

見たまんまや。

失敬。お次は押しも押されもせぬ金華家宗主にございます。
※UT・HoME未読につきいささか情報が不足しておりますゆえ、以下はかなり推測を含んだ内容となります。てゆーかトゥーリンもか。今更か。間違いなどありましたら後日こっそり直します〜;

金華家、という家名自体が既に彼の姿形を物語って余りあるというのに、追い打ちのよーに個人名まで「金髪」ですか。てゆーか金華家っていうからには代々金髪なんじゃないんですか; 被りすぎだから、それ!!(涙) しかし金華家自体いつから始まった家系であるのかにもよりますな。もしやゴンドリン時代にトゥアゴン様のお声がかりで創設されたんだったりしたら、ノルドールには珍らかな金髪は彼の血族にとっても変わらず瞠目の体だったことでしょうから、その名の由来も多少は納得できるというものです。

対して、金華家がアマンの地より続く伝統ある名家であった場合には、こうも考えられるのではないでしょうか。
グロールフィンデルという名は彼個人に与えられたものではなく、跡目たる長子が家督と共に受け継いできたものなのではなかろうか、と。そうするとグロフィンには当然、親からもらった別の名前、いわゆる幼名があるはず。エクセリオンとは微妙に年のずれた幼馴染路線(エクが若干年上)を押したい私としては、子供時代を共有した二人ならではの呼び名がある!!という超萌えポイントに 直 行 です。双方ともに家名を背負って立つようになってからも、ふたりきりになると自然と意識と呼称が切り替わるのですよ!! 

……いや、グロールフィンデルって、こう、略しづらいなって常々 ね … (涙) 親しみ表現の最たるもんじゃないですか、愛称って。グロールフィンデルもエクセリオンも、そのあたりが優しくなーい!!



ついでにエクセリオンのこともここに書いてしまえ。
ゴンドリンの双璧、金華のグロールフィンデルと泉のエクセリオン。もうだいっすきな二人であります。双璧っていいよね!!(うきうき) グロールフィンデルは幸い指輪原作にて外見的特徴がいくらか明記されております。対してエクセリオンについては髪の色すら定かではなく。特記がないなら黒髪で、がウチ的見解ではありますが、同人界ではなにやら銀髪説が根強い模様。何故? いやさ理由はさておき(笑) 宜しいでは御座いませんか、銀髪!! するとヴァンヤの血を汲むであろうグロフィンと、テレリの血を汲むであろうエクセリオンというこってすな。トゥアゴン様はノルドの公子らしく黒々とした御髪であらせられましたでしょうから、その両脇に金髪と銀髪の双璧が控えてある図は何とも見応えある光景であったことでしょう。
しかして黒髪も非常に宜しい。エクセリオンは銀笛が必須アイテムのようなのですが(これはHoMEに記述があるのでしょうか?)黒髪に銀笛!! 超映えます。(鼻息) グロールフィンデルと対で並ぶには、黒でも銀でも似合うと思うんですよね♪
読み手としてはどちらも好みなのですが、いざ書き手の側に回るとなると、ひとまずでもどちらかに決めねばなりません。これは参った。本当にどちらも同じくらいに好みなのです。うんうん唸ってるうちに、そいやエクセリオンは何で「泉」なのかなあと思ったんでした。グロールフィンデルの「金華」があまりに体を表しているがために、エクセリオンの「泉」にも何か由来があるのではないのかと。同人界では瞳の色を湖や水の色に例えている場合が多いようです。それも良き哉v しかしながら私の場合は、それって「髪」じゃないのかなと思うのです。流れるようにまっすぐな、光を弾く銀の髪。その煌きが陽光を弾いて流れゆく泉の様になぞらえられるのは、至極当然の成り行きであるような。
そんなわけで当家のエクセリオンは銀髪を推奨でありまっすv



○マブルング(無骨者)

名が体を表しすぎなドリアス総司令官。国境警備隊長ベレグ(強者)と同じく、どうも親からもらった名というよりもある程度性格やら長所(あるいは短所)が認識されはじめてから、後付けで広まった通称に近いような気がします。いくらなんでも生まれたばかりの我が子に無骨者と名づける親はいまい……。子の未来を先取りしすぎ。むしろ呪い。

