チラシの裏SS投稿掲示板




感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[22278] 習作 平凡を望む (現実→リリカルなのは)
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9
Date: 2010/10/02 17:41
現実からの転生者です。
原作のキャラとは絡みはありますが、ほとんど原作とは絡みません。
それでも良かったら読んでください。



[22278] 1話 目覚め
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9
Date: 2010/10/01 20:43
目を覚ました時に俺は見知らぬ場所にいてベットに横になっていた。
頭痛がひどい--ぼやけながら思考が鈍っている頭で考えてみる。

確か--そう、俺は自殺したはずだった。
俺こと山井光は、北海道の人通りのない道路で
自殺しようと酒を飲み眠って凍死して自殺しようとしたはずである。

体が鉛のように重く、酷く頭が痛む。だるい体を起こし、周りを見渡してみる。
医療器具と思われるモノ以外何もない部屋だった。
点滴が施され、体温や脈を図るのか体に無数の線がからまっていた。
そうか。俺は自殺に失敗したのか…。ここは病院か…。
そう思いつつ俺は何か違和感を感じた。
何だ? 何かがおかしい…。
まず気付いたのは目線が低いことだった。
そして、点滴をされている腕を見ると見慣れた自分の肌の色が違い
手を見てみると子供のような小さい手だった。
まるで別人の子供になったような…。
混乱していると突然に部屋のドアが開いた。

そして白衣を着た中年の男性が現れ、こちらに近づいてきた。

「目覚めたか。F14型。」

F14型…? 疑問は数多くあるが、まずはここがどこだか知りたかった。

「ここはどこですか」

そう言った自分の子供のように高い声に驚いた。

「グレン第4研究所だ」

にやけながら中年のおっさんは答えた。

何となくバカにされたようで少し腹に立ったが質問を続ける。

「どこですか。それは…。それに何で体がおかしくなってるんですか?」

それを聞いたおっさんは驚いたような顔をしてブツブツ言いながら
部屋を出て行ってしまった。

おっさんが部屋を出る前にいろいろ問い詰めようと思ったのだが
疲れていたのか急激な眠気に襲われ気絶するように俺は寝てしまった。

次に目が覚めた時も同じ場所のベットに寝ていた。
目を覚ましたが前の時のような頭痛も体のだるさもなくなっていた。
体を起こし自分の状況を改めて考えてみる。
「あ、あ」と声を出してみる。
明らかに声が高い。手を見てみると子供のように小さい手だ。
夢じゃなかったんだな…。どうやら俺は子供の体になってしまったらしい。
現在の状況の説明を聞こうと誰かが来るのを待っていたが一向に来そうにない。
とりあえず部屋を出てみるか…。そう思っているとドアが開いた。
前に部屋に来たおっさんだ。

「体の調子はどうだ?」

「まぁまぁです。それより何がどうなっているか説明して欲しい」

俺がそう言うと、おっさんは「ついて来い」と言った。

点滴や体中に張り巡らされている線を無理やり外し、おっさんについて行く。

取り調べ室の様な密室空間に連れて来られ質問を受けた。

「まず、お前の名前は何だ」

「山井光。北海道で酒を飲み凍死しようと自殺を図り、気付いたらここにいたんですけど
どういうことですか」

おっさんは眉をひそめ無言になったがまた質問を始めた。

「記憶があるのか?」

何を言ってるんだコイツは…。

「それより何故ここにいるのか。何故子供の体になっているのかを教えて欲しい」

「いいから俺の質問だけに答えろ」

おっさんは冷たい口調で言ってきた。

何て傲慢な奴だと思い、腹が立ったが、とりあえず質問に答えることにした。

それからおっさんは自分の住んでた場所や家族構成、俺について
しつこく多くのことを聞いてきた。
また自分の星の名前など分けの分からんことも聞いてきた。
そして、魔法、ミッドチルダとかよく分からん単語について分かるかと聞いてきた。
知らないと答えたが、一瞬リリカルなのはにそんながあったなーと考えていたが

