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[22300] (ネタ)ブラッド・チート・ボアル(続きの予定はない)
Name: 相異◆43c9ee4a ID:844ddac8
Date: 2010/10/03 00:44
 ――そもそもからして、俺と親父の折り合いは悪かった。
 別に決定的な何かがあったわけではない。ただ、戦士としての全盛期にケガで引退し、田舎に引っ込んで農業に精を出す姿と、子守歌代わりに語られる戦話では、後者に惹かれるのが子供心、いや、かつて少年だったやつならわかると思う。
 つまりは平和の中で今を生きる親父より、戦場で剣をふるっていた昔の親父を選んだというわけだ。
 十五になった日、親父の剣と、簡単な手荷物だけを背負い、俺は故郷、モールモースを飛び出し、アクラリンドからも離れることにした。
 大陸に渡り数ヶ月。俺は大陸でも一、二を争う大国、アルセナの正規軍。その中でも精鋭と言われる騎士団の見習いとして生活していた。
 さいわい親父譲りか、才能はあったらしく、若手の中ではすでに団随一の腕を持つに至り、上の覚えもめでたかった。調子に乗っていた時期だ。恋人がおり、戦友達との仲も良好で、順調に出世する目処が立ち、実戦も魔物相手の小競り合いが偶にある程度。
 断言しよう。もし人生がやり直せたとしたら。俺はこの幸せを捨てることになっても、素振りの一万回、上司へのごますりに精を出すだろうことを。
 それで俺自身が強くなり、人を率いる立場にいたならば、犠牲になる者、被害に遭う者はもっと、ずっと、少なかっただろうから。
 十六になったある日、アルセナのとある一地方で、反乱が発生した。
 彼らは自らをアルセナ民衆軍と名乗り、現在の支配体制に異議を唱えるために蜂起したという。一地方の小勢力にあるまじき潤沢な武装と物資、洗練され訓練されたとしか思えない人員により、その争いは日毎過激さを増していき、ついには騎士団にも出陣要請がかかることとなった。
 俺はそこで、初めて人を殺した。盗賊でも兵士でもない、本来守るべき民の中でも最も慈しむべき子供すら、反乱に加担したとして切り捨てた。
 そうして、二年の月日が流れ、その間に、民衆軍の背後には、隣国シーリンドの影があることを突き止め、追い込み、聖ベリアス樹海にて、決戦を行い、雌雄を決する段階になっていた。
 俺はというと、心をすり減らし、恋人と別れ、戦友の半数と死別し、小隊長の地位と、英雄としての称号を手に入れていた。
 戦場の鬼神。
 今となっては笑い話だが、当時の敵は、俺が現れたと聞くと、オバケが来ると脅された子供のように怯えていたらしい。

 ――敵を殺した瞬間のおまえの顔が、笑ってるように見えたんだ。もちろん、錯覚なんだろうけど、それ以来なんとなく怖くてさ。……悪い。言うべきじゃなかった。ごめん――

 ……いや、当時の戦友にも恐れらていたか。
 ん? あぁ、悪い。決戦の話からだっけな。
 実際のところ、決戦は起こらなかったんだ。もっとずっとひどい事が起きたせいで、これから戦うはずだった敵同士で手を組まなければどうしようもなくなっちまったのさ。
 魔物の大発生。
 それも、今まで見たことも聞いた事も無いような姿の魔物が、これまたありえないほどの数で現れたんだ。
 昔話で言う、ロスティデルの戦い。
 歴史には残ってないが、あれは作り話なんかじゃなく、ほんとうに起こったことなんだ。
 あの戦いで、アルセナ騎士団全軍と民衆軍、シーリンドの正規軍は壊滅し、かろうじて無事だったアルセナ軍本隊が、シーリンド本国を強襲して、シーリンドという国が無くなり戦争は終わったんだ。
 俺もその戦いに参加していたよ。戦場の鬼神に代わる、新たな渾名。神殺しのブラッドとして。



「俺は……死んだのか?」
「いいえ、ブラッド・ボアル。あなたはまだ死ぬべき運命ではありません」
 不意に、女の声が聞こえた。重くてだるくて、少し動かすだけで全身に痛みが走る体を認識し、俺はまだ生きている事を悟った。
「とはいえ、そのままでは死なないにしても、戦えない身体になってしまうかもしれませんね。……しかたありません。もう少し待つべきかもしれませんが、貴方以上の人間が現れる保証もありませんしね」
 女の声は続く。他の声が聞こえないので、どうやら一人で喋っているらしい。それが気になり、薄眼を開いて姿を確認しようとした俺の眼に、信じられない光景が広がった。
「なんだ……これ……?」
 それはまるで、神話であった。頭上に広がる空は赤黒い雲が広がり、真ん中にぽっかりとそこだけ、青く輝く穴が開いている。先ほどまで戦っていた森は、炎と瘴気で、木の数が半数以下となり、物好きな金持ちが作ったらしいホールはほぼ全壊していた。
 その、ホールの舞台上、空から降り注ぐ光を一身に浴びる女が俺の剣の刃を首筋に当て、血を流していた。
「あんた……いったい……?」
 自分の耳に届くのがやっとというくらいかすれていたが、女はその声が聞こえたらしく、こちらを見て、言った。

「――――」

 ――なんと言ったのかは覚えていない。聞こえなかったのかもしれない。だがその声、言葉を聞いた瞬間、俺は抗い難いなにかを感じ、気がつけば、その女の、血を流す首筋に口を近づけ、噛みつき、傷を広げ、そして――

 俺はその時から年を取らず、重傷を負ってもけっして死なない、いわゆる不死身の身体になったんだ。



「これで大丈夫でしょう。そのまま傷が癒えるのを待っていなさい。その後は――」
「……待てよ。あんた、どこかに行くつもりか?」
 痛みは走るが、動くようになった身体を起こし俺は女に訪ねた。このまま言葉を続けさせると、良くない様な気がした。
「あんたには、聞きたいことが山ほどあるんだ。このまま何処かへ行かせるわけにはいかない」
「! 驚きました。もう起き上がることができるなんて。あなたは私が思っていたより、ずっと優秀だったようね」
「うるさい。……ちょっと、黙っていろ」
 女の物言いに頭に血が上った俺は、次の瞬間、気絶させていた。
 その姿は、先ほどまでの激戦でのボロボロ具合と合わせて、騎士というより、山賊かなにかだった。



あとがきとか愚痴
あーゲームやりたいなぁーV&Bやりたいなー時間ないな―あのゲーム長いもんなーそもそもブラッド鈍りすぎだよな―百年後の孫世代曾孫世代と比べちゃ完全戦力外だろ下手すりゃーもっとまじめに生きてりゃそもそも山賊じゃなくて王国直属の騎士団とかで特別予算組んで世界守れたんじゃねーのかよ―そんなブラッドさんでもいいじゃんよーあーガンパレやろー。
という気分で書いたのだ。
なんかこの後の展開チラッと考えるに、たぶん本編前にアリアと仲良くなったり、ヴィヴィちゃんと仲良くなったりしてボアル家がすごい事になったりするんじゃねえかなぁとか、大陸統一戦争で大活躍して本格的に騎士団作ったり、才能とかすごいのに本編じゃたいしたことなかったウォルラスがチート化してたりして、ディーとジークが初っ端で退場しかねないことになったりするんじゃないかなぁ。マユラは俺の嫁。
そんな感じなんで続きはありません。


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