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あの日その時:取り押さえ審判・証言録 被告に同行の警察官/1 /佐賀

 07年9月、佐賀市の路上で知的障害者の安永健太さん(当時25歳)が警察官5人に取り押さえられた直後に急死した事件で、このうち1人の巡査長、松雪大地被告(29)が特別公務員暴行陵虐傷害罪に問われた審判が7月29日、始まった。公判では、被告が全面否認し、現時点で21人が証人として事件のことを証言する。あの日、その時、何があったのか。証人たちの言葉から、迫りたい。(証言は、一部を抜粋)

 ◇保護時、巡査長の行動不確か

 佐賀地裁で7月29日に開かれた第1回公判。事件当時、松雪被告とパトカーに同乗した男性警察官の証人尋問が行われた。証人は、車道で自転車を蛇行運転している安永さんを発見し、松雪被告とともに最初に安永さんを取り押さえた。まず、検察官役弁護士が質問した。

 【保護の経験】

 Q 保護の経験は初めてか。

 A いえ、勤務で経験している。何度も。

 Q 何回も?

 A はい。

 Q (検察官の取った)調書とは違うことを言っている。

 A 忘れたと思う。

 Q 安永さんを精神異常者と勘違いして保護したということだが、そこに知的障害者は入るのか。

 A 私の認識は、当初、精神錯乱者で保護した。

 Q 公道に異常者を認知し、その人が精神錯乱なのか、知的障害者なのかを区別する訓練を受けたことは。

 A 見た目で区別する訓練は受けてない。

 Q 判断基準の訓練は受けていないんですね。

 A はい。

 Q 県警作成の保護取扱要綱は熟知しているか。

 A 熟知してない。

 Q 訓練を受けているのではないか。

 A 忘れた部分もある。

 Q 当時は覚えていたのか。

 A 当時、頭に入ってなかったこともある。

 Q 保護の心構えはご存じか。

 A 忘れている。

 Q 当時は。

 A 忘れている。

 【(被告が安永さんを殴ったとされる)歩道で取り押さえた場面】

 Q (被告と証人で)歩道へ連れていった時、健太さんはどうしたか。

 A バランスを失い、尻餅をついた。

 Q あおむけになったのか。

 A はい。

 Q あなたが安永さんの左側に、被告が右側にいたということでいいのか。

 A はい。

 Q 腕と肩を押さえていたか。

 A はい。

 Q そこからの行動は。

 A 安永さんが足をバタつかせたから、体の右側(へ移って)から手で足を押さえつけた。

 Q 安永さんがあおむけになった時、松雪被告が反対側の右側に動いているようだが、なぜか。

 A 両方が移動したわけではなく、松雪被告が右腕を押さえており、私が右から押さえるために移動した。

 Q 松雪被告は左側に移って、手は何もしていないのか。

 A 松雪被告の動作は、肩を押さえたのか不確か。

 Q 松雪被告の行動が不確かなのか。

 A はい。

 Q 説明できないのか。

 A 移動した後、安永さんの左側にいたのは目で確認している。

 Q どう押さえたのか記憶にないのか。

 A はい。

(つづく)

毎日新聞 2010年8月2日 地方版

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