おっさんは「管理局は分かるか?」と言ってきた。

ホントにリリカルなのはかよ。俺は一瞬固まったが

「犯罪者を取り締まっている組織」

とリリカルなのはで知っている知識を言ってみた。

そう言うとおっさんも一瞬固まったが今度はデバイスについて聞いてきた。

何がしたいんだ。このおっさんは…。

「リリカルなのはのことですか?そんなこと聞いてどうするんですか?」

「リリカルなのはとは何だ?」

知ってて聞いてんだろ。そう思いつつ好きなアニメだったので
少しだけ嬉しくなったが、それより苛立ちの方が強くなってきていた。

「アニメでしょう。そんな事聞いてどうするんですか」

そう言うと長い沈黙の後、急に席を立ち上がり「ついて来い」と言われ
こちらの質問には一切答えず
状況が全く分からないまま、また元いた部屋に戻された。

何なんだ一体。何がどうなっているのかを知りたい。
変な研究に巻き込まれてしまったんだろうか。
死んだ俺もしくは死ぬ前の俺を使って何かの実験でもしているのか。
ホントにアニメみたいだな。
そういえば、おっさんはリリカルなのはについて言っていたな。
まさかリリカルなのはの世界にでも来てしまったというのか。
何がなんだか分からない。

少し立つと部屋に白衣の若い男性の医者? なのか分からないが食事を運んできた。

そいつにもいろいろ聞いてみたが、何も答えてくれなかった。

持ってきて貰った食事は病院の質素なメニューだったが
久し振りの食事のせいか、やけに美味く感じた。

どれくらい経っただろうか。何しろ時計もないし窓もなく
ドアもこちらからは開けられず密室に閉じ込められているため
時間が分からないのだ。

誰も状況を説明してくれず自分が何なのか分からないまま
おそらく2、3日経っただろうか。
また、おっさんが俺の前に現れた。

「一体何がどうなっているのか、いいかげん教えてくれ」

俺は疲れた声でそう言った。実際、不安と苛立ちで疲れていた。

「いいだろう」

おっさんは俺の存在を説明し始めた。

「お前はF14型。人造生命体であり、管理局の魔導師ツガイ・リオンをベースにしたクローンだ。
記憶の転写のミスにより記憶が混乱しているようだがそれが事実だ」

他にも何かよく分からん難しい事を言っていたが俺には理解できなかった。

「現在、お前は魔法を使うことができるか?」

「分からない…」

混乱している俺がそう一言言うとおっさんは部屋を出て行った。

俺がクローン? 人造生命体? 本当にリリカルなのはの世界に来てしまったということか?
フェイトと同じ人造魔導師? ばかな…。
しかし、実際には俺は子供の体になっているわけだ。
それに、おっさんが嘘を言っているようには見えなかった。

これは夢なのか。指をかじってみる。痛い。夢じゃない。
いや、もしかしたら実際の俺は本物の病院のベットにでも寝ていて
それで夢を見ていて体が動く状態なのかもしれない。
そうならば、周りに医者や患者、家族がいるかもしれない。
俺は指をかじりながら「僕を叩いて下さい。叩いて下さい」とかなり長い時間、言い続けた。
しかし、何も反応がなかった。当たり前か。
もしそうなら今までに食事や物に触れることができているのがおかしい。

だとしたらマ○リックス(名作? 映画)のように視覚、聴覚、痛覚は分かるが
ずっと夢を見るような装置に入れられているのだろうか。
しかし、現代技術では、そんなことは不可能ではないだろうか…。
初めから装置に入れられていると考えると、今までの人生が全て夢ということになる。

もしくは夢だが自分が勝手に現実として認識しているだけかもしれない。
夢という現象でないかもしれない。もっと別の--。
俺は混乱して頭がおかしくなりそうだった。

そうだ。夢だ。こんなことありえない。むしろ全てが夢であって欲しい。
俺は自殺した。家族はいた。迷惑かけっぱなしだった。悲しんだのだろうか。
いや、悲しんだだろう。それが分かっていて俺は自殺した。
自分が楽になりたかったからだ。何も考えたくなかった。全てから逃げたんだ。

全てから逃げたはずなのに俺はまだ生きている。
いや生きてるかも分からない。夢かもしれない。現在の状況が分からない。
もう何も考えたくない。自然と涙があふれてきた。
自殺する前の自分に戻ったようにその場に座り込み何も考えず
俺はまた自分の殻に閉じこもった。





