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[18886] 【習作】超神の試作品(ランスシリーズ)
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/10/02 19:04
これはアリスソフトのランスシリーズの話です

至らないところもありますが、よろしくお願いします。

なおこの作品はオリ成分をふくんでおります。

・トロスはオリキャラであって主人公というわけではありません。

・あくまで主人公はランスです。

・最初の方の話は結構ひどいと思います。

・この話は作者の妄想によって作られています。
 なのでこの作品は最終的にはどうなるか分かりません。

・主にランス世界に選択肢を増やしたくて書いた作品でもあります。
なので多数のオリキャラが登場予定です。

・作者はメガラスが好き。



などが作品に含まれおり、作者が書きたかったことです。
特に戦国から知った人にはもっと知ってもらいたいです。
できるだけ良作にできるよう頑張ります。

多少の暇つぶしでもいいんで読んでください。





あとがきを読んでくださるとうれしいです。

どうでもいいのもありますが、結構大事なこと書いてる時もあるので。

それではよろしくお願いします。



5月16日 プロローグ

5月16日 第一話投稿

5月18日 第二話投稿

5月21日 第三話投稿

5月23日 第四話投稿

5月26日 第五話投稿

5月29日 第六話投稿

6月2日  第七話投稿

6月5日  第八話投稿

6月6日  第八話修正

6月26日 第九話投稿

7月3日  第十話投稿

7月6日  第十一話投稿

7月10日 第十二話投稿

7月11日 第十二話大幅変更

7月12日 第十三話投稿

7月13日 誤字修正

7月15日 スラル編までのキャラ紹介(ネタ)投稿

7月18日 第十四話投稿

7月25日 第十五話投稿

7月29日 第十六話投稿

8月3日  番外編投稿

8月11日 第十七話投稿

8月18日 第十八話投稿

8月24日 第十九話投稿

8月26日 第二十話投稿&修正

8月29日 第二十一話投稿

9月5日  第二十二話投稿

9月12日 第八話書き直し投稿

9月18日 第八話後編投稿

9月25日 番外編投稿

10月2日 番外編投稿



[18886] プロローグ
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/05/16 18:15




それは彷徨っていた。



意味もなく。



体もなく。



ただ意思を持っているだけだった。



特別なにかを考えているわけではない。



ただそこに在り、彷徨っているのだ。



それにとってはこれから起こることは幸運かもしれない。



もしくはとても残念な不運となるかもしれない。



それでも、それにとってはどちらでもいいのだ。



それに意思があろうとなにもできない。



ただ感じる事しかできない。



この現状を変えてくれるならなんでも良かった。










「ん?なにこれ?」


その一言でそれの現状が変わる。










あれは一体なんだろう?

僕が創った丸い者でもない。

もしかしたらプランナーが新しく創ったものかもしれない。

でも、僕はなぜかそれに魅入っていた。


「ねえ、それってローベン・パーンが創ったの?」


隣りから声がする。

その方向を向くとプランナーがいた。



「いや、僕が創ったわけじゃないよ。最初からここにいたんだよ。
でも見た目が丸い者に似てるけどね。」



そうこれは丸い、ただ自分で創ったにしては覚えがない。



「ふーん。」



プランナーはそれから少し考えるような仕草をして僕に言った。



「ねえ、これに丸い者の特性とか、ドラゴンとかいろいろ混ぜたら
面白いものができるんじゃない?」



その言葉に僕は感銘を受けた。

なんせ混ぜるなんて発想がなかったからだ。

これはもしかしたら第3のメインプレイヤーになるかもしれない。

そんな気がしてならなかった。



「まあ、仮に混ざったらの話だけどね。
今は地上にいる生物だって少ないしやってみるよ。ルドもそのほうがいいだろうし。」



僕はそれを手にとって丸い者の特性である「自己進化能力」を手に在るものに注いでいく



「なんか吸収するように入っていくね。
なんかおもしろいよ。」



それは形状をじょじょに変えながら形を作ろうとする。

ドラゴンについても入れておこう。

新しいメイインプレイヤー候補が完成しようとしたとき、



「まって、どうせなら魔人についても入れてほしいものがあるんだ。」



プランナーはそう言って僕からそれを奪うようにして手に取り、
なにかを注いでいく。



「試作品の魔王もしんで、ククルククルもいるんだけど、
いろいろ試してみたいことがあるんだよ。」


「試す?」


「そう、試すんだよ。
地上でこれを魔人にするために、力と匂いをつける。
魔王が気に入りさえすれば血を与え魔人になる。
これ、他にはいないみたいだから魔人にしたいんだ。
ククルククルも魔人を作らないしね。」



そして、それは完成した。

まだ体はできてないが完成するまで時間はかからないだろう。



「そうだ、名前をつけよう。
プランナー、何かある?」



名前のアイディアをプランナーに求める。

時のセクロス?だっけ?

プランナーはいいネーミングセンスを持ってる。



「時のセラクロラスだよ!間違えないないで!
とまあ、それはいいとしてこれの名前はね、トロスでどうかな?
試作品と同じ名前だけど、これはもっと強くなる。あの試作品よりも強く。」



「ならそれで決まりだ。
君は第3のメインプレイヤーだ、トロス。
たった一つしかいないのが君だ。
がんばってルドラサウムが望む世界を創ってくれ。」






そして地上へと落ちていく。

これはまさに不運だろう。

だがどうでもいい。

体を得た、それには感謝するだろう。

あとは生きるだけ。

これは神の遊びのために生きる魔人の物語。

Ifなんてない、残酷な世界の物語である。



















あとがき

それっていうのは、まあ超神から見たら、丸い者の突然変異みたいな感じに扱ってます。もしくは亜種とか。
口調に関しては適当です。
僕が第一人称なんてかわいいじゃないですか。
もう作者の趣味ですね。すみません。
まだ最初なんで、これから口調が変わるってこともあるかもしれません。
そこはごめんなさい。
最後に読んでいただきありがとうございます。



ちなみに「匂い」に関してですが、
匂いっていうのはプランナーが面白半分で創ったものです。
魔王、魔人に嫌われないフェロモンみたいなもんです。
というよりこの匂いの効果は不明。
結果を知りたかったのでプランナーが入れました。
相手に関しては好かれることもあります。
まあ、匂いだけで恋愛感情まではいきません。


説明多いですが、入れるっていうのは遺伝子に組み込む感じです。
まあ、超神だから出来るっていう設定です。





[18886] 第一話 この第一話はプロローグのようなものだと思うんだ
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/08/26 18:40






Kuku0200

歴代最強の魔王にして丸い者の王、ククルククルの時代。

そして初代魔王であり、魔人を創りし存在。

無敵能力こそ無かったが、その力は最も1級神に近づいたと言える。











今のククルククルは変な気分だった。



同じ丸い者である「ケイブリス」を魔人にしたからではない。


これは感じたことがない感情だ。


それは歓喜である。


高揚ともいえる感情だ。



ククルククルは空を見上げる。


大きな体でとてつもなく広い空を見上げる。


そして、今まさに、その時が近づいていた。


それが落ちた場所は超神がそこに落としたからである。


しかしククルククルはそんなことは知らないし、どうでもいいことだった。


神など関係ない、これは運命なのかもしれない。


魔人を創る気などあまりなかった。


だがこれだけは、これに関してはありえない。





     これを魔人にする。






その感情がククルククルを支配していた。


触手の一つを空に伸ばす。


そしてもう一つの女性のような形をした触手で包み込むようにそれを持った。


まだ完全な形ではなく、そこにあるという事実だけのそれを見つめる。


そして、ククルククルはそれに血を与えた。


自らの血を垂らし、今まさに姿を創らんとするそれに血を垂らした。


それは赤色に塗れながら形を成す。


それは新しい存在だ。


丸い者でもなく、ドラゴンでもない。


まったく違う者なのだ。


ククルククルはそれに自分の名を教えた。


語るように、優しく言い聞かせた。


そして、形を成したそれに問うたのだ。







「お前の名は、なんという?」





それの口が静かに動く。
自信の絶対的主に対して。





「私の名は、トロ、ス。ああ、トロスだ。」





初めての言葉を口にする。


そうしてトロスは魔人となった。


歴代最強の魔王、ククルククルの僕として、この地で産声をあげた。






体はまだこの地に出来ていない人間に似ている。


頭からはドラゴンのような角が一本、額から突き出るように出ている。


背にはまだ小さいが翼を持ち、彼個人の独特な匂いを発していた。


髪は黒色で上に上げて視界を広くする。


ククルククルをその蒼い瞳で見上げながら彼は立った。


自分の足で大地に立ち、その肌で風を感じる。


それは彼が望んでいたものだ。


意思と感情をもってここにいることを望んだ。


その後がどんな結末だろうと構わない。











生きている。 存在している。






今彼は歓喜しているのだ。






ククルククルは歓喜した。



彼も歓喜した。




ククルククルは彼を魔人に出来たことを歓喜する。





彼は生きる場をくれた超神に感謝した。




笑う、狂ったように両者は笑う。




たとえ神の遊びでもいいと、それでもいいと、笑うのだ。




この日は記念すべき日となるだろう。

ルドラサウムにとってもこれは、ただ面白いことなのだから。














あとがき

質問なんですがククルククルって話すんですかね?
タコといっても魔王だし、ケイブリスも喋るしおkですよね?
とまあ、一話というよりなんかプロローグみたいな感じです。
主な話は次からです。

できるだけ連載は続けていきます。
これからもよろしくお願いします



[18886] 第二話 リスは大きなるだけである
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/05/18 23:38








Kuku0201




小さな泉の淵を一人?と一匹が歩いていた。




討論をするように話ながら行くあてもなく歩いていた。


















「だから、俺様がククルククル様の最初の魔人なんだ!
俺様のほうが先輩だし偉いんだぞ!」


「何をいっているんだケイブリス、俺とお前は同時期に魔人になったろう。
だいたい何故こんなことでお前と言い争わなければならない。」


私の肩にまで登ってきたリスにそう語りながら私は歩く。

そもそも、何故ケイブリスはこうも自分が偉いと言っているかわからない。


「俺たちはククルククル様の魔人なんだぞ。まだ魔人は俺たち以外いない。
なら俺たちのどちらか偉いかを決めたいんだ。まあ、もちろん俺様のほうが偉いけどな。」



そう私の肩で胸を張って言いきるリスがかわいいと思うのは仕方ないことだろう。

ただまあ、このリスには力がない。

どれだけ魔人といい張ろうとこれにはまだ力がなさすぎるのだ。

それこそ丸い者の宿命ともいえる。

成長に時間が掛かり過ぎる欠陥品。

しかし、時間と努力さえ在れば丸い者は最強になれる。



「ケイブリス、そんなことはどうでもいい。

私がお前に求めるのは最強だ。魔人にの名に恥じない強さだ。

私たちが最強だ、他の魔人が増えようと、私たちが最強なんだ。

魔人の中の最強はお前であり、私だ。

まだお前は弱い。私は微妙なところだがな。

ククルククルは魔人を増やす気はないらしい。

だから今のうちに強くなる。時間だけはあるのだから。」


「は、何言ってるんだトロス。

そんなのは当たり前だ。さあ、修行するぞ。

そして俺は体を進化させる。

そしてこんな弱い俺とはおさらばだ。」





私の肩にいたリスは飛び降り走っていく。



強くなるために。



今の弱い自分を変えるために。






「私もいくか。」





翼を広げ空を飛ぶ。


体に風を感じながら飛ぶ。


そして、強くなるために戦うのだ。


生きるために戦うのだ。


神を喜ばせるためにそれは残酷に殺すのだ。


せっかく手に入れた生を使うために殺す。


ただ生きていたい。

そして他の命を感じたい。


自分以外のなにかを見たい。


どうせなら死なずに見ていたい、感じていたい。


この世が終わろうと、それすらも生きて生きて生きぬいて、



すべての最後を見たいんだ。私は。



















そんな彼を満たすように周りで命が散っていく。


今まで生きていた生命がその存在を奪われていく。


空を飛ぶドラゴンたちが死んでいく。


完全な生命体であるドラゴンであろうと魔王にはかてない。


ククルククルはただ潰す。



これより長い戦いが始まるのだ。



魔王とドラゴンとの長い戦いが。



彼は丸い者である、ドラゴンである、

そして数々の可能性を秘めた第3のメインプレイヤー。




この長い時を使い彼は進化する。






ドラゴンなぞ相手にならないほど強くなる。
















そして、ケイブリスは大きくなるだけであった。















あとがき

正直この辺は書きづらいです。
とくにケイブリスとかケイブリスが。

ククルククルのころは書くことないんですぐに終わります。
強くなる描写とかなしです。てか魔人だし勝手に強くなるんじゃないかな?

あと最強とかいってますけど、魔人の中で最強という意味です。
神より強くなれるわけなんかありません。

主人公だって転生者ってわけでもありません。
ランス側にいくこともありえません。


この先いろいろ設定を変える可能性がありますけど、
オリ設定を我慢してくれればうれしいです。




[18886] 第三話 実力ではなく運でなれるほど魔王は甘くない
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/05/21 23:17







地面に落ちた透明の液体をすくい取る。



それはかつて自分の主だったもの。



もはや動かぬ命もないものだ。





「・・・・・・ククルククル。」




そういって呟きながらその残骸を見つめる。



もはや魔王はいない。



いや、ちがう。



魔王は次に継承されたのだ。



だからこそ魔王は終わらない。



永遠に続く魔王のシステム。



だからこそこの感情は間違っているのだろう。



だけど、それでも構わない。



これが最初で最後の思いになるだろう。




「それでも、ククルククル。 私はお前を殺したあいつが憎いよ・・・・」




拳を握る。



鋭く尖った爪が皮膚に食い込み血が流れる。



本来ない感情に苦しむ。



生を謳歌し、それを奪って喜ぶ私が間違っている。



だが、もはやそれすら関係ない。




「運だけで魔王になるか・・・・。

それは悪いことじゃないだろうさ、逆にいえば運がいいから魔王になれた。

だけど、今回だけは駄目だ。全然駄目だ。

だからこそ、できるだけ早く退場してもらおうか、魔王アベル。」






魔人は魔王を殺せない。



ならどうする?



簡単だ、アベルが魔王になった方法で死んでもらえばいい。



すなわち第三者による殺害。



この世界にはまだ強者がいる。



たかが普通のドラゴンが魔王になっても何もかわらん。



ならばその先にいる存在に魔王になってもらうしかない。






「マギーホア。私の無様な感情の元を消すのに手伝ってもらうぞ。」






そう決意して、ケイブリスのいる場所に飛んでいく。



新しい魔王を出迎えなければいけない。



会うときはこの感情を出さないように。



だって、魔人は魔王を殺せないのだから。




























AV0001




「お前たちが俺の魔人なのか?」

そう問いかけるのは魔王アベル。

ケイブリスと私はただそれに答える。


「はい、私はトロスと言います。魔王様。」

「・・・・ケイブリスと言います。魔王サマ。」



ケイブリスはふてくされたように答える。




「ふん、トロスはともかくお前はなんだ、ケイブリス。
お前のような奴が魔人とよく言えたものだな。」


ケイブリスは頭は下げながらそれを聞く。

反論はできない。

なんせ言っていることは間違っていないのだ。

すべて正論、反論などできない。



「もういい、ケイブリス。お前はさがれ。」


「はい、魔王サマ。」


ケイブリスは走るようにして飛び出ていく。

いまこの場にいるのは私と魔王だけになった。



「・・・トロス、お前に聞きたいことがある。」

「なんなりと、我が主。」

魔王はこちらに近づきながら問う。




「俺には欲しいものがある。
それはドラゴンなら誰でも喉から手が欲しいものだ・・・・」


魔王はいったん言葉を切り、再び口を開いた。


「俺は魔王になった。
だからこそアレが欲しい。だがマギーホアに勝てるかは分からん。
トロス、お前はどう思う。俺はマギーホアに勝てると思うか?」


「我が主、自分自信の実力を侮ってはいけません。
もし疑うのなら、魔人を創られてはいかがですか?」


少し口が歪む。

それこそ笑ってしまいたいくらいに。


「そうか、それもいいかもしれない。

よし、今から創ってみるか。すこしここで待っていろ。」



そういって魔王は翼を広げ空へと飛びだって行く。











「・・・・トロス。」

岩陰からケイブリスが除いている。

ケイブリスは私に近づきながら口を開いた。


「トロス、俺はあいつが嫌いだ。なぜあんな奴が魔王なんだ?」


「それも生きていく上で通る道だ。諦めろ。
だが、今回は諦めずあの魔王を殺してやりたいがな。」


ケイブリスは驚くような仕草をしながら聞いてくる。


「魔人は魔王を殺せないんだぞ。どうするんだ?」


「・・・・・やり方はある。お前は黙って時が過ぎるのを待て。」


ケイブリスの頭を撫でながら答えてやる。

「・・・・・わかった。」


いじけた様に返事するケイブリスはなんか可愛い。


そして、魔王アベル。

あれはもう許せない。

私の友を蔑んだ。

罠に掛かった獲物を逃がす気はない。

魔王は新しい魔人をつれて来るだろう。

それはいい、実にいいことだ。

あとはマギーホア次第だろう。

魔王は馬鹿で扱いやすい。



「マギーホアの頭が良ければ、すべてうまくいく。
  不安要素はただ一つ・・・・」

不安要素、それはこの罠の大事な餌だ。


「カミーラ、とかいったか、あの女は。」


それでも私の自信は揺るがない。

不安要素があろうと変わらない。

これだけはうまくいく。

絶対にだ。

理由なんてない。

失敗したところで関係ない。

だって、どちらにしろあの魔王は・・・・




「そう、どちらに行こうとあの魔王は死ぬしかないんだからな。」


口が歪む。声を殺しながら笑う。



「しかい、なんともお笑い草じゃないか。
だれからも慕われない魔王。本当に喜劇としか思えないよ。」



笑う、再び笑う。


空には光り輝く星が輝いていた。




















あとがき


質問なんですがセリフの時、
「~。」と「~」
   ↑これどっち使ったほうがいですか?
これからの参考にしたいので教えてください。


魔王への反感抱くくらいなら魔王システムに反してないからいいですよね?
てか無敵結界もまだないんで、おkということにしておきます。


最後の一文に関してはメガラス的な意味があります。
まあ、彼宇宙人ですし登場はすでに魔人になった後にしておきます。


魔人になる順番ですけど、本来なら
カミーラの次にメガラスとくるんですけど、それだとラストウォーと時間が被って
変な感じになるんで先にメガラスを持っていくことにします。


最後に、ここまで読んでいただいてありがとうございました。




[18886] 第四話 メガラスは萌えキャラ
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/05/23 15:58











AV0001






それは白く美しく、銀のようにも見える肌を持つ魔人。



魔王アベルが初めて魔人という存在を創った者である。



その名はメガラス。



魔人の中にて最速と謳われた魔人。



どうやって魔人になったかは不明。



ただ、宇宙から飛来した際、アベルによって魔人に変えられた。



もとが何かもわからない。



だが彼は其処にいた。



その場に魔王の姿はなく、あるのは自分と似た形をした者と、
動物の形をした一匹だけであった。



目の前にいる人物はメガラスを見つめる。



興味津々といったような感じで見つめている。



そして口を開いた彼はメガラスに問う。





「お前の名は、なんというんだ?」



その質問に答える気はメガラスにはなかった。


しかし、目の前にいる人物に答えなくてはいけない気がした。


それはメガラスの意思を変え、その質問に対して答えた。




「・・・・・・メガラス」




それが初めて口にした言葉。


気づいたら魔人にされ、この地に縛られた哀れな魔人の言葉。


この地にて、初めて口にした言葉であり、


トロスという魔人と初めて言葉を口にした瞬間だった。
























それを見たとき私の心は躍るようだった。

あの魔王が何を魔人にするか気になってはいたが、
まさかこんな者を魔人にするとは。


見た目はとても美しい。

だが、私はこれをこの世界で見たことはない。

そして何より名前をしらない。

先に名前を聞いておこう。



「お前の名は、なんというんだ?」

「・・・・・・メガラス」



名は分かった。

だがもう一つ聞くことがある。


「メガラス、お前はこの地で生まれた存在ではないな?」


そう聞くと、肯定するように首を縦に振る。

この地で生まれたわけではない。

なら答えは一つだ。

メガラスは、空から、それも空に浮かぶ星からきたことになる。

素晴らしいことだ。

なんせルドラサウムが支配するこの地ではない場所で生まれこの地に来た。

あげく魔人にされてしまったのだ。

これはまるで喜劇じゃないか。

救われないな、本当に。

魔人になったからには、故郷に帰ることは最早出来ないだろう。

ならば、救いの手を差し伸べるのいいかもしれない。

別に本当に救えるわけじゃない。

まだたいした力も無い魔人が出来ることなんてないだろう。

だがこれから共に生きていくんだ。

出来る事はしてやるべきだろう。

そうして私はメガラスに右手を出す。


「私と共に来るか?」


本来こんなことは言わない。

だが、ある意味私のせいで魔人になってしまったようなものだ。

ならせめて、居場所や共にいられる存在になってやろうじゃないか。

メガラスは不思議そうにこちらを見ながら静かに手を伸ばしてくる。



「・・・・俺は何故ここにいるかわからない。何故魔人になったかも分からない。
魔人としては半端者だろう」


言葉を一度切り、こちらを見ながら、私の手を握る。


「・・・・・だが、こんな俺を必要としてくれるのなら共に行こう」


これは間違いなく当たりだと思う。

大当たりだと声を出したくなる。

意思があり、何より前へ進もうとしている。

誰かと共に歩こうとしている。

まだこの地についたばかりだというのに、
魔人として歩む道を選択したのだ。


たとえそれが、誰かに後押しされるような形でもいい。

どんな形でも生きようとするのは素晴らしい。

だからこそ、彼のために出来ることをしよう。

同情ではない。

私のせいで魔人になってしまった彼への罪の意識ではない。

私の心を打つように自分の心を口にしたのだ。

ならば、私はそれに答えなければいけない。



「ああ、これからよろしく。メガラス」


メガラスは困ったように頭をかしげながら質問してくる。



「・・・・俺は、お前の名をまだ知らない」

「そうか、すまないな。私の名はトロスという」

「・・・・トロスか、わかった」


どことなくメガラスが嬉しそうなのは気のせいだろう。

そして、手を放そうとしたとき、其処にもう一つの手がのせられた。


「おっと、俺様を忘れてるぜ。
メガラス、俺はケイブリスって言うんだ。分かったか?」


「・・・・・・」


メガラスは無言でケイブリスを見ている。


「なんか言えよ」

メガラスはただ無言でケイブリスを見続けている。

「いや、見てないでなんか返事してくれよ」

ケイブリスの声が段々小さくなっていく。

流石に可愛そうなので助け舟をだす。


「メガラス、なにか言ってやれ」


「・・・・メガラスだ。後輩としてこれからよろしく頼む」

「いやいや、別に全然いいぜ。ぜひ俺を頼ってくれ」


ケイブリスは嬉しそうに答えている。


なんせ、自分をバカにしない存在だからうれしいんだろう。


私を二人を見たあと静かに手を離す。


空は静かに風を吹かしている。


もうすぐこの風も感じられないだろう。


今のうちに風を体に感じるために、
瞳を閉じて立ちつくす。

魔王が変わるときは近いかもしれない。





















とある部屋の一室。




そこにいるのはドラゴン。




この地でたった一人しかいない女性のドラゴン。




彼女の名はカミーラ。




現在マギーホアの城に捕らわれている。




いや、捕らわれているという表現はおかしいかもしれない。




彼女はドラゴンにとって王冠的存在。




そこに彼女の自由はない。




ただ存在があるだけなのかもしれない。




そんな彼女は小さく呟いた。





「・・・私は所詮、籠の中の小鳥か」





そんな救いのない彼女の生活は一変することになる。




今まさに、その部屋に魔王が迫っていた。




その先どうなるかは、彼女次第である。













あとがき

今回はなんかgdgdになった感じがします。
もとの設定が分かりにくいのもありますけどね。
メガラスなんてアベルに魔人にされた以外分からないし、経緯書いてなかった。
カミーラとか、どうやって攫ってきたんですか?って言いたくなる。
あとメガラスむっちゃ喋ってますけど気にしないでください。
たぶん今回だけです。もしくはトロスにデレるときは喋ります。




すこし話は変わりますがメガラスって萌えキャラですよね?




だって、



    無口、クール、さびしがり屋、たまにデレる。




なんかメガラスをヒロインにしたくなりました。


次回はカミーラ魔人化編になります。
これもなんか変になるかもしれません。
せめてもう少し詳しい設定あったら嬉しいんですがね。


先が不安になってきました。



ちなみに魔人の中から1人消します。

てか最初から居なかったことにします。

消す人は決めてますけど、提案があればそちらに変える予定です。

提案ある方がいたら感想のほうに書いてください。

できるだけ頑張って書いていきたいと思います。






[18886] 第五話 カミーラはヒロインにはなれない
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/05/26 21:16




今回の話を読む前の注意事項。

今回の話は、

アベルがカミーラ誘拐→マギーホアが激怒→トロスにカミーラ(魔人化)を預けて、
マギーホア+ドラゴン族全員と戦闘→預かったけどどうする?
                     ↑
 ここから始まります。 


正直此処からじゃないとかけません。
魔人化とか、マギーホアとかキャラ的にも書けません。てかもとの設定が曖昧で無理です。
マギーホアとアベルも喋ったとこ見たことがない。KDなら別なんですけどね。
とりあえず、作者はアベル書きたくないんで、此処からアベルはまず出てきません。
アベルにはできるだけ早く封印されて欲しいんですが、その辺の時期はできるだけ変えないように進めていきます。
アベルよりさっさとスラルに行きたいです。

説明長くてすみません。
























腕の中にいるカミーラはトロスを睨みながらつげる。

「そろそろ私を離せ、魔人」

トロスはその言葉に従いカミーラを地面に下ろす。

「たしかに私は魔人ですが、あなたも魔人ですよ?」

カミーラは気高いドラゴンである。

彼女にとって自分はこの世に一体しかいないプラチナドラゴンという誇りがある。

だからこそ自分が魔人になったということは、心底不愉快極まりないものであった。

しかし、魔人だからといって自分を曲げることはない。

しかし魔人になったのは事実であるがため、トロスがいうことを否定できない。

「ドラゴンの御姫様、あなたは魔人という存在を理解していますか?」

トロスの質問に対しカミーラは答える。

「・・・魔人なぞ、魔王に従うだけの人形ではないか」

そう答えると、トロスは鼻でそれを笑った。

「何がおかしい?」

カミーラは自分を笑った目の前の魔人に怒りを覚える。

彼女は、これまで笑われたことなどなかった。

そのことが怒りをさらに大きくする。

「人形というなら、前のあなたとなにも変わっていませんけどね」

またもトロスは笑いながら言う。

トロスのいったことは間違ってはいない。

それはカミーラにも分かっていた。

自分の扱いが人形であると。

そんな日常が嫌だった。

だからたいした抵抗もせず此処に来たと言える。

彼女は探していたのかもしれない。

自分が自分で居られる場所を。

それを知らないでもないトロスは言葉を続ける。

「魔人は最強である魔王に従う。
だがな、人形じゃない。自分の意思で選択し魔王に従っているんだ。
この地上で、最強である我々魔人が人形であるはずがない」

トロスは手を前に差し出す。

「そしてお前は魔人だろう。
私と同じこの世で間違いなく最強の存在だ。
人形なんかじゃなく、自分という個人をもつ存在だ」

カミーラはその手を自然につかんでしまった。

これをケイブリスが言ったとしても、カミーラは見向きもしないだろう。

カミーラが手をとったのは、相手がトロスだからだろう。

トロスの言葉は間違いなく正解である。

だからこそカミーラは手をとった。

この先、魔人として生きるために。

魔人、そして自分がプラチナドラゴンという誇りを持っていくために。



「・・・・・そういえば、私はまだお前の名を聞いてなかったな」

「私の名前ですか。
私はトロスと言います。これから魔人として、どうぞよろしく」



「まあ、この先長い付き合いになりそうだからな。
よろしく頼むぞ、トロス」


二人は翼で飛んでいく。

そこは魔王が居る所からとても離れた場所である。

そして、メガラスとケイブリスが居る所。


そう、ここから始まるのだ、物語が。

それはとても長い物語。







ケイブリスの片思いという名の物語が・・・・・





















ここからトロス視点の日記風にして書いていきます。


AV?

仲間と合流。
ケイブリスはカミーラに惚れてしまったようだ。
カミーラを呼び捨てにしたら怒られた。
ケイブリスは一体どうなっていくんだろう?


AV0020
住みにくい場所を離れて今日から城造りだ。
カミーラは自分の部屋のために張り切っている。
ケイブリスはカミーラのために働きまくってる。
ただ、その姿をみてカミーラは、「・・・キモい」
と言っている。
がんばれ、ケイブリス。



AV0021
城の地下に部屋を作ることにした。
結構楽しいと思う。


AV0025
アベルはまだ戦っている。
私個人的には、もう死んで欲しい。
この願いは魔人全員が思っているみたいだ。


AV0030
最近ケイブリスが私と同じくらい大きくなった。
力も付いてきたんだろけど、魔人の中では最弱のままだ。


AV0040
魔人全員でドラゴン狩りという遊びをすることにした。
ルールは簡単。
誰が一番ドラゴンを多く狩れるかというもの。
結果は皆似たようなものだった(ケイブリスを除く)


AV0050
アベルしぶとい。
さっさと死ね。




















AV0056

ラストウォーが終結した。

どうやらアベルは殺されず封印されたようだ。


「どうすんだよ、アベル生きたまんまじゃねえかよ」

ケイブリスが愚痴を言うが今はどうでもいい。

「マギーホアは私が予想した通り頭がよかっただけだ」


その言葉にカミーラが反応する。

「予想通り、ということはこの先のことも分かっているのか?」


「いや、私にはわからん。
マギーホアの心しだいで全部変わる。
だが、結果は変わらない。我々はただ待てばいい。」


「・・・・・俺はトロスを信じるだけだ」

「頭が悪い俺にはどうしようもない。
だったらトロスに任せるぜ」


「意見も無いしな。トロス、この後我々はどうすればいい?」


私に全部を任せる、か。

なら時がくるまで待つだけだな。

「全員地下に移動。
まあ、移動といっても5年後くらいでいい。
それまでいつも通り過ごすだけだな」


城から見える空は綺麗だった。


外の音は何も聞こえないほど静かだった。
































AV0059


ドラゴンが大陸統一国家トロンを建国したらしい。

恒久平和を求めてのことらしいが、ありえない。

そんなこと、創造主が許すはずがない。

「所詮、最初から完全なドラゴンに争いを求めることが難しい。
だからこそ、結果は目に観えていた。」

一人、なにも無い処で呟く。

世の中はそうできているのだ。

もとから決められている。

世界に平和なんて訪れることはない。

それがこの世界の法則である。

もし、平和が訪れたなら、それは破壊されるだろう。

「もちろん、この世界を作った神によって・・・」























AV0061


平和、私はこれが嫌いだ。

物の本質である生きることを邪魔しているようだ。

生きようとする事、死にたくないと願うこと、抗うこと。

全てに対して邪魔なのだ。

平和は成長を無くす。

まあ、ドラゴンは元々完成した生き物だ、ならば成長や進化しないだろう。


「つまらない、そろそろ動いてくれ、創造主よ・・・」

一人で夜空に呟いた一言のはずだった。

だが、それには返事が返ってきた。

「創造主もそんなこと言ってたよ。
だから君の願ってることは、もうすぐ現実になるね」

後ろを振り向く。

そこに居るのは、本来ここには居ないはずの存在。

赤いフォルムを身にまとい、絶対的な力を持つ存在。

「超神ハーモニット、何故あなたのような存在が此処に?」

「ああ、そうか。やっぱりあの時は意識があったんだね。
失敗したな~、こんなことなら最初から一級神にしとくんだった」

「それは、あなたが私を拾った時ですか?」

「そうだよ、永遠の八神の残りカスを入れたのは僕だからね。
でも、まさかプランナー達まで君に興味をもったのは予想外だよ」

「でも、私は感謝していますよ。
とくに、最初に私を見つけてくれたあなたには」

そう、あの場でプランナーに見つけられたわけではない。

最初に私を見つけたのは、このハーモニットなのだ。

そして、あの場に運ばれた。

目の前にいる超神は残念そうに私を見つめる。

「プランナー達のせいで君が神になる可能性はなくなった。
残念だよ、あの八神は正直あんまりいらないんだよね。
君に引き継ぐのが僕的にはよかったんだけどな・・・・」

「それは申し訳ないです。
しかし、私はあなたたち、超神のコマみたいなものですけどね」

すると超神はすこし顔を上にあげて喋る。

「ああ、そのことで話があったんだよ。
実は今回のことで創造主が怒ってね、もうすぐ4級神のドラゴン狩りが始まる」

空はだんだんと音をおおきくしていく。

ここからでは見えないが、空になにかいるのだろう。

「こっちには来ない様にしてるんだけどね。
今回の様なことは今後起こしたくないのが3超神の意見なわけだ。
そこで、君にはコマとして働いてもらいたいんだ」

「拒否する気はありません。
それで私はなにをすればいいのでしょう?」


「一番の問題は魔人なんだ。
だからプランナーは君に対してのみ、魔王の絶対命令権を無しにするって言ってる。
最悪、魔王を君が殺すって事だね」

なんともすごいことを言う。

魔人に魔王を殺せと言うのか。

魔王と魔人はスペックからして違うというのに。

「君が何を考えているかはわかるよ。
それでも、君が負けるはずがない。
なんせ、3超神が力を貸してるんだからね」


「ならば、その命をお受けしましょう。
つまり、この世界を創造主が楽しめるように調整しろということですね?」

「その通りだね、僕とか神は基本的こっちに来ないから。
話はこれくらいだね、それじゃ僕は戻るよ」



「はい、それではまた、会う機会がありましたら」


頭を下げる。

体を浮かせ、空に飛んで行こうとするハーモニットは思い出したかのように振り替える。

口を歪め、笑うようにしてしゃべる。



「そういえば、君の元の祖体ってなんだろうね?
僕たち3超神があれだけしても、本体である君には全く問題ない。
僕にはそれが気になって仕方がないよ」


それだけ言うとハーモニットは去って行った。


「私の原型?はッ、そんなもの分かるわけがない。
私は、あのラサウムに劣るほどの存在なんだから」













その日、この地上に天使が現れた。



それはこの地上を洗浄するために現れた。



主である創造主の願いにより、この地からドラゴンは、ほとんど消えることになる。



これにてAV暦は終わる。



そして、ローベン・バーンは新たなメインプレイヤーを創り出す。



一番目は、遅すぎる成長のせいで失敗。



二番目は、初めから完璧すぎたが故に自滅。



三番目は、失敗ではないが、増えることはない。




ならば四番目は?



