2010年8月5日 21時51分 更新:8月5日 23時21分
2~5日の衆参両院の予算委員会では、民主党の参院選大敗につながったとされる「消費税増税」についても論戦が交わされた。だが、菅直人首相は、参院選前に打ち出した増税への積極姿勢を一転させ、「政府税制調査会や党で議論いただく」と慎重な発言に終始した。消費税議論に前向きな考えを示した自民党も、「超党派での税制論議」には「民主党のマニフェスト(政権公約)撤回が前提」との姿勢を強調。こう着状態に陥った消費税論議を打開できないまま審議を終えた。
「参院選で消費税に触れたことが、大変唐突に受け止められ、本当に申し訳なかった」。菅首相は4日間の論戦で、質問に立った与野党の議員に陳謝を繰り返した。野党側の「消費税を巡る首相の発言が二転三転をした」(井上義久公明党幹事長)などの批判に対し、「財政再建については一歩たりとも引くつもりはない」と反論したものの、自らの指導力で消費税論議を進めるとの決意は示さずじまい。年度内に結論を出すとしていた税制の抜本改革に至っては「期限を切っての議論ではない」と発言を後退させた。
これに対し自民党の谷垣禎一総裁は「(毎年1兆円超ずつ増える)社会保障費を放置する状況ではない」と指摘。「真摯(しんし)な提案があれば、真摯に受け止める。議論をしなければならない局面はある」と、菅首相を挑発するかのように、消費税論議への意欲を見せた。
しかし、参院選大敗で民主党内には「(与党が消費税を掲げると選挙で負ける)消費税のトラウマ」が広がっている。委員会での質疑では、複数の民主党議員が「国民の強い要望は無駄の削減が手ぬるいということだ」と菅首相に迫った。消費税論議への与党側の後押しは皆無に近かった。
税制の抜本改革を巡る政府税調の論議は参院選を境に中断。民主党内での議論開始のメドも立っていない。9月14日に代表選を控え、党内には「代表選が終わるまでは動けない」(税調関係者)との雰囲気が広がっている。
また、超党派の税制議論の前提条件として、自民党が「すでに破綻(はたん)した」(谷垣総裁)とするマニフェストの撤回をつきつけるのは確実。菅首相が民主党内を「撤回」でまとめられる可能性は低く、財政再建の根幹となる消費税論議は袋小路に追いつめられている。【久田宏】