国連事務総長:「惨劇、二度と許さぬ」 核廃絶へ決意表明

2010年8月5日 21時52分

 潘基文(バン・キムン)国連事務総長(66)が5日、長崎市を訪れ、原爆落下中心碑の前で演説。「核兵器が二度と使用されないようにする、確実かつ唯一の方法はこれらすべてを廃絶すること。強い確信と信念で立ち向かえば実現する」と核廃絶への決意を表明した。同日夕、同じ被爆地である広島に入った。【錦織祐一】

 潘氏は、爆心地での演説のほとんどを英語でしたが、「私は世界平和のために参りました」などと時折日本語を交えた。英語の部分では「苦難を耐え忍んできた被爆者の皆さんに尊敬の念を示すために、私はここに来た」と強調。「ここは、(被爆の)惨劇を二度と、いかなる場所でも、いかなる人間に対しても、決して許してはならないと確信する記念碑だ」と訴えた。

 元韓国外交通商相の潘氏は、今年が日韓併合100年となることから、中心碑近くの長崎原爆朝鮮人犠牲者追悼碑にも献花した。その後の記者会見でも「長崎を訪問して核兵器を非合法化していかなければならないという考えを強固にした」と述べた。

 潘氏は、5月に核拡散防止条約(NPT)再検討会議に合わせて開かれた国際会議で「核軍縮は私にとっての最優先事項」と表明しており、この際、田上富久・長崎市長らから被爆地訪問を要請されていた。

 NPT再検討会議は今回、10年ぶりに最終文書を採択したが、核兵器廃絶の期限など具体的な道筋は核保有国の抵抗で盛り込まれなかった。広島、長崎両市などでつくる「平和市長会議」が掲げる「2020年までの核廃絶」を潘氏は支持しており、被爆地訪問で、改めて核保有国に核軍縮進展を促す狙いがあるとみられる。

 潘氏は5日午前、長崎空港(長崎県大村市)から長崎市に入り、長崎原爆資料館を視察し、被爆者と直接対談した。5日夕に長崎市から広島市に移動。6日の「広島原爆の日」の平和記念式典に国連事務総長として初出席して、改めて核兵器廃絶をアピールする。

 ◇事務総長演説(全文)

 (日本語)皆さん、こんにちは。

 (英語)65年前の夏、この場所で、1機の飛行機が1発の爆弾を投下しました。それにより、この美しい長崎市ががれきと化したのです。そして何万人もの男性、女性、そして子どもたちの命を奪いました。本日、私はそうして亡くなられた人々に敬意を表すために、ここに参りました。(日本語)私は世界平和のために参りました。

 (英語)並々ならぬ苦難を耐え忍んできた被爆者の皆さんに尊敬の念を示すために、私はここに来ました。(被爆による)惨状が与える衝撃は、耐え得るものではありません。しかし、皆さんは、並々ならぬ勇敢さで、それを耐え抜いてこられました。私は、長崎市民の皆さんと連携し、この場に立っております。

 広島市民とともに、皆さんは世界の核軍縮に向けて力強いパートナーシップを構築されてきました。この史跡(原爆落下中心碑)は、核攻撃の地理的な中心地を単に示すだけではありません。私は大変に重い気持ちでここに立っています。この場所は、このような(被爆の)惨劇を二度と、いかなる場所でも、いかなる人間に対しても、決して許してはならないと確信する記念碑なのです。

 国連事務総長として、私は核不拡散及び核軍縮に関する5項目からなる計画を提言しました。それは安全保障、検証、透明性、通常兵器そして核軍縮のための法的枠組みに関する提案です。長崎市及び長崎市民の皆さんからこの計画に強くご賛同いただけたことを、大変うれしく思います。

 現在、平和市長会議に賛同する市長の数は世界で4000人に上ります。年末までには10億人以上の市民を代表する、5000人の市長から賛同を得ようとされている、その努力を私は歓迎します。このような活動こそが、核攻撃の悲劇に応える、可能な限り健全な方法の一つなのです。

 このような(核)兵器が二度と使用されないようにする、確実かつ唯一の方法はこれらすべてを廃絶することです。核兵器のない世界を目指してともに歩いていきましょう。強い確信と信念で立ち向かっていけば、核兵器のない世界は実現できます。国連を代表し、献花させていただくことを光栄に思います。

 (日本語)どうもありがとうございました。

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