簡単なことである。



ある程度早く成長し、不完全、個体数を多くし、寿命を減らせばいい。



結果、第四番目のメインプレイヤーの完成。



今後の主役とも言える、人間の完成である。

















あとがき

かなりgdgdな感じになってます。
これも全部アベルのせいです。そうに違いない。




カミーラに対して魔人を強調したのは、

四級神のドラゴン狩りから逃げるためです。

魔人なら攻撃されてないだろうっていう作者の考えで書きました。

カミーラは特に情報がないキャラの一人です。

ですので、書けることが無いというのが正直なところです。




無敵結界は今はまだ無いのでいいですが、

絶対命令権を無にしたのは、ジルとかガイの時、

矛盾がないようにするためです。

この辺も設定がおかしいので、作者は勝手に変えていきます。



トロスの正体ですが、分かったら神です。
ハーモニットは別に知ってるわけじゃありません。



いきなりAVを終わらせたのにも理由があります。

このドラゴン狩り、本当だと600年くらい続きます。

その際、皆なにしてんの?

ということになるんで終わらせました。




次回からスラルの時代になるんですが、


ここも設定が微妙なので、出来れば皆さんに決めてほしいのですが、

魔王スラルは男か女かはっきりしてません。

もとの設定では男だったけど、女に後から変えたらしいです。

作者は別にどちらでもいいですが、好きなほうを選んでください。

多いほうで書いていきます。


それでは、これからもよろしくお願いします。



まあ、たぶん女性を選らぶことになると思いますが、よろしくお願いします。



[18886] 第六話 魔王少女スラル・・・・・にはならない
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/05/29 14:41





今回からスラル編に突入です。

ただ、この魔王も残ってるのが設定ぐらいで詳しいことはわかりません。

ですので、このスラルは作者の妄想?の塊みたいな感じです。

読者様の予想したスラルとは、まったく違うモノの可能性があります。

それを含めたうえで、この作品を読んでください。



















完成した魔王城。


無駄に大きい魔王のための部屋。


今そこには、大量の本が散らばっている。


それらの本の多くは、マギーホアが所有していた本でもある。


人間というメインプレイヤーの登場とともに、歴史というものが記されることになった。


今回の魔王は人間である。


力はないが、知識を多く持つ魔王となった。


そのため、今までの歴史に興味を持った。


今まで誰も気にしたことはなかった。


否、トロス以外というのが正しいだろう。


トロスは創造主のために世界を保つため、スラルに知識を与えたかった。


そのために、わざわざ文献を魔王に渡していった。


魔王にとって、文献や歴史というのは素晴らしいものだった。


自分には知識しかない。


それが今の魔王の考えであった。


しかし、調べていくうちに思った。



(私は死ぬのだろうか?)



こんな疑問を持ったのは、歴代の魔王の資料を見たからである。


人間という自分よりも、遥か遠い存在である歴代の魔王。


その全てが、寿命などではなく、他者に殺されている。



(死にたくない)



それが彼女の中に渦巻く感情となっていく。


もとが人間であるスラルは死というものに恐怖した。


死というものが怖くて仕方がない。


本来の魔王の考えではなく、人間のような思考だっただろう。


だから彼女は探す。


この世で最も強いとされる魔人を使って。


自分を最強にしてくれるような存在を。


自分を死なない様にしてくれる存在を。


求め、ただ飢え欲した。


自分自身で、あらゆる文献をあさり、読み、調べつくした。


そして、少しの希望を見つけた。


そこに何があるかは分からない。


だが、可能性があるならそれに縋り付く。


それほど、彼女のなかで死という言葉は重いものになっていた。


だが一人で行くのは危険である。


だいたい、これに記されていることだって、本当かどうか分からない。


だから、彼女は呼ぶ。


自分が最も信頼し、魔人の中において、最強だと言える人物を。


そして、到ってみせると誓う。


そこはとてもじゃないが、人間である彼女では届かない存在が居る場所。


彼女の創りし存在が君臨する隠された神殿。





「超神、プランナー・・・・・」





ひとり呟く彼女。


そこに希望があるからこそ、彼女は縋り付く。


ただそれだけを、追い求めて、ここまでたどり着いた。


本来、その存在には気付かない。


だが彼女は諦めなかった。


それは、もとが人間である彼女だからできたことかもしれない。


この世において、最も欲が深いのは、人間なのだから。
























「何故分からないんですか!ケイブリス、世の中は力だけでは生きていけないんですよ!」

「魔王さま~、許してくれよ。
俺は考えるのは苦手なんだよ、そんなのトロスに任せてればいいじゃないですか」


身長てきには、あまり変わらないケイブリスとスラルが言い合う。

これについて簡単にいってしまうなら、教育だ。

スラルはケイブリスの頭の無さが許せないのだ。

ケイブリスは、もともと考える事をしない。

直観的に動き、行動する。

これがケイブリスのいい所であるが、欠点でもある。

スラルはスラルなりに、ケイブリスの心配をしているのだ。

この魔人の中で最弱の存在が死なない様に、生きる術を教えようとする。

しかし、ケイブリスにとってこれは邪魔でしかない。

いつもこれで生き抜いてきた。

それがケイブリスの強さである。

日々進化していく丸い者であるケイブリスに過去は存在していないのだ。

軽く言い争った後、スラルは、コホンと咳払いして魔人の方を向く。



「失礼、取り乱してしまいました。
今日もいつも通りでお願いします」


いつも通りというのは、探索のことだ。

「カミーラとメガラスは上空から。
ケイブリスは、そこらへん適当に走って探しなさい」

ケイブリスの扱いが別に酷いわけではない。

ただ、飛ぶことも文献を読むこともできない。

故に出来る事が限られているだけなのだ。



「トロスは私と此処に残ってください。話したいことがあります」


「・・・・・」

無言で退室するメガラス。


「・・・・・」

カミーラもなぜか、無言で退室する。


「了解、魔王様」

ケイブリスは勢いよく走りながら扉を開け放ち、飛び出していった。











扉が閉じられる。

静かになった空間で、スラルは静かに口を開く。


「トロス、あなたは、超神という存在を知っていますか?」


ここでトロスはyesと答える事もできた。

だがそれは後々面倒になると、トロスは考えていた。

だからこそ、嘘をつく。


「いえ、初耳ですね。その超神がなにか?」


冷静に、静かに、悟られぬように答える。


「・・・あなたには、私の望みを話しました。

超神とは、その願いを叶えられる存在なのです。

私は皆を使って、ある場所を探していたのです。

超神がすまう神殿。その場所だけを」



トロスはすこし考えるようにして、質問する。


「しかし、我々はそんな場所を見つけた覚えはありません。

その話をしたということは、手がかりでも見つけたのですか?」



スラルは笑顔になりながらそれに答える。

「やはり、あなたは頭がいいですね。
だからこそ、魔王から魔人トロスに命令をします」


一息ついたあと、スラルは真面目な顔をして告げた。



「私が示す場所にトロス単体で行ってもらいます。
そこで超神を見つけたなら成功だと言えるでしょう。
決して死なず、私の元に帰り、成果を報告してください」


トロスは頭を深く下げ、目の前にいる小さな魔王に返事を返す。


「了解しました、その命を全て完璧に仕上げて見せましょう」


スラルはそれを見て、微笑んだ。


「決して、死んではいけませんよ。
あなたは、誰のものでもない、私の魔人なのですから・・・」


そう言ってスラルはトロスを抱くように手を回す。

愛するように、その胸に顔を埋める。


「あなたも、メガラスも、カミーラも、ケイブリスも。
誰にも、譲れない私だけの魔人です」


「確かに魔人は魔王のものです。
しかし、そこまで言うと、なかなか欲張りですよ?」


そんな言葉にスラルは微笑んで返す。


トロスの胸から顔をあげながら、したから除きこむようにして答える。


「当たり前でしょう。なんせ私は、人間の魔王ですから」















欲が強いのは人間。



この世で最も欲があるとされる生物。



だが、だからこそ、それは強いのだろう。


なにかのために強くなり、戦う。



この魔王も同じなのだ。



自分が死にたくないから、という欲を持つが故にそれを求める。



独占欲もある。


ならばそれは、最弱にあらず。


この時も、そしてこれからも、



このスラルという魔王は歴代最弱なのではない。



歴代最強というわけでもない。



ただ一つだけ言うのならば、この魔王スラルは間違いなく。



人間のような魔王であり、魔人のことを考え、心配する。



本来魔王には無い、やさしさから来る、魅力という力を持つ魔王なのだ。



強さにおいての魅力はどこにでもある。

しかし、強いだけではなく、カリスマも必要になるだろう。



それに比べスラルは、ただやさしさの魅力を持つだけである。


それは、カリスマなどいらない。また別の力といえる。



それを持つスラルが最弱?ありえない。


ここからは、彼女のための物語なのだ。


それは誰にも邪魔できない。


たった500年という魔王にとっては短い生。


それをスラルはまだ知らない。


知る必要がどこにあるといのだろう。


今を生きる事が望みである彼女にとって、そんな事はどうでもいい。


それほどまでに、彼女は気高く、強いのだ。


誰も、彼女が生きた証を、邪魔できない。


それが神の暇つぶしのために生まれたからだと言っても関係ない。


大事な事は想いだ。


その心までは、たとえ神といえど、操ることなど出来やしないのだ。














あとがき
魔法少女系の可愛い感じで書くときもくるでしょう。
だけどスラルにだってカリスマっぽいなにかがあってもいいじゃないですか。


次の話しでは、まだガルティアとかケッセルリンクは出てきません。
ただ、この二人が魔人になった経緯がないんですよね。
ケッセルリンクはなんか、スラルにお願いされたから、
みたいなことは聞いたことあるんですけど、もう一人はいまいち分かりません。
ですので、かなり妄想が入った話しになるかもしれません。
なんか希望とかあったら、感想の方で意見を頂けたら、と思います。






[18886] 第七話 ラ・バスワルドの服はどうにかならないのか?
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/06/27 00:40
飛ぶ、ある一点を目指して飛ぶ。


そこは、誰もが侵入できるような場所ではない。


一定以上の力を保有していなければ、まず生きて此処を出る事は出来ないだろう。


一つの扉を見つけ、そこに降りる。


なんの仕掛けもないようだが、当たり前かもしれない。


ここにはまだ大した仕掛けもされていない。


人は侵入すら許されず、強者とてこの場所を知ることはない。


だが、それでもたどり着くものはいるのだ。


それこそが、本当の強者。


知識、力、全てを備えてここまで到る。


それでこそ、神と謁見する資格があるというものだ。


扉を開き、トロスは進む。


たとえ魔物が出てこようと、魔人の相手など務まるわけがない。


眼前の魔物を自らの爪でなぎ倒す。


その爪が触れただけで、魔物はただの死体に変わっていった。


そして、たどり着く。


今まさに、再開の時。


トロスはその場に足を踏みいれる。


そこに居たのは超神。


金の色の体を持ち、こちらを見下ろすような形で其処に存在していた。



「やっと、再び会う機会がきたね、トロス。
僕は予想以上に君が成長してくれて嬉しいよ」

「それはなによりです。そして、あなたに感謝を。
貴方方超神が居なければ、私は今この場に存在することすらできていないでしょうから」



再開。その相手は絶対的立ち位置にいる超神。


魔王、それらの全てを作りし者、超神プランナー。














「そんな事は別にいいよ、君が役割を果たしてくれたらね。

それに、君が此処に来た理由もわかっている。魔王はいつでも此処に呼んでいいよ」


「わかりました、では早速呼んできます」



だがプランナーは思い出したかのようにトロスを呼び止めた。


「おっと、忘れてた。ローベン・バーンから貰い物があるんだよ。

来てくれ、ラ・バスワルド」


何も無い其処から現れたのは、異常なほど違うものだった。

目の色は違い、生きているという感じがしない。

それの名はラ・バスワルド。

ローベン・バーンの部下である第二級神。



「お呼びですか?プランナー様」


「ああ、君が創ったアレを彼に渡してくれ」


そう言うと、ラ・バスワルドは、腰に差していたそれを差し出した。


「貴方がトロスですね、どうぞこれを・・・」


「・・・・・これは?」


トロスは受けとったそれを見ながら呟く。



「それはね、ローベン・バーンがラ・バスワルドに創らせた武器だよ。

それは君にとってこれから大事な物になるからね。

だからこそ、破壊と無の神であるラ・バスワルドにそれを創らせた」



手に取ったそれは、白もしくは銀のような色をした物。

その見た目は間違いなく刀であった。



「それにね、ラ・バスワルドが創ったからこそ、特殊なオマケが付いてるよ」


「そのオマケとは?」



「付与っていうんだけどね、その刀には特殊な物を付与できる。
まあ、付与っていっても、ある程度力があるものじゃないといけない。
君は付与が出来るようになるけど、それには条件がある」


「その条件とは?」


「使途、もしくはそれ以上の力があるものでなければ意味がない。
だから、君がそれで魔人を切れば、君の意思で付与するか魔血魂になるか選べるよ」



プランナーはニヤニヤ笑いながら言ってくる。

これは素晴らしい物かもしれない。

だがこれは、可能性を持ち過ぎているのだ。

プランナーは言っているのだ。

最終的に、お前が魔王を切れ、と。

最後はお前が全て決めろと。




「そして、もう一つ教えてあげるよ。
普通、そんな物を付与することなどできない。
仮にできたとしても、元が壊れるだけだ。
なら、それは何を使ったんだろうね?教えてあげなよ、ラ・バスワルド」



「・・・それの材料は、主にククルククルの亡骸より創ったものだ」


静かにそうラ・バスワルドは告げた。

そう言われればそうかもしれない。

なんせこの刀の色、存在からして違うのだ。

本来誰にも扱えない刀。

これを扱えるものがいるとすれば、それは刀と持ち手に絶対的信頼がなければ不可能。

だからこそトロスは使えるのだ。

他の誰でもない。それは使えるのはただ一人。



トロスは刀を見ながらラ・バスワルドに礼を言う。



「ラ・バスワルド、あなたに感謝しよう。
この礼は、いつか必ずしよう」


ラ・バスワルドは、いらんという感じでこの場所から消えていった。


「さあ、魔王を呼んできてくれトロス。
まあ、呼ぶ前に、遣りたいことがあるなら先に其方を優先すればいい」


静かに告げるプランナーにトロスは感謝する。

何も言わずトロスは足を動かし外へ出る。

手に持つ刀で眼前のモンスターを切り捨てる。

その切れ味は例えるものが無いほどだった。


いつまでも切れ味は落ちず、刃こぼれすらしない。

あたりを赤に染めても刀は白いままであった。

遂にトロスは外へ出る。

そして、背中にしまった翼を広げる。

向かう先は魔王城ではない。

大きく翼を動かし空へと飛んでいく。

目指す先はただ一つ。

其処はトロスにとって悲願が叶う場所である。

今の魔王の為でもない。

前の魔王の為でもない。

ただ一人、トロスが主と認めた魔王ククルククル。

その魔王の為に。

復讐、弔い合戦でもいい。

ただトロスはそれをするために、飛ぶ。




「私の予想以上に事が進んだ。ならば、他の誰にも譲らない。
ただ、私の願いの為に殺す。この刀でお前を殺す。
私がククルククルの敵を取る。彼の生を埋葬しよう」




行き先はもうすでに近くにあった。

マギーホアがかつて住んでいた城。

エンジェルナイトによって壊された跡がそのまま残る城。

その地下へと。













カツン、カツンと音がなる階段を下りていく。

流石のエンジェルナイトもここまで見つけることはできなかった。

トロスはただ無言で地下を下りていく。

マギーホアが封印したアベルが眠る場所へと降りていく。



「やっと、私の恨みを晴らす時が来た・・・」



そう言いながらトロスは腰に差した刀を抜く。


床に倒れ伏しているのはドラゴン。


目も開けず、ただ息をしている。


それにトロスは刀を掲げて近づく。


そして、力に任せて刀をアベルの首に叩きつけた。




辺りに血が飛び散る。


ただそこには、首を失ったアベルの体が在るだけであった。


あまりにも哀れで、虚しい。


それが、かつての魔王の最後であった。



「やっと、終わった」



手に持つ刀を見つめる。


刀の刀身は赤く染まりながら、なにか音を出していた。


その音は、まるで飲み物を飲むような音。まるで血を飲んでいるようだった。



「そうか、付与ができるんだったな」



いまだ赤に染まった刀を見ながらトロスは呟く。


「元魔王アベル、そのすべてを付与」



刀は主の声を聞いたかのように動く。


刀は光りながら、その血のすべてを刀に浸透させていく。


やがて、光は消えていき、刀は反応しなくなる。


その刀は前の様な色ではなくなっていた。


柄は元の白であり銀であった。


ただ、刀身はその身を赤に染めていた。


そしてゆっくりと、赤に黒が混じっていく。


赤黒く染まった刀身は、正しくラ・バスワルドが創った物と言えるだろう。



トロスは興味を無くしたかのように刀をしまう。


刀に興味を無くしたわけではない。


ただこの場への興味、アベルへの思いが無くなったのだ。


再び階段を上る。


過去の遺恨はなくなった。


ならば次は未来へと目を向ける。


今、トロスの頭に浮かぶのはか弱い魔王。


それが超神となってどう変化するのか、その先の可能性だけを見る。




行き着く先は創造主だけ。



それだけではつまらない。



創造主は舞台を観てもらう観客である。



ならば観客を喜ばせるのは裏方の仕事である。



要は仕事をどう楽しんでするかが問題なのだ。



トロスに仕事という感覚はない。



だが、トロスは間違いなく、今の立場を楽しんでいた。



見るだけではなく、行動することが大事。



そこに超神がいようと関係ない。



舞台を観るモノと演出する者。



それは喜びの形が違うかもしれない。




アベルやスラルは創造主にはどうでもいいだろう。




トロスにとってそれはどうでもいいことではない。



決定的な違いはどこにでもある。



今回は創造主とトロスだったというだけ。



力の差は関係ない。



ただ、もしトロスが演出に失敗したら死ぬだけ。



トロスはそれすら楽しむ。



その可能性とて無いわけではない。



可能性、その言葉こそトロスが楽しむ要因である



楽しむというより、トロス自体が可能性の塊なのだ。



トロスの存在は可能性から創られたものだ。



故にトロスは可能性の魔人なのだ。




無限にある可能性、その全てを見続けたい。



それを願い続ける魔人。



その願いが叶うことすら無理かもしれない。



だが、叶う可能性もあるのだ。



どんな事でもやり遂げられる。



そんな魔人であるトロスに、他の魔人が勝てる要素など存在しない。



勝てるという可能性すら存在しないのだ。



















あとがき




gdgdが続いてしまった今日この頃。
ラ・バスワルドについては登場させる気はありませんでした。
登場させたのは、人間側に就かせるためです(ランスの頃まで出番なし)
勝手に暴れたらそれこそ人類オワタですからね。

刀についてはトロスのためでもあります。
この先、魔法とか攻撃方法ができても、それまで「爪」のみじゃ可哀そうなので。


付与については知りません。
闘神都市Ⅲでは付与の結果、主人公がナクトから剣になりました。
この作品ではそんなことにはなりませんが、強化されていきます。
付与の仕方が特にわかりません。
ハンマーで叩いて付与したり、軍師の付与とかもあるんで、
魔人風の新しい付与の仕方ってことにしました。


可能性という言葉の捉え方は人それぞれです。
日本語自体、捉え方は人それぞれでしょう。
言葉は本当に難しいです。



刀の名前とかどうしましょうか?
そのまんまで「ククルククル」とか「クルクル」なんて可愛いと思います。

もしくは中二病的なのでもいいんですけどね。





次回はケッセルリンク書いてみようと思います。

無敵結界とかは飛ばします。

そもそも無敵結界について何を書けばいいか作者にはわかりません。
御免なさい。







[18886] 第八話 ケッセルリンクは女性でおk 前編
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/09/12 08:55




「……ハァ、ハァ、……ふぅ」


荒い息をしながら男は近くの気に背を預ける。

男は息を整えながらゆっくりと眼の前の女性を見た。


「へ、へへ。絶対に、言うものかよォ……。
こんな事は絶対に教えてやるものか。教えるわきゃぁねぇ」

男は体を震わせながら自身の体を抱くようにして腕を抱いた。

それは恐怖?それとも悲しい事でもあったのか?


否、そんなもの微塵も感じていない。

今この男を支配しているのは歓喜。

圧倒的な歓喜。
それは誰にも止められないほどの感情の流れ。




それを発見した男は歓喜した。

ただ襲っただけだった。

ただ犯しただけだった。

彼女の全てを蹂躙しただけであった。

その時、男の興味を引く現象が起こった。


それは変化だ。

ただ色が変わった。
その額に埋まりし宝石の色が変わった。

男はそれに魅せられ手を伸ばす。

下にいる女性の事はお構いなしで手を伸ばす。

彼女がどんなに拒否し、抗おうと無駄。

そんなチンケな力でこの男を止められるわけがない。

今この人間を支配しているのは好奇心という感情だけ。

それは時に身を滅ぼすほど絶大な力を持った感情なのだ。

故に必然。

彼女がその額から宝石を抜かれる。

色が変わった宝石を手に取った瞬間、彼女は死んだ。

だがそれにも眼もくれず、男はただ手の上に在るソレを見つめる。

それを、男はごく自然な動作で、そのまま手のひらに叩き付けた。

何を思ったかは分からない。

それはこの男にしかわからない。

まるで使い方を知っていたように、男は自然にソレを使用した。

その時、男の人生が変わった。

力も、何もかもが変わった。

以前の自分とは比べようもない力。

だからかもしれない。
男が馬鹿なことを思ったのは。

何故これだけで満足しなかったのだろう。

それが人間。欲望こそ満たす事が無いのが人間。

故に、男は思った。


(もっと、欲しい)と。


愚か、欲が過ぎたがためにこの男の命運は決まった。




そして、男は念願の二個目のソレを手に入れ、木に体を預けていた。

「これで、完璧だ。俺は、このクソッタレな世界で、生き残れる。
いひひひひ。ざまぁみやがれ。俺は、生き残る……!」

なんて様だろう。

せっかく誰もしらない事を知り、
この時代において間違いなく最強のアイテムを手にしながら、
彼は最後に慢心した。

最後まで眼を滾らせていればいいだけの話だったのに……


「……ならば、私は最高の憎悪を剣に籠め、汝にこれを突き刺すとしよう」

そんな女性の声がした瞬間、男の咽に銀の色をしたものが突き刺さった。


「!? ッガハ、ヒュぅ。 ぐそ、な……」

言葉でない。

出せるわけがない。

その潰れた咽からは血が吹き出て、言葉を成そうとする事は不可能だ。

それを分かっていない男は必死に声を出しながら、手を伸ばす。

喉にソレが突き刺さった状態でも、男は体を前に動かし手を伸ばす。

その女に、聞き取れない呪詛を吐きながら近づこうとする。

それほどまでの執念。

生きたい、死にたくないという想い。

だが想いだけで人は生きられない。

男はそのまま何も成し得ぬまま、事切れた。



「……すまない。我が同胞よ、救えなかった私を許してほしい。
せめて、私からたむけとして最愛の炎を君に送ろう」

カラーの死体に火をつける。

これ以上その姿を此の世に残さないために。

「またか。また私は救えなかった。
でも、諦められない。私がしなければ、一体誰が救えるというのか…!」


剣、レイピアと混合したような剣から血を拭いさり彼女は鞘に納める。

そして手を力一杯握りしめる。

無力な自分を呪いながらも助けるという行為を続ける。

それは自分が他の者よりも力があるから。

それは自分の価値観の違い。

カラーである彼女は常に自らを騎士としていたかった。

なのに同胞を守れず、その刃を捧げる主君すら見つけられない。

その姿を騎士と言うにはあまりにも無様だった。



「……本当に、何故だろうな。
もしかしたら、お前以外の誰かがするかもしれない。
もしかしたら、お前がしていることは無駄かもしれない。
ならば何故、何故救おうとする?
その小さな手につかめた者などなにも無かったではないか。
誰も救えず、何もできず、自分を過信した騎士よ、
お前は何故その行為をやめないのだ?」

声がする。

彼女がこの声を聞くのは初めてではない。

そしてその姿を見たことも無い。

ただ声しか聞こえない。

探そうとしても見つからない。

決して見つける事はできない。

だがその声の主は彼女を傷つける事もなくただ疑問をぶつける。

そのほとんどが正論。

彼女が言い争いで勝てたことはなかった。


「……ふん、知りたいのなら私の前に姿を現せ臆病者め。私がこの手で葬ってやろう」

「その言葉は答えられないといっているようなものだ。
だいたい、私が姿を見せずとも君が探せばいいだけの話だ。
まあ、それすらできないからそうして虚空に叫ぶことしかできない。
まさしく今の君だ。無力な自分を嘆き謝ることしかできない。なんとも哀れじゃないか」

まさしく正論。

彼女がいくら言おうと姿なき者は気にもしない。
ただ平然と言葉を返すだけ。
罵詈雑言を吐いたことはないがそれでも相手が怒るというのが想像できない。


「私が、私があのカラー達を救わなくてどうする。
まだ秘密に気づいたものは少ないが確実にいるのだ。ならば救わなければならない。
どんな事をしても、相手を殺してでも助けなければいけないのだ」


「救う?今まで誰かを救えたのか?
少なくとも私が見たのは君が死んだ同胞を火葬したところしか見ていない。
それに君はどんな事をしてでもと言ったがしていないではないか。
どんな事でもするならどんな手段を用いてでも力を手に入れろ。
さすれば今よりかは救える者が増えるぞ」

これもいつも同じような会話。

所詮行き着く先は彼女の負けと決まっている。

「それは私ではない。
私が私の力をもって成し得るから意味がる。それこそ騎士ではないのか?
正義を掲げて戦うのはいけないことなのか?
同胞を救おうとする私は正義ではないのか!?」

問いかける。
ただ問いかけなければいけない。

その答えによっては、今までの自分が破壊されてしまいそうだから。
心が弱い彼女は聞かずにはいられない。


「問いかけに焦りが混じっているぞ。まだまだ青いなぁ。
だから何も救えず、何も成し得ないのだ。
騎士についてはしらんが君が騎士と言うのなら君は騎士なのだろう。
だが、正義など誰が決める。君が行っているのは殺人だ。
それを正義と言うのか?
救うためなどと理由をつけて自分を保護しようとしている。
所詮君は自身の意思で救おうと思ったことは無い。
ただ自分が騎士だから、騎士でありたいから救うんじゃないのか?」

「……ッツ」

反論できない。

彼女は分からなくなってしまった。

何が正義で、騎士で、自身の意思で、正しいことなのか理解できない。
もう頭がいっぱいで何も入らない。

今までの自分が否定された様であった。

今までになかった会話。

それによって彼女は変わろうとしていた。


「……ッ、ならば、ならばどうすればよかったのだ!
私は騎士としてどう生きればよかったのだ……!」

「知らん。まったくもって知らんよ私は。
それは君が決める事だ。少なくとも私は色々と言っているが君の生き方は正しいと感じる。
後は君が君を認めるだけだ。
答えを出すのは君だ。私から言う事は今はもう無い、自分で答えを出せ」


何故かその声の主は助言的な事を言って消えた。

姿見えずとも分かる。

それが毎晩のように続く行為だから。

それは彼女が答えを出すまで決して終わることは無い。













某所。

誰にも知られることなくその青年は剣を研ぐ。

小さな小屋の中で剣を研ぐ。

その意思はたった一つのために動く。

復讐という火種をもって点火された彼の心はもう止まらない。

復讐を成し得るまで、その体も心も止まらない。

止めるためには殺す以外ないだろう。

そんな少年が、暗闇に話しかける。


「……アンタか、何の用だ?」

その問いに、暗闇から応えが帰ってきた。

――そうか、君はそれを選んだか……。
本当に、それを選んで後悔はしないのか?――

「それは、愚問っていうんだぜ。
これでいいんだ。後悔するわけがない。
こんな事する切っ掛けをくれたアンタには感謝している。
真実を教えてくれたアンタは、一体何がしたかったんだ?」

――何も。ただ君がどうするか知りたかった。
だから君の兄の本当の死因を教えた。
その結果がどうなるかを知りたかっただけだ――

「きひひひひ、やっぱアンタはおかしいな。
だが、そのおかげで俺はこうして復讐できる。
兄貴の仇を、たった一人の肉親の仇をとることができんだからよォ」


――……君の兄は、カラーの女性を犯し殺した。それに対して殺されたのに仇を討つのか。
それでいいのか?君の兄はやってはいけないような事をしたんだぞ?――


「アンタからそんな事が聞けるとは思わなかった。
だが応えるよ。兄貴はさ、俺を守ろうと力が欲しかったのさ。
いつでも生を願い、この俺達を産んだクッソタレな世界が嫌いで、見返す力が欲しかった。
なら、殺された兄貴じゃなくて、そうさせた世界の方が、俺は憎くて憎くてしょうがない。
だから、殺した相手を殺して兄貴に対して最高の土産を用意してやんのさ」


――なるほど、君は私ともかなりズレタ考え方をもっているようだ。
だが、相手は強敵。死ぬかもしれんぞ?――


「それなら兄貴の所に行くだけさ、それならそれでいいんだよ」

――誰かが言った。殺し合いは終わらない。
殺った殺られたを繰り返しているから殺し合いは終わらない。
だから誰かが相手を許さなければおわないと。君は相手を許さないのか?――


「はぁ?馬鹿じゃねぇのソレ言った奴。
そんな事言えるのは殺られたことがねぇからだ。許すのは相手に対する気持ちが弱いからだ。例えば愛する人、誰でもいい。恋人、妻、妹、姉。
彼女らが見知らぬ男に犯されてぐちゃぐちゃにされて、殺されて、それで相手を許せるか?
それが、俺にとって兄貴だっただけ。そこに正義なんてない。
ただ、この想いを治めたくて、相手をぶっ殺したいだけだ」


――君の兄が殺した相手にも家族がいたのかもしれない。
だから復讐をした。それでも君はその相手に復讐してもいいんだな――

「その通り。それは仕方ないことなのさ。
それが人間の関係。いや、これには人種とかそんなのは関係ねぇ。
もしそれに正義を掲げる連中がいたら笑ってやらぁ。
そいつらは自分達が同じことをしてるのに気付かないクズだ。
自分だけは正しいと心から信じてる狂人なのさ」

――……そうか、そこまでいうなら君が辞める事はないだろう。
ならば、頑張ってくれたまえ。相手は強いのだからな――


長い喋りが終わり、彼は一息ついた。

もはや其処に先ほどまで相手をしていたモノはいない。

彼は自身の剣を見ながら呟く。


「心配したのか?いやねぇな。アイツは俺がこうなることを望んでた。
きひひひひ。だってこんなもんだって置いていくんだからなぁ」

それを手に取り眺める。

それは綺麗な蒼の色をした宝石。
彼の兄が初期に持っていたもの。

彼は兄と共に闘う為に、その宝石を使うことにした。














「ふぅ、喋るだけというのも疲れる。
そろそろ、私自身が出る時なのだろうな」

椅子にすわるのは魔人。

たった一人の魔人が椅子に座っていた。

「あれ?トロス、何をしているのですか?」


トロスが座っていた部屋の扉をあけるのは魔王スラル。

何処か幼げで、か弱き少女の面影を残した魔王が問う。


「もうすこしで、もうすこしで貴女に仕える者が増えるかもしれません」


「え?それってどうゆうことですか?」

分かっているようで分かっていない魔王は問う。


「……聞くよりも、行きましょうか。
もうこの喜劇も終盤。短い劇なれど彼らの物語は続いている。
せめて最後は看取ることにしましょうか」

そう言ってトロスは椅子から立ち上がる。

「えっと、だからどうゆう事ですか?」

事情が分かっていないスラルを無視してトロスは近づく。

そしてそのままスラルを胸の中で抱える。

まあ、お姫様抱っこ的なことをしている。


「へ?な、何をするんですかトロス!?」

「お静かに、舌を噛むかもしれませんよ」


有無を言わせずトロスはそのまま背中の翼を開く。

大きく広がったソレは、劇の舞台に急ぐ。

既に終盤。ラストはどちらかの死で飾り、終わりを迎える。












あとがき
まさかの二部構成。
なんか分かりづらい話なきがします。

どうでもいいことだけど妖怪大戦書きたい。
そこまで進めるには長過ぎて疲れたお。
お町さんとか正宗とかノワールとかノワールとか書きたい。
ただし其処に行くまで設定変えてるんだけどね。
とりあえずナイチサ完結目指して頑張ります。

