健康

ソシオエステティック:心を癒やす 認定施術者が医療・介護施設訪問

2010年9月14日

 エステのサービスを通して、高齢者や病に苦しむ人々の心を癒やす「ソシオエステティック」という分野がある。エステティシャンが医療、介護、心理学などの知識を身につけ行うもので、認定ソシオエステティシャン約30人が、病院や介護施設で活動を始めている。20日の敬老の日前後には、その精神を生かし、約1000人がエステのボランティアを行う。【田村佳子】

 ◇顔や手にケア、化粧...自尊心高め、生活にハリ

 ソシオエステティックは約30年前にフランスで始まった。通常のエステが美やリラクセーションを目的とするのに対し、ソシオエステは社会的困難を抱える人に行い、その「生活の質(QOL)の向上」を目指すところが違いだ。

 「美や癒やしの提供だけではソシオエステにはならない。癒やしを通して自尊心を持たせたり、不安を解消するのが目的」と資格認定を行う社団法人「日本エステティック協会」の久米健市副理事長は説明する。

 女性だけでなく男性も対象で、手のケアや顔のマッサージ、化粧やマニキュアを施す。フランスでは拒食症女性の医療チームにソシオエステティシャンが加わったところ、「自分は美しい」という自覚を得て病気を克服できた例もあるという。

 国内のエステティシャン約1万8600人が加盟する協会は、養成講座も開いている。実務経験5年以上の認定エステティシャンが200時間の講義と20日間の実習を受ける。認知症、介護概論、がん、終末医療とケア、精神医学にストレス対応――などのほかにもコミュニケーション技術や、通常は施術を控える乾燥肌の人へのエステ技術なども身につける。

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 東京都世田谷区の介護老人保健施設「ホスピア三軒茶屋」では、70~90代のデイケア利用者がソシオエステを受けている。

 脳梗塞(こうそく)で手がこわばっていた男性は、ハンドケアを受け「手が伸びた」と喜んだ。おしゃれなど考えたことがなかったという70代の男性は、エステティシャンと話して自分に合う色があると気づき、妻任せだったのに自分で洋服選びをするようになったという。つけてもらったマニキュアがはげかけても大事にしている女性もいる。

 介護主任の西尾悦子さんは「すてき、きれいと言われたい気持ちは年を取っても変わらないのだと思う。利用者は良い評価をされなくなる年代。単純に肯定的評価を受けること、きれいになるのを楽しむことが生活のモチベーションや心の免疫力を高めているようだ」と話す。

 フランスでは薬物中毒者の治療施設、児童福祉施設、刑務所でも活動し、ソシオエステだけで生計を立てる人もいるという。一方、日本ではまだ活動の範囲も施設も限られており、美容サロンに勤務しながら、定期的に病院などを訪問するのが一般的。エステティシャンへの報酬は施設が支払うため、理解が進まないと導入に結びつかないのが課題だ。

 久米さんは「介護と医療現場以外にも活動を広げるのが理想だ」と話している。

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 敬老の日をはさんだ15~23日は、約1000人のエステティシャンとエステティシャン志望の学生が、北海道から沖縄まで28都道府県の老人ホームなどでエステを行う。化粧による高齢者ケアは近年注目されているが、エステを全国一斉に行うのは初めて。主催する協会は「手の温かさを通した心の触れ合いで、ひとときの癒やしと心のゆとりを提供したい」という。

 ◇人に触れられる幸せ、味わってほしい

 ソシオエステティシャンの伊藤久美子さん=写真<上>=と橋本径子さん=同<下>=に話を聞いた。伊藤さんは病院や介護施設で、橋本さんは精神科病棟で活動している。

 橋本さんは「つめをみがいてあげた男性は、何度となく眺めて人にも見せていた。人に触れてもらう幸せを味わっているのが伝わりうれしい」という。

 伊藤さんは「施設や人によってニーズが違い、健康上の問題もあってできる施術が限られているのが難しい」と話す。

 化粧するより、ただ話を聞くことの方が大事な場合もある。「会話をするためだけに施術を受けているのかなと思う人もいる。医療スタッフと違う立場だから話せることもあるようで、打ち明け話は多い」と橋本さん。

 サロンのようなリクライニングシートもないが「化粧水とクリームさえあればエステはできる、と思うようになった。貢献の場を広げたい」と伊藤さん。青少年更生施設や母子寮でも活動したい、と夢を膨らませている。

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