将軍様の料理人に聞く
金正日総書記の専属料理人として13年間、北朝鮮に滞在した藤本健二氏(仮名、年齢非公表)に、金総書記の3男で後継者に決まった金正恩氏(27)の素顔について話して頂きました。2001年の脱北後、一貫して主張して来た「後継者は3男の正恩(ジョンウン)氏」との予測が現実に。
「将軍様」に寿司やウナギを振る舞う日々の中で、正恩氏とは少年期から青年期になるまで接してきたそうです。いまだに謎だらけの正恩氏の実像を二人きりで語り合った秘話を交えてうかがいました。
藤本氏は10月10日に「北の後継者キム・ジョンウン」(中央公論新社)を出版予定です。
初めて北朝鮮当局が公開した「将軍様」の後継者、金正恩氏の映像と写真。祖父の故・金日成主席と風ぼうがウリ二つであることが話題になっています。
「久しぶりに顔を見て懐かしくて目が熱くなった。眉毛、目、分厚い耳たぶ・・・本人に間違いない。12歳の頃、太っていて今回公開された写真のような顔立ちの時期もあった。カリスマ性のある政治家になることに没頭しているところ。恐らく将軍の意向でしょうが『27歳で細くては、貫禄がない。国の指導者になるのだからどんどん食べろ』と言われて無理やり食べさせられた顔ですよ。整形なんてするわけがない(笑い)。軍隊では30歳にならないと結婚できませんが、ファミリーは別なので、結婚もしているかもしれない」
藤本氏が正恩氏と一緒に過ごしたのは、正恩氏が7歳から18歳までの間(スイス留学中を除く)。特に印象深いのは、正恩氏が17歳の時にウォッカを飲みながら約5時間にわたって語りあった日のことだそうです。2000年8月11日、元山招待所から平壌へ向かう将軍専用列車の中。
「『藤本、Vやろう(タバコを吸おう)』と私のところへきた。一緒に最高級ウォッカのクリスタルを飲みながら彼は中国の成功について語り出したんです。『工業も、農業も成功しているらしい。中国の商店にはどこへ行っても商品が山積み。我が国も商品が山積みになるようにしないとなあ』と思い詰めたような顔で。この時には将軍から『お前が後継者になるんだからしっかり政治のことを・・・』みたいに言われていたんじゃないかと思う。話し終わると最後に『タバコのことはパパに内緒ね』と(笑い)。将軍は98年には禁煙していましたから」
青年期からリーダーシップは発揮していたそうです。
「バスケットボールをやっていてミスを重ねた仲間をメチャメチャ大声で怒っていることがあった。後で私のところへ来て『彼、大丈夫かな、立ち直れるかな』と。怒るときも褒めるときも計算していて、恐るべき18歳だと思いましたね」
藤本氏は正恩体制になれば北朝鮮は改革・開放への道を歩むとみています。
「15歳でスイス(ベルンの公立中学校)に留学したり、外国を見ていますから。鎖国のままじゃ国が伸びないことはよく分かっているはず。片付けることが多すぎるし、正恩大将はいろんなツケを回されているが5年、10年かけて開放への道を開くと思います」(了)
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私自身は2001年に北朝鮮旅行を試みたことがあります。
北朝鮮専門の旅行会社を通じて全て手配したのですが、出発前日の深夜になって「外国人の入国は認められない」と却下の連絡が入りました。さすがに腹が立って旅行会社に何度も理由を問いただしたんですが、はっきり理由を言わない。後で調べてみたら、当時の小泉首相が靖国神社に参拝した直後だったので、どうもその一件が影響したようだったのです。
正日体制の北朝鮮を見ておきたかったのですが、これから藤本氏の言うとおり、開放化へ向かうのでしょうか。過渡期は過渡期でやはり現地を見てみたいという気がします。
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