しかし書き直しなわけですけど難しいですね。

誤字等あれば報告お願いします。





[18886] 第八話 ケッセルリンクは女性でおk 後編
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/09/18 20:20


青年に親はいなかった。

この時代どこにでもいる孤児であった。

家も無く、金も無く、力も無かった。

だが、青年には兄がいた。

たとえ血が繋がっていなくとも青年にとって兄はかけがえのない存在であった。

誰にも彼の変わりを務める事はできず、また弟である彼も変わりはいない。

二人は兄弟であり家族であり一つだった。

兄無くして弟は生きられず、弟無くして兄は生きられなかった。

幼少時は兄が弟の為に金を集めた。

今は弟が兄の為に鍛え、鍛え、兄だけを守るようにした。

二人は二人が揃いて一人である。

欠ければそれは人ではなくなってしまう。

それはどちらが欠けようと同じ。

兄なら弟が、弟なら兄が仇を討つ。

それは時代を生き延び駆け抜けてきた彼らの絆。

それを兄弟愛などと嗤うことは何があっても許されない。

嗤わせなどしない。

嗤うのなら、死を覚悟しなければいけない。

それはこの青年を見守る魔人が行う。

誰にも、この青年と騎士を嗤うことなどできない。









「さあ、行こうか」

青年は手に剣をつかみ取る。

その剣は何処か軽く感じられた。

それは気のせいでもなく、カラーの宝石の力でもある。

「アイツには、感謝しよう。この宝石のお陰で俺はまだ先に進める。
これで、俺は仇を討てる。最後に感謝の言葉を言っておくぜ、ありがとよ」

それは心からの感謝の言葉。

彼が本当に感謝しているからこそ出た言葉。

彼の才能限界。
それは40もある。

この時代にしては多すぎる才能限界。

だが、彼が生きていくにはこれぐらい必要であった。

なければ死んでいた。
誰にも頼ることができないこの兄弟は間違いなく死んでいた。

才能限界がいくらあろうと鍛えなければ意味が無い。

故に彼は鍛えた。どんな怪我をしようと鍛え、モンスターと闘った。

それを、彼は続けた。大人になっても剣を振り続けた。

だから、彼のレベルは40。
つまり、才能限界まで鍛えたのだ。

これ以上彼は強くならない。

その後のためのクリスタル。

トロスが持ってきたクリスタルが、彼に力を与えた。

その力を持ってして、相手に勝てるかは分からない。

だが、彼にそんな事は関係なかった。

どんな手段を用いても、彼は相手を殺す気だった。

それが彼と彼女の違い。

騎士であるが故に彼女は自身の力だけで救いを求めた。
不可能な夢を追い続け、今そのツケを払う時がきた。

青年は死んだ。人間として半身が死んだ。
ならば理性などなく、本当にどんな手段でも用いる。

この違いは決して小さいものではなかった。






「甘い、詰めが甘すぎる。だからお前の意思は弱いのだ。
人を殺し、何故目的を忘れる?
そんなお前だから私があのクリスタルを回収するハメになる」

トロスはスラルを膝の上で寝かせながら言う。

「……ん、なにか、いいましたか?」

スラルは眠い目を擦りながら上を見上げる。

その姿は猫のようにも見える。


「いえ、何も。貴女は寝ていて構いません」

「そうですか。なら、そうします~」

スラルは力尽きた様にトロスに体を預ける。

この魔人、特に疲れているわけではないが時間に問題がある。

本来子供は寝る時間。スラルは大抵その時間に寝ている。

今は重要な事があるので無理して起きているが寝るときは眠る。
それこそ魔王スラルの望んだ睡眠方法。
誰も彼女の眠りを妨げてはいけない。
理由としては怒るから。それはもう駄々っ子のように怒る。



「さて、そろそろ出会うか……。
どちらが勝とうと構わない。だが、これからの事を考えるならば、アレが欲しいな」










その時、その場で何が起こったのだろう。
ただ死に、生きただけでは片づけてはいけない事が起こった。
彼と彼女が掲げた正義、いや、掲げてはいなかったかもしれない。
どちらにしろ、勝った方が正義となる。




「けひひひひ。見つけたァ、やっとみつけたぜぇ~。
会っていきなりだが、あんたぁ死んじゃぁくれないかい?」


その男は急に言いだした一言と共に彼女に切りかかった。

彼女はそれに驚きながらもそれを捌く。

「ッツ、一体なんですか!?
貴方もクリスタルを狙う人間だというのなら、容赦はしません!!」

彼女は勘違いしながら剣を振るう。

何も分かっていない。彼が何を思って闘っているのかも知らない。



「…だからこそ、私が説明しようじゃないか」

その場に声が響く。
それは彼も彼女も両方が聞いたことがある声。
姿見えず、ただ声が響く場所で、彼女は相手の剣を受けとめながら叫んだ。

「貴方ですか!こんな事をするのは。
こんな事をして何になるというんですか。早く彼を止めてください!!」

所徐に捌けなくなり浅い傷が増えていく。
彼女は彼が声の主に誑かされたとでも思っているのだろう。
彼を止めるには殺すしかない事も知らずに叫ぶ。

「違うよ。君は勘違いしているようだが彼に関して私は何もしていない。
ただ背を押しただけだ。彼はクリスタルが欲しいわけでもなく、ただ君を殺したいのさ」

彼女は相手の剣を弾き、いったん距離をあけ息を整える。
彼女が闘うには情報が少なすぎた。
彼女は何の意味もなしに人を殺さない。
それも、彼女が掲げた騎士道である。

「そ、それはどういうことですか!?」


「…彼は、正義を胸に闘っているのだよ。
君は今までカラーのために人を殺してきた。そして彼は肉親を君に殺された。
どんな理由があっても彼には関係ないことで、関わる術など無かった。
――――だから手伝った。
正義を胸に抱くのは彼だろう。正義の二字を掲げる愚か者は君だ。
これは君が招いた結果。
さあ、これが最後の質問だ。君は、一体、どうするのかね?」


「君は正義という言葉を使うが、彼にも正義がある。
見方を変えれば全てが正義と成り得ることを若い君はまだ知らなかった。
勿論悪は存在する。だがこの世のほとんどは正義といえるのではないか?
それこそ曖昧すぎる境界線がある。
――君が正義を信じるのなら、境界線を越えねばならない。
全てを見て、それでも自分の正義を背負って戦えば良かった。
――君が正義という二字を掲げて戦うのなら境界線を見なければいい。
他の者を巻き込み、ただ正義に酔いしれ悪を成せばいい。
ツケを払う時が来た。今こそ、答えを聞こうじゃないか」








分かっていた。
自分では分かっていた。

いや、分かった気になっていただけかもしれない。
所詮私は小娘で、正義を語るのもいけなかったのかもしれない。
だけど、だれかがやらなきゃいけない。
それを見ているだけで、今の世が変わるだろうか?
私や同胞たちの生活が変わるだろうか?
答えは否、否である。

だから闘ってきた。殺してきた。
でも、目の前で剣を振るう彼も私と同じで、同類だ。
だったら私はその復讐を受け入れなければいけないじゃないんだろうか?
あぁ、今、彼の剣が私の腕に刺さる。


「ッツ!!っくぅ~、痛い、なぁ」

痛い、熱く焼けるような痛み。
それに眼をつむり、その剣が私の首を断つのを待つ。
これは、仕方のないことだから。

でも、いつまでたってもその剣が振り下ろされることはなかった。


「っは!何諦めてんだよォォォ。そんなんじゃ駄目なんだよ!
抗えよ。這いつくばって、どんな事してでも闘えよ!!
テメェがそんな様じゃ、兄貴の仇が討てねぇだろうが!!
剣を獲れよ、俺を殺してみろよ。
じゃねぇと、兄貴が何のために殺されたか分からなくなるじゃねぇか!!!」

聞き違いではない。
彼は私に剣を獲れと言っている。
捉えようでは、殺せといっているようにも聞こえる。


「……何故、どうしてですか?
仇を討つというのなら、討ってください。私は、抵抗しませんよ」

「だからよォ、それじゃぁ駄目なんだよ!
無抵抗の奴殺したって意味ないんだよ!大体てめぇはなんで諦めるんだよ!
俺みたいな復讐する奴が現れたらテメェは命を投げ出すのか!?
その程度のなぁ、その程度の覚悟で、俺の兄貴の命を奪ってんじゃねぇぇえ!!!」

そのまま蹴り飛ばされる。
腕から剣は抜けるがその鋭い脚が腹にめり込む。
勢いに呑まれ、後ろの気に背中から激突した。


「兄貴の命はなぁ、安くねぇ!
テメェは兄貴の命を奪った。それは分かってる。
それでも、だからこそ許せねェ。
俺以外だって復讐する奴がいるかもしんねェ。
仮にそいつらが居たとして、そいつらにテメェが殺されるのが俺には勘弁ならねぇ!
分かるか?俺はな、お前が憎い。殺したい。
だけど、兄貴が殺された理由が俺の復讐程度に敗れるのは、もっと憎い!
お前は何のために他人の命を奪ったんだ?
奪ったのなら、それを背負うぐらいの事してみろよ!!!」


その言葉に、私は衝撃を受けた。
なんて、馬鹿だったのだろう。
あの時、声の主を言っていた筈なのに。
境界線を、越えて、全てを背負えば良かった。
だけど、幼い私にはその選択ができなかった。
怖くて、恐ろしい。
今この瞬間も怖い。
彼は、私に教えてくれたのかもしれない。

この先の生き方を。
命の重さというものを。
本当に私はクソガキで、騎士なんて名乗るのは早かった。


「…でも、まだ名乗りなおせることはできる。
過ちを認めよう。その言葉は正論。
だから、貴方に心からの感謝の気持ちと共に、私は貴方を殺そうと思う」

私は剣を彼に向ける。
突くような姿勢、ただ相手を見つめて言う。


「っは!それでいいぜ!
やっと終わりだ。どちらに転ぼうと、恨みっこなしだからなぁ」

彼は嬉しそうに剣を掲げる。
上段から私を切る気なのだろうか。
どうなろうと、速い方が勝つ勝負なりそうだ。

「ありがとう。貴方はこんな事を言われるのは嫌かもしれませんが、私は言っておきたかった。
生き残ったなら、貴方の命も、これから奪う命の全てを背負って生きてみます。
こんな事に気づくのに、時間を掛けてくださってありがとう。
だから、痛みは与えません」


「言ってろよ、クソ女。
お前が覚悟決めるのが遅くたって構いやしねぇ。それだけ兄貴の命が重かったって事だからな。だけど、手加減しねぇ。
兄貴は、テメェと一緒に埋葬してやんよぉ」


彼は私に兄を重ねたのかもしれない。

私は彼に過去の私を重なる。
それは彼が私に似ているというわけではなく、覚悟のため。
これまでの自分から、新たな私に成長するため。

だからこそ、私が負けて死ぬのは許されない。

そして、本当に一瞬。
互いが交差した瞬間に、決着はついた。














「これで、よかったのかね?」

「あぁ、所詮俺は死人なのさ……
兄貴っていう半身が死んだ時点で、俺の死は確定していた」

見下ろし、見下ろされる。

瀕死の傷を負った彼の顔は何処か幸せそうだった。

「それに、これはアンタが望んだ結果じゃねぇの?
俺はそんな気がする。
あの女を成長させる駒みてぇな感じだぜ」

見下ろす男は少し謝罪の気持ちを込める。

「すまない。結果は君が予想したとおりだ。
君は、私が憎いか?」

「いや、恨んじゃないよ。兄貴の死を教えてくれたのはアンタだ。
むしろ、感謝してる。最後に、兄貴みてぇに、人に教えられる事が、俺にもあった。
今の俺を見たら、きっと兄貴驚くだろうなぁ」

笑うように言う。
もはや彼の眼の焦点はあっていない。
何処を見ているかもわからない。
その眼には、彼の兄が映っているのかもしれない。

「…介錯しよう。去らば人の子よ。
汝の生き方、私は嫌いじゃなかったよ」

そう言って、男の首を切り落とす。
刀を抜いてからの一瞬の早業。
痛みなど無く、彼は死んだ。


「逝ったか?」

そう、彼女は聞く。

「逝った。さて、君の答えを聞かせてくれないか?」


男、トロスは後ろにいる女性に言う。
彼女もまた、トロスと眼を合わせ言う。


「私は、正義を信じる。此の世には正義があるって信じる。
だから、そのために無くなる命は私が背負う!
どんな面の正義であろうと私はそれを信じ、私の道を往く!!」

その答えに、トロスは満足気に頷いた。

「素晴らしい。ケッセルリンク、カラーの騎士よ。
私はその答えを待ち望んでいた」

「しかし、あの声の主が魔人とは、不思議なものだ。
それで魔人殿。私に何をさせたいのですか?」

魔人であることは知らせた。
ケッセルリンクはあまり驚くことは無かった。
最初から恐ろしい存在と思っていたが故にあまり驚くことがなかったのだ。


「……そうだな、今言ってしまおうか。
我が主よ、遂に出番です。出てきてください」

その声の後すぐに、近くの茂みでガサゴソという音と共に少女が出て来る。


「やっとですか!待ちくたびれましたよトロス。
魔王とは最後に現れるものなんていう言葉にすっかり騙されました!」

元気よく腰に手をあてながら叫ぶ魔王にケッセルリンクは焦る。

「これが、魔王?
あの魔王ですか?本当に?」

疑問も当然。
魔王はいまだ名をあまり知られていないが恐怖の対象である。
それがこんな少女だったら誰でも驚き疑いがあるだろう。


「その通りだ。そして私の願い。
それはケッセルリンク、君に魔人になってもらいたい。
そして、この無力な魔王を共に守って欲しい」

ケッセルリンクは何を言われたのか分からなかった。
そもそもいきなり魔人や魔王が現れたのにいきなり魔人になってくれなどと言われたら混乱するに決まっている。
色々とパニックになっているケッセルリンクを魔王は見ながら言う。

「あ、あの、大丈夫ですか?
その、魔人になる話しは断っていただいても結構ですよ」

すこし涙目になりながら言う。
俯きながら必死に涙をこらえる姿を見て、誰が断れようか。

「……答えは、決まっています。
トロス殿、貴方は私に教えてくれた。それは私にとって大事な事。
こんな私に今まで構って頂きながら断るほど私は身勝手ではない。
そして、魔王様。実を言うとこれが本当の理由なんですが――――」


その答えは、彼女だからだす答え。
正義に境界線は無い。
正義とは、皆が心の内に潜めるものである。
だから、彼女が魔人になっても、魔人としての正義が其処にはあるのだ。


「――――私は、目の前で困っている女の子を助けない外道ではないのです。
だから顔を上げて涙を拭いてください」

スラルは顔を拭きながらゆっくりと上を向く。
そのままスラルは口を開いた。

「ならば、私を助けてくれますか?
私の騎士になってくれますか?」


「勿論です。我が剣を、貴方様とトロス殿に捧げます。
未熟な剣でございますが、お二人に捧げる事を許してくれますか?」


その答えは決まっている。
勿論YES。
二人は了承した。

「ありがとうございます。私は、こんどこそ騎士となりましょう。
貴方方のために、そして何より私のために騎士になりましょう。
魔人と成りて、魔人として正義を行い、全て背負ってみせましょう。
どうか、私の生き様をその眼に焼き付けてください」



その日は魔人が生まれた日。
強く、紳士的な女性の魔人。
カラーの守り手。
そして魔王スラルとトロスの騎士。
彼女の名はケッセルリンク。
正義を背負った騎士であった。




あとがき
やっと終わった。
次は番外編。やっと番外編に戻ってこれる。
ただこの話のせいでまた違う番外編を書かねばならない。
JAPANに行きたいのに辛いです。

最近涼しくなりましたね。
涼しいっていっても前と比べてなので暑くもあります。

作者は秋が一番好きな季節です。
春は花粉が辛いので嫌いです。
こたつ最高。

書きたいことがあっても忘れてることが多い。
メモ帳とか常備してた方がいいかな?





[18886] 第九話 ガルティア①
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/06/26 15:07




ぐしゃぐしゃと音が鳴る。


それは別に何かを壊すような事をしているわけではない。


それは食事であった。


その緑の髪をした男は食事をしていた。


あまりにも早いスピードで目の前のものを食べている。


ただ食い、そして食べ終わる。


彼の周りは酷いものだった。


隣りには死んでいる人間が転がっている。


それをムカデのようなムシが咀嚼していく。


そして、あまり時間を必要とせず、その死体はなくなった。


ムカデは静かに男の体に戻っていく。


それはありえない現象。


だが、この男にはそれが普通だった。


なんせ彼はムシ使い、その中でも間違いなく強者と呼ばれる存在だからだ。


男は口を拭い空を見上げる。



「ああくそ、不味いな~。それに、つまんねぇ」



男は心底残念そうに溜息をついた。




「誰か、俺の腹の空腹を満たしてくれる奴がいないもんかね」



男の腹が鳴る。


あれほど食ってもまだたりない。


そして、彼は飽きていたのだ。


自分に闘いを挑むものは弱く脆い。


満たされない。


何一つ、満たされない。


それだけが、今の彼が抱いてる感情だった。




「そろそろ行くか・・・・」


彼はゆっくりと立ち上がった。


そしてただ荒野に向けて歩き出した。



「満たしてくれんなら、魔人でもなんでもいいや。
ただ、俺を満たしてくれりゃ、それでいいぜ」



彼は歩き出す。


そして、いつかは行き着くことができるかもしれない。


魔王が住む魔王城。


もしくは、彼が望む魔人がいる場所まで。























足音が響く。

一つは二足歩行の足音。

もう一つも二足歩行だが体重が重いのか、一歩の音が大きい。

そこにいる二人の身長はかなり離れていた。

片方170㎝を超えるほどで、人間の中では高い。

もう一人は300㎝はゆうに超えている。

その二人は並んで歩きながら話す。




「へへ、見ろよトロス。
俺の体もでかくなったろう。これならそこら辺の奴には絶対負けないぜ」


笑いながら自慢気に話すのはケイブリス。

かつては小さかった彼が遂に此処まで大きなっていた。


「それは見た目だけだろうケイブリス。
その中を鍛えろ。お前は才能も努力する力もあるんだから・・・」


ケイブリスの横を歩くのはトロス。

大抵の時はこの二人は一緒にいる。


「当たり前だ。だって俺様は最強になるんだからな。
だから、必殺技を考えてんだよ」


「必殺技?何故?」


トロスは本当に不思議そうにケイブリスを見上げる。


「だってその方がかっこいだろ。
どんな奴でも俺の必殺技の前では勝てないんだ」

ケイブリスは胸を張って答える。

トロスはそれを見ながらも何も言わず隣りを歩く。


「まあ、そう簡単に出来るとは思ってないぜ。
だからわざわざ外に来たんだからよ」


そう言いながらだんだん顔を赤くしながら呟く。



「そしたら、カ、カミーラさんにも認めてもらえるかもしれないし・・・」


その呟きは隣りにいるトロスには届いていなかった。

だがしかし、悲しい事にカミーラがケイブリスに興味を持つことはないだろう。


昔のように60㎝くらいの小さなままだったら、愛玩動物程度の可能性はあった。

そんな報われない気持ちを抱く彼の前に、一人の人間が立つ。

その人間は、相手を魔人と知っていないのか話しかける。



「なあ、腹減ってんだ。飯くれねえか?」
その言葉はケイブリスにとっては許せないものだった。

魔人内でなめられているケイブリス。

それは相手が自分より強いからこそ我慢できる。

だが、人間や弱者になめられて黙っているほどケイブリスは大人しくない。

人間にそういった気持ちがなくても、ケイブリスは怒りを感じていた。



「てめえ、人間ごときが俺様になんて口利きやがる」

ケイブリスは肩を震わせながら人間に向かって歩く。


「トロス、お前は手を出すなよ。
こいつは俺がぶち殺してやる!」


トロスは無言で頷いた。


「へ?なんでいきなり戦闘?」

事情を呑み込めない人間に対処が取れない。


ケイブリスはスピードを上げて人間に突進した。

それを食らえば人間は生きていられない。

本当ならそうなるはずだった。

本当ならこの攻撃は当たっていたはずだった。

本当ならこの人間は死んでいるはずだった。


否、これが本当の人間なら死んでいるはずだった。

あの状態で避ける事をできる人間は限られる。

だが、そんな人間此処に居るはずもない。

なら、答えは一つ。それは普通の人間ではなかったのだ。


「やべぇ、やべぇ。死ぬかと思ったぜ」

そんな軽い声で言い放つ男。

ゆっくりとその場に降り立つ。

べつに飛んでいるわけではない。

ただジャンプした。それだけで、男はケイブリスの攻撃をかわした。

ケイブリス自身も目を疑った。

本気ではないとはいえ、それを避けた眼前に居る男。

感覚が訴える。

ケイブリスが持つ絶対の感性。

弱者であったが故に敏感になった危険察知能力。

それが告げている。


「こいつは、人であり、人からずれた強者だ」、と・・・・・



その男は歓喜に震えた顔で喋りだした。


「すげぇな、あんた。今まであんたみたいな奴と戦ったことはねぇが、いいぜ。
俺が空腹の事を忘れられるくらい、あんたは強ぇ。
なら、名前ぐらい言っとかなきゃ失礼だよな。
俺の名はガルティア。ムシ使いのガルティアだ。あんたらの名前は?」



ケイブリスはそれに即答した。

それは相手を認めたからかもしれない。

今まで蔑まれてきたケイブリス。

弱者と罵られてきた日々。

苦しくて、ただ強くなろうと努力した日々。

そしてこの男、ガルティアは言ったのだ。

「強い」と・・・・・


「俺様の名はケイブリスだ。しっかり覚えとけ」

そう言ったケイブリスの顔は笑っていた。

胸を張り、自信をもって答えた。


それに対してトロスは少し考えているようだった。

少しの無言のあと、トロスは返事をした。



「……わたしの名は、トロスという。
ムシ使いのガルティア、質問があるのだが、いいか?」




「質問?なんでもいいぜ。言ってみな」


これはケイブリスにはできない質問である。

脳がないケイブリスではできない。

博学であるトロスだからこそできる質問であった。



「ムシ使い、記憶が正しければ此処に居るわけがない。
彼らの村は遥かに遠い。
それに、こんな場所に来れるわけがない。
普通のムシ使いには絶対不可能だ。お前はなんだ?」



いくらムシ使いが人でないくらい以上といってもありえない。

此処は魔王城から離れているとしても、魔物も多い。

なにより彼らの村から離れ過ぎているのだ。

まず、普通のムシ使いは此処に至る前に死ぬだろう。

しかし、このガルティアと名乗った男は違う。

トロス達がいる此処まで来て、大した傷も負ってない。

あったとしても軽い擦り傷のようなものしかない。

そして、ケイブリスの攻撃すらも避けた。

つまり、ありえないのだ。

普通のムシ使いではありえない。

魔物でも不可能であるだろう。

人間であるなら尚更である。



そして、ガルティアは笑う。最初はキョトンとした顔も今では崩れていた。

腹を抱えるようにして笑ったあと、息を整えてそれに答えた。





「あんた、トロスっていったか。すげぇよな。
そんなことに気づくなんて、普通ないのによ」



ガルティアはトロスとケイブリスを交互に観た。



「正解、正解だぜ、トロスさんよぉ。
俺は村じゃ伝説とまで呼ばれたムシ使いだからな。
間違いなく、現代では最強のムシ使いだぜ」




「・・・そうか。では何故此処まで来た?」


それは最大の疑問。

ガルティアがムシ使いの中でも強者であったのは予想がついていた。

だからこそ、トロスにとって疑問が増えるのだ。

何故こんな所にきたのかが。



「何故?ヘッ、そんなこと決まってんだろ。
あんたら両方なら分かるだろう?
まあ、理由はそれだけじゃないんだけどな」


ガルティアは一息入れて続けた。




「他の強者と出会うためだよ!!
自分の力を試してぇ。そいつと戦ってみたい。
知ってるか?この世界には魔王とか魔人っていうすげぇ存在が居るんだってよ。
見てぇな、嗚呼、見てみたい。

それにな、村の飯に飽きてたんだよ。
この世界にある飯を食ってみたい。
どんなうまい飯があるのか俺には想像できねぇな。それが、俺の・・・・・・」




それが、ガルティアの絶対的好奇心。



それが彼を、此処まで運んできた原動力。



好奇心を侮るなかれ。



それは、何も知らぬ者が持てば身を滅ぼすことになる心。



だがガルティアには関係ない。



その想いを、持ってガルティアは辿り着いた。



目的の一つとして、魔人に会うことに。



ガルティアはそれに気づいていない。



もしかしたら気づいているかもしれない。



だが、関係ない。



彼は空腹を満たすために戦う。



好奇心という空腹。食べ物に対する空腹。



それらの全てを満たすために。








「っと、お喋りはそろそろやめようぜ。
さあ、ケイブリスの旦那、さっきの続きをしようか」




そういってガルティアは、腰から自身の獲物を出す。

それはトロスが持つ刀とは少し違った。

それは円を描く月のよう。

それの名は円月刀。

そして、ガルティアの何も持っていない腕から飛びでるもの。


それこそ、ムシ使い最強の武器。



ガチガチガチガチガチ




ソレは歯を鳴らして威嚇する。


そのムシ以外にもガルティアの中には多数のムシがいる。


だが、今だけは、この闘いにおいて、ガルティアが他のムシを出すことない。


これはガルティアの意地でもある。


ガルティアの気持ちを理解できるものはいないだろう。


それでいい。それでいいのだ。


理解など必要ではない。



この一瞬だけでいい、どちらが勝つか、それだけである。


勝てば生きる 負ければ死ぬ。実にシンプル、簡単だ。



ガルティアは円月刀を構えて叫んだ。



「さあ、いくぜ相棒!!俺達の強さを見せ付ける時が来た。
俺はムシ使い最強の男。てめぇらが俺に勝てるわけがねぇ!!」



そして、ケイブリスとガルティアの死闘が始まった。











あとがき

ガルティア難しいですね。
だけど私はそんな彼が好きです。


質問なんですが、七星っていつカミーラの使徒になったんでしたっけ?
しってる方教えてください。

それ以外にも、ケイブワンとかケイブニャンとか、
あれっていつ使徒になったの?
という感じです。
誰も知らないようでしたら、作者が適当な時にだそうと思います。



やっと次で十話です。
記念すべき十話もガルティアで決まりです。
もしくはスラル。



いつもよりは更新に時間があいてすみませんでした。
これを読んでくれる読者の方々、ありがとうございます。




[18886] 第十話 ガルティア②
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/07/03 21:11





負けられない。



負けれるはずがない。



これで負けたらそれは俺じゃない。



俺は俺だ、俺なんだよ。



魔人?丸い者?



はっ、知るかよそんな事。



俺はケイブリスっていう存在だ。



いつか、絶対に魔人の中で最強となる存在だ。



いや、俺はこいつの隣りに立ちたかったのかもしれない。



こいつと共に最強になる。



それは誰にだって邪魔させねえ。



それまでは、どんな手段を使っても生き残る。



頭を垂れて従おう。



魔王にはどんな事をしてでも従おう。



だけどな、いつか俺だって魔王になってみたい。



最強だけじゃ足りない。



俺が魔王になったら、こいつは、トロスは驚くのか?



いや、喜んでくれるかもしれねぇな。



どんな時だって俺を認めてくれたのはトロスだけだった。



いつかはそれに報いたいな。



だから、目指そう。



俺が見てきた強者達を。



ドラゴンも、魔王も、すべて目指そう。



俺にできないことはない。



そんな俺が、人間なんかに負けるわけがない。



ムシ使い?シラネぇよ。そんなもん。



人間と変わらない。



それに負けたなら、それは――――――







「来いよ、人間。俺が、テメエをぶっ殺す!!」




――――――否定だ。



俺という、ケイブリスという存在の否定だ。



今まで生きてきた俺という存在を泥沼に投げ入れるようなもんだ。



これまで生きてきて、此処で負けるようなら価値はねぇ。



生きる価値がなんてない。最強になる資格なんてない。



トロスの隣りに立つ資格はない。



だから―――勝とう。



勝てばいい。それだけだ。



やってやるぜ、これは、俺のこれからを決める闘いだ。




















ケイブリスは駆ける。


その地面を必死に蹴る。

その速さは凄まじい。

だがガルティアはそれに向かっていく。

両方が笑いながらぶつかり合う。


ガルティアはケイブリスをムシで受け止める。

ケイブリスは密着状態から拳を握る。

距離を開けずに、ケイブリスはガルティアの頭上にその拳を振りおろす。



「そんな攻撃で俺を潰せるか!!」




ガルティアのムシがケイブリスの体を這うようにして巻き付く。

そして、その腕に巻き付き動きを止める。




「片腕だけじゃないぜ」




ムシはそのままもう一方の腕に巻き付く。

ガルティアはその状態で円月刀をケイブリスに対して突き出した。



「グオオオオオオオオオオオオオッ」



ケイブリスが雄たけびを上げる。

負けない、その想いからそれは現れた。

ケイブリスの体から一本の触手が飛び出す。

それはまだ細く力は無いが、間違いなくケイブリスが進化した証だった。

だが、それはこの場において意味がない。


「あんまり俺を見下してんじゃねぇよっ」


ガルティアはそのまま円月刀を突き出した。

ガキッ

そんな適当な音が響いた。

それは魔人と魔王が持つもの。


絶対的なまでの力。



これがあるからこそ、人間が魔人に勝つことはない。




「……まさか、無敵、結界?」



それをガルティアは知っていた。

正確にはただ流れてきた情報だった。

ムシ使いの村での小さな噂。


「魔人には絶対に攻撃がとどかない結界がある」


それが、噂。

だれが流したかなんて分からない。

それにはいつしか名前が付けられた。


「無敵結界」


言葉の通り、無敵。


人間は何かをすることを許されずに死ぬ。




「なるほど、あんた…魔人か」


ガルティアは自嘲的に呟いた。


それは諦め?


諦めて死ぬ?


相手に攻撃が通じないから?