思うに彼は最古参のエルフのひとりなのではないでしょうか。総大将の地位からも、また、メレス・アデアサドの折りにはダイロンと共に王の名代として遣わされたとの記述からも、彼が早くから王の篤い信頼を得ていたことが見て取れます。加えてそのネーミング。彼はエルフがいまだクイヴィエーネンのほとりで族を分かつより以前から、エルウェを支えてきたのやもしれません。
エルウェって王でありながら単身ほいほいとフィンウェの天幕まで遠征していたそうですし、よく言えば身分を嵩に着ないおおらかな、悪く言えば迂闊で軽率な人だったのではないかと(苦笑) まったくあの御方は、片時も目が離せない!!と見失うたびぷりぷり怒りながら、次第に影のようにべったりくっついて歩くようになったのが、そも近衛隊の走りだったり。エルウェ様がメリアン様にキャッチセールスされた(としか思えないよあの出会い…。見つめあったまま数年て。 数 年 て !! (涙))直後には、テレリの陣屋はさぞかし阿鼻叫喚に包まれたことでしょう。ありえない!!という叫びではなく、ついにやったかあのボケ王!!(涙)な叫びがあちらこちらで。皆いつかやるいつかやると戦々恐々だったのだね…。

クイヴィエーネンのほとりで目覚めたエルフの始祖たちは、まず言葉を作り、目に映るあらゆるものに名をつけることから始めたとのこと。親が生まれた瞬間の我が子に、十月十日(なのかなエルフも)練りに練った名をつける、といった光景は彼らの目覚めよりも大分後世になってからの、いわば新習慣であったわけです。言語の、そして民族そのものの黎明期であった彼らが、うきうきといろんなものを指差しては片っ端からあれはこう、これはああ、と連想ゲームのように名づけ合う様はほんに可愛らしゅうございますv
そんな折、エルウェの面倒を見るのにいっぱいいっぱいで我が身を省みることのなかった、後の近衛隊隊長(さらに後には一国の総司令官)には、愛情たっぷりに見守る同輩たちより賛成多数で無骨者の称号を戴いたのでありましょう。

……しかしこの設定、よくよく考えたらグロールフィンデルにも適用できてしまうわ; 彼こそ見てそのまんまだもんなあ。だがしかし、そうなるとグロフィンは明らかにアマン生まれのトゥアゴン様より、いやいやさらにその父君よりも年上ということに。むう、微妙。ゴンドリン十二家がトゥアゴン様のお声がかりで、鎖国後(もしくはヴィンヤマールで)創設されたっちゅー線はわりと有り得る話なんじゃと思うんですがね。グロフィンの金華家、エクの泉家と、家名が体を表しすぎだし。決め手はマイグリン。土竜ってアナタ…(がくり)



ついでにベレグもここに書いてしまえ。
ベレグ・クーサリオン、「強弓のベレグ」。しかし前述の通り、ベレグという名自体が既に「強者」という意を含んでいます。よっぽど強かったんですな…; 強弓の、と言われると弓ばかりに秀でていたように聞こえがちですけれども、彼はもともと腕っ節が強くて、そのうえで最も名高かったのが弓の腕であったのではないでしょうか。
後に彼は王に望みの品をと尋ねられて、迷いもせずに剣をと答えます。弓じゃちょっともう心許ないご時世になったから剣に転向してみよっか、な口振りではありません。王妃メリアンに「その剣はちょっと物騒じゃないかしら」と忠告されても「使えるうちは使ってみます」と強気な発言。己が技量に恃むところ、マブルングを凌ぐやも(笑)
また、トゥーリンが連れ去られた後のミームとベレグのやりとりでは、満身創痍でありながら一度は奪われた剣をまたも力づくで取り返し、留めはさせぬながらもその背に呪いの言葉を投げつける漢前っぷり。彼ならきっと無手でも爪と歯で戦える。(某王のごとく)



いまんとこ思いつくのはこのあたり。後でまた何ぞあったら追記するやもしれません。ではっ(すたこら)