釜山少女暴行殺害:キム・ギルテ被告に脳疾患判定
1996年に公開されたハリウッド映画『PRIMAL FEAR』(真実の行方)は、劇的な反転攻勢が見る者をあっと言わせる法廷映画だ。貧しい若者が殺人を犯し、法廷に立った。「何が起こったのか分からない」などと、でたらめなことを話す若者に対し、検察官が問い詰めたところ、若者は突然悪口を浴びせ、被告席の周りの柵を飛び越えて、検察官の首を絞めた。法廷は修羅場と化したが、発作が治まった本人は、自分の行動を記憶していなかった。
釜山市で中学校入学を控えた少女を自宅から連れ去り、強姦(ごうかん)、殺害したとして起訴され、1審で死刑判決を受けたキム・ギルテ被告(33)が、脳疾患の一種の「側頭葉てんかん」を患っていたという精神鑑定の結果が出た。この病気にかかった患者の多くは適切な治療を受け、真っ当な人生を送っているが、医師団によると、キム被告の場合、人格障害まで重なった結果、犯罪に走ったという。
殺人犯は大抵、犯行を否認し、証拠を突き付けられた瞬間、あっさりと自白するものだ。キム被告は聞いていてじれったくなるような供述を繰り返したかと思うと、それを何度も覆した。捜査員たちは「悪賢い」と評したが、医師団の判断は違った。精神鑑定を担当した国立法務病院の治療監護所は、キム被告が実際に犯行について記憶していない、と判断した。
『PRIMAL FEAR』に登場する有名な反転攻勢のシーンは、法廷で暴れる場面の後に展開される。無罪判決を受けた若者は、弁護士と別れる際、「検事さんの首は大丈夫だったか心配だ」と話した。弁護士は何者かに殴られたかのような表情で聞き返した。「発作が起こったときのことを覚えていないのか」と。
キム被告も脳疾患を装っているのではないだろうか。その可能性も排除することはできない。しかし、キム被告の服役記録によると、かつて別の罪で服役していた当時から、幻覚症状を訴えたり、異常な行動について覚えていないことがあったりしたという(法務部の記録)。
精神鑑定が正確なものだとすれば、キム被告をどう断罪したらよいのだろうか。難しい課題が社会に投げ掛けられることになった。キム被告よりも軽い犯罪者が処刑される国がある一方、キム被告よりも残忍な殺人鬼を更生させる国もある。その中間には、いくつもの選択肢がある。キム被告の次の公判は、今月13日に釜山高裁で行われる。
金秀恵(キム・スヘ)記者