2010年8月11日 13時42分 更新:8月11日 22時50分
参院自民党は11日、国会内で特別総会を開き、党参院議員会長選挙を実施した。党所属参院議員82人(欠席1。尾辻秀久参院副議長を除く)による投票の結果、中曽根弘文前外相(64)と谷川秀善参院幹事長(76)が同数の40票(無効票2)となり、抽選の結果、中曽根氏が選出された。中曽根氏は記者会見で「適材適所の人事をしたい」と述べ、派閥均衡にとらわれずに参院幹事長などを指名する考えを示した。【岡崎大輔、高山祐】
特別総会で投票結果が読み上げられると会場は「オー」とどよめいた。町村、額賀、古賀3派が推す町村派の谷川氏が逃げ切るとの見方が大勢だったうえに、「同数」という驚きが加わった。出席議員が見守る中、会長公選規程に従い中曽根、谷川両氏が同時にくじを引き、外れた谷川氏は一瞬、苦笑いを浮かべて席に戻った。
「番狂わせ」の予兆はあった。11日午前の立候補届け出後、公表された両氏の推薦人。谷川氏は計16人を3派で固めたのに対し、中曽根氏は計21人のうち9人が無派閥。町村派の5人、額賀派の1人も名を連ねた。この6人を差し引いても3派の参院議員は計48人。少なくとも8人が中曽根氏に投票したか無効票を投じた計算になる。
メンツをつぶされた格好の町村派は、鈴木政二参院議運委員長らが国会内の一室で「犯人探し」を開始。額賀派議員は「安倍(晋三元首相)さんが中曽根さんで動き、町村派はバラバラだ」とこぼした。谷川氏は落選後、「(党内に)禍根は残らんと思いますよ」と述べたが、「派閥連合」にはほど遠く、疑心暗鬼が広がっている。
一方、中曽根氏をかついだ中堅・若手議員の中心、山本一太元副外相は「参院自民党にとって歴史的な出来事だ。派閥談合で決める時代ではないとみんなが思った」と手放しで評価した。欠席を除く無派閥15人のほとんどは中曽根氏に投票したとみられ、「派閥均衡によらない人事」を掲げた戦術が奏功したのは間違いない。
参院で野党が多数派を占める「ねじれ国会」で最大の焦点は、挙党体制作りから野党内調整、対与党折衝の矢面に立つ参院幹事長、国対委員長人事だ。中曽根氏は「白紙」として11日中の決定を見送った。世耕弘成元首相補佐官ら中堅を起用するとの観測が出る半面、会長選で露呈した世代間対立の広がりを懸念する声もある。
党執行部は、青木幹雄元参院議員会長が率いた参院自民党の「独立性」に配慮してきたが、今後は関与を強める構えで、谷垣禎一総裁は記者団に「野党共闘の前提としてわが党がまとまらなければならない」と強調。幹事長経験者の一人は「中曽根氏に任せられるわけがない。大島(理森幹事長)と相談して決める」と言い切った。
中曽根氏が「ねじれ国会」の主舞台、参院をどうかじ取りするかも焦点だ。父康弘元首相は「民主・自民大連立」推進派だが、中曽根氏は「今の時点で、そういうことは何も考えていない」とかわした。
一方、野党に協力を呼び掛ける民主党も新体制が発足するまでは様子見の構えだ。輿石東参院議員会長は11日、「立派な方だ」と中曽根氏にエールを送ったが、トップとしての指導力や調整能力は未知数。参院民主党には、選挙結果を受けて自民党内が混乱し、「当面は野党共闘も難しくなる」(幹部)との見方もある。