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【いきいき】日本ALS協会理事・川口有美子さん 死の議論の前に介護を思え (1/3ページ)
このニュースのトピックス:介護
ALS(筋萎縮(いしゅく)性側索硬化症)という難病にかかった母の在宅療養は12年に及んだ。その記録をつづった『逝(い)かない身体(しんたい)』(医学書院)が今年度の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。介護の日々は過酷そのものだったが、同時に「蜜月」のような満ち足りた歳月でもあった。母の意を汲(く)んだ介護が「交代できない介護」に変わり、命という命が尊く思えるようになったという。
「最初のうちは歩けないとか、ろれつが回らない程度だった。やがて寝たきりになり、最後のころは人工呼吸器を装着することになった。他の病気であればドクターとともに闘えるが、この病気は闘っても治らない」
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ALS患者は現在、国内に約8千人いる。その日常は「生きてゆく恐怖」の中にある。全身のあちこちが硬くなり、呼吸することもつらくなる。口が開いたまま硬直してしまう患者もいる。介護なしで一人で生きていくことは、ALS患者にとって「絶望」を意味する。患者の自殺率が低いという報告もあるが、「自殺したくても一人ではできない。運動神経以外は健康で、どこも悪くない」という。
母親の介護を続けながら、7年前に訪問介護事業所「ケアサポートモモ」を立ち上げた。ALS患者を対象にした介護やケア事業を続けているが、手薄な介護保障が患者と家族を苦しめている現実を痛感。「長引く介護によって家族も年を取り、心身ともに疲れ果てている」