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質問なるほドリ:「思いやり予算」でなぜ日米が対立?=回答・坂口裕彦

 <NEWS NAVIGATOR>

 ◆「思いやり予算」でなぜ日米が対立?

 ◇日本は減、米は増額要求 地位協定超える1395億円分

 なるほドリ 在日米軍の費用負担を巡り、日米両政府の意見が対立していると聞いたけど?

 記者 米軍の費用の一部を日本政府が肩代わりする「在日米軍駐留経費負担」のことですね。一般には「思いやり予算」と呼ばれていますが、日本は削減を主張し、米国は逆に増額を求めているのです。政府は、円高が進んだ1978年度から日米地位協定に基づいて、自主的に一部費用を負担し始めました。これに加え、87年度からは、地位協定の範囲を超えても、両国が特別な取り決め(特別協定)を結ぶことで、負担の範囲を広げてきました。来年3月に期限切れとなる特別協定の見直し作業が難航しているのです。

 Q 特別協定による費用負担はどれぐらいあるの。

 A 10年度の思いやり予算は全体で1881億円です。このうち、特別協定によるものは(1)日本人基地従業員の給与など労務費1140億円(2)電気やガスなどの光熱水費249億円(3)訓練移転費5億円--の計1395億円で全体の74%です。

 Q 日本はなぜ減らしたいの。

 A 財政状態が主要国中最悪の水準に陥っていることが大きな要因ですが、昨年の政権交代の影響も見逃せません。現在の特別協定が、08年に国会で承認された際、当時野党だった民主党は、基地内の娯楽施設で働く人たちの給料に使われることなどを理由に反対しました。米側の増額要求にすんなり応じる状況にはありません。

 Q 米国も譲りそうな気がしないけど。

 A 自分たちは体を張っているのに、恩恵を受ける日本が予算削減を進めるのはおかしいとの立場です。思いやり予算は、99年度のピーク時(2756億円)から、すでに3割以上減っています。一方で、日本を取り巻く安全保障環境に好転の兆しはありません。防衛省が11年度の概算要求で、思いやり予算を「政策コンテスト」でふるいに掛けられる「特別枠」に計上したことも、米国の神経を逆なでしています。

 Q 日米同盟に影響したりしないかな。

 A 政府が11年度予算案を取りまとめる年末までに、日米間で合意する必要があり、近く外務・防衛当局の審議官級会合が開かれる予定です。ただでさえ米軍普天間飛行場の移設問題などで同盟関係の動揺が指摘されるなか、双方が不信感を募らせないような対応が必要です。(政治部)

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 ◇10年度の思いやり予算(1881億円)

・日米地位協定による負担(486億円)

 提供施設整備費    206億円

 従業員の福利厚生など 279億円

・特別協定による負担(1395億円)

 従業員の給与など労務費 1140億円

 光熱水費         249億円

 訓練移転費          5億円

 ※1億円未満を四捨五入しているため、合計は合わない

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 なるほドリコーナーへの質問をお寄せください。〒100-8051(住所不要)毎日新聞「質問なるほドリ」係 naruhodori@mainichi.co.jp

毎日新聞 2010年10月4日 東京朝刊

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