「んなわけねぇよな。諦めるなんてできねえ」


ガルティアはムシで巻きつけていたケイブリスを遠くに放る。



ケイブリスは多少痛そうにしながら立ち上がる。


「っへ、すげえよな、あんた」


ガルティアはムシを元に戻しながら言った。



「これじゃ、勝負がつかねぇ。
だからよ、次で一発、攻撃を当てた方を勝ちにしねぇか?」


この提案、受け入れる必要なぞない。


そんな事をしなくても魔人は絶対に勝てる。



だが、それは、今のケイブリスの気持ちを無下にするだけだ。

ケイブリスは自分に誓った事がある故にこれを断らない。

ただ首を縦に振り、構える。

それを見たガルティアは驚いていた。

まさか、こんな提案を受け入れるとは思っていなかったから。


「……お前は、信頼してくれる友がいるか?」


そんな質問をケイブリスはガルティアにした。


「友?ムシっていう相棒はいるぜ」


その答えにケイブリスは確信したような顔をした。


「それが、俺とお前の違いであり、それが俺の勝利に繋がる」


ケイブリスには負けられない理由がある。

信頼してくれる友に応えなければいけない。

理由は目的である。

トロスに示さなければいけない。

ケイブリスが、弱くないという所を。



「トロス、見てろよ。俺が生きてきた成果をよ…」



「当たり前だ。お前は負けない。決してな・・・」



それにトロスは満足気に頷く。


「…俺にはないもの、その志に俺は負けるってか?
ありえねぇ、嗚呼そうだ、絶対にありえない!!」



ガルティアはその手に円月刀を持って叫ぶ。



「俺にはそんな信頼とか、友なんていない。
だがな、俺にだって想いがある。この空腹を埋めるための想いがある!!
それを、てめえの想いに負けて、この勝負負けるなんてありえない!!」



ガルティアの腕から出ているムシが殻を突き破る。


それは黒く、そして大きくなっていく。


その想いに報いるかのように。



「駄目だな、嗚呼全然駄目だよ、魔人さんよぉ。
勝負は最後まで、どっちに転ぶかなんて分からねえんだよ。
俺は油断しねぇ、傲慢である気もない。
俺の想いを、そんな志で砕けるもんなら砕いてみろ!」



ムシは円を描くようにしてガルティアの周りを回る。


そして、それは放たれた。


「俺の想いを乗せていけ、相棒!!」


ぐるぐると丸まったような形からそれは突撃した。

前進しながらゆっくりと、その体を元に戻す。

円を描き、土を抉り、嵐を巻き起こすように、それはケイブリスに突撃した。


「すげぇな、ほんとに人間かよ…」


ケイブリスは呟きながら目の前のそれを見つめる。



もはや逃げるわけにはいかない。

両方とも、想いを、命を賭ける。

そこに魔人や人間の関係などはなかった。


「行くぜ、お前に見せてやる。俺の、必殺技ってやつをな」



ケイブリスは自分の拳を握る。


両手で拳を握り、それに賭ける。


自身の全ての力と想いを拳に賭けて、渾身の力を持ってそれを地面に叩き付けた。


「俺様アターーーック!!」


それは地面を抉り飛ばし、勢いよく向かってくるものにぶつかった。


辺りの土を根こそぎ飛ばし、辺りは砂嵐が舞っている。


だが、これで終わりではない。


まだ終われない、どちらも一撃入れていないのだ。


ケイブリスはその巨体をもって走る。


ガルティアもまた走る。


その手には円月刀。


ムシは死んではいないとはいえ戦えない。


ガルティアはそれをハンデだとは思わない。


相手が魔人だとしても、自分の想いは負けていない、と。


そして互いがぶつかった。



ケイブリスはその手を伸ばし爪で引き裂く。

ガルティアはただ円月刀を振るう。


そして、勝負はついた。


ケイブリスの爪は、見事にガルティアの片目を抉り取っていた。



「ッが、っくそ、いってえぇな…。本当に、いてぇ」


ガルティアはその場に座り込んだ。


もはやその手に円月刀は握っていない。

ケイブリスは勝利に対して叫んだ。

叫んで、叫んで、叫び続けた。

それほどまでに嬉しかった。

ケイブリスは間違いなく、成長していた。

それを証明してみせた。

友の信頼を決して裏切らなかった。

多数の想いを持って、ケイブリスは叫んでいた。



「はあ、俺の、負けか」


ガルティアは空を仰ぎ呟く。


その傍らに、気づけばトロスがいた。


「トロス、だったっけ?俺にとどめを刺しにきたのか?」


ガルティアは自分の死を覚悟した。


しかし、返ってきた答えは意外なものだった。


「…いや、勝負はついた。俺はお前を殺さない。それに、一つ提案がある」


ガルティアは目をきょとんとさせながら聞いていた。



「ガルティア、お前は魔人になる気はあるか?」



「…は?何それ?てか、それってあんたが決めてもいいわけ?」


ガルティアの疑問は最もなことだ。

魔人が勝手に人を連れてきて、魔人にするなんてことはない。

だが、トロスはそんな事関係ないように言う。



「なに私の主は寛大だからな、そういのは大丈夫だ。
ただ、お前に魔人になる意思があればいい」


それに対して、ガルティアは少し考えた後答えを言った。


「…いいかもな、それも。仲間っていうもんも、知ってみたい」


「なら行こうか、ケイブリス、良くやったな。帰るぞ」


そんな言葉にケイブリスは、応、と答え魔王城に帰還した。



































「って、これが魔王?こんなちっさいガキが?」

今ガルティアは魔王の眼の前にいる。

だがその姿は予想とは全然違う可愛らしい女の子の姿に爆笑していた。

「な、な、ががガキってなんですか!
これでも私は結構生きてます。それに強いんですよ!ガキなんかじゃないです!」


背の低いスラルはガルティアに対して背伸びをしながら講義する。




「いやいや、悪かった悪かった。謝るから許してくれよ」


そんな事を言いながらガルティアはスラルの頭を撫でる。


ちょうど下から、うー、と怒っているスラルはガルティアにとって撫でやすい所にあった。



「まだ子供扱いしてますね!私は魔王なんですよ!」



その手を振り払いながら、涙目で訴える。


「すまねぇな、んじゃそろそろ魔人にしてくれよ、お嬢ちゃん」


懲りずに子供扱いするガルティアに諦めたのかスラルはもう何も言わなかった。


しかし、魔人にすることに関しては質問をした。


「いいんですね?魔人になれば寿命はありません。
しかし、変わることは多いです。
本当に、魔人になって後悔しませんね?」



スラルは最終通告をする。

これにyesと答えれば魔人になるのだ。


「いいぜ、それに、お嬢ちゃんみてぇな子供は俺が守ってやるよ」


そう言いながら、ガルティアはスラルの頭をなでる。


「うー、撫でないでください。
それでは、これより貴方を魔人にします」



そしてガルティアというムシ使いは魔人になった。


今、この場に居る時、彼の空腹は確実に薄れていた。




「心の空腹は埋まったってか?まあ、それもいいかもしれねぇ。
次はうまいもん食って、空腹を満たすだけだな」


魔人となったガルティアは、そんなことを呟いていた。

























「・・・・・・・・・・・」


無言でメガラスはトロスの隣りに居た。


「どうした?メガラス」


トロスが口を開くとメガラスから答えが返ってきた。


「……俺も、行きたかった…」


その日、メガラスはずっとトロスの近くに居た。











あとがき

戦闘は難しいですね。
てか、これがこの作品での真面目な戦闘ですね。
これからは戦闘増えるかもしれません。

無敵結界の噂は今回だけです。
別に伏線とかじゃありません。


もう少し、魔王スラル編は続きます。
次の魔王からはとても面倒なことがいっぱいあります。
それに負けないように頑張っていきます。




候補としてオリ使徒一人?
オリ魔人2人を考えてます。


オリ魔人に関しては男予定なんで、女性希望があれば片方を女性にします。
ますぞゑさんにも消えてもらうことにします。
ここまで読んでいただきありがとうです。





[18886] 第十一話 アンデルセン
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/07/06 15:33







幸せとは人それぞれの捉え方。


その形も人それぞれである。


ならば彼女、ヨランダ・アンデルセンにも幸せがあった。


彼女の父が創った孤児院。


この時代にはまだ、宗教はそれほどなかった。


あったとしてもすぐに潰れるようなものだった。


この孤児院もその一つ。


教会と呼ばれながら孤児院としての役割を持っていた。


この宗教に決まっていることは大したものではない。


所詮一人の男が創ったもの。


それには戒律なんてものも無かった。


だが、父が残したその場所は彼女にとって大切であり、幸せだった。


子供達は彼女をシスターと慕っていた。


子供達にとってもこの場所は大切であり、幸せとなっていた。


それはある村の一角にあった。


村の人々はそれを邪魔扱いなどせず、親身に扱っていた。


それはこの場所では心を休める場でもあった。


これが世に広まり、正しい宗教としての在り方を貫いたのなら、


間違いなく、この宗教は世界に救いを与えたかもしれない。


だが、そんな夢物語、実現などしない。


ここで、一つの幸せは壊される。


たかが教会が壊れ、人が死んだだけと、貴方は笑うだろうか。


それを知らない者にとって、これが笑い話だったとしても、


彼女にとって、これは人生を変える瞬間になる。


幸せを失い、違う幸せを手に入れた彼女。


しかしそれは、幸せと呼ぶのかは分からない。


だが、彼女にとっては、幸せだ。
















小さな村、そこで私は生まれた。

私の父は厳しかったが優しかった。

いつも、この村を守っていた。

その手に銃剣を持ち、「そうあれかし」と叫んで切る。

魔物達はそれによって逃げる。

それを何回か続ける内に、魔物はこの辺りに出なくなった。

私の自慢の父。

死んでしまった私の父。

その意志を継ごうと、これまで頑張ってきた。

血反吐に塗れても銃剣を掴んだ。

親がない子を引き取り育ててきた。

そうやって生きてきた私の人生。

なのに、どうしてだろう。

私は悪いことをしたのか?

この子供達が何か悪いことをしたのか?



「…教えてください、神様。何が、いけなかったのでしょうか…」



それに応える者もいない。

いや、応える者はいる。

だが、彼らは私の話しを聞いていないだろう。

今彼らは、子供達を犯すことに必死なのだから。

嗚呼、また一人、絶頂を迎えている。

相手をさせられている少女はもう駄目だ。

目が死んでいる。あの子は歌を歌うのが得意だったのに、その喉も白濁に塗れている。

私の前に、男が立つ。

これから私を犯すのだろうか?

だが、その前に一つ応えて欲しい。

何故こうなったか。

何故、どうしてこんな事をするのか。

それはどこからか聞こえてきた答えだった。


「運が、悪かった」



そんな適当であの子達はあんな目にあっているというのか。

父よ、貴方は間違っていたのかもしれない。

貴方は魔物を殺してきた。

危険という理由で殺していた。

それについて異を唱える気はない。

だけど、私は思ってしまった。

この世で最も恐ろしいのは人間ではないかと。

今、私の服が破かれる。

このまま犯されるのは嫌だ。

死ぬのは嫌だ。

せめて、私の信念を叶えたい。私がそれを思うと涙が溢れてきた。

それを見て、彼らは笑っている。

彼らは勘違いしているようだ。

私は、悲しくて、悔しくて泣いているわけじゃない。

今この場で、今までの人生を無下にすることに嘆いているだけなのだ。

だが、手元に銃剣は無い。

もう誰でもいい。時間さえあれば、銃剣を取ってきて殺せるのに。

その瞬間をくれるのなら何でもいい。

神でも悪魔でも、何でもいいのだ。

私の全てを捧げましょう。

だから、私の願いを聞き遂げてください。

これが私の最後の神への祈りです。




そして、私の願いは叶った。





















これは盗賊達にとっては酷なことだ。

彼らはいつも通りに仕事をした。

殺し、奪い、犯していた。

それは人として間違ったことだとしても、彼らはそれしかできなかった。

因果応報。

その言葉の通り、今回彼らは今までのツケを払わされる。

ある建物で、女も子供も犯している時、それは来た。

一人の少女が呟いた時、何かが来たのだ。

窓を突き破り、翼を纏いて来た。

一瞬、本当に一瞬で、一人の男以外の命を奪っていた。

残された男は、何も考えられない。

あまりの事に思考が停止する。

思考を停止してはいけなかった。

停止せずに逃げれば、足が潰れようと腕が無くなろうと逃げれば、助かったかもしれない。

しかし、それはできない。

それは彼が人だから、人間だったから。

彼の意思が戻った時、彼は見てしまった。

まだ幼さが残る少女が、口元をニヤリとさせながら、彼に振り下ろすものを。



「ガ、ッツア、アアァァァ」


それは、彼の両目を潰し、抉り取っていた。

少女は男を見下ろしながら、男の口に無理やり布を詰める。


「嗚呼、感謝します。私の願いを聞き遂げてくれて。
今すぐにでも私はこの身を捧げたいのですが、もう少しお待ちください」


少女は再び男に向き直る。


「一応、あなたに教えておきます。
私があなたを殺すのは恨みではありません」

そう男に言い放つ。

男は目を失いながらも思った。なら何故自分を殺そうというのか、と。


「やはり人などこの程度でしょう。
私利私欲で動き、この世で生きる。父もきっとそういう人間でした。
それが人の本質なんでしょう、だからあなたがしたことは間違っていない」

少女は男の足を刺しながら続ける。


「私には、考えている事があるんですよ。
所詮この世は生き地獄とね。だから私は、これから貴方を救います」


少女は男の腕を刺しながら続ける。


「この腐った世で、人が生きるのつらいでしょう?
だから、私が救いましょう。聖者も悪も、全て殺します。
ですが、この私の考えに父は反対していたんです」


少女は男の性器を刺しながら続ける。


「父が死に、私は何が正しいかは分かりませんでした。
だからいつも通りに過ごしました。
そこに、貴方達が来てくれた。そして肯定してくれた。
この世は腐っているという考えを、だから私は救うことにします。」


男は、途切れそうな意識のなか思う。

自分達は、ついていなかった。

こんな場所に来なければよかったと。

そうすれば、こんな化け物に逢うこともなかったと。



「この行為は救いです。神は人を助けない。
なら、神すら殺して見せましょう。
人も神も殺して、私は自身の夢を埋葬しましょう」


その手に持つ銃剣が振り落とされる。

その一撃で、遂に男は事切れた。




少女は翼を持つものに振りかえり、頭を下げた。

「この時間をくださいまして、感謝の極みでございます。
すでにこの身は貴方の物。私は何をすれないいでしょう?」


「名前はなんという?私の名はトロスだ」


その質問に少女は考える。

考えて、応える。


「私はアンデルセンといいます。
この名だけで、私には十分です。アンだけでもかまいません」


「なるほど、素質は十分。
魔人になろうと意志も砕けない。
最高じゃないか、まさかこれほどとは」


少女は頭に?マークをつけながら命令を待っていた。


「行こうか、アン。
お前は魔人になるべきだ」


「魔人がなにかは知りませんが、どこへでも連れて行ってください。
あの時より、トロス様は私の神であり、全てを捧げる主なのですから」







この少女の幸せは、これで正しいものだろう。

他人が見ればそうは思わないだろう。

だが、少女は幸せを感じていた。

今まで抑えてきた想いをぶちまけて、生きた。

人にはそれぞれの幸せの形がある。

それを他人が侮辱することは許されない。

譲れないものが人にはあるのだから。

そして、少女は魔人となる。

魔王の警告すら跳ね除けて、魔人となった。

忠誠は誓っておく。

だが、少女の全てはトロスの物だった。

それだけは、少女は譲らなかった。

その場にて、血に濡れながら魔人となる少女は、美しかっただろう。

この日、少女は魔人になり、少女は女となる。













●●●



「なるほど、なるほど。
超神め、やはり仕掛けがあったか…」


トロスは腕を必死に抑えながら呻いていた。

その体を震わせ、額から汗を流していた。



「恐れ入った、こんなことまでしようとは…
本当に、私に何をさせたい?」


震えながらも、トロスは笑っていた。

笑いながら、自分のベットに倒れこんだ。


「はあ、はあ、血が、滾る、気が、昂る」


それは体の変化でもあった。

肉体ではなく内面の進化。

丸い者としての力が、今大きなっていた。


その時、部屋の扉が開かれる。

そこから現れるのは、美しい金髪の少女。

腰まで伸ばしたその髪をなびかせ、トロスの前まで歩く。



「大丈夫でございますか?主様。
私でよろしければ、お相手致しましょうか?」


この少女は言っているのだ。

私を使ってれと、それほどまでに少女はトロスとの繋がりを欲していた。


「魔人になったばかりで大丈夫なのか?」

トロスは顔を苦痛で歪めながら聞く。


「関係ございませんね。
申し上げたはずです。私は主様の物だと」

その言葉を紡いだ後、アンデルセンは自分からベットに入って行った。













あとがき
なんかトロスとアンデルセンの会話が少なかったですね、すみません。
本来彼女は後に出そうと考えてたんですが、
この後のナイサチでは出せない上にジルだと他の魔人が多すぎて書けないと思ったので、此処に登場してもらいました。


最後の続きは皆さま個人で妄想していただけると助かります。

別に、わっふるわっふると感想に書きこまれても書くかは分かりません。
ランスシリーズにエロを入れたくて急に入れたので、なんか変になりました。

私にとってエロは戦闘描写より難しいです。
ちなみにアンデルセンの身長はロリアーカー●さんと一緒ぐらいです。
140ぐらい?ですかね。
ロリと言うほどでもないですけど、こういう背丈のキャラをランス8に入れてほしい。

スラル編はあと一話か二話で終わりにしようと思ってます。


それでは、次回も読んで感想をください。
これからの励みにして頑張ります。
指摘点なども感想板にいただけるとうれしいです。




[18886] 第十二話 暑過ぎてゾンビになりそうですby作者
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/07/13 06:12




ある晴れた日。

そこは魔王城から少し離れた平原。

そこではかなり常識から離れたことをしていた。

一人の魔人、多数のイカマン達。

たった一体のイカマンだけが群れから離れて魔人の近くにいる。

そして、魔人はイカマンに対して銃剣を放つ。


放たれた銃剣は平原を壊しながら進む。

それはイカマンに刺さり彼は生涯を終えた。




現在アンデルセンは特訓中であった。

トロスに魔法の才能があることを教えられて訓練していた。

その魔法の訓練の生贄となったイカマン達。

アンデルセンは魔法だけでなく銃剣の扱いを学ぶために、的としてイカマンを連れてきた。

イカマン達にとっては悲劇そのものだったろう。

なんせ、魔人の前に立たされ銃剣が飛んでくるのだ。

それによって死んだイカマンは32体

今この時も、銃剣によって一体のイカマンが死んだ。


そして、死に方は銃剣だけではない。

アンデルセンが考えだした新魔法。


その威力は中々の物であり、それによって死んだイカマンもいた。



「セイクロサンクト!(神聖にして侵すべからず!)」


その魔法は文句のつけようがないほど完璧だった。

その場にいたイカマンの姿はもう存在しない。

その物体ごと破壊して見せたのだ。

そうするとアンデルセンは子供の様な笑顔で喜んだ。

ぴょんぴょんと飛び跳ねながら喜んでいた。

それほどまでに嬉しかったのだ。

遂に自分が考えた魔法が発動したことに。

イカマン達はすこし安堵していた。

元々イカマン達は技の練習で連れてこられた。

成功したということは自分達はもう必要ではない。

そうイカマン達は思っていた。

だが、それはアンデルセンの一言で終わる。



「それじゃ、次行きましょうか。
次は違う魔法を作りましょう」




その一言で、このイカマン達は悟った。

「もう、生き残るのは不可能だ」と。


結果は残念。

魔法の成果は一つだけであったがそれでいい。

それだけでも十分な成果であった。

しかし、イカマン達にとっては不幸なことこの上ない出来事であった。

連れてこられたイカマン達は100に近い数であった。

それが二回目の実験で死亡数46体。

途中で新魔法を諦めたとはいえその被害数は多いものだった。

そうして生き残ったイカマン達の悲劇はまだ続く。

生き残ったイカマン達にアンデルセンは告げた。



「さあ、私の新技の試し打ちをします。
貴方達は抵抗しなさい、運がよければ生き残れるでしょう」


まだ幼さが残る悪魔が言う。


「理不尽でしょう?何故って思うでしょう?」


薄く、自分用に改造した神父服に手を入れる。


「それがこの世だからです。
神の救いがなければ裁きもない。こんな世界に生きてるからこんな目に合うんです」


イカマン達達は後ずさる。

恐怖、この幼き魔人にそれだけを感じていた。

今まで見ていた者ではない。

狂気に塗れた目をしたそれは魔人なんのかも分からなかった。



「神の裁きも救いも、私が与えましょう。
殺すことで与えましょう、神の神罰も慈悲も、私が代行しましょう」


アンデルセンはその手に銃剣を挟む。

その神父服から銃剣を抜き指の間に挟む。



「我、神罰の地上代行者なり。
さあ、汝ら我が神罰をその身に刻め」



イカマン達は逃げる。

本能が叫ぶ。

生き物の本能が叫ぶのだ、生き残れ。

何をしてでも生き残れ!! と。


淡い希望を抱き、イカマン達は逃げだす。

後ろなど見る暇はない。

見ている時間すら惜しいのだ。

そもそも魔人に立ち向かうなんて選択肢はない。

端から魔人に勝てるわけがない。

だから逃げる。足を動かして逃げる。

そして、イカマン達に対して、絶望が放たれる。



「セイクロサンクト!!(神聖にして侵すべからず!!)」



その技で、アンデルセンは銃剣を放つ。

普通に投げても相手は死ぬ。

だが、アンデルセンは試したかった。

銃剣の底をセイクロサンクトで押し出し威力を上げる。

その銃剣に当たればどうなる?

魔人の腕力、自分が創った新魔法。

この二つをくらって、体が存在出来るはずもない。

それが成功するか試したかった。

イカマン達は後ろから飛んできた銃剣に当たる。

それは彼らを根本から吹き飛ばした。

辺りにイカマン達の破片が飛ぶ。

体をぶちまけ、魂を無くして、彼らは死んだ。

たった一人の魔人の都合によって。

その絶対的暴力の前に消えた。



「AMEN」


たった一言呟いて、アンデルセンはその場を去って行った。

そこにはイカマンの残骸のみが残っていた。

彼らを殺したはずの銃剣は、一本残らず消えていた。

アンデルセンも、銃剣も霧のように消えていった。






















その日、メガラスは魔王城の廊下を歩いていた。

その時前方から一人の魔人が歩いてきた。

その体を包む神父服、アンデルセンであった。

二人は何もないように通り過ぎようとしていた。

だが、二人が隣りに並んだ時、二人の足が止まった。

二人は互いを見合った。

そして、アンデルセンの方から話を始めた。


「私の名前、アンデルセンっていいます。別にアンとかでも構いません。
貴方は、メガラスでいいですね?」


「……そうだ」



それを聞き、アンデルセンは手を差し出し握手を求めた。

それにメガラスは応える。



「何故か、貴方と私は同じ感じがします」


「……同感だ」


その日、二人の魔人に友情が生まれた。


友情というには何かが違うかもしれないが、確かに生まれた。

二人の共通点としては、語るに及ばず。

そこから同族嫌悪という事もなく、二人は友として日々をすごした。





魔王ナイサチ、この時代から、彼らは魔軍において上空最強の名を欲しい儘にする。

メガラスの背に乗りアンデルセンは銃剣を地上に叩きつける。

その威力は人間に反撃することを許さなかった。

トロスを主として仰ぐアンデルセン.

トロスに多少依存しながらも最近は子供を見守るのに楽しみを覚えてきたメガラス。

この二人に挑むことは死を意味していた。



















魔人カミーラ。

今現在彼女は怒っていた。

今の暮らしに不満があるわけではない。

最近彼女は、美形の男の子を集める趣味が発動していた。

その美少年達を囲いながら暮らしていた。

だが彼女は物足りないと感じていた。


「うー、うー…」


うーうー唸るカミーラ。

一人自分のベットでゴロゴロ転がりながら唸る。



「そのうーうー唸るのをやめてくださいと、いつも言っているでしょうカミーラ様」



そこに現れた人物。

見た目では分からないだろう。

彼こそ魔人の僕、カミーラに忠誠誓いし使徒である。

その長髪を靡かせ、カミーラの部屋に入る。



「うー、七星、貴様私の使徒の癖に生意気だぞ」

ゴロンを一回転して七星の方を向きカミーラは言う。


「また、そんなはしたないことをして…
一度紅茶でも飲んで身なりを整えてください」


机の上に紅茶を入れながら七星は執事のような事をしていく。

だがいつまでもベットから出てこないカミーラに対して彼は怒った。

主であるカミーラに対して必殺の技を放つ。



「これはこれは、トロス様。よくぞお越しくださいました。
我が主であるカミーラ様は其処にいます」


その言葉で、カミーラは一瞬でベットから躍りでた。

その体にはカリスマというオーラがあふれ出ていた。

先ほどまでのかりすまのようなものを垂れ流していた様とは圧倒的に違う。




別にカミーラはトロスに今の現状を見られたくないわけではない。

誰にも今のような姿を見せたくなかっただけのこと。

ただ七星という使徒はトロスの名をだすのが一番効果的だと知っていた。



「七星、貴様は本当に殺されたいようだな」


カミーラは冷めた目で七星を睨む。

しかし七星はそれを無視しながら話し続ける。


「そんなに慌てるなら普段からちゃんと過ごしてください。
怠惰の主を持つなんて、私は嫌です。それにトロス様にも嫌われるかもしれませんよ」


自分の主に対してかなりの毒舌を吐く七星。

それに対してカミーラは指をくるくるさせながら呟いていた。


「…別に、トロスなどどうでもよい。
私には、なかなか会いにこないし、それに、それに…」


ただトロスの悪口の様なことをひたすら呟くカミーラ。


「そんなにトロス様に合いたいなら、お呼びになられてはいいのでは?」


七星は素直に思った疑問を口にした。


「いや、それはできない。私が許さん。
あいつが自分からこなくては意味がない」


それを聞いて、七星は思う。

(嗚呼、我が主は、素直になれない性格でしたね)

カミーラは顔を赤く染めながら、いろいろと考えていた。

そうやって、たまにケッセルリンクや客人が来る。

そうして、カミーラや七星の日々は過ぎていく。

いまだ平和な魔人領。

人を殺す事もあるが、いまだ戦争などとは離れた生活であった。

皆別に不満などはなかった。

だが、魔人の本能が叫ぶのだ。

人を殺せと、争いを求める。

そして、その感情が解き放たれる日は近い。











魔王城の一角。

魔王スラル専用の部屋。

いずれ其処は書庫となって、次の、また次の魔王達を救うものになる。

今はスラルの部屋。

其処で、スラルは一人あるものを書いていた。

ペンを取り、熱心にそれを書いた。


「……ふう、出来ました…」


満面の笑みでその紙を見て言う。

スラルが書いていたものはスラルにとって大事なものであった。


「後は、皆を集めて発表するだけですね」


書類を整理しながらスラルは皆を呼ぶ準備をする。

それをしていた時、スラルは気づいた。

自分の手が、震えて止まらないことに。

そして、背中に寒気が走る。

それらを感じながら思ったことが、知らず知らずの内に声に出ていた。


「…もう、長く持たないですね」


口にしながら思い出す。

これまで自分が過ごしてきた日々を。

メガラスの背に乗り、空を飛んだこと。

トロスに書類整理を手伝ってもらったこと。

ケイブリスの成長に驚いたこと。

ケッセルリンクが自分の配下になってくれたこと。

カミーラとはあまり関わりが持てなかったこと。

ガルティアに頭をわしゃわしゃされながら褒められたこと。

アンデルセンに身長勝負で勝ったこと。


あまりに平和。

それは魔王としてあってはならない。

残虐、それでなければ魔王ではない。

スラルは魔王としては半端だったのかもしれない。



「それでも、まだです。まだ終わってない。
魔王として、勤めを果たさなければいけない」


そうやって自分に言い聞かせながら、自分の拳を握る。


「まだ、終わりません。彼らに、残さなければいけませんからね。
それに、私が魔王だった証を残さねばいけない」


そしてスラルは、その部屋の扉を閉じ、魔王の間に向かう。

魔人達は、緊急の呼び出しによって急いでその場に向かっていた。

そして、スラルによって緊急会議が開かれる。

この日の天気はよく晴れていた。

その日を忘れる魔人はいないだろう。

その日は、とても印象的な、晴れた日の事であった。






あとがき
次でスラルはさよならになります。
緊急会議の内容はその時に書きます。

最近はとても暑いですね。
書く気がなかなか起こりません。
てか暑過ぎて自分が何書いてるか分からなくなりますww

今回のカミーラに関しては謝罪します。
あんなのカミーラじゃないって言う人もいるでしょう。

まあ、中にはこのカミーラが有りって人もいるでしょう。
次ぐらいはもっとカリスマのカミーラを出したいです。


スラルの回想?みたいな事にあったことは短編、外伝などで書かせてもらいます。
もう作中で書いたことある場面もあるんですけどね。


感想掲示板のほうでも書いたことですが、
魔人の数に関しては考えてるので大丈夫です。

銃剣に関して、今の時代に銃はありません。
ですが銃剣って名前なだけで剣とあまり変わらないので登場させました。

今回はここまでです。
次回は作者も書きたい事があるので早めの更新になるかもしれません。
もしくは考え過ぎていつも通りかもしれません。

最後に一言、学園黙示録6巻発売嬉しかったです。やっぱゾンビもいいですね。





[18886] 第十三話 魔王スラル
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/07/13 06:13



魔王による緊急招集。


それにより魔人達は急いで魔王の間に集合していた。


全員身なりを整え魔王の登場を待っていた。


そして、ゆっくりと、スラルは現れた。


ゆっくりとした足取りで玉座に座り、辺りを見渡した。


全員出席を確認したスラル。



「全員いますね、ではこれより緊急集会を行います」



その言葉で魔人全員が背筋を伸ばして魔王の言葉を待つ。


「んっん、それではこれより魔王による緊急集会、役職決めを行います」


魔人は皆、最初に疑問を浮かべたが続く魔王の言葉を聞いた。


「役職といってもずっと決まるものではありません。
これは次世代の魔王や、それから先のために創るものです」


スラルは深呼吸をして続ける。



「今から言う者は前に出なさい、トロス及びアンデルセン」


「此処に」


トロスはスラルの傍にいたので声を上げる。

アンデルセンはスラルの元に無言で向かう。



「最初に言います。貴方達の役職は、絶対に変わることはないです。
まずはトロス、貴方は魔王参謀として永遠に魔王の傍で魔王を支える役割を命令します。
次にアンデルセン、貴方は参謀副官としての役職についてもらいます。
貴方は魔王の命令よりトロスの命令の方がやる気がでるでしょうから…」



魔人の性格を理解しているようにスラルは言う。


「参謀副官にはもう一人空きを作ります。
もう一人はトロスが決めてください。今すぐでなくて結構です。」


「了解したしました。その命、見事に守り切りましょう」


トロスが返事を返すがアンデルセンは無言で頷くだけであった。



「ふう、次は魔人筆頭、四天王についてです。
これらの役職に決まりはありません。
ただ、その時代で最も強く信頼を得た者を魔人筆頭ということにします。
四天王はその次に強い者とします。
つまり、毎回魔王が変わるごとにこれらも変化します。質問はありますか?」



「なら質問、誰がその筆頭なわけ?」


ガルティアが手を挙げて質問する。



「今からいいます。
現魔王スラルの魔人筆頭、それはカミーラでお願いします」



「…了解した」



つまらなそうに返事をするカミーラだが内心では少し喜んでいた。


カミーラ自身は気づいていないが背中の翼がパタパタと動いていた。



「次に四天王ですが、一人目、ケッセルリンク」


「了解いたしました」


ケッセルリンクは頭を下げて応える。


この時ケイブリスの動きに変化が訪れる。


そわそわしながら体を揺らしだす。

彼は内心思っていた。


(俺、呼ばれないかな)と。


だが残念無念、彼が実力で呼ばれる事はだいぶ先まで無いのであった。


スラルは気づいた感じで後に付け足した。


「って、残りの人数そのままでしたね、すいません。
仕方ないので残り全員四天王です」


ははは、テレ笑いしながら言うスラル。


残った者達はすこし肩を下げながら返事をした。



スラルは少し満足したように笑い、周りを見渡した。

自分の下に集った魔人達を目に焼き付け、スラルは言った。



「それでは、会議は終わりです。
皆さん、今までありがとうございました。
魔人参謀のトロスだけ、私の部屋に来てください。詳しいことは貴方に話しておきます」



その言葉でトロス以外の魔人は扉から出ていく。

だが最後の言葉に違和感を抱いたものがいた。

ケッセルリンク、メガラスはすこしその場に残った後、最後に礼をして出ていった。


スラルは全員が出ていったあと足を砕いたように倒れかけた。

それをトロスが支える。


「ご無事ですか?」


トロスは尋ねるがスラルはそれを気にしていなかった。


「ははは、すいません。でも気づいていたでしょう?
まさか、メガラスやケッセルリンクにまで感づかれるとは思ってませんでしたが…」


顔をしたに下げてスラルは言う。


「トロス、私を部屋まで
連れて行ってください、些か、疲れました」


その言葉を聞いてトロスはスラルを抱えあげた。

持ち方をいうのなら御姫様だっこだ。

だが、それにスラルは反応せず、トロスも何も言わなかった。

両方共、分かっていたのだ。

これが最後になると。



















スラルの部屋。

仄明るい光の中、トロスはスラルをベッドに下ろす。

スラルは壁を背にしながらトロスの方を向く。


「…まだ、話さなきゃいけないことがあります。
トロス、我が最強の魔人よ、最後まで聞いてくれますか?」


「仰せのままに、私は魔王に使える魔人ですので」


ベッドに腰掛けるスラルに対し礼をする。

スラルはそれに対して照れながら言う。



「私は、死にたくなんかありませんでした。
でも、人に優る寿命を生きたせいか、欲が出てしまいました。
まあ、今はそれも諦めました。そこまで無理に生きる必要が無かったので」


スラルはただ静かに、自分に語るように続ける。

トロスはただそれを聞いた。


「毎日が楽しかったんです。
魔王に許されない心でも、私は私として楽しみました。
そうそう、魔人に二つ名とか考えてみたんです。聞きたいですか?」

楽しそうに言うスラルにただ是非と答えるトロス。


「メガラスには『魔人最速』、ガルティアは『暴食』。
結構かっこいいでしょう、特にメガラスは自身作です!」


スラルは胸を張って腕を腰に当てて言う。



「他のも考えたんですがどうもいけません。
失敗作ばかりです、私には才能が無いんですかね…」


その様子をトロスはたた見つめる。

最後に、言いたいことを全部言わせるために。



「っと、話がそれましたね。
そもそも何を話していたのかもわかりませんけど…
トロス、私は何ですか?」


「貴方は魔王です。
この世で最も強い魔王です」


それに応える。ただ応える。


「そうです、ですが私は弱い。
気づいているでしょう、私がこの血に呑まれようとしているのを…」


自分の腕を見つめ、自嘲気味に言う。


「全く、嗚呼本当に、駄目ですね、私は…
今私はそれに抗うこともせず、呑まれようとしている。
ただ流され、消えようとしている。それはなんて――――なんて逃避でしょうね…」


「仕事はしてきたつもりです。
だが務めができたかは不安です。今その現実から逃げようとしている。
私には、それがなにより恥じです、恥じなんですよ!!」



瞳から液体を流し叫ぶスラル。


トロスはそれを見るだけである。


否、見る事しかできないのだ。


個人の苦しみを他人が理解するなど不可能。


例え神でもそれはできない。


相手の心が読めても、理解だけは決してできない。


今スラルはその心の内はぶちまけている。


トロスにできるのは、それを聞くことだけである。


それを聞くことが、今のスラルへの救いである。


一人で抱えるよりも、誰かにぶつけることで軽くなる。


トロスはスラルの心の叫びを身を持って聞いた。




「私には、もう時間がありません。
だから、命令します。トロス、私を魔王として殺しなさい」


静かに、だが冷酷に告げる。


「…それは、本当によろしいので?」


トロスは静かに聞く。

それにスラルは鼻で笑うようにして応えた。


「あまり私を舐めるなよ、魔人。
私は魔王、魔王です。何度でも、この世界に、神にむけても言いましょう。
私は魔王だ!それは譲らん!私という存在を魔王という存在を決して譲らん!!」


はあはあと胸を上下させながら息をする。


「魔王だからじゃない、魔王の血ではない。
私が魔王だからだ。スラルというモノが魔王であるから意味がある!
魔王として死に行くことに意味がある!
それを誰にも邪魔はさせない。それが誰であっても、神であっても、絶対に!!」


スラルはそのままトロスを見続ける。



「その想い、確かに聞き遂げました。
確かに、この心に刻みました。
貴方は魔王である、それを誰にも否定させない。
『賢者』の魔王よ、私が貴方の死を遂げさせてみせましょう」



それを聞いたスラルは笑みを浮かべ、口を開く。


「『賢者』ですか、なかなかかっこいいですね。
なら最後に、賢者のような事を言いましょう。
実は私、貴方と神の会話の内容知ってるんですよ」


人差し指を口元にもっていき、小悪魔のように笑う。



「…なるほど、流石は『賢者』。この名をつけた事に偽りなし。
それでこそ魔王、そして、去らば。我が内にて、お眠りください」


刀をスラルに対して垂直に掲げる。


痛みがないように、その想いを一瞬で刈り取るために。



「これは最後まで私が墓まで持っていきますよ。本にも書いてないので安心してください。
それでは、後の事を頼みます。
魔人も魔王も貴方に託します、だからこそ、貴方に感謝を。
この500年が、私が生きた証です」



そして、刃が振り下ろされた。

その場は、ただ静かで、独り言でも大きく響いた。






「魔王よ、貴方の言葉には間違いがある。
私と神との繋がりは、他が語れるほど甘いものではないのだから…」




刀を鞘に戻し、そのままトロスは部屋を後にする。


その場には何故か、血の一滴すらも墜ちてはいなかった。


























「この感じ、魔王死んじゃったのかな?
やっぱり試作段階を与えたのがダメだったね、まあいいや。
次は、君が魔王だ。しっかりと務めを果たしてね」

その陽気な声に、一人の小さな男は頭を下げる。

別に小さいわけではない。

だが目の前にいるそれと比べると彼は小さかった。


「拝命仕りました。
魔王としての務め。確かに果たして魅せましょう」


その男の名はナイチサ。

黒いマントに、貴族の様な服。

金髪に白い肌をもつ吸血鬼のイメージに最も合う男。

超神プランナーより直接魔王に任命されし魔王。

この時代から、人間と魔族の戦争は大きなものとなる。
















あとがき
なんか失敗した感じがあるような気もしない、どうも作者です。
スラルが魔王という印象が欲しかったんですけど、できたのか?
もしかしたら編集入るかもしれません。

今後の流れとしては、
スラル編までにでてきた登場人物紹介→外伝orナイチサ編(みんな大好きレッドアイ!)
になると思います。

正直レッドアイを書くのが難しいと感じてます。
もう、レッドアイ飛ばしてパイアールをトロスが―――してる間に魔王が気づけばレッドアイを魔人にしてましたww にしたくてたまらない。
たが、レッドアイ書いてみたい。
これはもう作者の気分で決めます。
まあ、書くことになります。ええ、書きますとも。


皆さんもこの暑い日を頑張って過ごしてください。
作者は東方とかいろいろと作業用BGMでも聞きながら書きます。


それではこれにて、魔王スラル編完結です。
今思えば一番まともな終わり方の魔王でした。







[18886] スラル編までのキャラ紹介(ネタ)
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/07/15 19:00


今回はスラル編までのキャラ紹介(笑)です。
まじめな紹介はほとんどありません。
一部は真面目な紹介があります、これが私の、赤き真実!!



