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陸山会事件:小沢氏、強制起訴へ 識者の話

 ◇画期的な議決だ--元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士の話

 これまで検察は裁判を「有罪を得るプロセス」と考え、有罪率99%を得てきた。第5審査会は「検察官だけの判断で有罪になる高い見込みがないと思って起訴しないのは不当」と指摘しており、裁判を真相解明の場ととらえ、そこで有罪・無罪を決めるべきだと明言している。市民の感覚を刑事司法に反映させるという新制度の趣旨に沿うもので、画期的な議決だ。

 ◇素人批判影響も--検察審査会制度に詳しい神(じん)洋明弁護士の話

 小沢氏は今回の問題への国民の疑問に十分に答えず説明を検察任せにしたうえ、審査会を「素人」と批判した。それが議決に何らかの形で影響したのではないか。鳩山由紀夫前首相の政治資金規正法違反事件の審査会を補助した経験から言えば、審査員が証拠を見比べて事実関係を冷静に判断するのは難しい面があることも確かだ。第2段階の審査が第1段階より短かった可能性があり、感情論に流され議決に至ったのではないかとの心配もある。議決から公表まで時間がかかった理由も分からない。

 ◇起訴議決は妥当--鯰越溢弘(なまずごし・いつひろ)・新潟大教授(刑事訴訟法)の話

 最終的に起訴する権限は国民に与えるべきだと主張してきた。証拠を見ていないので正確なコメントはできないが、検察審査会は弁護士から一定の法的な助言を得られることになっており、公判を維持できるかどうかを判断して議決をしたと思われるので、起訴議決は妥当だと思う。

 日本では検察官が起訴すれば99・86%の有罪率を誇っていたが、それが刑事訴訟法の無罪推定の原則が働かないという弊害を生み出してきた。司法は最終決着を付ける場で、有罪の可能性があるという程度で起訴するのが健全な起訴基準だ。

 ◇違和感ある判断--ジャーナリストの江川紹子さんの話

 議決は捜査段階の供述調書には信用性があるという結論を前提に、思い込みや予断に基づく判断をしたと疑われるところもある。証拠改ざん事件で特捜部の捜査が問われる中、証拠をもっと厳しく吟味すべきだったのではないか。被告人となるだけでさまざまな負担を強いられる。それなのに、白か黒か分からないから裁判所に判断してもらえというのは乱暴すぎる。裁判所の役割を間違っており違和感がある。議決は審査会が欠陥の多い制度であることを如実に示した。裁判では特捜部の捜査や審査会の在り方についても問われることになるだろう。

 ◇国民感情の表れ--作家の高村薫さんの話

 議決は検察がいいかげんな捜査をしたとか、起訴できるのにしなかったという話ではない。法的に有罪になるかは別にして、小沢氏の疑いが晴れていないことを、国民の責任として検察審査会が裁判の場で確認したかったということ。検察が政治家を政治資金規正法違反で起訴するためのハードルは非常に高い。無罪ではないということを明らかにするには、強制起訴の形しかなかった。国民として冷静にこの事態を受け止めるべきだと思う。

 小沢氏はなぜ自分が強制起訴されたのかということを冷静に理解してほしい。

毎日新聞 2010年10月5日 東京朝刊

 

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