【コラム】軍靴の一つも作れないのに(下)

 専門家は、「軍当局の方針にもかかわらず、兵士の被服装具類の問題が根本的に解決されないのは、いくつかの理由がある」と指摘する。まずは構造的な問題だ。現行法令上、軍の被服装具類はほとんどが軍人共済会・在郷軍人会・報勲団体などの傘下企業が随意契約で納品している。韓国戦争(朝鮮戦争)やベトナム戦争などで戦死・負傷し、国の犠牲になった人々や、その子孫に安定した職を与え、少しでも補償しようという考えからだ。

 随意契約により長年納品されているため、競争契約の場合よりも品質改善が遅れがちだ。このため、「今後は国が国家功労者に別の方法で適切な補償を行い、軍需品の納品は競争体制に転換すべき」という声が上がっている。軍関係者は「被服装具類納品システムに対し不満が募れば、結局は国家功労者にとってもよくない。政府を挙げて決断が必要な時期だ」と話す。

 国防予算のうち、被服装具類の優先順位が下位であることも問題だ。被服予算の増額率は2008年に0.4%、09年に0.9%に過ぎなかったが、今年は前年比で10%増額され、2182億ウォン(約162億円)だった。思い切った国防改革の枠を組む大統領直属の国防先進化推進委員会で推進されている課題は53項目に達するが、この中に兵士の被服装具類改善は含まれていないという。

 軍に関連する数多くの事案のうち、インターネットで最も多く、過激なコメントが寄せられるのが、被服装具類の問題だ。だが、政府と軍当局はこの問題に関心がないようだ。人間の基本3大要素は「衣食住」で、これは軍人も同じだ。そのうち、最初に挙げられる「衣」の問題を根本的に解決できずして、何が国防改革だろうか。世界最高レベルの戦車・装甲車を開発しても、それを動かす兵士たちの士気が下がっているとすれば、何の役にも立たない。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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