(2010年9月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
まず、沖縄と台湾からほぼ等距離にある無人島をいくつか用意する。次に、中国の領海(だと当人が考える海)で漁をすると決意した中国人のトロール漁船船長を加える。そこへ、日本政府による諸島の支配を維持しようとする巡視船を混ぜ合わせる。
最後に、中国人船長を2週間(できれば日本製の焦げつかない鍋=留置場=で)とろとろ煮込んでいら立たせる。さあ、これで、大半のアジア諸国にショックを与え、米国政府さえをも慌てさせる外交問題の出来上がりだ。
融和政策から一転して強硬姿勢に
人々が身構えたこの一件の直接の原因は、くだんの船長が問題の尖閣諸島(中国名は釣魚島)の近海で逮捕された後に、中国政府が大騒ぎする戦術を取ったことにある。中国政府は船長の即時釈放を要求しただけでなく(これには最終的に日本政府が折れた)、問題をさらにエスカレートさせた。
日本人4人を拘束し、日本の電子機器メーカーが使用するレアアース(希土類)の輸出を停止し、外交交流をキャンセルした。中国の街頭での反日デモも容認した(SMAPのコンサートツアーさえも中止に追い込んだ)。船長が釈放された後も中国政府は態度を軟化させず、謝罪と賠償を求めている。
この事件の根底にある懸念はもっと根深い。外交官たちは、中国のより強腰な(攻撃的と評する向きもある)行動パターンを感じ取っている。まだ強い経済力を誇り、高度な防衛力を保持している日本が中国政府に対抗できないとなれば、中国との間に領有権問題を抱える数多くの小さな国々には一体どんな希望があるのだろうか?
そうした問題の大半は何十年もの間、休止状態が続いていた。中国政府はこれまで、これらの問題を進んで棚上げし、中国が台頭しても脅威が及ぶことはない、と周辺諸国を安心させる魅力攻勢を優先させてきた。
南シナ海は中国の「核心的利益」
だが、そういう時代は終わったのかもしれない。中国は地域での利益をこれまでより強く追求し始めている。例えば、中国海軍は大がかりな演習を行った。中国政府はエクソンモービルをはじめ、ベトナムと組んだ西側企業に対し、中国も領有権を主張している海域での事業から手を引くよう警告している。
退役した軍の幹部たちは、南シナ海(英エコノミスト誌が「だらりと垂れ下がった中国主権の大きな舌」と評した海域)のことを核心的利益と呼び始めた。
まだ公式用語にはなっていないが、こうした状況から、中国はマラッカ海峡に通じる航路とともに南シナ海全域をチベットや台湾と同列に扱うようになるとの見方が強まっている。
実際にそうなれば、この主権を巡る問題は交渉の余地のないものになる。中国との間に領有権問題を抱える近隣諸国(ベトナム、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ブルネイ)にとっては由々しき事態だ。これは大国として台頭しつつあった時期の米国が中南米の裏庭に対する権利を主張した「モンロー主義」の中国版のようなものだ。
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