2010年8月9日 21時6分 更新:8月9日 23時25分
日本臓器移植ネットワークは9日、本人の書面による臓器提供の意思表示がない20代男性について、家族が脳死判定と臓器提供を承諾し、法的に脳死と判定されたと発表した。本人意思が不明でも家族の承諾で脳死後の臓器提供を可能にする改正臓器移植法が先月17日に全面施行された後、改正法に基づいて脳死後の臓器提供が実施されるのは国内初。
同ネットワークによると、男性は関東甲信越地方の病院に交通事故による外傷で入院していた。病院名や所在地などは「家族の意向」として発表していない。今月5日午後2時45分、病院から同ネットワークに連絡があった。同ネットワークのコーディネーターが同日、男性の家族に面会し、臓器提供の意向について確認したところ、男性は臓器提供意思表示カードは持っておらず、健康保険証や運転免許証などにも提供意思や提供を拒否する記載はなかった。だが、生前の会話の中で「万が一のときは臓器提供をしてもいい」という意向を家族に伝えており、家族の総意として提供を決めたという。
男性が意思を伝えた時期や頻度については、同ネットワークは「現段階で把握していない」としている。
男性の家族は、8日午後7時41分に脳死判定と臓器摘出を承諾する書類を提出し、心臓▽肺▽肝臓▽腎臓▽膵臓(すいぞう)▽小腸▽眼球の提供を承諾した。
97年の臓器移植法施行以降、同法に基づく脳死判定は88例目、臓器提供は87例目になる。法改正以前は15歳以上が書面で提供意思を示していないと提供はできなかったが、改正後、本人が拒否していなければ意思が不明でも家族の承諾で提供が可能になった。
男性の心臓は国立循環器病研究センター(大阪府)で20代男性、肺は岡山大病院で20代男性、肝臓は東京大病院で60代女性、腎臓は群馬大病院で10代男性、もう一つの腎臓と膵臓は藤田保健衛生大病院(愛知県)で50代女性に移植される予定。小腸は医学的理由で断念した。眼球はアイバンクがあっせんする。【大場あい、藤野基文】