2010年8月10日 20時34分 更新:8月10日 22時16分
農林水産省が10日発表した09年度の食料自給率(カロリーベース)が前年度より1ポイント低下して40%となったのは、国際的な穀物価格高騰などの底上げ要因がなくなったためだ。国民のコメ離れなどを背景とする自給率の長期低落傾向が再び顕在化したことで、「20年度までに50%」を目指す政府は戦略の見直しを迫られている。
日本の食料自給率は06年度に39%まで落ち込み、コメの大凶作という特殊要因のあった93年度の37%を除いて、初めて40%を割り込んだ。しかし、07、08年度は輸入小麦の値上がりでコメ消費が回復。国産砂糖の増産なども追い風に、自給率は2年連続で上昇した。
農林水産省は、米粉や飼料用などコメの新規需要を開拓することで自給率向上の流れを定着させようとした。だが、08年後半から穀物相場が下落に転じるとパンなどの小麦製品が割安になり、コメ消費は再び減少して、3年ぶりとなる自給率低下をもたらした。
小麦相場は最近、ロシアの干ばつなどを受けて上がっているが、投機的要因による一時的な高騰との見方が強く、自給率向上には寄与しそうもない。
政府は3月に閣議決定した食料・農業・農村基本計画で、それまで「15年度までに45%」としていた自給率目標を「20年度までに50%」に引き上げた。従来通り米粉や飼料米、小麦、大豆の生産振興などを掲げているが、現実には農家の高齢化で耕作放棄地が拡大するなど生産基盤の弱体化が進んでいる。
また、民主党が衆院選マニフェスト(政権公約)で推進を掲げた自由貿易協定(FTA)などの交渉でも、外国産品の輸入拡大につながる農産物の関税引き下げが焦点となるが、自給率向上策との整合性は不明確。農水省は「農業や漁業の戸別所得補償制度で基盤は強化される」とするものの、財政上の制約が厳しさを増す中、その効果を疑問視する声もある。【行友弥】
一国で消費された食料に対する国内生産の割合。食料に含まれる供給熱量(カロリー)で計算したカロリーベースの数値が一般的。肉や乳製品など畜産物の場合は家畜が食べる飼料の自給率も反映させる。例えば09年度に国内で消費された牛肉の43%は国産だったが、牛肉の自給率は飼料の自給率25%を乗じて11%とする。生産額ベースの自給率や、重量比で示す品目別自給率、穀物に絞った穀物自給率などもある。