2010年8月11日 20時24分 更新:8月12日 1時1分
【ロンドン会川晴之、ワシントン斉藤信宏】11日の欧米外国為替市場は、米景気の先行き不透明感が強まっていることを背景に、ドルを売って円を買う動きが強まった。ロンドン市場で円は一時、1ドル=84円72銭をつけ、95年7月以来、15年ぶりの円高水準となった。円は、ユーロや英ポンドなどに対しても買われており、ユーロは前日比2%以上円高・ユーロ安の1ユーロ=110円14銭をつけるなど、円が独歩高の展開となっている。
この円高水準が続けば、自動車など輸出に依存する日本企業の業績悪化や、一段の株安を招く恐れがあり、徐々に回復しつつある日本経済にも打撃を与える可能性がある。
米連邦準備制度理事会(FRB)が10日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、事実上の追加金融緩和策に踏み切ったことを受けて、対円でドル売りが加速した。FOMCが米国の景気判断を下方修正したこともドル売りに拍車をかけた。
ニューヨーク市場では午前8時半現在、前日比53銭円高・ドル安の1ドル=84円87~97銭。ユーロは1ユーロ=110円51~61銭で取引されている。米長期金利が低下したことで日米の金利差が縮小し、円買いに拍車がかかる形となっている。市場では「ドル売りの圧力は強く、さらに円高が進む可能性がある」(邦銀筋)との見方が広がっている。
円高が急激に進んだ背景には、日銀が10日、金融政策の現状維持を決めたのと対照的に、FRBが追加緩和に踏み切り、日米金融当局の景気の先行きに対する見方と金融政策のスタンスの違いが鮮明になったことがある。
野田佳彦財務相は11日夕、海外市場で円相場が一時、1ドル=84円台の高値水準に突入したことについて、「為替相場の動向を極めて注意深く見守る」と述べた。円高阻止に向けた為替介入については「コメントしない」とした。財務省内で記者団の質問に答えた。