-モニター室-

モニター室でF14型(山井光)を見ながら研究員が同僚に聞いた。

「F14はどうなってんだ? 記憶転写ミスったと聞いたが。
オリジナルの記憶は転写してないからありえないと思うんだが…。」

「だが、実際に死んだ前の記憶が残っている。自分が自殺したのは覚えていると言ってるらしい。
おそらく記憶が混乱しているんだろう。何でも自分は辺境世界の地球人だと言って、
管理局とかについては地球のアニメで知ったと言ってるらしい」

「アニメときたか。そういえば、オリジナルは自殺したんだったな。何で地球人とか言ってんだろーな?」

「地球人の友人でもいたんじゃないか? それで記憶が混ざったとか。実際のところは分からないが」

「それって危険じゃないか? もしかしたら記憶が戻るかもしれないし。自我も強いし」

「危険になったら上が処分命じるだろう」

急にモニターを見ながら研究員が叫ぶ。

「おい。何かF14が面白い事やってるぞ」

「なんだ?」

同僚の研究員もモニターを覗き込む。

そこにはF14(山井光)が指を咥えながら

「僕を叩いて下さい。」

と連呼している姿があった。

しまいには研究員全員が集まりモニター室は爆笑に包まれた。

笑いを抑えながら研究員は言った。

「はーはー。そういえば、もうすぐ人造魔導師4体が完成するらしいぜ」



[22278] 2話 魔法
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9
Date: 2010/10/02 17:41
俺は、ただ飯を食って寝るだけの生活を繰り返していた。
いつものように何も考えず寝ていると
若い男に広い部屋に無理やり連れてこられた。

何かするんだろうか…。どうでもいいか…。

男は黒い丸い宝石を俺に投げつけた。
俺は何となくそれを受け取る。

「今からお前に魔法を教えてやる。セットアップしろ」

魔法って…。俺が呆けていると
俺を睨めつけながら「早く契約しろ」と苛立った口調で言ってきた。

そんな事言われたってどうすりゃいいんだよ…。
そういえば、ここはリリカルなのはの世界ということだったな。
とりあえずアニメっぽく適当にやってみるか…。

俺は黒い宝石を掲げてみた。あれ…。どんな感じだったけかな…。

「えーーと、我と契約せよ。えー、我に力を与えよ。えー、天に向かいし
勇気と力を…。やっぱ分からない。とりあえずセットアップ」

何も起こらなかった…。

「何も起こらないんですけど…」

男はため息をついた。

「デバイスの名前を呼んでセットアップしろ」

「名前?」

「何でもいい」

何となくグローウォールという名前が浮かんできた。

「あー、グローウォール。セットアップ」

名前を呼ぶと黒い宝石が輝き始めた。
すごい。ありえないほど光ってる。奇跡だ。
本当にリリカルなのは世界なのか。
心臓の音が本当に聞こえるんじゃないかと思うほど俺は驚いていた。 

「え、あ、あの…。めっちゃ光ってるんですけど」

興奮と驚きで震えながら何とか声を出す。

「武器と鎧をイメージしろ」

武器か…。槍かな…。いやバルディッシュぽいとやつとか…。アイゼンか。
いつの間にか真剣に武器を考えていた。
そして、ハンマーと槍と鎌が合わさった武器のイメージが浮かんできた。
結構カッコいいな。武器はこれでいいか。
次は鎧か。何故か高校の頃の学校の制服が思い浮かんで、それっぽいのがイメージ
として浮かんできた。これだと弱そうだな。何か鎧っぽい感じのが欲しい。
すると学校の制服っぽいのに肩、腕、足、男の急所の部分に鋼の鎧が形成された。

これでいいかなと思うと俺はイメージした。
バリアジャケットに包まれデバイスを手に持っていた。
どうやら本当にリリカルなのは世界に来てしまったらしい。
興奮と驚きで固まっていると

