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きょうの社説 2010年10月4日
◎消防団セミナー 「企業市民」で防災力向上を
増えるサラリーマンの消防団員がより活動しやすくなるように、石川県は県内の市町や
消防団と協力して、企業や商工会議所などを対象に出前セミナーを実施する。消防団は消火活動や日ごろの防災活動だけでなく、大規模災害時に重要な役割を果たすことは能登半島地震や金沢市の浅野川水害などで多くの住民が実感している。現在は役所や会社などの勤め人が団員全体の約7割を占めており、今後の消防団活動を 維持、向上させるためには団員が勤める職場の理解が欠かせない。地域に貢献する「企業市民」として、企業は団員が活動しやすい職場の環境整備を推進して、地域の防災力向上に協力してもらいたい。 全国の消防団員数は今年、約88万3700人で過去最少を更新した。県内では520 0人前後で横ばいの状態が続いていたが、2004年以降に増え始め、今年4月1日時点で前年比31人増の5317人となった。地道な勧誘などによって団員増につながったとみられるものの、県内全体の団員定員数に対する充足率は92.9%である。高齢化も進み、団員確保に向けて、サラリーマンをはじめ幅広い層の参加を促す環境づくりが課題となっている。 出前セミナーは、企業側にサラリーマン層が参加しやすい機能別団員の制度や、消防団 に理解のある企業の表彰制度などを説明するものである。企業は地域防災に大きな役割を果たす消防団活動に理解を深めて、地域の安全・安心のために献身的に活動する社員たちを評価してもらいたい。そのような社員を擁して地域に貢献する企業の姿勢は、住民らの評価を受け、企業のイメージアップにもつながるはずである。 金沢市の浅野川水害では、多くの消防団員が避難誘導や広報活動などに精力的に取り組 んだ。能登半島地震でも、日ごろから地域をよく知る消防団の活動が極めて効果的だったといわれた。地域の防災力向上へ、落ち着いたきめ細かい対応が評価されている女性団員の加入促進や消防団と自主防災組織の連携もさらに強めていきたい。
◎尖閣周辺の漁業 沖縄の漁師の安全を守れ
尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、沖縄の漁業関係者らが怒りと不安を募らせている。
沖縄県議会と仲井真弘多知事が政府に対し、尖閣諸島が日本の領土であるという毅然とした態度を堅持し、周辺海域で日本の漁業者が自由かつ安全に操業、航行できる措置を講じるよう求めたのは、沖縄県民というより国民の思いを率直に代弁したものである。沖縄県議会が可決した決議は、中国人漁船長を処分保留で釈放したことで、中国政府が 尖閣諸島の領有権を強硬に主張する懸念を表明している。その心配通り、中国政府は中国漁民の保護を名目に、尖閣諸島付近の日本の排他的経済水域(EEZ)で漁業監視船によるパトロールを「常態化」させる動きをみせている。 このままでは「中国側に拿捕(だほ)されるかもしれない」という沖縄の漁師の不安が 現実になりかねない状況であり、政府は尖閣諸島周辺の警備を一段と強化し、日本の漁業者の安全確保に全力を挙げなければならない。 日中両国のEEZが重なる東シナ海での漁業の秩序維持のため、日中漁業協定が締結さ れている。そのことを踏まえ、仙谷由人官房長官は「漁業の仕方について再確認が必要であり、事件の再発防止に向けた協議が行われる」との見通しを示している。 漁業協定では、日中のEEZの境界線が画定できないため、尖閣諸島の北方に両国が共 同で資源を管理する「暫定水域」と、相手国の許可なしに操業できる「中間水域」が設けられており、暫定水域での取り締まりは、互いに自国の漁船のみを対象に行うことになっている。今回の衝突事件はこの水域外であり、船長逮捕は漁業協定上も何ら問題はない。 暫定水域の漁獲と漁船の割当量は現在、中国側が圧倒的に多い。漁業に関する日中協議 が今後、協定の見直しに及ぶことも考えられる。その場合、中国側優位の暫定水域や中間水域の拡大に安易に妥協し、尖閣諸島周辺の日本側EEZが「侵食」されるような事態を許してならないことを、ここで強く求めておきたい。
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