魔王編



・初代魔王ククルククル

トロスを食物的な意味で魔人にスカウトした魔王。
その他に、ケイブリス(食物的な意味)を魔人にした。
しかし残念なことに味見すらできずドラゴンに襲われ死亡。
丸い者の王であったが数の暴力を前にその触手は地面に落ちた。

見た目はタコに近い。




・二代目魔王アベル

そんなことよりおうどんたべたい。



・三代目魔王(少女)スラル

最近は中二病で妄想するのが好きだった。
考えた必殺技は『エターナルフォースブリザード』
効果、相手は死ぬ。
勉強が大好きで暴力は嫌い。
二次創作などでの登場はほとんどない。

理由として、
・年代が違う。
・戦国しかしらない。
・そもそもランスの二次創作が少ない。
などが挙げられる。


その割にはこの作品内にて結構な人気を獲得した。
散り様は今までの魔王にしては綺麗なものだった。







魔人編



・魔人トロス

今書けることはそんなにない。
全ての魔人に対し友好的といえる。
人間に対しては今はまだ語れない。
なお、特殊な刀を所持している。(素材の一部としてククルククルが挙げられる)
刀の名前は『クルクル』という設定である。(良い案があれば変えたいです)
必殺技とか考えてません。
スラルに考えてもらうことにします。

背丈はカミーラと同等程度。
服は貴族風でナイチサよりも楽な服装。
髪型は黒色でオールバック、長さは方より短い。瞳の色は蒼。
技能などに関しても今はまだ書けません。





・魔人ケイブリス

昔は可愛かったリス。今では大きくなり、体から触手のようなモノが一本生えている。
萌えキャラにしようと作者は頑張ったが途中で断念。
これからは泥臭いかっこいいキャラを目指してほしい。

現在約300㎝と大きい。
その重さからメガラスがケイブリスを背に乗せることはもうない。
カミーラに片思い中であるがそれが実ることはない。
いろいろと可哀そうな子である。
最近は体を鍛える事に集中しているせいで登場が少なくなる予定。





・魔人メガラス

ヒロイン、いわゆるひとつの萌え要素。
この作品にてヒロインの座を見事勝ち取った猛者である。
その魅力的な肉体で相手を翻弄する。
(最近擬人化メガラスを考えてます、勿論女。
だが私には絵心がないので書けない悲しみ)






・魔人カミーラ

クールは気取っているがかなりの寂しがり屋。
メガラスにヒロイン勝負で負け、ベットに転がりめそめそしていたが復活。
サブヒロインとして愛しの彼に猛アタックを決意する。
だがプライドが邪魔をしてアタックできない。
このままでは不味いと最近焦りながら使徒である七星に八つ当たりをしている。

嬉しい時など顔にはでないが翼に出ている。
本人も周りも気づいてないが、バレた時の羞恥心はどれほどのものだろう?
ちなみに作者の中でのカミーラはランス6である。




・魔人ケッセルリンク

最近霧に変化できるようになったことを誇りに思っている。
このまま行けば魔人の中で上位になる日はもうそこまで来ている。
いろいろと心境の変化があった。
今ではトロスとはとても仲がいい友人である。
カミーラの愚痴を聞くことも多く、魔人内ではお母さんのような人。
ガルティアにはご飯を作ってあげる事もある。
見事に餌付けしているわけではない。

彼はスラルの騎士、これは譲れない。





・魔人ガルティア

スラルに『暴食』の名をつけられるほどの腹をもつ。
魔人となってから体内に多くのムシを入れるようになった。
だが残念なことに彼の出番がいつくるかは分からない。
出番が最も無い可能性を持つ男。
現在抉られた片目には眼帯を装備している。






・魔人アンデルセン

オリキャラ。
見た目は140程度の小さめの身長。
服装は神父服を自分用に改造し、薄着にして使用している。
髪は金髪で、長髪ストレート。瞳の色は薄いブルー。
武器は銃剣(バイヨネット)
銃ではなく剣であるので、出しても問題はない。


技能に魔法Lv?
  聖魔法LV?
  狂信者Lv3がある。


狂信者の効果は、ある特定のなにかを慕い仕え全てを捧げる事で発動する技能。
特定のなにかへの想いが大きいほど身体は勿論、そのほかにも影響を与える。
なお、この技能を彼女以外が持つことはない。


新魔法として『セイクロサンクト(神聖にして侵すべからず)』がある。
効果として、ある物体に衝撃波的なものを与える。
正確には特定したモノにたいして発動させ、磁石のようにそれ以外を弾き飛ばす。
故に飛ばす以外にも、自信が特定したものなら引き付けることもできる。
威力はこれを使う魔人しだい。
尚、この技を使うのはアンデルセンだけである。

奇数の日は髪型をポニーにする。




使徒編

・使徒七星

現在はカミーラの執事及びお母さん的な仕事をしている。
面倒見がよく、彼の入れる紅茶はおいしい。
なんとなくのイメージとしては、うみねこのなく頃に、に出てくるロノウェ。
家事方面では万能。








あとがき
これはキャラ紹介です。間違ってはいません。
赤き真実の元ネタ知りたい方はうみねこのなく頃に、をググってください。


次回に外伝でもいれようかという話しだったんですが、どうも書けない。
というわけで次回からナイチサ編です。
まあ、ナイチサも現在なかなか書けなくて困ってます。
此処にきてのスランプはどうもきつい。

詳しいキャラ紹介はああwikiなどをご覧ください。
どうでもいいことですがこの前6順目で国士無双をつもりました。
やばいくらい嬉しいですね、久々の役満はいいものですww





[18886] 第十四話 ナイチサ編始動
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/07/18 21:11



ナイチサ序章





人間、吸血鬼、魔王。



自分は一体なんだ?



ただ自問自答をし続ける。



答えが出るか出ないかは問題ではない。



自問自答をすることが大事なのだ。



故にナイチサは一人、心の内にて続けるのだ。



今の自分が何のか、魔王として、どう生きるか。



答えが決まっていようと、解をだせない。



認めればいいものを認められない。



自覚できない。



理解できない。



自身に流れる魔王の血を。



そんな時、声が聞こえたのだ。



自身によく似た声が、低く低く、ナイチサを舐めるような声で。



それは救いとなるだろうか。



それともナイチサの心を壊すだけになるのか。



少なくとも、後者の答えはありえない。



だって彼は、魔王なのだから。












――汝、何を悩む吾である汝が何を悩む必要があるというのか?――




「悩みではないのかもしれない、ただ我は恐れているのかもしれない。
今では何を恐れているのかも分からない」





――違うぞ吾よ、汝が恐れるものなど何もない。
怖がるもの無い、何故だかわかるか?――





「…何故だ、我には分からぬ、今の我には何も分からんのだ…」





――簡単な事よ、それは魔王だからだ。この世界における頂点。
食物連鎖のピラミッドにて、間違いなく頂点であり、何者も届かぬ地点である。
吾は其処に居る、汝も其処に居る。
ならば、何を恐れる事があろうか、何を悩む必要があろうか?
ただ、吾がしたいことをやり、汝がしたいことをすればいい――






「分からない。何故我は魔王なのだ?
我にはそれが理解できないのだ」





ナイチサは頭を地面に擦りつけ考える。




元は人間、それが吸血鬼。




そして、魔王となった者。




神に合い、直接魔王に任命された者。



しかし、それが不幸か?



否、そんなわけがない。



限りなく彼は幸福であり、神に認められた者なのだから。





――理解?何故そんな事をせねばならんのだ?
ただ受け入れればいい。その血を、本能を!
汝魔王なり、誰にそれを否定できない。
それを汝が否定することは許されず、できんのだ――





「我に選択権はないのか?
我に魔王として生きて、死ねと?」





――ハッハッハ、選択権?
あるではないか、魔王として生きればそんなもの山ほどある。
魔王として生きて死ね? なにを馬鹿な。
魔王がそんな簡単に死ぬものか。魔王として生きれば命は約束される。
汝は既に分かっているはずだ。ただ、それを受け入れようとしないだけ。

受け入れよ、吾は汝の友であり、奪う為にきたのではないのだから。

手を伸ばせ、汝吾と共に、この世に恐怖と混沌をばら撒こうではないか――




その言葉でナイチサは顔を挙げた。



その顔に、戸惑いは無く、決意を秘めた眼を宿していた。





「受け入れる、か…
すこし分かった気がするぞ吾よ。そして少し訂正しよう。
受け入れるのではなく、共に行くのだ。
今汝が言ったように共に行くのだ、魔王である、その日まで――――」




――その通りだ、吾は汝と同じ存在。ならばどうして離れる事があろうか。
共に行こうぞ、新たなる魔王よ。
今こそ、汝の務めを果たす時なり、足を動かせ、思考を止めるな。
そして、気高く強くあれ、それでこそ、魔王というモノだ――





「勿論だ、それでは行こうか吾よ。
配下の魔人と共に、務めを果たそう。
我が内を駆け巡れ、そして共に行くぞ、なんせ我等は同じ存在なのだから」





共に荒野を歩く。



たが影は一つであり、その存在もまた一つだった。





「「――吾は汝の友であり、奪う為に来たのではない。
我は汝の友であり、奪う為にきたのではないのだから。
ならば汝わが手を掴め、永劫なる時の中で、共に終わりの時まで務めを果たすのだ。
今一つとなりて名乗ろう。我が名はナイチサ、この世の頂点たる魔王なり――」」






其処に、魔王が生まれた。



これまでの魔王とは違う、本当の魔王。




その気高い魔王の生き様が始まるのだ。





彼が魔王なのは誰に否定できない。





彼自身は否定することもない。





半端な決意を持つ者が魔王になることはできない。






だからこそ、アベルという魔王は魔王になる資格などなかった。






この魔王こそ、歴代において最も魔王に近い者であろう。






この血を持ちし魔王から次の魔王が生まれる。






このナイチサに流れし魔王の血が続く限り、この世に安定の日は来ない。






彼こそ歴代初の本当の魔王。






スラルとはまた違う決意と信念を持った魔王。






この時より、人は魔王と魔人ヘの恐怖と絶望が始まる。






その序章は飾るはナイチサ。






四代目魔王ナイチサが次へと繋ぎし物語なり。










あとがき


今回は短めでした。プロローグみたいなもんです。
別にナイチサは二重人格とかじゃないですよ。
ただ、性格とかかいてあるだけで、特に設定が無い。
残忍ってだけじゃなんか嫌だ。

なので、できるだけ魔王っぽいものを作ってみたかった。
これからは魔王ナイチサのターンです。
そしてJAPAN誕生もありますね。
なかなか書けそうな気がしてきました。




だが、レッドアイだけが書けない!!
あの目ん玉が書けない!
設定あっても魔人になるところがほとんど無い!
これは作者への挑戦ですね、分かります。




ここまで来れたのは読者様の感想のお陰です。
これからも宜しくお願いします。
ランス編まで行くことが今の目標ですww


それでは、ここまで付き合っていただきありがとうございました。


また次でお会いしましょう。







[18886] 第十五話 思ったように話が進められれば楽なのに…
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/07/26 15:14




人の価値とは誰が決めるのであろう?


個人の価値、命の重さ。


在る人物は言う。


「それは他人に量れるものではない」と。


それは戯言である。


所詮人の価値など他人が決めるものなのだ。


他人に量れない?


自身を量れてないのに?


そもそも量る以前に自身を理解できてない。


それなのに、まだ分かっていない。


自分が思っている以上に自分に価値など無いことに。


理解しろ、意識して生きろ。


思うほど、自分にも他人にも価値などあまりにないと。


この世界、生き残るか残らないかが大事なのだ。


それになんの価値を求めるというのだろう。


価値があろうがなかろうが、生きれば勝ちだ。


ただ生き残れば勝ちだ。


そこに人の価値は存在しない。


生き残ればそれだけでいい。


だが、そんな暮らしに満足するわけがないのだ。


虐げられ、侮蔑され、地に平伏す。


あまりに無様、それでは何のために生まれてきたのだろう。


生きる価値すらない人間。


否、そんなことは無い筈なのだ。


そんな事を認めるわけにはいかない。


人は立つ。


国を作り、自信の欲望を満たすために。


どこまで行こうと人とはそれなのだ。


生きたいと願いながら、欲望を満たす。


そこは人同士の欲望が渦巻く場所。


今まさにこの場所。


その願いが叶うわけがない。


魔王がいるからではない。


圧倒的な力を持たずとも人間には力がある。


多種多様な力がある。


それでも人間が王者になることは無い。


その欲望が叶う時はこない。


それは根本的な問題だ。



なんせ人間というのは――――――







「――――無価値である。
何故無価値だって? そんなのは簡単だよ」



たった一つの意思が答えを紡ぐ。



「あれは僕が創ったんだから無価値なんだ。
もし無価値でない人間がいるとするなら、それは勇者か一握りの人間。
英雄や征服者、だが悲しいことにこれらも無価値に近い存在。
だが決して一概に無価値とは言えない彼らは哀れというよりほかに無い」



遠くを見つめるように眼を細める。


遠くの大地にいる者を想う。



「嗚呼、哀れだね、本当に……
せめて無価値な人間なら良かったのに。
その要らぬ力のせいで、君達は自身を死に追いやるのだろう。
いや、死ぬとは言いきれないね、まあ生きてはいないだろうけど」


周りに誰も居ずとも語る。


たった一人で喋り続ける。



「賭けごとをしたことがあるかい?
ある賭けをする時、賭ける対象を決めるのは難しいものだと思う。
なら、せめて賭けて儲かる対象に賭けるだろう。
対象を選ぶなら、利益を持ってくる可能性が高い方を選ぶだろう。
だったら答えは簡単だ、人間なんて選ぶわけがない。
選ぶなら確実に行く、自信の手で信じられるものを創る」


「創るには材料がいる。
そして僕は、あの時あの場所で、なんと幸運であろうアレに出会った。
アレは撲ですら分からなかった、だけど賭けてしまった。
その先の可能性に、未来に、全員が賭けた」



「だから、成功する可能性を上げるべきだ。
そのために、無価値だろうと無かろうと、人間は糧となる。
アレが何を考えるかはわからん、だがそれに賭けるのも一興。
結果など知らん、ただ楽しめればいい」



別の場所で、その似て非なる存在は語る。


全員が別の場所で、同じ時間に。


たった3体の賭け。


賭ける対象は全員が同じ。


賭けが成立せずともいい。


過程を楽しみ、結果を見れたならそれでいい。


彼らにとってはその程度。


だが結果は違う。


結果によって全て変わるのだ。


彼らが望む結果を出すには、彼ら自身が手を貸さなければいけない。


そうして初めて、本当の可能性が見出せる。


どんな小さなものであろうと、それは確かなものである。


ただ時と数を積み重ね、成長する。


後は全てが運だけだろう。


最後に運以外のものはなくなる。


運だけが純粋に残った最後の時、賭けの結果が見えるのだ。



その時を夢見て待つ。


その時の彼らの表情は、間違いなく歪み笑っていることであろう。
































燃える、死ぬ、消える。

ただ其処には死が広がっていた。

生きている者は死を待つだけである。



「っひっく、ど、どうして……お、お兄、ちゃん」


その少年は泣きながら、目の前で自身を見つめる兄を見た。

それは本当に兄だったのだろうか?

そもそもこの少年に兄がいたのだろうか?

だれも分からず答えられない。

今や少年の両親は家の屋根と窓にぶちまけられているのだから。

だから少年は兄を頼った。

いつも優しかった兄を頼った。

その時の記憶は捏造されたものではなく、間違いなく経験したものである。

だが、兄は少年を助けない。

ただどう動くかを見ていた。

周りの人々が死んでいくことに脅えながら兄を頼っていた。

それに呆れたように頭を横に振り、少年の兄は口を開く。




「――――がっかりだ、今度こそは思ったが……
これも失敗、お前も劣性か――――」




その言葉に、少年はわけが分からないというような顔をする。


そもそも少年は何故今の兄に助けを求めたのだろう。

今人を殺しているのは間違いなく兄だというのに。

両親を殺したのも兄。

少年は自分だけは助けてもらえるとでも思ったのだろうか。

その答えはもはやなく、兄と呼ばれた存在は少年を首を刀を持って切り飛ばした。

誰も逃げれず、生き残れない。

その村にいた人は、二人の存在によって壊滅した。










「…何故こんな事を続けるのですか?
あまり、意味が無いように思うのですが……」

魔人である彼女は主に尋ねる。

彼女にとっての主は魔王ではなく、たった一人の魔人であった。



「わかってないぞアンデルセン、人とは狂気を孕んだ生き物だ。
だからこそ、私は信じている。魔人になる資質を持つものがいると…」


語るように魔人は言う。

魔人アンデルセンが忠誠誓いし主、トロスであった。



「しかし、時間をかけ過ぎです。今回は2年でしたが失敗でした。
これが成功する時は来るのでしょうか?」


その長い髪を靡かせ、アンデルセンは首を横に傾げる。



「…やはりもっと時間をかけた方がいいのか、あと二回試して駄目なら諦めよう。
しかし惜しい、今回はなかなかの資質を持っていたが、いかんせん心が弱すぎた」



それを反省するように呟く。


その場が血で塗れていようと二人は気にしなかった。


そうして時間だけが過ぎた時、両方が気づいた。


ある一つの存在が、魔王城の近くまで来ていることを。


いや、魔人の全てが気づいた。



「新たな魔王が来られましたね。
主、早く城に帰還致しませんと」



「分かっている」


そう言ってトロスは背から翼を出して広げる。


そのまま腕の中にアンデルセンを抱えるとそのまま飛んだ。


「行くぞ、城の準備はできているな?」


腕の中でアンデルセンは応える。



「勿論です、全て完璧に仕上げました。
七星の手伝いはとてもありがたかったです」



二人は今魔王城に帰還しようとしていた。

遂に来たのだ、長年待った魔王が。

前の魔王には無い力と意志を持ち、帰還を果たそうとしていた。

それに魔人の全員が気づいていた。


魔王を迎えるため、全員は急いで集合する。


急ぐといってもほとんどの者はゆっくりとしていた。






一番初めに城に到着したのはケイブリスであった。












某カミーラ城にて


「くそ~、だるい。はたらきたくないでござる」


ベットに包まっていたカミーラはそんな事を言いながら起床した。


「何を仰いますか、早く支度してください。
下でケッセルリンク様がお待ちですよ」


カミーラの使徒である七星はカミーラをベットから出しながら言う。


「だって面倒なんだ、トロスも来ないしメガラスもいない。
ケッセルリンクが来てるなら、しょうがないから行く…」


寝むい眼を擦りながら服を整える。


「はいはい急いでください、紅茶はテーブルの上に在ります。
あと、カリスマがブレイクしてます、早く治してください」


七星はカミーラの外出準備を整える。

カミーラは紅茶を一気飲みして深呼吸をした。

そして眼を閉じたあと再びゆっくりと開きオーラを纏う。



「どうだ? カリスマに溢れてるいるだろう」


それに七星は答えず、カミーラを引きずってケッセルリンクの元まで連れていった。



「待っていましたよカミーラ、お疲れ様です七星。
さあ、早く行きましょう」


ケッセルリンク一行、トロスが着いた後に到着。












「ヘヘッ、ありがとよメガラス!!
お前がいなかったら間違いなく遅刻のレベルを越えてたぜ」


「……構わない、気にするな」


ガルティアはメガラスの背に乗りながら空を飛んでいた。

本来メガラスは男を乗せる事はあまりない。

だが今回は非常事態であり、何よりメガラスとガルティアの仲はかなり良かった。



「しかし俺も運がねぇな。まさかムシをいれた後にこんな事になるなんてよ」


ガルティアは新たなムシを探して彷徨っていた。

そして遂にムシを体に入れた。

入れた後だから良かったが、入れている途中であれば待ちがいなく間に合っていなかった。

今とてメガラスがいるからこそ間に合うのだ。

メガラスは本当の所トロス所に居たかったがそれが叶わなかった。

各魔人の城や家を周りながら暮らしていたが今回ガルティアの事情につきあっていた。

魔人最速の名を持つメガラスは高速で空を駆けた。

ただトロスに会いたいというわけではない、決して。



メガラス一行、最後に到着。











そして、現れる。


その場にいる絶対の強さを誇る魔王。


今、その玉座に座った。



隣りに控えるは魔人参謀トロス。



魔王ナイチサはただ一言いった。





「さあ、魔人諸君。我の名を持って命じよう。
人間に対し、闘争を、戦争を始めよう。我々の恐怖を教える時が来たのだ」



その場にいる魔人達はその言葉に、歓喜を表した。







あとがき
思ったように話が進みません。
この先パイアールに関してのみ少し設定をいじるかもしれません。



7年前に私は出会った。

その時私はそれにあまり興味がなかった。

そのSSを読み設定を読みキャラを見た。

だけど、決してゲームだけはしなかった。

今回、私はそのゲームをするかもしれない。

今度は是非やりたい、他の方にもやって欲しい。

ということでおめでとう、マブラヴ オルタネイティヴ クロニクルズ。

これやってみたいですね本当ww




今回いつもより更新の間隔が空いた気がします。

別に恋姫の新作やってたわけじゃないですよ。本当です。

本当にやってません。恋かっこよかったけどエロないとか何故とか思ってません。

愛紗は無印からのヒロインなのに何故エロがないとかも思ってません。

なんか今回の恋姫は地雷みたいな話を聞きましたけどそんなことはありません。
恋姫はキャラがいいですからね、キャラが好きなら地雷なんて言えません。
愛が無い人には分からないです。




しかし最近暑いですね。
この暑さは作者から執筆意欲はもの凄く奪っていきます。
なんでこんなに暑いんでしょうねww






[18886] 第十六話 ナイチサ「エターナルフォースブリザード!!」
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/07/29 22:23




魔王が再び世に君臨した。

今はまだ到着しただけである。

しかし、人間が悲惨な目に合うのは絶対であろう。

時代が動きだそうとしていた。

ナイチサという魔王の時代が開始する。

それはまだ少し先のこと。

ナイチサは到着と同時にこう言った。



「我は先代の魔王の教えを見ねばならぬ。
そして、諸君らには、やってもらわねばならぬことがある」


そういって魔王は辺りを見渡す。



「軍を創るのだ、魔の軍を、我々がこの世界の頂点という事を表す軍を創るのだ。
何年かけようと構わない、魔人が率いる軍を創れ。
その間に、我はすこし旅にでる。
共をするのはトロスだけで構わん。
もしかしたら、魔人が増えるかもしれのでな」



そう言い残し、書斎に引きこもっていった。


残された魔人達はただ呆然しながら魔王城を出て行った。



「それで、いかがします?
魔王様はああ言いましたが私も軍を編成しておきましょうか?」


アンデルセンはトロスを見上げながら聞く。



「そうだな、一応やっておいてくれ。
まったく、集団というのは面倒だから軍はあまり創りたくなかった。
だが、いずれは必要になるものだから仕方がないだろう」



「了解、それでは行って参ります。
主様も魔王様の警護、頑張ってくださいませ」


「私の留守の間は任せる。
掃除も軍も任せて悪いな……」


そう言ってトロスはアンデルセンの頭を撫でる。



「えへへ、いいですよこのぐらい。
それでは、失礼致します」


アンデルセンは顔をにやけさせながら扉からでていった。



「さて、私も、行くまでにやれることはしておこう」


そして無人になる玉座の間。


全員の反応は微妙と行ったところだろう。


それは皆が魔王の力を知らないのだから仕方ない。


そして、共に旅にでるトロスは魔王を知る、


いや、皆本能で分かっているだろう、魔王が強いと。


だが実際に眼にしたことはない。


まともに見たのはケイブリスとトロスだけだろう。


この先、ナイチサより続いていく魔王の系譜。


本当の魔王の恐怖は此処から始まった。











その魔王に魔人とされる者達もいる。


敵対する勇者もいる。


征服者達もいる。







現在勇者は生まれていなかった。

生まれていたとしても意味はない。

その力はゴミにも劣る程度。

魔王に傷をつける勇者はいまだ生まれず。











勇敢なるコンキスタドーレス。

それは生まれながら魔王に敵対できるほどの力をもたない。

その中の一人、間違いなく英雄としての器を持つ者。

JAPANの英雄未だ生まれず。










それは飽きていた。

今の現状、生活、その全てに。


(んん~、飽きてきましたね。そろそろ他の事もさせやがれって感じですね~
ミーはもっとエキサイトな事がしたいので~す、なんか言えやオールドじじい)



その宝石は、現状に不満を持ち変化を求めた。


その力を高め、憑依を繰り返す日常を飽いていた。


彼が本気で怒らないのは力が増えているからだろう。


彼自身も自分を良く理解していた。


だが、それは全てが無駄となる。


彼は知らなかった、魔王の強さを。


彼は知らなかった、魔人の強さを・


彼は知らなかった、自身が魔人となるのを。


その心を持っていたが故に思うこともある。


誰にもそれを理解できない。


彼がまた通常とは違う心を持った宝石故に分からない。


だからこそ、彼は魔人になった。


それはもうすぐ、だが彼にとっては少しだけ長い時間だった。









天才、秀才、全て人間にしておくには惜しい存在。


トロスが眼を付けた人間の中に現れた異端。


誰も気づかず分からない。


トロスだから分かった存在。


その存在はいまだ生まれず。


しかしもうすぐ生まれる。


生まれた時と生まれた後、その全ては違ったものとなる。


それは、まだ先の話である。












その哀れなる鬼は魔人なる。

だが悲しきかな。

それは存在が薄く、弱いがために糧となる。

それは決してトロスの糧ではない。

それもまた別の話であり、先の話である。

だがあまりに無様で哀れであるこの魔人に救いない。

ただ死という運命が待ちうけていた。















それは湖に住み、あらゆるものを寄せ付けはしなかった。


あらゆる手段を持ってしても、誰も彼の力は抑えることはできない。


あらゆる事をもってしても、誰として彼の心を静める事はできなかった。

湖を中心とし、辺りは全て焼き払われた。


その一帯の主と呼ばれるような存在。


この場で彼を知らぬなら死を覚悟せよ。


それに対して彼が誰かなどと質問するなど愚かである。



愚問なり、無知蒙昧、知らぬが故に命を落とす。



その炎に包まれし心もって、全てを焦土と化す。

彼こそ炎カッパというモンスター。

名をザビエル。

後にJAPANにて恐怖の対象なる魔人である。
















そして、此処にも一体、脅威が存在していた。

その地は今や地獄と化した場所。

未だ天満橋は創られていなかった時代。

この地獄のような場所の一角。

満月が頭上に輝く開けた場所。

小さな川がその存在の近くを流れていた。

辺りを人の血で染め抜き、ソレは笑っていた。

その姿はとても美しかった。

その白い肌と透き通るような白い髪。

そして真赤な瞳。

着物ではなく浴衣のようなものを着たソレ。

見た目は間違いなく女。

しかし、ある一か所が違った。

その声が、笑う声も喋る声も、男であったのだ。

少し枯れた老人のような声。


その手に真赤に染まった刀を持ち、それを頭上に掲げる。

その血が顔に垂れようが、ソレは笑っていた。

満月の光に照らされし血にまみれたその姿は、戦女神のようであった。


ソレが彼女なのか彼なのかは分からない。

仮に彼女ということにしよう。

容姿だけで言えば間違いなく彼女である。

そして、周りの血も、元は彼女に惹かれ強姦しようとした男達のなれの果てであった。

彼女の足元にはまだ一人の男が残っていた。

それは恐怖で顔を歪ませながら、坦々と死を待つだけであった。

その姿に惹かれた男であったが今ではそれすら恐怖の対象であった。

男は死を待ちながらも隙を窺っていた。

どんな些細なことでもいいから時間を稼ぎ、逃げようとしていた。

それこそ、この男が今生きている理由でもあった。

用心深く、ひっそりと身を潜めていたからこそ今生きていた。

しかし居場所がばれていてはもうどうしようもない。

半ば諦めかけていた時、それを聞いた。



「――――我が刀に、切れぬものなどなにも無い――――」



その言葉を、男は聞き逃さなかった。


「ま、待ってくれ、ち、ちがうぞ……
お前にも、切れないものがある!」


静かに頭を上げて言う。

これはまさに賭けであった。

この言葉で興味をひかせ、少しの油断の間に逃げる。


そんな成功しなさそうな案を男は採用した。

もはや選ぶ時間はなく、この判断を迷わなかったからこそ生きてきた。

他人とは違う考えを持ち、行動してきたからこそ此処まで来れた。

今この男の五感は鋭く、生き残ろうと、体が反応しているのである。



「…ほう、儂が切れぬもの、か……
よければ教えてもらおうか、その切れぬものを」



彼女が見下ろす様はまるでクソ虫を見るようであった。


その視線を受けながら、男は必死に声を出した。



「簡単だ、それはな、言葉だ。
他にもあるぞ、記憶や俺が生きてきた人生、どうやって切る?」



「……ふむ、なかなか面白いものを例えにしてきたのう…」



そうして彼女は片手で顎を触りながら考えだした。


これこそ男が待った瞬間。


一瞬の隙であり逃げる瞬間。


この瞬間を待ち、男は待っていた。


そして、駆ける。


駆ける、駆ける、必死に駆ける。


最早足が潰れてもいい、息が切れようと知ったことじゃない。


とどのつまり、最も大事なのは命。


これさえ逃げ切れば後はなんとかなる。


そう思い、男は駆けた。



山を転がり落ちながらも遂に逃げ切る。


体泥に塗れ、服など既にボロボロであった


其処は山の入り口のような場所。


男は喜びながら足を前に進める。


内心の喜びを必死に抑え、ただ足を前につきだす。


息を整え、歩きながら男は喜びを叫んだ。



「――――……」



だが、それは決して声にでなかった。


ただ口をパクパクと動かすだけ。


その姿は滑稽だった事だろう。


男は口と咽から噴き出る血を抑えながら後ろを向く。


其処には今まで必死に逃げる対象の女がいた。


彼女はにこにこしながら話しだした。



「ほら、これが答えだ。
どうだ? 切ってみせたぞ、お前の声を――――」



男に最早声は聞こえない。

その言葉を最後まで聞き遂げる前に、男は事切れた。



「死ねばいい。記憶も人生も死ねば意味がないのだ。
ならば切って殺せば全てなくなる。
これが答えだ、結局全て切ってしまえば終わりだから」



そう言って彼女は刀に付いた血を拭い鞘に収めた。


ゆっくりと、頭上に輝く満月に眼を向ける。

その真赤な瞳で満月を捉える。



「もっと人を、鬼を、妖怪を切り殺したい……
そしていつか、夢を叶えるのだ、儂が打った刀と共に。
神を切りてこの世に墜とす――――」



不可能に近い願いを持ちながら決して諦めない彼女は強者である。


全てを喰らってもまだ足りない。


渇きも飢えも満たされない。


もしかしたら、それは魔人になれば変わるかもしれない。



今宵JAPANにて小さな川が赤に染まった。


彼女が魔人になる日は遠くないだろう。



















おまけ、(ナイチサ、スラルの部屋にてある本を発見する)



流石、というのであろう。

これまで我は此処まで壮大な本を読んだ事はなかった。

これほど次の魔王の事まで考えて書いた書物まであるとは…


「流石は、賢者と呼ばれた事はある……」


また一つ手に取る。

おや、これは他の本とはまた違うな。



題名:私が考えた必殺技


な、なんだこれは、一体何が書いてあるのだ?

