検察、苦渋の選択 邦人拘束で起訴断念へ 中国船長釈放
産経新聞 9月25日(土)7時56分配信
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記者会見する仙谷由人官房長官。中国人船長の釈放問題について質問が相次いだ =24日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影)(写真:産経新聞) |
[フォト]チャーター機に搭乗する中国人船長
中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突したのは7日。石垣海上保安部は8日に船長を逮捕、9日に那覇地検石垣支部に送検した。勾留満期の19日には10日間の勾留延長が決定。船長は否認を続けており、検察当局は起訴に向けて、粛々と捜査を続けていた。
この間、中国政府は「即時釈放」を求め続けた。閣僚級の交流停止に加え、中国国内での反日感情の高まりから、1万人規模の来日団体旅行や航空路線増便交渉が中止されるなど各方面に影響が及んできた。
19日の勾留延長後、中国側の要求はエスカレート。21日には温家宝首相が「船長を即時、無条件で釈放することを日本側に求める」と発言するに至った。
検察当局はこうした中国側の状況を考慮し、勾留延長以降、船長釈放に傾いていった。23日には那覇地検が外務省の担当課長を参考人聴取し、起訴による対中関係悪化の影響などを尋ねていた。
24日午前、最高検は福岡高検、那覇地検の幹部を集め、最終的に釈放する方針を決定。検察首脳は「(船長が)否認を続けると保釈もできない。そうなるとどうなるか。国益全体を考えた結果だ」と明かした。
決定的だったのが邦人4人が軍事関連施設を撮影した疑いで中国当局に拘束された事件だ。4人は準大手ゼネコン「フジタ」の社員と判明。拘束は21日だったが、中国当局が日本側に伝えてきたのは23日夜だった。こうした事件は通常、数時間で釈放される例が大半だが、いまだに拘束は続いている。
検察幹部の一人は「死刑もあり得るスパイ容疑ということになれば人命にかかわる。衝突事件と人命をてんびんにかければ、起訴という判断はできなかった」と苦渋の表情を浮かべた。
法と証拠。検察の信頼はこの2つで支えられている。しかし、“証拠”では大阪地検特捜部の主任検事による改竄(かいざん)事件が発生。今回の釈放では、粛々と“法”を執行してきたはずの検察が法以外の判断で処分を変えたといえる。信頼の根拠を揺るがす判断が今後どう影響するか、懸念される。(大竹直樹)
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最終更新:9月25日(土)10時10分
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