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[22275] 【ネタ】苦節10年、こんな俺にも娘ができました。(異世界)
Name: リリック◆6de4ea34 ID:385ae2e2
Date: 2010/10/01 11:57

 ある日突然トラックに跳ねられた。
何を言ってるのかわからないかもしれねぇが、言ったとおりのことが起きた。
朝起きて、学校への通学途中偶然見かけた全裸のオッサンに驚いて、回避しようとして気が付いたらトラックに跳ねられていた。

俺は宙を舞いながら思った。
ああ、これで俺は死ぬんだなぁ。
このままだと地面に衝突してセカンド・インパクトだ。
その衝撃は計り知れず、ブレる意識は今度こそブラックアウトしてしまう。

まだ、まだ死にたくない。まだ俺は昨日届いたエロゲを、12人の姉達とまだ恋をしていないのだ。神よ、俺に今一度チャンスを。
そんな時だ、俺の体は光に包まれ消えていった。



「お待ちしておりました、救世主様。私はこの国の王女、セシリア。あなたを召喚したものです」
「いでぇ、いでぇよお……。死んじまうよォ……。いやだ、まだじにだぐねぇ……」
「あれ?救世主様……?どうしたのですか!!ひどい、誰がこんなことを……救護班、誰か救護班をよんで頂戴!!」

 そんなこんなで俺は生まれた世界を離れて、この新たな大地へとやってきた。
もう10年になるだろうか?
この10年間はいろいろあった。魔王と戦ったり、大魔王と戦ったり、超魔王と戦ったり。
戦い続けていたらいつの間にか平和になっていたぜ。
そんな中でも一番のビッグニュースはこれ。

結・婚・し・ま・し・た。

やーい、現実の男ども見ているか。12人の姉と引き換えに俺は幸せになったぜ、ひゃっほう。

今は妻と一緒に飯屋を営んでいる。お食事処、日の本。カドレア王国、ダザン市の中央通りに軒を連ねるこの店は、この地域にない独特の料理のおかげで大繁盛だ。
俺の嫁さんであるリエルさんと一緒に切り盛りしている。彼女はイヌミミ、イヌシッポと可愛らしい獣人族。召喚されてから、修行の時に立ち寄った村で知り合った女性だ。
最初は俺達は反発し合ってたんだけど、魔王を倒したころからうち解け始め、だんだんと仲良くなっていった。
共に過ごし、共に闘い、そして超魔王を倒すころにはお互いかけがえのないパートナーとなっていたのだ。

関係が決定的になったのは、プリニー魔王を倒した後だったかな。
セシリアが元の世界へと帰るための門を用意してくれたのだ。
たびたび12人の姉のことを口走っていた俺だから、セシリアも気の毒に思ってくれたのだろう。どうやって行けばいいのかもわからない世界へと旅立つ門を、一から用意してくれたのだ。
そして、俺が元の世界へと旅立つ前夜。
月明かりの照らす、ベランダでのこと。
そこにいたのは大粒の涙を流すリエルだった。

「行っちゃいやあああ!!行がないでくれよおおおおおお!!!うあああああああああん」

普段はちょっとクールなリエルは、驚くことに恥も外聞も投げ捨てて一心に泣きついてきた。
その時俺は思ったんだ。俺はこんなにも愛されているんだと。12人の姉以外にも俺を必要としてくれる人が居たんだと。
だから決めた、彼女とこの世界で生きていこうと。
セシリアにはちょっと申し訳なかったけど、訳を話したら笑顔で祝福してくれた。
ああ、そして、こんなにも健気な彼女を放り出して現代世界に帰り、二次元の姉達とエンジョイしようとしていたことを俺は、ほんのちょびっと、恥ずかしく思った。

そして結婚式。魔界、天界、冥界さまざまな世界から集まった人たちが俺達を祝福してくれた。セシリアをはじめとする王家の人たち、いつの間にか友情の芽生えた魔族の人たち、蘇ってきたプリニー魔王、多くの人に祝福されながら俺達は誓いのキスを交わしたんだ。

 それから……。
俺達は平穏に生きるには有名になり過ぎた。富や名声はいくらでも手に入ったけど、それは望むものではなかったのだ。
引く手は数多、俺に爵位をくれるという女王になったセシリア、将軍として力を貸してくれという魔族や神族たち、冥界に来て一緒に過ごそうと誘ってくれたプリニー魔王。
けれど俺は全てを断り、人知れずひっそりと移り住むことにした。
何人かの親しい人にだけ連絡先を教え、俺達は魔法王国カドレアの地方都市で店を開いた。
特にこれといった騒ぎはないが、忙しくも平穏な日々が続いた。
二人で愛をはぐくむ日々。
そして数年後……。

「おぎゃあああああああ!!!おぎゃああああああああ!!!」

響く産声。生まれ出てくる命。俺たちに子供が生まれたのだ。

「見ろよ、女の子だぞ!ははは、こんなに小さいのに元気に泣いて……」
「ああ、俺達の娘だ。可愛いな。俺、お前と結婚して本当に良かったと思うよ」
「なにいってるんだ。……当然じゃないか?」

俺の目からこぼれ落ちる涙。
この世界に来てから10年。本当にこの世界に来て良かったと思う。
苦節10年、姉好きでどうしようもなくダメな俺にも娘ができました。



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