そう思い、我は表紙を捲っていった。



「なん…だと…、エターナルフォースブリザード。
なんという、かっこいい技名なんだ」


我はこのネーミングセンスに打ちひしがれた。


しかも下に効果まで書いてあるではないか。


相手は死ぬ、まさに魔王に相応しい技ではないか!


我は決心した、この偉大なる先代魔王に敬意を評そう。



「この技、我のものとさせていただこう。
それが先代に対する我なりの気持ちである」


早速この本を読破しなければいけない。


トロスも待たせているのだから出来るだけ急ごう。


魔王になりて早速忙しくなってきたな。


これは、本当に楽しいぞ。













あとがき
うまく書けない。
なぜかナイチサ旅宣言。まあ、こうでもしなきゃレッドアイもザビエルとも合わない。
と勝手に妄想してます。

一つ大事な報告があります。

パイアールですが、かなり設定変更しようと思います。

ちょっとばかしキャラが変わるかもしれませんが許してほしいです。

一応言うと作者はパイアールが嫌いってわけじゃありません。

好きだからこそ、書きやすい方向に持っていきたいのです。



今回は特に大した話じゃありません。
最後にでたのは勿論オリ魔人。
最初の頃考えてた設定とはかなり違います。
こうやって書いてるからこそ出てくる矛盾点。
話し創る側としてロジックエラー的なことはないように頑張ります。





あとリゼルグさーん。
あれキリ番っていうのか分からないですけど
とりあえず100ゲットしたリゼルグさん。

なんか希望する話があったら感想の方に書き込んでください。
番外編って形で書かせていただきます。







[18886] 番外編 シリアス無の駄文になったかもしれない話
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/08/03 19:28





  注意事項


今回は100をとったリゼルグさん希望の小説です。

・カミーラのもとへトロスが訪ねてきたときの日常
・使途しかいないときとトロスが訪ねてきたときの外面のギャップと内面であわてた姿が見たい
・つまりカリスマ状態とカリスマブレイク状態のギャップを楽しみたい
・そのとき第三者としてみた七星の心中



これらの希望にそって書いていきます。


尚、この今回は全て七星の視点で話を進めていきます。
七星(笑)になっていますので、注意してください。


他に言うとすれば、この作品にでるカミーラとアリスソフトさんのカミーラは性格がかなり変わっております。
たまにカミーラ(笑)がうーうー言いだす可能性があります。



以上の事に気をつけてください。



リゼルグさん、先に謝っておきます。
今回は許してほしいと頭を下げます。
正直これにカリスマのカの字が存在しているかすら怪しいです。
日本語がかなり変なことになっているかもしれません。
一応確認はしましたが、寝不足によって誤字などあるかもしれません。
















「畜生~、うざいよ~あの魔王。
有無を言わさず解散とか私の事舐めてるのか?」


まったくカミーラ様はまた着替えずベットに飛び込んで……

もう少し威厳とういかなんというか、以前あったはずのカリスマさえ消えてますね。

たぶん私の存在も認識してないかもしれません。



「う~、う~」


嗚呼、またカミーラ様が唸りだした。

う~う~言うのはやめてくださいといつも言っているのに。

しかも顔を埋めて唸ってますね…


私に作らせたゆっくりトロス君人形と、手に持ってるのは10分の1メガラスたん人形ですね。

あれ作るのは心底疲れましたね。


トロス様のは枕にも使えるような形の人形にしなければいけないし、

メガラス様に関しては、つぶらな瞳と愛くるしいフォルム、

その抱き具合の良さと、かなり可愛くあしらった顔つき。

これ作ったのが私って知られたら殺されますね。

ええ確実に殺されます。

そんな私の気持ちもしらないカミーラ様はまだ唸ってるし……



「う~、またトロスにもしばらく会えないし、メガラスも来ないし、
なんか、こう、働きたくないでござる」



「カミーラ様、口調とか変わってますよ。
それといろんなモノが音を立てて崩れていってます」



「いたのか七星、そんな事より茶を持ってこい。
私は腹が減っているぞ」



この主君は、もうダメですね。


いろんな意味で駄目です。


ってカミーラ様、そんなジト目で睨まないでくださいよ。


そもそもカミーラ様は労働の喜び分かってないんでしょうか?


なんか種族は違うドラゴン族でも恥ずかしいですね。




「う~、聞いてるのか七星~
早くしろ~、じゃないと美青年使って遊びだすぞ~」



「だからそのう~う~言うのをやめてくださいと言っているでしょう!
それをやめないとトロス様に嫌われますよ!」



ああ、やってしまった。

あまりにイライラしてたせいで怒鳴っちゃいました。

カミーラ様も涙目でこっちを見ないで喋ってください。

もう怒っていいので何か言ってください。



「う、うるちゃい! 使徒の癖に、私に口答えするな!」



「あー! 何をするんですかカミーラ様!
メガラス様の人形を投げないでください、これ作るのに何日掛かったと思うんですか!
この腕に収まるいい感じの大きさ、私が作った中で間違いなく最高の一品ですよ!!」



なんて事をするんだろうこの主は、

よりにもよって、最高傑作メガラスたん人形を投げるなんて。



「そ、そんなに怒るなよ~七星。
許してくれないと第三の目とか開いちゃうぞ!
邪気眼とか持ってるんだぞ!!」



もう何いってるか分かりませんよ我が主。


邪気眼ってなんですか?


もしかして、スラル様の部屋に入り浸ってる時に考えたものですか?


あの方はいろいろと変わってるから、


あれほど行くなと言ったのに言ったんですね。


私の言い付けを守らなかったですね。


そうですか、そうですね。


たまにはお仕置きってのもいいですね。


だから、今回ばかりは許しません。


もうすぐ起こる状況にて、私の怒りをぶつけます。


その時は是非、邪気眼(笑)でなんとかしてみせてください。










……嗚呼、来ましたね。


てかこの主は気づかないんでしょうか。


もう其処まで来てるのにトロス君人形に抱きついて……


もうこの人の二つ名って怠惰でいいんじゃないか?


スラル様もこれ以外思いつかないって顔してたし、これ絶対に魔人全員にばら撒いておきますから覚悟してくださいねカミーラ様。




コツコツと音を立てて階段を上ってますね。


此処に来るまで一分も掛からないでしょう。


さあ、どうしますカミーラ様。


この状況をどうしますか、どうやって切りぬけるんですか?


コン、コン。









って何扉叩いてるんですかトロスサマァァァ!


そこは有無を言わさず扉を開けなきゃ意味なんでしょう。




「失礼、トロスだが、カミーラはいるか?」




カッハァ、名乗りまでしちゃってもうバレちゃいましたよ。



「アッサム!!」




は? カミーラ様、何を言ってるんですかって、何を投げてるんですか―――――。




ははは、今、トロス君人形が見えなくなりましたよ。




これはひどい。


なにがひどいって全てがです。


今回の作品とか、作品とか小説とか。


また徹夜の日々が待っています。


本当にありがとうございました。


私、もう使徒辞めたいと考えてますよ、カミーラ様……




「何をしている七星。客人を待たせるな。
はやく扉を開けてアッサムを入れろ」




なんでイスに座って足組んでるんですか?


いきなりカリスマ全開ですか?


私本気で辞めますよ?




「何をしている、早くしろ七星」




このピ――――――が!!


分かりましたよ、遣りますよ。


ただしこれが終わったら、どうあっても暇を貰いますから。



「申し訳ありませんトロス様。
どうぞ、お部屋にお入りください」



これぞ主夫の力というものです。

即座に心を入れ替え、状況に合わせる。

この接客、そして笑顔。

忘れないようにアッサムと茶菓子まで用意する。

これぞ真の主夫であり、執事というものです。



ほんと、使徒なのに何やってんだろ私……




「カミーラ、今回来たのは軍についてだ。
お前のことだから、やる気なんてないだろうと思ってきたのだが、どうだ?」



流石ですトロス様。

まったくもってその通りです。

さあ、カミーラ様、これをどう切りぬけますか!




「ふん、この私に軍など不要。
そのようなもの、弱小が持つものだ」



なんか嘘ついてるー。

なんですかそれ、さっきまでう~う~言ってたの誰ですか?

てか貴女は一体誰ですか、本当に魔人カミーラ様?


この変わりようは、理解できませんよカミーラ様。



「そうか、しかしこれは魔王の命というほどでもないが一応命令だ。
これには従ってもらうしかない。
そうだな、お前が軍を作ってくれたなら、私が一日お前の命に従う、
こういうことがあれば、お前は命に従ってくれるか?」



その時のカミーラ様の眼は一生忘れる事ができないでしょう。

カリスマ(笑)を継続しながら、すこし頬を赤く染め、

眼を見開き、座っているのに犬が尻尾を激しく振っているようでした。

しかもまた羽をパタパタさえてるし、貴女は犬ですか?

誇り高いプラチナドラゴン(笑)とか言ってたのは嘘だったんですか?



「…なんでも、いいのか?」


なんてこと質問してるんですか、そして何をさせる気ですか?



「ああ、構わない。なんでも言うことを聞こう」



トロス様もちょっと笑いながら答えないでください。


澄まし顔で結構凄いこと言ってますよ。



「そ、そうか、なんでも、いいんだな。
分かった、私の軍、確かに作ってみせよう。
その約、違えることがないようにな」



カミーラ様、顔のにやけが止まってませんよ。



「それならいい。私もやらねばならんことがある。
そろそろ失礼しよう、七星、これはなかなかに美味かった。
これからもカミーラを支えてやってくれ」



嗚呼、トロス様。 貴方が私の主君に見てきましたよ。


この幻覚、本当だったら良かったんですけどね。




「なにをしている七星。
さあ行くぞ、我が軍団を作り上げるのだ」





高笑いしながら言わないでください。


はいはい、ついていきますよカミーラ様。


私はなんだかんだ言っても、貴女の使徒ですからね。


一生、貴女の傍におりましょう。












まあ、もしかしたら実家に帰らせていただくこもしれませんが…














これにて終了。


いかがでしたか? とてもひどかったでしょう。


これはひどいと言うしかありませんでした。


次もなんか記念に短編でも書きましょうか。


PV数○○記念とか、題名は「終末」
もちろんギャグ漫画日和的な感じにします。
これ書くとしてもキャラの予想出来る人は多いでしょう。
司会は勿論七星。







おまけ



「主様、なにをしているのですか?」


「アンか、裁縫というやつらしい。
この前七星に習ってきたんだ」


「へえ~、それかわいいですね、何を作ってるんですか?」



「……これは、ケイブリス、だ」


「……」

「……」



「主様それは、冗談でしょうか?
それがケイブリスなどと…」



「あいつも、昔は可愛かったんだよ。
あの頃は、小さくて、元気で、よく私の方で寝ていたな…」



「主様、今の現実を見てください。
過去は可愛くても、今はアレです。
その人形はただのリスなんです」



「…分かっている」


ある日のトロスとアンデルセン。


過去は可愛いリスだったケイブリスたん。


とりあえず、女化と擬人化でもしようか。
















あとがき
ダリル・マクマナス中尉
ウィルバート・コリンズ海兵少尉
リリア・シェルベリ海兵少尉
海兵第318戦術機体
みんな良かった。

勿論オールストン准将もね。


とりあえず個人的にはメルヴィナ・アードヴァニー最高。
別にちょっとロリっぽいから好きではなく、なんとなく好きなので誤解しないでほしい。


これ以上言うとネタバレになるので言いません。
なんのネタバレか、皆さんわかりますね。



とりあえずリゼルグさん、御免なさい。
今回はご要望から結構離れた感じになった気がします。
こんな作品でよかったですか?



名前   七星

趣味・特技  家事全般・裁縫(主に人形作り)
 



次の投稿、かなりふざけた短編、普通の更新。

どちらがいいですか?

要望が無ければ、作者はう~う~唸っときます。


今回もこんな話にお付き合いいただきありがとうございました。






[18886] 第十七話 オマケが酷いので注意
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/08/11 17:56





人には個人の意思がある。


それは魔人にも言えることである。


それはこの世に存在する生物にいえる事である。


だからこそ、その意思、思想が邪魔なのだ。


集団という組織の中に個人の考えはいらない。


集団を維持するには、時には荒療治も必要なのだろう。


それが軍という集団であるなら更に厳しいものとなる。


軍とは戦うためのもの。


其処には狂気やらいろいろなものが渦巻いている。


だからこそ、集団を維持するよりも厄介なのだ。


軍という集団よりも面倒なものは無いだろう。


そもそも軍を維持するというのは不可能に近い。


一度戦闘が始まったとしよう。


それが明らかに負けであるとき、そこには恐怖が生まれる。


そこから敗走や降伏をしだすものが現れる。


それは生きる為でもある。


生きる為に逃げる、その先は知らないのだろう。


まったく愚かで馬鹿な考えだろう。


軍の集団維持は戦闘が始まれば脆い、脆すぎる。


士気が下がればそれだけで戦闘に負ける可能性が高くなる。


集団に個人の考えはいらない。


だが、軍だけは違うのだ。


それが分かっていても、命の危機がある以上生きようとする。


それは率いるものも従うものも生きたいと心の底で思っているからである。


深層意識は個人では気づかないが全員一致の考えだろう。


そんな面倒な軍集団の維持を成功させた組織があった。


正確にはその中の一部。


だが、間違いなく最強。


それこそまさに、魔王の軍と呼ぶのに相応しかった。
















魔王と魔人に従う魔物はまさにBETAのような多さであった。

種類や強さで言うなら、人より強い上程度の雑兵がほとんであった。

それでだけで十分かもしれない。

だが、トロスの考えは違った。

人より強くとも、数人に囲まれれば終わり。

強い人間相手ならば何体掛かっていった所で無様に殺されるだけ。

それではダメなのだ。

魔軍とは魔王の軍。

それが人に倒されてはならない。

倒されるにしても、その程度のレベルでは話にならない。

それでは返って人が希望を持つだけだ。


「魔物なんて弱い」


こういう思考を与えてはいけない。

わざわざ魔人が戦うことを減らさなければいけない。

だから、作るのだ。

他とは違う軍という個人を。

その意思、思考、すべて一つのものになるように。

決して敵前逃亡などしない。

志気が低下することもない。

ただ命令をこなし、恐れを与える存在。

それこそトロスが考え、作りだす魔軍だった。


















「おいウジ虫ども、何回同じミスをすれば気が済むんだ、あ?」


そんな事を言うのはアンデルセン。

トロスの前では大人しくても他ではそういうわけではない。



現在は軍を訓練しているところであった。

正確には調教しているようなものだった。

この軍団を維持するためにアンデルセンは簡単な体罰を実施していた。

たった一つでもミスをすれば其処に銃剣が飛んでくるのだ。

それは魔人の力なので威力もおかしい。

となるとそのミスをした一体だけでなく一帯にも被害がでる。

そうやって死んでいった魔物の死体は数知れず。

この魔人は決して止まらなかった。




「モ、モウシワケアリマセン、デスガ――――――」



その軍での魔物将軍がアンデルセンに異議を申し出ようとした。

しかし、その口から続きの言葉が出る事は無かった。

その首は宙を舞い、軍団の中に墜ちて行った。



「私は私語も口答えも許さないと行ったはずだ、
たとえそれが、誰であろうと例外ではない」



全員は声を出さずに固まっていた。

本来魔軍の中において魔物将軍とはかなり重要な存在であった。

リーダーの才能を持ち、一人で100体の魔物隊長を指揮できる。

だが、この中ではその地位など無意味。

この軍団の中での指揮はたった一つ。

それをするのも一人だけ。

故に、あまりいらない存在なのだ。

だれが死んだところで驚いてはいけない。

そんなことで動いたら死んでしまうのだ。

恐怖、絶対的な死の形が指揮する軍に、感情など存在しなかった。

これこそトロスが望んだ軍であった。

強さ自体には諦めるしかないだろう。

強さなど元から決まっているようなもの。

鍛えたところで行きつく先は目に見えている。

今は、今は諦める。

いつか理想の軍をつくるまで、耐えるのだ。





こうしてアンデルセンが指揮する軍。

もはやその数も少ないものだったがすぐに補充されていく。

数だけは余るほど有るのだ。

その訓練という名の調教を見せられた魔物達が補充されていく。

全員が急いで持ち場に着く。

新兵など関係なく、遅ければそれでだけで銃剣が飛んでくるのだ。

それを、毎日続ける。

本能に刻みつけるまで、永遠と続くるのだ。



これを行うアンデルセンはトロスの言葉を思い出していた。



「魔物は馬鹿だ、だからすぐに忘れてしまう。
自分達がどういうものなのか、かつてどんな事をされたのか、
故に、忘れさせるな。繰り返し刻みこんでやらなければいけない。
その身に、魂に、恐怖と魔軍としての意思を刻みつけろ」



その言葉に従い、アンデルセンは続ける。

その言葉の通りに続ける。

それは間違いなく正解。

このアンデルセン率いるトロスの軍隊。

魔軍というものは誕生する。







そして、もう一つ。

魔軍というなら魔王がいる。

誰も忘れる事が出来ない魔王。

それが今、重い扉を開け、辺り一帯に響くよう叫んだ。





「我の準備は完成せり!!
トロスよ、刻限が来た。今こそ我と共にこの世を歩む時がきたぞ!!」





















おまけ「終末」

注意

・この作品は会話分でのみ構成されています。
・元作品が分からない方にはお勧めできません。
・中身はひどい言わざるをえません。

以上、読まれないのなら一気に下まで移動して、
あとがきを読むことを推薦します。














「創造主様がいきなりこの世界を破壊する宣言してから、
制限時間が残り3時間となりました。
この時間からは予定を変更して、素敵な魔王、魔人を迎えて会議を行いたいと思います。
司会は勿論この私、カミーラ様の使徒七星でお送りします」



「世界滅亡3時間前となって、世界中ダイパニックなっています。
現在魔人のガルティア様がパニックとなって魔王城を食べ始めていますが
皆さん最後までヤケにならずに行きましょう」


「それでは、豪華なゲストを紹介します。
まずは、自称魔人最強のケイブリス様ですってアアアアーーーっと、
全裸です!!!
魔人内の大御所、ケイブリス様が全裸です!!!!
流石世界最後の日、初っ端から大ハプニングです!」


「真っ裸―ミラさん」


「なんか言っています!」


「服ってなんかイライラする」


「ええええええ、ケイブリス様服嫌いなんですか!
そりゃあ元はリスだけど、リスだけど・・・」


「うんこがついたへんでろぱの次に嫌いだ」


「嫌いの度合いが分かりませんよ!」


「すっぽんぽんぽこぽんぽこりん☆」


「何を歌っているんですか!」


「え~、ケイブリス様が良くないハッスルをしてしまいしたが、
他にも素敵なゲストに来ていただいております。
我が主であるカミーラ様でってアアアーーーー
なんだが眼が死んでいます、しかも手元にはトロス様とメガラス様っぽい人形が、
まるで家に居る時のようなカミーラ様です!」


「七星、ピーピーうるさい」


「も、申し訳ありません、
しかし、いくらカミーラ様でも今の状況ではカリスマがブレイクしています」


「いいんだよ、実は私はあんまりカリスマとかないんだから」


「わかってましたけど、これはひどい!!
っあ、ケイブリス様がショックを受けています、ファンだったんでしょうか?」


「それでも好きです!!」


「ファンだったようです」


「あ、それと私魔人になった当初、○○○と付き合ってました」


「アーーーー、またしても大胆カミングアウト!!
って吐いたーーーー、ケイブリス様吐いたーー」


「休みの日は専ら家で鼻くそほじってます」


「これもっきっついです。
ケイブリス様、むちゃくちゃ毛が抜けたーー!!」


「もう三日も服変えてません」


「もうやめてーー!!
って、あ~ケイブリス様これはむしろ嬉しいようです」


「尚、この後カミーラ様には『邪気眼☆』を歌ってもらいます」


「誰が歌うかそんなだっせー歌、ふざけんなゴミムシが!!」


「そんな~歌ってくださいよ~、あとピーーください」

「ケイブリス様またなんか言ってます」


「………」


「無視だー、カミーラ様会話を無視して目線すら会わせません」



ここでちょっとカット。

流石にゲップはさせません。






「え~、次のゲストは時間軸を無視して登場です。
前魔王、賢者と言われたスラル様です。
あれ?スラル様、愛用の本が下に落ちていますが?」

「いや、なんか臭かったんで捨てているんです」


「捨てたんですか!?
大事な本じゃなかったんですか? 本は相棒じゃなかったんですか?」


「何言ってるんですか?
私の相棒は、○○○だけですよ」

「なんかある意味凄い魔王様でした~!!」

「あの~この後スラル様には他の魔人達に知識の披露をしてもらう予定なんですが」


「ええ~、やりませんよ。
そんなメンドクサイこと、大体話して理解できる脳もってないでしょう?」


「そんな事言ってないでお願いしますよ」



「じゃあ、ちょっとだけですよ。
あ、でもどうしようかな~」



「ど、どうしたんですかスラル様?
いきなり本のページなんか破りまくって・・・」


「へい、へ~い」


「なんか乗ってきています!

次々とゲストの本性があらわになり、なんだが面白くなってきました。
次の方はどんな正体を見せてくださるのでしょうか。
魔人内にて間違いなく最強、トロス様です」



「…私は今日、告白したいことがあって此処へきました」


「アーーっと、やっぱりなにかあるようです!!」


「実は、これまで私がやってきた戦闘は、
全部超神が勝ってにやっていた事なんです」


「えーーーー!?」



「戦闘では何もしなくても全部超神が超能力で倒してただけなんです。
これまで全部神頼みだったです」



「本当に超神ってのがいるなら、なにか見せてくださいよ」


「いつまで本破ってるんですか!?」



「じゃあ、思い切って超神に頼んで創造主をどこかへ飛ばしてみましょうか」


「えーーーー、マジですか?」


「え?まさかほんとにできませんよね?」


「まさかとは思うが、本気でやらなくていいぞ」


「そうそう、この世界は滅ぶ運命なんだよ、きっと」





「なんか3人が焦ってます!!」




「じゃあ、やりますよ。
……――――――――――――――――――!!」



「掛け声かっこ悪!!」


「あ、できました」


「「「「嘘――!?」」」」







「いや、良かったですね。
命とはとても尊いものです。いいですか皆さん――」



「なんかスラル様いきなり話しだしたーー」



「ふん、私をこんな茶番に巻きんでタダですむと思っているのか!」



「カミーラ様カリスマ出そうとしてるんですか!?
その手の人形は隠せてないから半減しています!!」



「これからも魔人一筋精進いたします!!!」



「ケイブリス様はもう何を言っても引き返せない!!」



ここからはカミーラのカリスマが無くなるのでカット。

そしてまともである七星まで変化してくるので強制終了。

これはひどすぎて言葉がでません。

最後まで付き合ってくださった方には謝罪をさせていただきます。

この先は、個人で妄想していただいたら思います。





あとがき
おまけはネタなので批判はしないでください。
というのは冗談です。、もう書き込んでくださって結構です。


ここから先の話しが書けなくて困ってます。

魔人になる順番は設定無視でやります。

レキシントンでしたっけ? あの鬼の魔人。
あいつなんですが、予定より早く死ぬかもしれません。
予定では、もうナイチサの時代で死んでもらいたい。

これに反対なら感想板に書いてください。
一応賛成の方も書いてください。
賛成、反対の量でこの先の事が変わってます。

数日考えても答えが出せなかったので、読者様を頼りました。
感想の方宜しくお願いします。

感想が無いようなら、レキシントンには早めの退場をして貰います。






[18886] 第十八話 ただ設定がここに存在するだけで、作者にはこの程度の妄想が可能です
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/08/23 14:34
二つの影が動く。

日に照らされながらその場所を歩いていた。

自身の姿を隠そうともせず、二つは堂々とその姿を晒していた。

それを人間は見た。

最初は見えず、段々と近づいてくる人影にも大したことは思わなかった。


疑問を浮かべず、ただ人が来たという認識しかしていなかった。

だが、それが間近にまで近づいた時異変に気付いた。

そのプレッシャー、威圧感とでもいうのだろうか…

その人影に近づいて行った者達が消えた。

辺りにが軋むような音とともに、子供達が倒れ出す。

そして、近づいてきた人影の一人が声を発した。



「哀れなり、傲慢からくる油断なのか?
傲慢とは王が許される行為である。
故に我が僕よ、この下衆で蒙昧な人間を殺せ」



その静かな声に誰も反応ができなかった。

全員の思考が停止したその時、違う声が聞こえてきた。




「拝命仕りました。
何をしている? 思考を止めるな考えろ。
体を動かしこの状態から生きるための術を魅せてくれ」



その声と共に、近くにいた人間は死んだ。

言葉の通り死んだのだ。

首が飛び、脳漿が飛び散り、辺りをその色に染め抜いた。

もはや魂などない。

この瞬間、数人の人間は足を動かしていた。

生存本能、ただその一言で片づけるのは違うかもしれない。

だが、今間違いなくこの人間達は生きるために走った。

後ろを振り返らず、ただ生きたいと願い走った。

そんな願い、この魔人の手に掛からずともゴミ同然。

彼にとっては相手がどんなに早く走ろうとも遅かった。

彼にとってはただ刀を振るだけで全て片付いていく。


少し離れた場所を人間が走って逃げる。

追いかければすぐに追いつく距離でありながら、彼は刀を鞘に収めた。

そのまま人間の方を見て、刀に手を掛けた。

構えるでもなく、その体を人間の方に向けていた。



「さあ、今こそ進化という名の恐怖を与える時だ。
何事も、進化するモノに対して恐怖する。
それは人間も魔も同じこと、故にラ・ククルよ……
我が持つ進化を許された刀よ、その姿をこの世に魅せよ」


そう言って刀を抜く。

刀はそのまま伸びた。

伸びたということを捉えられる速さではなく、その眼に捉えるのは難しい。

決して初見で見切れるものではなかった。

それは一瞬で、先にいた人間の命を刈り取った。

まさに邪刀という名が相応しい形をした刀だった。



「見事であったぞトロスよ。
さあ、今宵は此処でいいだろう。
いささか臭いが寝るだけなら気にするまい」



「了解しました。
それでは、食事を摂りましょうか」


刀に付いた汚れを拭き取りながらトロスは応える。



今この二人は何をしていると言えるだろう。

旅というだけではない。

それ以上の考えや想いがあって魔王はトロスと二人で城を出た。

それはただの者には理解できない。

元が人間、そして魔王になったナイチサにしか分からない事があった。

それは勿論トロスにも分からない。

トロスにも思惑があった。

両者の思惑は絡まりながら日々を過ごした。
















夢を見た。

遥か遠きというほど遠くはなく、また近くもない夢。

手を伸ばせども届かぬ夢。

いや、手を伸ばそうとも思わぬ昔の夢。

我がまだ人であったころの夢。

我が我でなく撲であった頃であり今では恥とも思えるような過去の夢。



その時撲は何を考えていただろう。

分からない、理解できない、それに思うことは無い。

ただ、不快であった。 それをする事がわからなかった。





何故母は好きでもないブタのような男に抱かれるのだろうか?

撲を生かすため? 金が無いから得るため?

なら僕を殺せばいいのに母はそれをしなかった。

ただ抱かれた後、撲を連れてご飯を食べた。

別にそんな事をした金で飯を食べるのが嫌というわけじゃない。

そんな事をしながら撲に笑いかける母が溜まらなく嫌いだった。

おそらく母は気づいてないのだろう。

僕が人とは違う考え方をして、それは大人と呼ばれる存在以上の頭を持っていることを。

僕は母が何をやっているか知っている。

だが疑問がある、僕は誰の種で生まれたのかということ。

少なくとも母が体を売り出したのはそれほど前では無かったはず。

特に興味もなかったが事実を知れないことが悲しかった。






そうして日々を過ごす。

母の帰りを待ち、働き、飯を食べる。

なんともつまらなかった。

これでは生きていない。

生きていると実感できない。

実感が欲しかった。


自分の命に価値が欲しかった。

どうすれば分かるのか、僕には答えがでなかった。




ただ夢を見ていた。

終わらぬ夢と、生を感じたかった自分。

それは意外と簡単なものだった。






その知らせは簡潔で、感情など対して入っていなかった。

母が死んだそうだ。

死因は知らされなかったが大体理解できる。

死体すら寄こさないならその死体が痛み過ぎていたのかもしれない。

それらについては想像しかできないが似たようなものだろう。

なんせ仕事の最中だった。

だったら相手が何かしたに決まっている。


母が死んで特には何も思わなかった。

その何も感じぬ心に苛立った。

今思えばこの時、僕に感情が宿ったのかもしれない。

初めての感情には戸惑った。

なんせ悲しみ、憎悪、自身への嫌悪。

心が潰されることはないが、捌け口が欲しかった。


色々と考える日々が続きながら思った。


これこそ命というものだったと。

生きている実感、生きていく中にある罪の意識。

死ぬことによって母の命は消えた。

だが、この時こそわかったのだ。

人は死んで初めて命の価値が分かる。

生きている価値など意味はない。

生きている限り侵す罪は増え、または減っていく。

真の価値というものが知りたいなら死という形が最も近い。

だが死にたくないと人は思う。

生と死が交わる瞬間は想像できない。


今の人間は生きていることに感謝などしない。

周りの人間を見るだけで吐き気がする。

だから僕は試してみたかった。

その人間達が生と死を選択する場面を。

生きるために、どれだけの事ができるのか。

諦めて死を迎えるかという選択。


対象は誰でもいい。

でも僕の中では第一番目の被験者は決まっていたのだった。

まずは母を殺した可能性があるあの男。

何事も行動しなければ始まらない。











此処が僕から我へと変わる最初の行動。



自身で殺したわけではないけれど、中々楽しかったと感じていた。


人だった時にあったのはこれくらいだろうか。


そこから数年後、僕は吸血鬼になり、我は魔王となった。


悩み、その血を受け入れて魔王となった。


わざわざ吸血鬼の時を思い出す気も無い。


ただ人を殺す毎日だった気がする。


超神が現れた日は綺麗な満月の日。


そして、魔王になった日も満月。


そして今宵も満月である。


なんとも不思議な感じだ。


傍らにて眠るトロスを見る。


トロスといると不思議なことに母を思い出す。


すこし暖かいような雰囲気。


傍にいるだけで穏やかな気分だ。


あるいは好戦的になる時もある。


まったくもって不思議な魔人だ。


だが、だからこそ二人で旅をしたかった。


これは我にとっての休憩だ。


これから人類を殺すための休憩。


故に今だけはこの暖かさに塗れて寝むろう。


最後の時まで、傍に居て我を支える魔人の姿を夢見て眼ろう。



我の最後、それは既に決まっているのかもしれない。


あの笑みが絶えぬ超神。


あれだけは、我は魔王となる前も後も絶対に信用はしない。




だが少しだけ感じてしまった、思ってしまった。



トロスと超神が、根本的な所が似ていると思ったのだ。














死して生あり生して死あり 死とは生なり生とは死なり。


捉え方は人それぞれ。


解釈は自由なのだから。
















さてさて、そろそろ成長したところだろう。

まったく面倒なものだよね、人間って。

なかなか成長しないから時間が掛かっちゃった。

やったね勇者君、これで実験ができるよ。

何事も実験が必要なのだ。

それが成功したら良し、失敗したなら作りなおす。

だから、僕の第一の被験者君はそろそろ出番だ。

正直あの成功作と関わったら結果は見えてる。

だけど僕の好奇心は収まらない。

それは僕以外にだって言えるんだ。

じゃあ、そろそろ駒を進めよう。

これは人間にとっての救いの一手。

だがその駒の真価を表すには諸刃の剣。

さあ、まずは進めなければ始まらない。

それでは捨て駒を進めよう。

僕が作った試作品、魂なんて適当に持ってきたもの。

だから死ね、殺されろ。

その無様さを見せてほしい。

行け、捨て駒勇者。

そのカスのような加護をもって、絶対の加護を持つ相手と戦え。

君の運命なんて、初めから僕の手のひらにあるんだから。














あとがき
可哀そうなナイチサの過去なワケねェえぇええええぇええだらァあああぁア
ぁああああぁ!!!


