きょうのコラム「時鐘」 2010年10月5日

 ことし7月、鹿児島に住む西郷隆盛のひ孫が金沢で講演した。職業は陶芸家、姿形は西郷さんのイメージ通りで、血は争えないものだと感心した

姿形は別として、才能や性格がどこまで子孫に伝わるかは分からない。西郷さんの盟友、大久保利通を高祖父に持つのが麻生太郎元首相だった。世襲続きの政界が学んだことは、中身の遺伝は難しいという結論ではなかったか

さて、連日話題の北朝鮮の3代目である。外観は祖父とも父とも似ていて、まぎれもない3代目。世襲に加えて、叔母まで登場した。ここで「血は争えない」となると厄介だ。独裁者のDNAが受け継がれる

自国の世襲を忘れて隣国を笑うのも何だが、決定的違いがある。2世3世がたまたまトップに祭り上げられても、ダメと分かれば選挙でふるい落とされることである。トップがころころ代わる弊害以上に「無能な世襲」の居座りは危険である

日本の明治維新前のような政治体制の国が、核兵器やミサイルを持っているのが怖いのだ。その非常識さは世界から笑われて当然だが、笑う方も自らの態勢を十分に問わなくてはなるまい。