2010年10月4日0時0分
地方自治体の職員らでつくる全日本自治体労働者共済生活協同組合(自治労共済)の自動車共済をめぐり、監督官庁の厚生労働省が、不適切な契約が多数あるとの内部告発(公益通報)を自治労共済の職員(58)から受けながら、1年4カ月にわたって放置していたことがわかった。公益通報者保護法は告発者の保護を求めているが、職員は通報の後、この告発に必要な内部情報を取得した行為が就業規則に違反しているとして解雇された。厚労省は当時の対応に問題があったことを認めている。
職員は、自治労共済島根県支部(松江市)に嘱託として勤めていた男性。2008年10月、厚労省を訪ね、自治労共済を監督する社会・援護局の担当者に不正内容を通報した。全国15支部で、生計が異なる別居親族にも共済加入を認めたり、交通事故を起こした組合員の共済加入日を事故以前にさかのぼる処理をしたりして給付金を払っていた事例があることを、職場のパソコンに記録されていた内部資料などを基に説明した。
しかし、担当者は通報翌日、自治労共済本部に事実関係の問い合わせをしただけで指導には乗り出さなかった。しかも、その際に職員の名前と告発内容を同本部に伝えていた。職員は昨年8月、「内部情報の不正取得」を理由に職場を解雇された。
厚労省が、消費生活協同組合法(生協法)に違反しているとして、自治労共済に是正指導をしたのは今年3月3日。この不正契約問題にからんで朝日新聞の取材を受けた直後だった。
朝日新聞が入手した厚労省の内部文書には一連の経過がまとめられている。それには、職員の通報について「適切な処理をしていなかった」と記されており、当時の対応に問題があったことを認めている。厚労省は4月16日、内部通達で「要件に該当すれば通報者が公益通報と申告しなくても公益通報として扱う」「受理した際の通報者への連絡の徹底」などを全職員に指示した。