全部妄想、所詮妄想。




ただ設定がここに存在するだけで、作者にはこの程度の妄想が可能です!!!



次回「勇者死す」
うざったい転生勇者がハーレム作ったけど死ぬ話です。
なんで転生? どうやって?
そんな細かい質問はしないでください、勇者が死ぬだけですから。



あと前回の賛成、反対の意見ですが、皆さん書いてください。

正直質問しても返ってこなかったら悲しいです。
そして書けません。


一人書いてくださいましたが、できればもう少し意見が欲しかったです。

全て作者に任せてるということなら賛成ってことで
前回のあとがきで書いた通りにあの魔人をさっさと殺します。



あとがき長くなりましてごめんなさい。
最後に一言、うみねこEP7の台湾正解は鳥肌がたった。







[18886] 第十九話 この勇者は書きたくない
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/08/24 14:57





これはひどいひどい物語。
勇者が魔王を倒してハッピーエンドなんて夢の話。
おとぎ話なんて嘘ばかり。
あんな化け物に勝てる奇跡なんてある筈がない。
それでも、人間ってのは魔を倒す存在かもしれない。







これはひどいひどい物語
彼は転生者と呼ばれるものだった。
彼はかなり裕福な家に育ったといってもいい。
そこらの者に比べると裕福な程度だった。
だがその環境が彼が魔王という存在を知らずに育てることになった。
彼は周りから天才と呼ばれるようになった。
言語についても前世と同じであったが故に覚える必要はなかった。
彼は歓喜していた。
モンスターを倒しながらレベルを上げ、剣を振るった。
普通の人間が勝てない存在でも彼は勝ってみせた。
そして彼は美形でもあった。
それは彼が成長していくと同時に進行していった。

彼は歓喜していた。
まさに夢のようだと、遂に俺の時代が来たと妄言を吐いていた。
ただ彼は疑問に思っていた。
彼が読んだSSの中には大抵神様が存在し、それに力を貰っていた。
だが彼は力を貰ったわけでもなく、神にあったわけでもなかった。
ただそれだけが彼の心の中にある疑問だった。






これはひどいひどい物語。
彼は運がよく、どんな酷い状況でも生き抜いた。
まさに神が彼に味方しているかのように。
それが、彼を勘違いさせる結果となる。
周りの人間より圧倒的な力を持った彼は思う。

(これは俺が主人公の物語なんだ。
ならいつまでもスタート地点にいるわけにはいかない!)

そう思い彼は家を出て、旅に出る事にした。
幸い両親はこれを許した。
天才と息子が呼ばれて有頂天にでもなっていたのだろう。
息子ならなんでも出来ると信じた馬鹿な考えだ。








これはひどいひどい物語。
そこは王が住む場所。
この辺りを支配せしコンキスタドーレの本拠地。
彼はそこでも注目を浴びていた。
国の近くに魔物が出ると聞けば其処へ行き倒した。
勿論金などは受け取っている。
金が無ければ生活ができないから当然だろう。
そうやって強い魔物を倒していく彼が王の眼に留まるのは早かった。

王は彼に言った。


「できれば、此処で働いてみないか?
報酬は好きなものを与えよう、金でも女でも、好きなものでいい。
返答は後日でいい、考えておいてくれ」


王はそう言って彼を返した。


そして、それを言われた彼は迷っていた。
王の提案はかなり魅力的だった。
本当に此処で働いてもいいと考えた。
だが、彼は留まった。
自分は勇者という思い込み。
まだ見ぬ村や町で待つ旅の仲間を想像していた。
だが、旅に金は付き物。
だから彼は条件付きで王の頼みを受けた。


「俺は金が欲しい、だから短期間だけ雇ってほしい。
その間だけは働く、その分金を用意してくれ」


その言葉に王は頷き了承した。












これはひどいひどい物語。
最初は彼は普通にモンスターを倒すなどの仕事をしていた。
そうやってその国に慣れていくうち変化が起こった。
それこそ男の夢とでも言うだろう。
ある日をきっかけに彼は女性にモテるようになった。
彼自身は気にせず女性と過ごす日々が続いていた。
彼の王から与えられた家には数人の女性が住むようになった。



いつからだろう、彼が此処に住むようになったのは?

いつからだろう、短期間ではなく彼自身が出ていくことが無くなったのは?

いつからだろう、彼が自分を勇者だと思ったのは?








本当に、ひどい物語。

王は言う。


「勇者よ、君が前に言っていた存在がこの国の近くに現れたらしい。
千の兵を率いて討伐してほしい。
まあ、魔王を殺せるなら君が魔王を好きにしてくれて構わない」


王が言うと彼は二つ返事で答えた。
彼は会ったときから王に言っていた。


「魔王という者がいたら、自分に倒させてほしい」と…



彼は思う。
もしかしたら、魔王は女で自分のハーレム入りするんじゃないかと。
そう考えた彼は昔の夢を諦めた。
欲望のために、闘うことを放棄してしまった。

自分ならできる、今までいろんな女を墜としてきた自分にできないはずが無い。
そう思い、彼はその足を進めた。















「我が王よ、よろしかったですか?
あの勇者なる男、信頼できるとは思えません。
あんなガキに千もの兵を預けては国の守りが薄くなります」


長い髭をもつ老人は目の前の王に進言した。


「構わん、所詮は現実を知らんガキだ、いくらでも利用できる。
それに千の兵も前回の戦で手に入れた市民という名の雑兵。
逆に全員死ねば食料が浮く、所詮は時間稼ぎと生贄にすぎん」


王は今まで勇者にみせたことのない様な顔をして足を組む。


「アレに勝てるわけが無い。
ならば生贄を差し出せばいい、相手の頭が良ければ此方の考えが分かる筈だ。
それに、既にそれが伝わるようにしている。
今は他国を落とす事を考えるだけだ」



「我が王よ、それは一体どんな策なのでしょうか?
儂にはまったく分かりませぬ」



「分からんか?
ヒントを言うならば一つ、勇者は人を切ったことが無い。
そして、妄想に取りつかれている」


その言葉で分かる者がいるだろうか。


逆に分かったとして、この策が成功する可能性がほとんど無いのが分かる筈。


だが、この王はあえてそれを採用した。


それは相手への評価。


これだけで気づくと王は評価したのだ。


ある者は分かるわけが無い、我々でも分からんという。


それを、その王は鼻で笑った。


なんせ自分達が相手より頭が良く格上だと思っているから。


王だけは違った、相手の強さが自分達より圧倒的だと自覚していた。


だからこそ、その策にも予備の策を用意していた。


王は一言も策が一つなどと言っていない。



自身の臣下すら絶対には信じない。


それがこの王の強さである。


もはや誰にも王の策は理解できなかった。


なんせ彼はコンキスタドーレ。


たった一代で国を築いた英雄なのだから。



















それは本当に勇者なのだろうか?

人が勝手に彼を勇者といって祭り上げただけではないのだろうか?

ただ強かった彼を勇者ということにしただけではないのか?

王が女を使って其処から離れられないようにしただけではないのか?

女は自分の命が最も安全であるためにより付いてきただけではないのか?

魔物は殺せても人は殺した事はあるのか?

彼は今何歳なのか?

人類が今世界で何人死んだのか?





疑問、終わることのない疑問。

その問いが行われる前に、彼は魔王討伐に行く。

仮に、仮に彼が勇者だとしよう。

たとえ勇者であっても、死なないという加護があったとしても、

その加護を与えた神以外の全てが加護を与えた者と対峙して生き残れるのだろうか?

それこそ実験しなくては始まらない。


何事も実験をして失敗して初めて成功と言える。


そうやって、人類が誕生し魔王が誕生した。

ならばこれは神の実験だ。

迷い込んだ魂を使った実験。

創造主が気づかぬようにするためのモルモット。


超神プランナーはほくそ笑む。

今から起ころうとする結果に。

何事も最初から成功することは無い。

失敗を繰り返し成功への道を歩むのだ。


故にこれはプランナーによる勇者の実験。

対象がどうなろうと知ったことではない。

次の勇者を作るための試作品勇者。


それが、全超神の最高傑作に挑むのだ。

それから生きる事はできなくても、結果さえ残してくれれば良かった。

そのために、その場にいる勇者以外の人間は死ぬことになる。



人間嫌いの魔王の手によって。






一つ予想外だったのは勇者が居た国の王。

彼はあの勇者よりも英雄の器を持つ者。

今でなく今後、この国がどうなるかは不明である。






あとがき
コンキスタドーレ=征服者

まさかの終わらない初代勇者。
なんかこのキャラは好きになれそうにないので紹介的なところが手抜きになった。
九月入るまでに次更新できるかは不明。
それより、この続きを後にしてネタを書くかもしれない。
冗談でなく割と本気で…


王様はなんかもっと出したくなりました。
二世三世を出してみたいですね、妄想が膨らみます。


この話が続くのは残念ですが次回もよろしくお願いします。







[18886] 第二十話 王様の人気の結果これだよ
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/08/26 19:44

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『おれは勇者メインのssを書いていたと思ったらいつのまにか王様メインの話に変わっていた』

な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
おれも何をされたのかわからなかった…

 頭がどうにかなりそうだった…

催眠術だとか設定変更だとか
 そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…












「なんで、なんでなんだよ!!
負けイベントなのかよこれ!!!
ざけんじゃねぇ、こんな所で終わるなんてありえねェ!!!」


その男は少量の血を辺りに撒き散らしながら叫ぶ。

その様子は既に満身創痍のようであった。


「ならば証明して見せろ。
お前に生きる価値があるかはこれで決まる。
生きたいのなら血を、その体に在る全てを賭けろ。
もしかしたら、届くかもしれん。届けば生き残れるぞ!」


それと対峙するのは魔人。

圧倒的な力を持って、相手の存在を蹂躙せんが者。



「さあ、血を流せ、その決意を私に見せてくれ。
今こそ汝が蹂躙される時なのだ。
それが嫌なら進化しろ、今の自分から次の自分に進化しろ!!」


言いながら、魔人は相手に剣を振り下ろす。

勿論手加減して振り下ろす。

そこにスピードも力も無い。

だがそれだけでも、相手にとっては脅威であることに変わりなかった。



「どうした、何か喋ってくれ。
生きたいと、自身の決意を叫んでくれ。

……このまま何もできないなら、汝はこの石畳を紅く染めるための贄となるぞ」

勇者は手に持つ剣を握りしめた。

「っちっくしょおおおォォォ!!
まだ死にたくない! 死にたくない!!!」


歯をガチガチと震わせながら男は叫んだ。

そして男は思い出す。

自分が何故こんな状況に置かれているのか……















それは大勢の人。

彼らは一直線に其処を目指していた。

それを、彼らが目指す場所にいる彼らは見つめていた。

「愚かなり、我らが此処に居ると知って進軍しているのならば愚の骨頂。
――――その血にて、石畳を紅く染めよ」


ナイチサは静かに進軍してくる兵士たちを見つめながら言う。

そこに焦りは微塵も無く、あるのは怒りだけだった。

そんなナイチサにトロスは話しかける。


「ならば、私が片づけてきましょうか?」


「否、我が仕留める。
すこし、我の力を試したくなったのだ」


ナイチサは残虐な笑顔を浮かべながら応える。


「……まあ、試し技だからな。
生き残りが居たのなら、お前が仕留めろ」


「御意、分かりました」


執事のように返すトロス。

そんな会話中も人間は進軍してきていた。

その足は止まることを知らず、ただ前進していた。

彼らは誰ひとりとして考えていないのだろう。

魔王の怒りを買った時点で、生き残れることは無いということを。



「さあ、愚かなる人間達よ。
今その石畳を紅く染める為の血を流せ」

ナイチサが手を翳す。

その手に集うのは氷。

それは手の中で段々と大きなっていった。


「――抵抗しろ、剣を掲げろ、それを柄まで付き刺せ。
あるいは、我が体に届くかもしれん―――」

呟き、ナイチサは手の中に溜めこんだそれを解き放った。




「――――エターナルフォースブリザード――――」



静かに、囁くように言った。

その一言と共に、全てが死に絶えた。

辺りは一瞬で凍りつき、ありとあらゆるモノの命を奪った。

この力、この圧倒的力こそ魔王なのだ。

彼の前に立ち生き残れる者などない。


だが、それは動いた。

周りの人間を退かし、必死に氷から這い出ようとする人間がいた。

最後尾に居た人間は無様に這い出ると一目散に逃げ出した。

魔王の姿が見えたわけでもないのにその危険察知だけで走って逃げていく。


「ッチ、仕留めそこなったか……
やはり手加減というのは難しく面倒だ。トロス、後始末は任せたぞ」


「分かっております。
さて、幾分か楽しませてもらうことにします」


そういってトロスは駆けた。

それは勇者にとっては恐怖でしかなかった。

後ろを振り向けば、超高速で走ってくる男がいるのだ。

これを恐怖と言わずして何と言おうか。

そして勇者は逃げ切れず、その恐怖と闘うことを余儀なくされた。

退路は無であり勝機など存在しない。

この状況で勇者が生き残れる可能性は無くなった。
















「畜生! お前らは一体何なんだよ!!
どうしてあんな事が出来るんだよ!!!」

勇者は剣を抜きながら叫ぶ。

「あんな事? それについては分からんが私が何者かは答えよう。
私は魔人、そして先ほどの氷を使ったのは魔王だ。
お前の問いに答えたぞ、これで満足か?」


その答えに勇者の動きが止まった。


「分からないだと、あんなに人を殺しといて分からないなんてありえねェ!
お前ら人間じゃねぇよ、クソッタレ!!」

泣きながら剣を振り回す勇者。

混乱し過ぎて状況が理解できていないのだろう。

先ほどトロスは魔人だと言った。

ならば元から人間なわけが無い。

だがこの勇者はそれが理解できていない。

そもそも勇者は人の死すら見たことはないのかもしれない。

甘い、甘過ぎる。

これはゲームの世界では無く現実なのだ。

現実は甘くはなく、この世界は死が間近に存在していた。

それを分からず自分が勇者などと言っていた甘さ。

ハーレムを作るなんて夢を見た甘さ。

もはや魔王が女だったらという妄想も働かない。


そろそろ、この世界に対してツケを払う時が来たのだ。






「何を焦っている、お前はまだ生きているじゃないか。
なのに何故生きる事を放棄するように思考を止めるんだ?
まだ生きている、ならば思考を止めるな。
動け、考えろ、この状況を打開する策を考えろ。
生きるために、その血を流してみせろ」


トロスは静かに言う。

だが肝心の勇者にはそれが聞こえていない。

もはや勇者には何も聞こえていない。

ただ生きたいと願うだけで何もしない。

生きたいのなら、願うだけでは駄目なのだ。

故にこの勇者が生き残る事はできない。

それはまるで初めから決まっていたようだ。

何より、この勇者には信念というモノが欠けていた。



「……そうか、そうだよ。
これは負けイベントなんだ!!
もしくはヤバイ時になったら新しい仲間が助けにくるんだ、絶対そうだ!!」


勇者は泣きながら叫ぶ。

いや、涙を流していることに気づいているかも怪しい。

彼の脳内が今どうなっているかは分からない。

だが、行きつく先は全て同じなのだろう。

彼は夢のような生活と、自身の欲望を満たすことしか頭にないのだ。



「最早、言葉は不要とみえる。
――――これにて介錯と共に汝の劇に幕を下ろそう」



その瞬間、勇者の命が消えた。


辺りに血をぶちまけて、石畳を紅く染めていった。


「残念、これも所詮はゴミだったか……」


少し悲しげなトロスの声が響いた。


今回トロスはまともに戦ってすらいない。

ただ相手が振りまわす剣を受け、最後に刀を振りぬいただけだった。

なんともつまらない終わり。

初代勇者の人生はこれにて終了。

最後はあまりにも無様であった。
















「……やはりこの様な結末となったか。
だが、重要な事は分かった。
この場で眠れ勇者よ、お前の女はこちらで保護しておこう」

そう王は呟く。

彼は少し離れた場所から今までの在り様を見ていた。

どのような結末かを見届けるために、王は単身此処に居た。

危険だが王には確かめなければならないことがあった。

それは他人に任せるなど出来ないこと。

自身でしか確認せねばならない事だった。

その覚悟も信念も、全ては彼が王であるからせねばならないこと。



「民を守らずして、自身を王と名乗れるわけが無い……」


そう言って、王はその場を去ろうとした。

その時、後ろから声が聞こえた。


「素晴らしい、その生き様と覚悟、実に素晴らしい。
先ほどの男とは比べられること出来ないほどだよ、人の王よ」


それは王の失態であった。

王はとても用心深かった。

王は誰よりも魔王と魔人を評価していた。

そして、ここまで来たことによって油断していた。

あれほど評価していた魔人に対してそれは致命的な油断。

気づかれる、という事を計算に入れていなかった王のミス。



王はゆっくりと後ろを振り向く。


「これはこれは、偉大なる魔人よ。
私に、何か用がおありかな?」


「少しだけある。
聡明で強き王よ、少しだけ質問をしよう」


その油断と傲慢によって、王は試される。

失敗したら死という結末。

まさに自分から招いた不幸。

だが王は怯まず、トロスを真正面から見つめる。

そこにあるのは王としてオーラ。

現在この地上にいる人間には不可能な雰囲気。

だから、トロスは気づいた。

この者は、間違いなく王であり征服者であり強者、まさに魔王のようだと。





「質問しよう、お前は王だな?」

「その通り、私は一国を治める王だ」

「質問しよう、なぜ此処にいた?」

「すべては民のため、そのためならばこの身すら危険に晒そう」

「質問しよう、お前にとって民とはそこまでする価値があるのか?」

「価値など知らぬ、ただ我が治める国の民に尽くす。それが王の務めである」

「質問しよう、その為ならば命すらも賭けるのか?」

「答えるまでもない」

「質問しよう、ここまで慎重であったろうお前が何故最後でこんなミスをした?」

「そこまで気づいていたか、流石は魔人。
応えるならば、それは我が慢心していただけの事。
だが王とはそういうものなのだ、慢心せずして何が王か!!」


「――――素晴らしいな、人の進化の形を見ているようだ。
ならば最後の質問だ、本来なら最初に聞く筈だった。
だがそれを聞く前にお前を試さねばならなかった。故に今聞こう。
汝、人の王よ。 お前の名は何というのか教えてほしい」


それを王は鼻で笑った。

「フンッ、そういうものは、自分から名乗るのが礼儀ではないのか?」

穏やかな顔をしながら王は言った。


それにトロスは少し呆気にとられた。


「ははは、それは失礼した。
ならばお前だけに教えよう、人の王よ。
私の名はトロス。魔王に使えし参謀の役割を持つ魔人だ」


トロスは、王を見つめ答えた。


「――――感謝しようトロス殿。我の命を奪わないでくれて。
我の名は、ローランス・クリア、という。
ドヴァ帝国という国の王だ。いつか見に来てくればいい」

そういってローランス・クリアは手を差し出した。

それにトロスも応える。


「見事、私を恐れずにここまでするとは素晴らしい。
だから私もそれに応えよう。
そして、一つだけ私と約束をしようじゃないか、ローランス・クリア」


手を握りながら、二人はある約束をした。

その約束の内容を聞いたものは首を傾げるかもしれない。

だが、王はそれを聞き是非と答えた。


友情とはまた違う。

魔人がこの王を認めた。

王は魔人に認められ歓喜した。

此処に、また違う形の感情と関わりができた。




約束の内容は秘密。

約束は他人とするものじゃない。

だからこの約束はその時が来るまで分からない。













あとがき
どうしてこうなった!どうしてこうなった!(AA略


本当は勇者書いてたんです。
だけどこの勇者を考えるのも嫌になったんで殺しちゃいました。
代わりに王様登場!!
やっぱこういう人の方がいい。


今回更新がいつもより少し早いのは勇者のせいです。
普通ならもっとネタというか話を考えますが
この勇者に関しては書く気が無いので早めの投稿でした。
ちなみに考えたのは王様の所ぐらいです(笑)



ここでピンチなことになりました。
次はレッドアイを書こうと思っていたんですが話が浮かばない。
正直ちょっと不味いです。
それにアンデルセンとかカミーラ書きたくて仕方ない……
もう次回は番外編行こうかと思ってます。
番外編「魔王城の大掃除(ナイチサとトロスはいない)」
が投稿されるかもしれません。

だけどここで番外編にいったらレッドアイが書けない気がするしメンドクサイ。
レッドアイが脳みそ無いキチガイキャラだったらどんだけ良かった事か…

まあ、その辺は頑張って書かせてもらいます。
これにて初代勇者編終了です。
たった二話でしたがお付き合いくださってありがとうございました。





[18886] 第二十一話 レッドアイ編 前編
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/08/29 12:22




一日ほど妄想した結果です。
前も言われたことでした。
アンデルセン時の魔法、無いなら作ればいいというのを忘れていました。
そもそも私の作品はオリキャラやオリ設定だすんだから何しようがおkです。
私の視野を広げればあまりにも簡単なことだったんです。
視野が狭くなっていて見えなかった。
まさしく、愛がなければ見えない!!
愛さえあればどんなキャラでも使えます。
設定だけしかないキャラなんて認めない!!
だからこそ、彼を登場させなきゃ話が始まりません。
本来なら登場予定がなかった彼、ケスチナさんの登場です。

















少し、昔話をしよう。


ある所に、二人の兄弟がいた。

その二人はとても仲が良く、喧嘩などする筈もなかった。

二人はお互いに成長していった。

この世界において二人は穏やかな日々を送っていたといえる。

特にけがをするわけでもなく成長していった。

兄は科学を好きになり勉強した。全ては弟や周りの人の助けとなるように。

弟は体を鍛え剣を振るった。全ては兄や周りの人を助けられるように。


そうして、時が過ぎていった。

ある日弟は女性に恋をした。

それを兄は祝福し、是非関係を持つべきだと言った。

そんな兄の言葉を信じ、弟は勇気を振り絞り女性に声をかけた。

その日から一年も満たないうちに二人は結婚した。

兄はそんな二人を祝福しながら弟が育っていく姿を見つめていた。

まさに兄も弟も幸せの真っ只中に居た。

兄にとって弟の幸せは自分の幸せ。
弟にとって兄の幸せは自分の幸せ。

それは生まれてきてずっと一緒だった兄弟の絆だった。






此処からは、まだ彼が幸せの中に居た話をしよう。

ある日、弟夫婦の間に子供が生まれた。

それを兄は弟夫婦と共に祝った。

生まれた子供はすくすくと育っていった。

生まれた女の子は言葉を話せるようになり、歩くようになる。

女の子の名前は兄から少し取り、エレーナとなった。

正直兄の名前など全然関係がなかったが弟は関係あると言い張った。

エレーナは伯父となる兄によくなついていた。

伯父の家に行き、研究の手伝いをしながら毎日を過ごすような日々だった。

エレーナはそれに楽しみを感じていた。

伯父である兄もそれに嬉しさを感じていた。

今までまともに兄の研究を理解でした者はいない。

それでもエレーナが必死な様子に兄は嬉しかった。

そうしてエレーナは育ち、大人になっていった。

エレーナに弟や妹は存在しなかった。

弟と妻と娘、そしてその兄。

仲がいい関係は崩れる事はなく、日々が過ぎていく。

だが、やはり世界は残酷であった。

これまでの幸せを奪うように、悲しみや恐怖憎悪がやってきた。





此処から、彼の人生は始まった。

誰かが違うといっても私は思う、彼は今まで生きてきた。
だが、必死に生きたことはなく、また全てを賭ける事態にもなったことがなかった。
これから、彼の命を賭けた物語が始まるのだ。
全てを賭けて、自身の夢を叶える人生。今こそ初めて彼は人生を知ることになる。


その日はいつも変わることなく時が過ぎていった。

弟は警備の仕事で家を離れ、妻と娘は伯父の家に遊びに来ていた。

いつも通り、いつも通りの毎日。

だが厄災とは突然やってくるもの。

日常が非日常に変わる時は、いつも突然だ。



叫ぶ、死ぬ、泣く、命乞いをする、逃げる、闘う、諦める。

全てが無駄。意味が無い。

彼らの現実において、このような幻想意味が無い。

全てを蹂躙する。

壊し、奪い、殺し、喰らい、犯し、無に帰す。

それこそ彼らだ。魔人と魔物軍勢は何処に現れるかなんて分からない。

だから彼らは厄災、災害といってもいい。

なんせ、彼らが来たら諦めることしかできないのだから。





さて、兄と弟夫婦はどうなっただろうか。

答えは簡単、生きている。

兄の家には地下があった。

地下といっても研究様に作ったものだったが、十分に広い空間だった。

そこに彼らは隠れていた。

魔人や魔物に見つかることなく、彼らは助かった。

だが、其処から出ていき彼らが見た景色。

妻は泣き崩れ、娘はそれを支えた。

兄は、ただ茫然としながら、弟が死んだと悟った。

此処からが、彼の人生の幕開けだった。

その中に渦巻く感情は怒り、憎悪、殺意。

その日、彼は兄でなくなり、伯父でもなくなった。

人を寄せ付けず、彼は研究を開始する。

全ては弟のため、死んでいった人のため、自身のため。

そのために、彼はなんでもする。



その日、彼は兄でなくなり、伯父でもなくなった。
彼は自身を進化させ、アヴェンジャーとなったのだ。













彼の人生は始まった。

彼の一世一代の復讐劇が始まった。

主役は彼と彼の作品。

演じる役者の彼の名は、ケスチナ。

エリック・ケスチナという名であった。











それは失敗の毎日だった。

壊しては作りなおし壊してはそれを廃棄せず次の材料として使用していった。

既に彼は人との繋がりを断つような暮らしをしていた。

弟の妻は義兄とは関わらないようにしていた。

だが、娘だけは違った。エレーナだけはエリックから離れようとしなかった。

エレーナは生活面を援助し、彼を助けていた。

エリックはそんなエレーナに感謝し心の中で誓った。


(弟の死を無駄にしない。そして、この子のためにも私は作ってみせる。
創造しよう、魔人を討つための存在を創造する。絶対に完成させる!!)



だが時は残酷なものだった。

時はエリックから時間を奪い、若さを奪い、そしてエレーナでさえも奪っていった。

正確にはエレーナを奪ったというのは少し違う。

ただエレーナがエリックの元に来ることがほとんどなくなってしまった。

それは飽きたからでもなく疲れたわけでもない。

エレーナは女性であるが故に恋をしたのだ。

エレーナはある男性と結婚し、子供を産もうとしていた。

その体で離れたエリックの家に行くこと自体が難しかった。

それは仕方ないことであり、自然と繋がりが切れる事も仕方なかった。

エリック自身もそんな事には悲しむこともなかった。

ただ心意気が変わった。

エリックはエレーナが結婚したことをしっていた。

だからこそ、昔を思い出すのだ。

あの時の何もできなかった自分。屈辱。

だからかもしれない、エリックが壊れていったのは……







エリックの研究は行き詰っていた。

魔法に重点をおいた研究。
何かが足りなかった。
その何かが分からない。

そこでエリックはあるモノを用意することにした。


「そうだ、まだ人を使った事が無かった」

自然と呟いたソレは、エリックが壊れていると分からせてくれる。

だがしかしエリックの信念は消えていない。

魔人を殺す、あの悲しみを繰り返さない。
そう思っておきながらエリックは自身を復讐に駆り立てた殺人をすることになるのだから。
それはなんて矛盾だろう。
それほどまでにエリックは追い込まれていた。
寿命という壁が、今エリックは押しつぶそうとしていた。









それは子供の死体。

まだ殺して時間がたっていないからか血が赤い。

エリックは機械的に動き、まず子供達の眼を繰り抜き、ビーカーの中に保存した。

その後子供達の体を裸にし、とても大きい鍋のようなモノに入れ溶かしていく。

それには既に人以外の、これまで失敗したモノが溶かされていた。

そうして溶かしたものにエリックは眼を入れていく。

最後に眼をいれるのは形を保たせるためだ。

最終的な形としてエリックは眼の形をしたモノを欲した。

それは自分が作るものより、その眼が出来る事に特化したであろう形。

そもそもエリックは何ができるかはわかっていない。

だが確信しているのだ、成功すると、これには何かしらの奇跡が起きると。



そうやって子供殺し、眼を入れるという作業を繰り返す。



ここで説明する必要があるのでしておこう。

まずどうやって子供を仕入れてきたか。

それは簡単なこと、ただ家族の家に惜しいり子供以外を殺せばいい。

だがそれだけでは数が揃わない。

だから彼はこの時代、まだ価値がでていない魔法使いに目をつけた。

その辺りには魔法使いの子の孤児が多く存在したので誘拐するには困らなかった。

そうして、彼は子供を生贄にしていった。


ここで、嬉しい誤算があった。

それはエリックすら気づいていない。

ちょっとした偶然だが奇跡でもある真実。

エリックが生贄にした子供達は全員、魔法に対して何らかの技能や才能を持っていたのだ。

それこそ嬉しい誤算。

それが結果的に、あの宝石を産むことになる。



そう言えば、老いたエリックがどうやって家族から子供を奪ったのを説明しよう。
これも簡単、ただ殺しただけなのだ。

なにもエリックが創造したもの全てが失敗したわけではない。
ただ威力があっても魔人には効かないと分かるものしかできなかったので失敗と言っただけ。
ある時は火炎放射機のようなもので焼き殺したこともあった。







その鍋の中は混沌していた。

入れたものだけではなく、恨みや呪いが蓄積された鍋。

25の子供と50の瞳。

そして、彼が創造せし失敗作。

その全てを使い、彼は成功させる。

試作品から失敗策へ、そして遂に成功作となる日が来た。



今、彼の手の中にあるのは多くの宝石。
彼の考えでは宝石にこそ魔法が多くたまると考えていた。
故に用意した宝石の数は100。
大きさもバラバラだったが彼に用意できる最大の数だった。

その宝石を、溶かさぬよう鍋の中にいれる。

さあ、今こそ生命が生まれる瞬間。

それは、エリックの操作と共に鍋から生まれた。

一瞬で鍋の中は丸状に固まり小さくなった。

宝石と瞳を組み合わせたような形。

それは紅色の宝石。



此処に、彼の希代の傑作が生まれた。
多くの血と涙。多くの呪いと憎悪をこめられ彼は生まれた。



『ん~、ウマく喋レテマスか?
ッテおット、忘れテマシた。問いまショウ、ユーがミーのマスターデおk?』

彼の宝石の名は見た目通りの名となった。

レッドアイ、彼こそ宝石をもって創造されたエリック・ケスチナの最高傑作。
完成といえる時は存在しないかのように彼は強くなれる無限の可能性を持っている。

寄生という能力を持った彼が今、この世に生まれた。











あとがき
レッドアイってどうやって作った?
そもそも意思がある上に形が宝石って何それ?おいしいの?
設定だけあっても意味が無い、どうやったか説明してくれ!!
と、私は心の中で叫びました。

番外編期待の方すみません。
レッドアイ編はまだ続きます。
3部構成か2部構成のどちらかになる予定なので長いです。

レッドアイ、口調メンドイ!!
そもそも分かるかあんなキャラ!!
好きだからっていっても限界があるんだよ!!

