じいちゃん似ジョンウン氏　素顔初公開

　ベールに包まれていた北朝鮮の金正日（キム・ジョンイル）総書記の三男で後継者のジョンウン氏（２７）の素顔が明らかになった。朝鮮中央テレビは９月３０日、ジョンウン氏が２８日の朝鮮労働党代表者会で拍手している姿を放送。これに先立ち、朝鮮中央通信もジョンウン氏が写った集合写真をカラーで配信した。映像、写真とも初めての公開。“将軍様”の後継者は、祖父の故金日成（キム・イルソン）主席に似た、ふっくらとした青年だった。

　写真は、金総書記が２８日に開かれた党代表者会の出席者らと、故金日成主席の遺体が安置されている錦■山記念宮殿の広場で記念撮影したものだ。ジョンウン氏は金総書記の向かって左２人目の位置に、両手をひざの上に置き、硬い表情で座っていた。肉付きのいい体格は父よりも、祖父である金日成主席の若いころに似た風ぼう、雰囲気が漂う。

　写真にジョンウン氏だとの説明はないが、複数の北朝鮮当局者は「ジョンウン氏に間違いない」と断言した。金総書記を除く他の男性参加者はスーツや軍服姿だが、ジョンウン氏は金総書記が愛用するジャンパー風スーツの黒っぽい服。６０～７０代の人物が大半の中、最前列に座る若いジョンウン氏はひときわ目立ち、特別な存在であることがうかがえる。また同日午後には朝鮮中央テレビでも、ジョンウン氏が党代表者会の会場の最前列で拍手する映像を放送した。

　ジョンウン氏は２７日に朝鮮人民軍大将の称号を与えられた。翌２８日の党代表者会で党中央委員に選ばれ、党中央軍事委員会副委員長に就任、正式に金総書記の後継者に決定した。だがその素顔についてはこれまでベールに包まれており、１０代のころとされる複数の写真があったが、本人だと断定できる材料はなかった。この場面は２９日に写真のみ配信されたが、ジョンウン氏は入らないようトリミングされていた。

　ジョンウン氏の姿を初公開した北朝鮮の狙いについて、辺真一コリア・レポート編集長は「体形、髪形、拍手の仕方…金日成の生き写しだ。今でも絶対的な人気がある『建国の父』に似ているということは、国民に対する大きなアピールになる」と、そっくり効果を指摘。さらに今後について「実質的にはナンバー２。長老らに配慮して党の序列こそやや落ちるが、これからはジョンウン氏を通さなければ何も決められなくなる。早速、１０月１０日に予定されている軍事パレードを仕切ることになるのではないか」と分析した。

　一方、北朝鮮情勢に詳しい李英和関大教授（現代資本主義論）は「まだ２０代なのに、すっかりオヤジが入ってる」とジョンウン氏の貫禄（かんろく）を認めながらも、指導者として力を発揮するには「あと１０年はかかる」とみる。「野球に例えるなら今回の党代表者会はドラフト会議で、ジョンウン氏がドラフト１位に指名されたということだ。目玉には違いないが、まだ実力は未知数。これから“２軍”で太めの体と心を絞り込むことになるだろう」と話していた。

※■は糸ヘンに粛の旧字体

　［2010年10月1日9時7分　紙面から］