[飲酒運転]許容する空気にメスを

2010年10月2日 09時47分この記事をつぶやくこのエントリーを含むはてなブックマークLivedoorクリップに投稿deliciousに投稿Yahoo!ブックマークに登録
(48時間58分前に更新)

 アルコール依存症は「否認の病」といわれる。「誰にも迷惑は掛けていない」「ちょっと飲み過ぎただけ」などと事実をねじ曲げ、自分が依存症であることを認めようとしないからだ。飲酒運転が常習化した人の中には、「その方が上手に運転できる」と豪語す人もいるという。依存が強まると否認もまた強まっていく。

 全国ワーストという不名誉な記録を返上しようと、「県飲酒運転根絶条例」が施行されて1年が経過した。

 県警による根絶の取り組みや事故で肉親を失った遺族の講演活動、飲食店による「ハンドルキーパー」の動き、飲んだら運転代行を利用する人が増えるなど、条例の趣旨は徐々に浸透している。

 しかしそれでも、飲酒運転はなくならない。

 ことし1月から8月までに県内で起きた飲酒絡みの人身事故は101件。全体の2・4%を占めた。比率は全国平均を約3倍も上回り、このペースで進むと、21年連続全国ワーストの記録を更新することになる。

 検挙者約600人を対象に県警が実施した聞き取り調査からは、「この程度なら大丈夫」「警察に捕まらないと思った」など、誤った認識や規範意識の欠如が浮き彫りとなる。

 さらに、「仕事に車が必要だったから」とめちゃくちゃな理由を挙げる人もおり、「初めから飲むつもりで運転してきた」など、飲酒が生活に深く根差す現実も見える。

 2006年、福岡市で3人の幼子が亡くなった飲酒運転事故、伊平屋村で起きた飲酒絡みの死亡事故をきっかけに、撲滅への機運が一気に高まった。

 痛ましい事故は、罰則引き上げや「同乗罪」など道交法改正を促したが、月日とともにその関心も薄れている。

 県警の検挙者調査でも、過去にも検挙されたことのある人が15%にも上った。残念ながら、飲酒運転に寛容な社会の風潮は大きくは変わっていない。

 厳罰化や取り締まり強化は必要だが、その効果は限定的である。飲酒運転の背後にある飲酒問題へどうアプローチするか。さらに踏み込んだ対策が求められる。

 アメリカでは、飲酒運転の再犯防止に依存症対策を取り入れて、治療や予防にも力を入れる。

 飲酒運転を減らすには飲酒行動そのものを変える依存症対策へと手を広げることが不可欠だ。

 飲酒運転で人身事故を起こした過去があり、地域の断酒会会長を務める男性は「断酒会など自助グループに参加し、依存症を認めることが断酒のスタート」と話す。

 警察と学校が連携しアルコールの害についての知識をきちんと身に付けさせる予防教育。業界の社会的責任として飲酒運転は絶対させないという決意。医療機関を中心に回復を支援する仕組みの構築。

 飲酒運転を許容する空気を社会全体で打ち破っていく取り組みが必要である。

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