米国務長官「南シナ海は米国益の一部」
このように中国が横行かっ歩する兆しを見せたことで、一部ではパニックが生じている。口角泡を飛ばす議論で知られる石原慎太郎・東京都知事は中国のことを、縄張りを広げようとする暴力団になぞらえた。
ワシントンで発行されているニューズレターの編集長、クリス・ネルソン氏は、「プーチン化」なる武骨な(しかし便利な)用語を生み出した。ウラジーミル・プーチン政権下のロシアのように、中国は国内のナショナリズムに調子を合わせ、それまで友好的だった近隣諸国への態度を硬化させているというわけだ。
また、ハワイ大学東西センターのシニアフェロー、デニー・ロイ氏は、中国がアジア太平洋に対して抱く展望には、究極的に「米国が今日及ぼしているような影響力を受け入れる余地がない」と指摘する。このため、米中両国が「衝突進路」に乗ってしまう恐れもあるという。
中国が態度を硬化させている理由の一端は、南シナ海は米国の国益の一部だと断じ、領有権紛争の仲介を申し出たヒラリー・クリントン米国務長官の最近のスピーチにあるのかもしれない。
過去の米に比べれば控えめな中国の野心
中国政府としては、米国政府への反撃を狙っているだけでなく、中国は大きく成長し、「能力を隠して好機を待つ」というトウ小平の訓戒が合わなくなったと考えている可能性がある。ロイ氏の言葉を借りるなら、中国は、今こそ「体制を中国の好みにもっと合う形に変えるべき時だ」と感じているのかもしれない。
中国の経済発展が続く中、同国が地域でより大きな影響力を得ようとすることは、明白に望ましいとは言えないまでも、ごく自然なことだ。
米国は前世紀に強国として台頭して以来、恥じることなく国外で利益を追求してきた。パナマに運河を建設して管理下に置き、イランやチリなどでクーデターに資金援助を行い、インドシナ半島と中東で戦争を始めた。今日に至るまで、米国海軍は太平洋を米国の湖として扱っている。
こうした基準からすれば、地域での影響力を求める中国の野心は、断然控えめに見える。
新たな権力分有体制への移行期にあるアジア
米国には、夢を売れる魅力的な民主主義国だという優位性がある。おかげで同国の領土外での活動は、常に快諾されたとは言えないまでも、是認されてきた。「米国の強さには多くの疑問符がついてきたが、それは我々が慣れている力だ」。アジアにおける米国の影響力低下に関する著書を持つシンガポール人のサイモン・テイ氏はこう言う。「米国は現行体制の基盤を成している」
今まさに不安を呼んでいるのは、アジアが新たな権力分有体制に向けた移行期にあるのかもしれないという感覚だ。まだ貧しく、権威主義的な国家である中国は、依然、地域の大半で米国ほど信頼されていない。
米国政府が長年謳歌(おうか)してきたような権力を手にした時、中国政府がどんな行動を取るかは誰にも分からない。中国が日本との間で繰り広げる外交上の論争のような出来事をアジアが注視しているのは、このためだ。将来に何が待ち受けているのか、その手がかりを求めて目を凝らしているのである。
By David Pilling
(翻訳協力 JBpress)
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