これはリアルに画面前で叫びました。
だって本当にコッチが頭がパーになるお。

まあ、もう少しだけレッドアイとケスチナにお付き合いください。





[18886] 第二十一話 レッドアイ編 後編
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/09/18 20:21


積み上げる。

ただ亡骸を積み上げる。

それを行うのは宝石。

寄生を行い、その全てを奪い去る。

そこに罪悪感などはなかった。

「おkおkだね~、イエスすバラシいよ!!
ダ、ケ、ドォ~、タリマセ~ン、まだまだデスね。もっとクダサイ」

それを行った宝石の狂物、レッドアイは叫ぶ。

彼にとって、全てのものは魔王や魔人を倒すための贄にすぎない。

「ん、ッン、さてさてそれでは火葬スタ~ト!
ゴミは灰に帰さなきゃイケナイヨ、ミーとノオ約束だよ!!」


その姿はドラゴン。

まさに最強に相応しい見た目だろう。

生気を失ったような目でドラゴンは炎を吐く。

大した火力ではないが、ゴミを片付けるなら十分だった。

ゴミは灰へと還り、その場にはもはや何も残らなかった。

その宝石の化け物は何も感じない。

悲しみや罪悪感などなく、その感情が欠落した宝石は喰らう。

ただ相手の存在の全てを食らいつくし骨までしゃぶり尽くす。

逃げれるものなど何もなく、ただ死ぬのを待つしかない。

その在り方、人を、モンスターを、その他全てを襲うその姿は、
まるで魔人のようだった。











その森は今死にかけていた。

正確には森だけでなく、森に住むモンスター達が死んでいた。

彼らは逃げ惑う。

抵抗する気が根本から奪われるような強さ。

誰一人として彼を止める術は持っていなかった。

否、持っているわけがない。

彼を止める事じたいが不可能なのだから。

ならば逃げる以外に選択肢はない。

逃げども逃げども恐怖は消えず、足は止まらない。

生きるために逃げる。

だが心の奥底で諦めている。

ただそれを認めたくないから走るのだ。

自身で生きる事を諦めることなど認めたくない。

まだ死にたくない、生きのびたくて足を動かす。

それも全てが無駄になる。

どれだけ走ろうと、彼から逃げる事不可能。


後ろを振り向く事もできず、刃は背後に迫りて首を断つ。

刀で切られた者は幸福かもしれない。

近くにいた者達は彼の爪にてこの世を去る。

叫ぶ事も、回避することもできずにその爪によって引きちぎられる。

握れば頭が潰れ、腕を振るえば体が分断される。
殴ればその個所が無くなり命が無くなる。
爪で抉ればそれを防ぐすべなく体はただの玩具となる。

どんなに離れようと、その刀は背後に迫る。

逃げ遅れれば片腕だけでその体を吹き飛ばす。


森は彼らの血を浴びる。

その一撃に巻き込まれ木がなぎ倒される。

それはもはや――――――災害。

人も、モンスターも、生物も、どうすることもできない自然の驚異。

この災害は今まさに、自然の驚異といえる存在だった。

―――――いつ現れるかわからない

――――いつ襲ってくるかわからない。

――――ただ、命だけを奪い尽くす。


その災害の名こそ、魔人。

誰も助かることができない災害。

回避不可能の災害。

今この災害を引き起こしている魔人。

彼の名は、トロス。



「――――逃げる事などできはしない。魔人と闘い生き残るなど不可能だ。
それこそが、魔人という存在であり、この世界の頂点に立つ者達だ」






その場は既に静まり返り、生きるものが無くなった。

其処に在るのはトロスと魔王だけであった。


「……トロスよ、何故こんな事をするのだ?
お前がこんな事をするのが趣味なのか?」

魔王は軽蔑しているわけでなく、ただ純粋に疑問に思った。


「趣味、というより日課似たような感じですね。
昔から鈍らない様に体を鍛えてましたから」


「鍛える?お前ほどの力があるのにまだ力を求めるのか?」


「私は、ただ約束を守るために強くなるのです。
昔からの約束ですよ、まだ初代魔王が生きていた時代の話です」

「ほう、なかなかに昔の話だな。
その時代、こんなモンスターはいたのか?」


魔王はそこらに転がる残骸を指しながら言う。


「いえ、いなかったと記憶しています。
あの頃は、貝と闘ってましたね。今となっては存在していませんが昔はいました。
初代魔王は、貝の中でもサクラ貝や白サクラ貝が好きでよく食していました」


懐かしむ様にトロスは目を閉じながら言った。


「そうか、しかし不思議なものだ。
それほど昔から魔王に使えるお前が今は我に仕えている。
だからこそ思うのだが、お前は、魔王になりたいと思ったことはないのか?」

その問いに、トロスはすこし間を開けた。

「……ない、と断言しておきましょう。
私が魔王になることはありません。決して、魔王になるわけにはいかないのです」


「断言するか……、ならどうしてそこまで言える。
それも、なにかしらの約束でもあるのか?」


「約束の一部のようなものかもしれません。
それに私は魔王を補佐するのも仕事。いきなり魔王になった方を一人になどできよう筈もありません」



「やはり、興味深い話だな。色々と疑問があるがここまでとしよう。
――――さあ、お客様の相手は任せるぞ」


「当然。さてと、それでは無知が罪であるという事を教えてやろう。
―――化け物に手を出して、生きて帰れると思うなよ」


その瞬間、黒き閃光がトロスを食い破らんとし迫ってきた。










レッドアイはその森でいつも通りのことをしていた。

ただ全てを貪り尽くし、吐き捨てていた。

そしてドラゴンの体に寄生し直した。

この体は固く、ほとんどのモノを通さなかった。

問題があるとすれば一つ、動きが遅かった。

それも微々たるものだがレッドアイは良しとしなかった。

そもそも体が大きいので動きが遅いというのも弱点だった。

自身に弱点が無くとも、自身が使う体に弱点があることがレッドアイは不快に思っていた。


(クソッ!天才のミーの足ヲ引っ張るヨウならさっさトコンナ体を捨てテシマいたいですね。魔人の体デモ欲しイ所デス)

そう思いながらレッドアイは森を闊歩していた。

歩きながら考えているうちにレッドアイは思った。


「……今のミーなラ、魔人程度ハ簡単に仕留めラレるカモしレマセンネ」

知らず知らずの内に考えが声にでる。

レッドアイがこう考えるのも無理はない。

今までの敵はレッドアイに手も足をでることなく死んでいった。

それに今の現状を考慮しても、レッドアイ自身は負けないと思った。

なんという驕りだろう。

慢心は王や強者に許される。

レッドアイは強者ではあった。

だがそれは真の強者ではなく、所詮は底が見える程度。

その考えが、彼自身を殺す原因となる。






その時聞こえた音が、レッドアイに居場所を教えた。

音とはトロスはモンスターを狩っていた時の音。

その瞬間、レッドアイは歓喜した。

レッドアイ自身もいきなり魔人と会えるなどと思ってもみなかった。

それなのにいきなり近くに魔人が現れる。

幸運、まるで神が彼に祝福を与えた様に、彼の願いを叶える状況が揃った。

見なくても分かる。

そのプレッシャーから伝わってくる。

レッドアイには分かっていた。

あの先にいるのが魔人であると。



「ナンという幸運。コノ機会、逃すコトナドありエナイデス」


ドラゴンという体ではなく、レッドアイ本体に力が集まる。

時間は掛けず、誰にも気づかれない。

これこそレッドアイの真骨頂。

彼自身最高の魔法。

それが今、トロスに向かって放たれる。


「――――シネ。黒色破壊光線!!!」


その黒き閃光は全てを呑み込まんとする勢いで辺りの木々を巻き込み、
トロスへと直進していった。












その黒き閃光がトロスに当たる瞬間、彼は腰の刀を抜いた。

「この程度で、私を殺そうなどと笑止千万。
我が刀に、切れぬモノなど何もないのだから……!」


その刃はその閃光を縦に裂いた。

それはあまりに綺麗で、そしてあまりに簡単な行動。

ただ刀を抜き、切っただけでそれを成した。

決して誰にも真似はできないようなこの技。

だがしかし、トロスよりも優れた技を持つ人物はいるのだ。

今この場にいないというだけだが、トロスよりも優れた者がこの世に存在していた。


そんな事は関係ないかのように話は進む。

トロスは何もなかったかのように其処に立っていた。

不思議な事に、トロスが光線を切る際に使用した筈の刀の姿が見えなかった。

其処に在る筈なのに見えない不可視の刃。

その刃を目視するのは不可能。

そんな現象に戸惑いながら、レッドアイは歩み寄る。



「何故でしょウネ。ミーは確実にユーを仕留めタト思ッタノニ。
何かシラの妖術デスカ?ミーは最強でアルから敗れル筈モアリマせ~んシ、
まあ、次デ確実にユーをデストロイデス。メイクドーーラマ」



今の自分に自身を持つレッドアイは余裕をもってトロスの近くまで歩み寄る。

歩みながら本体に力を溜めいつでも黒色破壊光線を打てる準備をする。

油断などはなかった。

ただレッドアイが発した一言がトロスの逆鱗に触れていた。


「――――最強?お前が、最強というのか?
その程度で最強を名乗るか、なるほど。気にいらないな」


その時のトロスの眼は鋭く細められ、普段は無い筈のプレッシャーが感じられた。

レッドアイとトロスの距離は10mほどだろうか。

普通の刀では届かない距離。

レッドアイ自身もこの距離があったからこそ落ち着きがあった。

この距離ならやられないという思い込み。

それがレッドアイの敗因になる。



「気に入らない、それはまるで私の友を侮辱している様だ。
だから、跪け!!」


その瞬間、レッドアイは少しの浮遊感を感じた。

今までドラゴンの体で見下ろしていた筈の相手が近寄る。

気づけばいつのまにかレッドアイは相手に見下ろされていた。

それに対し足を動かそうとする。

だがそこに感覚はなく、足は切断されていた。

切られた所でレッドアイに痛みはない。

しかし現状を理解できなかった。

誰が、どうやって自分の足を切ったのか?

それだけが頭の中でグルグルと回る。

だが答えを出す前に魔人は眼の前にまで迫っていた。


「気に入らない、その翼を腕も気に入らない」

そう言った瞬間、またしてもレッドアイは体の一部が無くなるのを感じた。

この時、初めてレッドアイは恐怖をしった。

自分を見下ろす相手を見て悟った。

レッドアイはコイツには勝てないと。

今更理解できたところで遅いが、レッドアイには重要なことだった。

もしかしたら、レッドアイ本体には気付かないという淡い幻想を抱いていた。



「……違うな、その眼には生気が無い。まるで死んでいるようだ。
本体は、なんだ其処にいたのか」


トロスは片手でレッドアイの本体を引きずりだす。

レッドアイを掴み、無理やり寄生しているドラゴンから取りだす。

ブチブチという音を立てながら、レッドアイは遂に魔人に姿を晒すことになった。


「ッチ、まさかココまデ差ガ在るトハ思ッテませんデシタ。
コノ結果はミーにとって悲しイ事デス。メイクドーーラマ!」


そう喋るレッドアイをトロスは少し冷めた眼で見つめる。


「……最後の言葉はそれでいいな、死ね」


そういってトロスはレッドアイを踏みつぶそうとした。

踏む瞬間、魔王から待ったの声さえ掛からなければトロスはこの時レッドアイを殺していただろう。

「待てトロス。それには不思議な事に自我がある。命がある。
それに見えるだろうか、この憎悪の塊。呪われたこの宝石を!
まさに人に恨まれた存在。我は、コヤツを魔人にしてみたいのだ」

少し興奮したように話す魔王。

「それが魔王の望みなら構いません。
どうぞご自由に使ってください」

魔王の命令は絶対。

トロスはレッドアイを魔王の方へ放りなげた。


「へ?ミーは助かるノ?それならサンキューと言ッテおきます」

レッドアイは急に下手に出た様に喋り出す。

「助かるというのが生きるという意味ならその通りだ。
さあ、我が血を受け入れるがいい。そして魔人となるのだ」

魔王はニヤニヤしながらレッドアイに血を垂らしていく。


「魔人?どうゆう事デスカ?」


最後まで意味が分からない状態で、レッドアイは魔人になる。

元々の性格故に魔人の血は驚くほど速くレッドアイに馴染んでいった。




   ・レッドアイを連れていきますか

   1連れていく
  →2牧場に送る。



レッドアイは牧場に向かった。










あとがき
ラストは手抜きになってしまった。
というより全体的に手抜きな気がする。

まあ、レッドアイは書いてて疲れるし、これ以上書くこと無い気がする。
ケスチナ再登場はもう少し後になります。

ちなみに最後の牧場に送るは某ゲームのモンスターと同じです。
あれって勝手に牧場に向かっていくのが不思議でしかたない。
まず牧場の場所知らないのでは?って突っ込みたい。
今回はふざけて使いました。
まあ、レッドアイなら帰れるでしょう。姿は宝石ですけど。



次回はやっと番外編。ここまで長かったよ。
番外編の後はJAPAN編。元の設定を変えてオロチを早くJAPAN入りさせます。
やっと最後(予定)の魔人が書けます。


ちなみに貝の話はアリスソフトがまた新しい設定だしたので急にいれました。
だからこそ考えてた話が消えてしまったのはいい思い出です。
また変な設定を出さないでとアリスフトに願っています。





[18886] 番外編 スラルの死後&オマケ
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/09/25 12:32


スラルの死去。
それは突然の事だった。
それを知っていたのはトロスしかいなかった。
それ故、あまりに早い死に魔人達は驚愕した。

ある者はいつも通り。
またある者達は悲しんだ。

悲しむという行為は魔人として間違っているのかもしれない。
しかし、まだ魔人としての年数が少ない彼らには在る感情。
魔人とはいえ涙を流すこともある。
痛みや苦しみから涙を流すこともある。
それが今回は他人が死んだ悲しみというだけであった。

恥じる事はない。
それだけスラルに人望があっただけの事。

いや、人望では無かったかもしれない。
ただ彼女は家族の様な存在で、もう現れない魔王だった。

魔王という枠に彼女を入れる事はできない。
彼女は自由で、賢者とまで呼ばれた魔王だったのだから。
普段幼く見える表情の裏には魔王としての一面もある。

彼女が知った事、彼女が学んだこと。
その全てを、スラルは世に残すことはしなかった。
記した所で何もできず、意味をなさない。
だから、ヒントぐらいという気持ちで記す。
残された本の中で眠る一冊。

その中に記された真実。
それを探し出すのも魔王の務めである。
もっとも、簡単に見つけ理解できるほど安易ではない。
それは試練。
賢者が最後に残した魔王達への試練であった。






「どうした、ケイブリス?」

その場トロスが見たのは体操座りをするケイブリスだった。

「あぁ、トロスか。
なんか、変な気分なんだよ。別に悲しいわけじゃない。
ただ、俺様を認めてくれてた魔王が消えるのは、なんか変な気分だ」

「……それは喪失感か?
なんでもいいが、お前はこれからどうするんだ?」

「どうする?だって? 今まで通りだ。
誰が死んだって、俺様は止まらない。足を動かし続けるさ。
ただ、今だけは休憩するのさ。また歩き出すために……」

そのままケイブリスは立ちあがり歩き出す。
ケイブリスはこの先を歩かなければいけない。
永遠という生の道を行く。
そのための休憩に、ケイブリスは終わりを告げた。


「流石、と言っておこう。
友よ、悲しまずお前はお前の道を往け。
そのための土台は、私が用意しよう」

最初は心配していたトロスだった。
だが、それはケイブリスへの侮辱だったようだ。
ケイブリスの心は強く強固で、魔人としての生き方だった。
彼こそ魔人。

トロスは他の魔人の元へと向かう。

「まあ、カミーラには必要ないな」







「……ふぅ」

メガラスは魔王城の最上にいた。
最上といういい方をしたのは階にいるわけではないから。
文字通り最上。天辺とでもいうのだろうか。
魔王城に屋上は無い。仮にあるとするなら其処にメガラスはいた。


「……死、とは何だと思う?
あの魔王は死んだ。彼女に対し、俺は、役に立っただろうか?」

「死ってのは難しい。それは自己で解釈してくれた方がいい。
そして、もう一つも難しい。
それは、私には答えられるものじゃない。お前自身はどうだ?」


メガラスはただ空を見つめる。
その眼に涙を浮べるわけでもなく、ただ空を見つめる。


「……飛ぶことが、彼女はひどく好きだった。
よく背に乗せていた。命にも従った。
だから、失敗は無かったと、思う……」

「なら、それでいい。お前は素晴らしい臣下だっただけだ。
スラルは死に、次に進んでいくだけだ。
お前も私も、ただ次に進む。それは車輪のように回っていく。
その中で経験する事が強さになる。
お前は強い。それは私が保証しよう」


「……俺が強い、か……。
なら、少しだけ休ませてくれ。本当に、少しの間だけ……」


メガラスはそのままトロスの方に頭を乗せながら眼をつむる。
思いだすのは過去の日々。
魔人としてはいらぬ感情。
今回だけは、その感情も必要だった。










ガルティアは花を持ってたたずむ。

渡す相手もいない。
捧げる場所も無い相手を想う。


「……お前もか。愚痴ぐらいなら聞くぞ」

すこし呆れたように言うトロス。
トロス自身もここまで落ち込む魔人がいるとは思っていなかった。
ある種これは初めての事であり、それだけスラルに人望あっての結果である。
これからは無いとしてもトロスはかなり疲れていた。

それは知らないガルティアは口を開く。

「……アイツは、よく俺に飯を作ってくれてたよ。
お礼だとか言ってたけど、かなり不味かった。だけど、どうですか?って聞いてくるから、美味いって応える自分が馬鹿みたいだった。
俺は、アイツの魔人として、うまくやれてたかって心配になる。
アンタの眼には、どう映っていた?」

ガルティアは馬鹿かもしれない。
それでも、他人を思いやる優しい心をもっている。
魔人になってもその根本は変わらない。
だからこそ悩む。
今までの過去を悔む。
もっと出来たと、こうしておけばよかったと。
意味がなくとも、スラルは自身を魔人にした魔王。
だからこそ、心配だった。
自分の生みの親に、親孝行をするような感覚。
心配だからこそ、他人からの評価が欲しかった。


「出来ていたよ。お前は良い魔人だった。
だから、スラルも喜んでいた筈だ」


だから、こんな軽い口調で言われても納得する。

「……そうか。なら、そろそろお別れだ」

ガルティアは手に持つ花を風に流す。
手を離し、花は風に誘われ空へと上がり飛んでいく。

「感傷なんて、俺らしくねぇよ。
だから、俺の今の姿を世に見せ付けてやるぜ」

誓いなのだろうか。
誇るべきことなのか。
感謝なのか。

彼は、これからも誇り続けるだろう。
自分こそ、魔王スラルに仕えた魔人だと。





「まったく、面倒なものだ。だが次で最後だ」

歩む先。
それはまだまだ青い騎士の元。


彼女は悔む。
自身の騎士としての在り方に。

剣を捧げ、忠誠を誓った主が死んだ。
ならば何故嘆まずにいられようか。
ただ涙の跡を頬に刻み、その場にたたずむ。

何もない場所。
されど此処は誓いの場所。
それは3人しか知らぬ誓いがあった場所。
彼女が騎士となった初めての場所。

何を想っても始まらない。
次に進む選択をしない限り、彼女は騎士ではない。
その場で止まる程度では騎士ではない。

彼女は魔人であり、魔王スラルの為の騎士。
それが、この程度では話にはならない。
それが分かっている。

それでも、彼女は動けない。
思うのだ。
それは彼女を忘れる事ではないかと。
分からない。
まだ若い彼女に応え出すなど不可能。
酷な事に違いない。

だが、出さなければいけない。
他人に答えを聞いても、結局選択するのは自分。
悩めばいい。
今しかできないことがある。だから悩んで、先に眼を向ければいい。


「だからこそ、私は、どうすればよいのでしょうか?」

後ろに声をかける。
其処にいる人物は決まっている。

だが、決して姿は見ない。
あの時、トロスが姿を見せたのはケッセルリンクを認めたからだ。
だからちゃんとケッセルリンクと、彼女に向かって名を言った。
今は昔のように、姿を見せる気にもなれなかった。


「昔のようだぞ。君は答えなければいけない。
これは魔人となった君に対する問いになる。
スラルは死んだ。だから、答えをだせ。それをしなければ、君は騎士では無かったという事になる」


侮るなかれ。
彼女は成長した。
悩み、悔んだ。
その彼女に、答えを出せないなどという事はない。

トロスは予想していた。確信していた。
この魔人は答えをだすと。
自分が彼女に目を付けたことは間違いでないと。
魔人としての在り方はまだ若い故仕方ない。
だが、あと1000年もすれば魔人となる。
自己の確実なる意思をもった存在になると。



「やっぱり、貴方はすこし冷たい気がします。
ならば、言いましょう。私の答えを」


彼女は胸を張る。


「私はかつて言いました。
二人に、剣を捧げると。ならばそれが変わることなど決してないのです!!
我が剣は未だ未熟、されど、再び貴方に捧げる事を許してほしい」



「……そうか。しかし次の魔王はどうする?
君は次の魔王にもその剣を捧げるのか?」


彼女は静かに首を横に振る。


「私の魔王とはスラル様ただ一人!!
次の魔王も、その次の魔王にも従いましょう。
されど、剣を捧げるのは二人だけです。それが、私の誓いであり答えです」


満足気な顔をして、胸をはる。
既に彼女は正面を向いていた。
眼の前には勿論トロスがいた。


「ケッセルリンク。確かに聞き遂げた。
これからも、しっかりやってくれ。お前は私の剣なのだから」


その答えにケッセルリンクは嬉しそうに肯定の返事をした。












「あれ?カミーラ様。一体どうしたのですか?」


七星は己が主に聞く。

カミーラは静かに部屋の窓から空を眺めていた。
普段ならば椅子に座っている場合が多いが今回は立っていた。


「なに、ただ別れを告げているのだ。
私を、魔人筆頭にしたあの魔王に……」



悲しみはなく、ただカミーラは別れを告げる。


「さらば、我を正当に評価した魔王よ。
汝、我が認めし魔王よ。永劫安らかに眠るがいい」


浮かぶのはスラルの笑顔。
カミーラはあの笑顔が報われたような気がした。

そのまま、カミーラは普段通りに振る舞う。

既に別れは告げた。
ならばこれ以上はいらない。

忘れるでもなく、ただ心にその存在を刻む。


それは、魔王の中において最も慕われたであろうスラルの死後のことだった。














オマケ



ス「スラルと~」
ク「……(ククルククルの~)」←喋れない。

ス・ク「魔王ラジオ!!」

ス「遂にこの時間がやってきました。第一回魔王ラジオ。
これは死んだ魔王達のためのラジオです。
尚、これは作者の気分しだいで乗せられます。
連続だったり、結構無い時があるかもしれません」

ク「……(それっていいの?)」

ス「いいのです。ちなみにお便りなどがあれば感想掲示板に
魔王ラジオ用
と先に記入の上で書き込んでください。
内容は何でも構いません。
質問でも、ゲスト希望の方でも、日ごろの悩み。
どんな事にも答えます」

ク「……(お待ちしています)」

ス「……ったく、声が出ね奴は死ね。めんどくせぇ。
 ってことでククルククルさんは死にました。
 これからは私とゲストで進めていきます。
 第一回なのにゲスト? 
 細かい事は気にしちゃいけません。
 それでは登場。現魔王のナイチサさんで~す」

ナ「我、まだ死んでないんだけど……」

ス「ゲストなんで構いません。そんなこと言ってられるほど余裕はないのです」

ナ「ま、まあいい。それよりさっきからこの場所はおかしくないか?
 なんか、ぶにょぶにょしているのだが」

ス「当たり前ですよ。だって此処、ククルククルさんの頭の上ですから」

ナ「なんという現状。言葉も出ぬ。
 そういえば、アベルという魔王はいないのか?」

ス「ああ、彼ならトロスが殺して行きました。
 まあ、作者は生理的に嫌いですからね、存在否定しておきます」

ナ「こんな事が毎回起きるのなら、これはまさにカオスだな。
 それともう一つ質問だ。なぜ台詞形式で話が進む?」

ス「簡単に言うならこのラジオではキャラが壊れます。
 その際人物が分かるようにするための処置です。
 もしかしたら赤字使用もありますよ」

ナ「それなんてうみねこ?
 と言ってる間に、そろそろ時間が来たようだ」

ス「へ?早いですね。第一回だから仕方ありませんね。
 それでは皆さま。質問、ゲスト希望、ネタの提案、悩み。
 など、感想掲示板の方までお願いします。
 しっかりと
 魔王ラジオ用
という言葉を最初にお願いします。
 尚、これからククルククルが出る可能性は無いでしょう。
 長くなりましたがこれにて終幕。
 第二回をお待ちください。













あとがき
オマケは冗談ではないです。
なんにかあれば感想掲示板の方までお願いします。
不評なら二回目で最終回っていう可能性もあります。
作品の方の感想もお願いします。

それでは次回も番外編です。
その次にやっと本編に戻ります。

ここまでがとても長かった。
書き直しから始まった話も終わり。
これからも頑張ります。








[18886] 番外編 大掃除っていう名前だけで掃除をしない日常
Name: ルド◆f2fd4e3d ID:db7824a6
Date: 2010/10/02 15:17


注意
これには魔王及びトロスは登場しません。
勿論レッドアイも登場しません。
残りの魔人、使徒で行われる話です。








「これより魔王城の大掃除を開始します。
各魔人は指定された位置で掃除をお願いします」


そう言ったアンデルセンの一言は全魔人に衝撃を与えた。

そもそも何故掃除をしなければと思う魔人がほとんどだった。

だが反対などしようものなら銃剣が飛んできて有無を言わさず従わされた。

言い方は悪いが皆そこまで否定的というわけではない。

ただ一人、この一人だけが絶対に了承しなかった。

そして、アンデルセンと働きたくないでござる(カミーラ)の闘いが始まった。





「何故私がこんな事をせねばならぬ。貴様らで勝手にすればよいだろう」

カミーラはカリスマを纏って言い放つ。
正直そんなもの無くてもカミーラという存在は大きいので無くても構わない。
勿論色々な意味がある。

プライドが高いので命令を聞きたくない。というわけではない。
実際はただ働きたくないだけである。

それを知っている七星はアチャーって感じの顔をしながら頭を手で叩いている。
現在使徒は七星だけであるがこれからも一番苦労するのは七星で間違いない。


「これは、主の命令です。魔人参謀に逆らうんですか?」


「ふん、トロス本人なら聞いてやらんでもない。
だが、貴様のような小娘が私に命令するのが気に食わない…!」

威嚇しながら言うカミーラだがサンデルセンは完全無視で話を続ける。


「ったく、面倒くさいったらありゃしない。
さっさと命令聞いて働けよ。いつまでもニートしてんじゃねぇよ」


アンデルセンは親しい者やトロス以外とは話さない。

というより信用しないので口調じたいが荒くなる。
それがたとえ同じ魔人でも変わらない。
魔人だからこそ、この強気な態度なのかもしれない。

ただカミーラは黙っている。
怒っているわけではない。

ダメージ。
圧倒的な精神的ダメージ。
再起不能。
カミーラの今の現状を分かりやすく言うなら、フリーズ。
PCがフリーズしたように止まる。
つまりいつかは元に戻る。


「黙り込むんですか?否定できないんですか?
ずっと家に引きこもってるから喋れないんですよ」


ニコニコしながら言うアンデルセンは鬼畜としか言いようがない。

カミーラのダメージは大きい。
大きさなど比べるものが無い。

この現状、七星は陰に隠れながらも笑っていた。
いつも苦労しているからこそこういう場面は彼のストレス解消であった。

殺し合いが始まるまでには七星とケッセルリンクが止めるのが日常茶飯事。
しかし今ケッセルリンクは自宅の棺桶掃除でこの場にいない。
止める事もせず、七星は楽しんでいた。


「あ!分かりました。言葉が分からないんですね。
そうでした、貴女はドラゴンでしたからドラゴンの言葉しか理解できないのでしょう?
ギャオ―、ガオー、ウオオオーン。
どれか一つでも貴女が理解できる言葉はありましたか?」


鬼畜?イジメ?
そんなレベルを越えた嫌がらせ。

カミーラは怒りで拳をわなわなと震わす。
しかし先ほどまでのダメージが大きく反論ができなかった。



「違うようですね。なら次はイヌ語でも試してみましょうか。
ワンワンワーン。駄目かな?キミ。そろそろ私も疲れてきたのだが」


その瞬間、アンデルセンが可愛らしくワンワン言った時。
この時、音が聞こえた。
ブチッという音。
何かが切れた音。

この音は間違いなく、カミーラの堪忍袋の緒が切れた音だった。


「ッッッッブッコロス!!!」

「はぁ?たかだが言葉で何切れてんだよ。馬鹿かお前は?
いや、馬鹿じゃなくて処女か?
戦争処女って意味だが、アッチの方でも処女なカミーラ様は私に何をするのでしょうかね」


戦争処女(アマチュアって意味ね)

「殺す殺す殺す。絶対に殺すッ……!!」

「それ以外も言えよ処女野郎。
それに、私に簡単に触れられると思うなよ!」

カミラは爪を伸ばし、翼をもって空を駆ける。
大抵の相手はこれで瞬殺できる。

だが、相手が悪すぎる。
アンデルセン相手に空を飛ぶなど自殺行為以外の何ものでもない。


「セイクロサンクト!(神聖にして侵すべからず)」

これで、空を飛ぶ者は詰む。
誰一人として、あの銃剣の海を越えることなどできない。


「さぁ、私の銃剣を越え、私に届くことができるのか?
汝が挑むのはまさしく無限の銃剣。恐れずして立ち向かえ!!」


いつも通りの日常であった。

今回は止める者がいないので被害甚大。
掃除は七星に回ってくるのであった。














その頃彼らは……


「競争だ。誰が一番掃除できるか競うぞ!」

「ッヘ。俺様が勝つにきまってんだろうが!」

「……勝手にしろ」



ガルティアが提案した競争。
ただケイブリスだけが眼を光らせていた。


「よし、なら俺はこの辺りの雑草と床を掃除する」


「俺様はでかいから壁を拭く」


「……飛んで、適当にしてくる」


メガラスは呆れながらも付き合う。
何気に仲が良いコンビなのだ。



「よーい、スタート!!
いけぇムシどもォォォォ!!!」

「テメェェェェ!来たねェ。汚すぎる!!
なんだよムシって。卑怯じゃねぇか!」

「はんっ、ムシだって俺の一部だ。
それにな、勝てばいいんだよ。どんな手を使ってでもな!!」


大人気ない。
そんな気もするが彼らにとっては真剣勝負。
ただガルティア、お前は卑怯過ぎる。


「てめぇ畜生!こうなったらそのムシ全部ぶち殺してやる!」

「ああ?なんだとコノ野郎!
上等じゃねぇか、掛かってこいよォォォォ」


いつも通りの日々が今日も過ぎていった。
















おまけ「ろりっこまじんかみーらたん」の場合。


アンデルセンはかみーらを言葉で攻める。
そして、それは起こった。


「ふぇぇぇん。トロズゥゥゥ。しちせいィィ」

泣きだした。
アンデルセンよりも小さいヨウジョが泣きだした。

「ふぇ、…エグッ。もうやだよぉぉぉぉ」

両の眼からでる涙。
それを両手で必死に拭いながら助けを呼ぶかみーらたん。

それを見て、アンデルセンの手が震えだす。
かみーらたんを見つめながらゆっくりと近づきながら手を伸ばす。

気づいたかみーらたんは逃げだそうとするが失敗。
既に体はアンデルセンの両手で抱きしめられ胸の中にいた。
必死に逃げだそうとするかみーらたんにアンデルセンは大丈夫といいながら抱きしめる。

ハァ、ハァ、とアンデルセンの声が聞こえる。
かみーらたんを抱きしめながら、アンデルセンは言った。


「決めました。もう決定しました。
貴女は私と主の子供です。決定事項です。絶対に、離しません…!!」

この日、トロスに娘が出来た。











さらにおまけ

ス「やってまいりました魔王ラジオ。
 今回は第二回目です。
 前回はククルククルがレギュラー落ちしたので今回からはナイチサをレギュラー入りさせて進めていきます」

ナ「しかしスラルよ。我はまだ死んでないのだが…」

ス「さんをつけろよデコ助野郎!!!
 そんな細かい事はどうでもいいんだよ」

ナ「……申し訳ない、スラル、さん。
 それで、今回なぜ二回目の魔王ラジオを?」

ス「前回言ったでしょう。これは作者の気分しだいやると。
 これ書いてるって事は結構頭が逝ってます」

ナ「まあ、進めましょうか。
 今回はどんな事をするのでしょう?」

ス「そうですね、ろりっこまじんかみーらたんについて語りましょう」

ナ「アレってなんなんですかね?
 ただの萌え的な意味だけで書いたんですか?」

ス「それもあります。萌え、ドジ、その他も付与されたかみーら。
 これは最高です。まあ、本当の最高はメガラスです」

ナ「は、はぁ。分かりました。結局かみーらたんは続くんですか?」

ス「外伝としてなら書くかもしれません。勿論ぜんぜん違う話しです。
 まあ、好評だったならの話ですけどね」

ナ「なるほど。っていうかこの魔王ラジオ。
 あとがきで書きたい事書いてるだけじゃないですか?」

ス「ナイチサ君。そんな敬語で話さなくていい。
 そして、キミがいっていることはある意味事実。
 あとがき少ない方が読者も嬉しいでしょう。
 それにちゃんとラジオ活動的な事もいつかします。
 ええ、しますとも。明日から頑張ります」

ナ「それは、ニートの方々が良く言う台詞では……」

ス「いつかっていう言葉は楽です。
 解釈は個人の自由と知りたまえ」

ナ「毎回うみねこネタをいれるのか?
  しかし、赤字を使っていないぞ」

ス「使いたくても使えないんです!!
 投稿した時にはなぜか赤字が黒に戻ってるんです!
 ロジックエラーだからですか!?
 私が言っている言葉は赤字では出せないと?
 なら黄金の真実です!
 これでもダメすか!?」

ナ「駄目だコイツ、はやくなんとかしないと……。
 そんなわけで、今回は此処まで。
 それでは第三回魔王ラジオで会いましょう」

ス「今は数えててもどうせ第何回とか数えなくなります。
 だって不定期ラジオですから。
 ちなみに、これも赤字で打ってます」






あとがき
なぜ赤き真実が使えないのでしょう?
もう全部私が悪いですね、分かります。

次回はやっと本編。
なんどこれを書かずに本編を書こうとした事か……
ただし次回はオリ魔人登場。






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