核政策 ひそかに報告書作成
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核政策 ひそかに報告書作成

10月4日 4時38分 twitterでつぶやく

1964年、中国の核実験を受けて日本政府が、「いつでも核兵器を持てる潜在的な能力を引き上げておくべきだ」とする報告書をひそかにまとめていたことがわかりました。報告書では、そのうえで、あえて核兵器を持たないと国内外に強調することが重要だとしており、専門家は「現在の日本の核政策につながる貴重な資料だと言える」と指摘しています。

この報告書は、1964年、中国が初めて核実験を行った直後、内閣調査室が国際政治学者でのちに沖縄返還交渉にも携わる若泉敬氏ら複数の専門家に調査を委託し、取りまとめたものです。報告書では、中国の核保有が日本に対し、政治的、心理的に大きな影響を及ぼすと分析し、日本としては原子力やロケットの技術開発に力を入れ、「いつでも核兵器を持てる『潜在的な能力』を、中国よりも常に高いレベルに引き上げておくべきだ」と指摘していています。そのうえで、「核兵器を作る能力を持ちながら、あえてみずからは持たないだけだということを国内外に明らかにすることが重要だ」として、あえて核兵器を持たないことを強調することで、日本の国際的な立場が高まるという考え方を示しています。政府は、この報告書をまとめたあとも、核兵器の製造方法や保有した場合の影響などについて、ひそかに調査していましたが、1968年、「核兵器を持たず、作らず、持ち込ませず」とする非核三原則を宣言し、その後、みずからは核を持たないという政策を進めてきました。核に関する政策や日米外交に詳しい、名古屋大学大学院の春名幹男特任教授は、報告書について「現在の日本の核政策につながる貴重な資料だと思う。非核三原則が示した『核兵器を持たず』という考え方には、潜在的能力を知らしめながら、あえて持たないという意図が込められていたことがわかり、非常に興味深い」と話しています。