「今から実力を見てやる」

そう言うと、男はデバイスを剣に形成し、いきなり斬りつけてきた。

ちょ…。いきなり。タンマ。

「ガード(英語)」

デバイスが喋り守ってくれた。

初めて魔法を使い、俺は興奮していた。
凄い。これが魔法か。

驚きながら、ハァハァ言って興奮していると
男は容赦なく斬りつけてきた。

くそ…。これでは防戦一方だ。
剣捌きが早すぎる…。やられっぱなしは嫌だ。
バックステップをし、適当にウォールを振り回す。
あれ…。誰もいない。
横に回りこまれ、剣で切り込まれていた。
防御が間に合わない。俺は吹っ飛ばされた。
かろうじて防御はできたものの魔法壁が弱かったのか
ダメージが大きい。
男はゆっくり近づいてくる。
何とか立ち上がり、どうするかを考える。
勝てるわけがない。

「うおおおっぉぉおー」

俺はもうやけくそになり、突っ込んだ。
突きを繰り出したとたん俺は回し蹴りをくらい
また吹っ飛んだ。

「もう少し、考えて行動しろ」

考えろって言ったって早すぎて動きが目で追えないしどうしたらいいんだよ…。
もう一度何とか立ち上がる。頭がくらくらする。立っているのもきつい。
たぶんこれが最後の攻撃になるか。もう何も考えず、感で攻撃するしかない。

俺はふらふらになり叫びながら突きを繰り出す。
突きの後すぐに感で俺は右になぎ払いをした。
感が当たり男は右に避けていた。だがどうせ避けられるか防御される。

「ガード」

俺は魔法壁を展開しながら体当たりをする。
男がバックステップしていたところに俺の体当たりが炸裂する。
よろけたところにすぐにウォールを振り回し攻撃する。
しかし、剣で簡単に受け止められ、
そして、俺のデバイスは真っ二つになった。
って、デバイス折れてるぅーーー。これ大丈夫なのかよ!?

「折れたんですけど大丈夫なんですか!? 貴方に折られたんですが…」

「それぐらいなら大丈夫だ」

「リカバリー(英語)」

デバイスがそう喋るとデバイスは元の形に戻った。
良かった。せっかく貰ったデバイスが壊れたかと思った。

「まず、攻撃する時にデバイスに魔力を込めろ」

「へ!?」

「そんなことも分からないのか…。しょうがない。俺がお前に
魔法の使い方を教えてやる」

それから俺は何時間も魔法の使い方についてレクチャーしてもらった。
初めて聞くことばかりだったが面白くていつの間にか時間が経っていた。

「これで終わりにする。今日はもう部屋に戻れ」

まだ魔法について聞きたい事が山ほどあったが疲れてそうなので頷き部屋に戻った。

教え方も上手いし何気に結構いい人だったなー。そういえば名前聞くの忘れたな。
まぁいいか。今度また教えてもらえるだろう。たぶん。

部屋に戻ると医療器具がなくなり、タンスや冷蔵庫が置かれ普通の部屋っぽくなっていた。
鏡があったので鏡を見てみた。
黒髪、黒眼のアメリカ人と日本人のハーフみたいな
10歳ぐらいの冴えなそうな少年がそこには写っていた。
もっとイケメンが良かったなー。金髪のカッコいい奴が良かった。
そんな事を思いながら本当に自分が別人になってリリカルなのはっぽい世界に来たことを
改めて実感する。

俺は久しぶりに生きているという実感があると思った。
魔法というありえない力を自分が手にしたのだ。
価値のない俺が普通とは違う力を手にしたのだ。
今までこんなに面白いと感じたことがあっただろうか。
前の俺はおそらく死んだ。死んだら、別の世界の魔法が使える別人に憑依していたのだ。
こんなファンタジーみたいなことが起こったら楽しいと思うだろう。

しかし、俺は一度死んでいるのだ。自殺をしたのだ。
家族を悲しませ、イヤなことから逃げたのだ。
そんな俺が今を楽しんでいいのだろうか…。
それに、これが現実か分からない。もしかしたら只の夢かもしれない。
俺はそんなことをずっと考えていた--。



[22278] 3話 仲間
Name: クロ◆7f4a5e75 ID:2d69bad9
Date: 2010/10/02 18:09
俺は一度魔法を教えてもらってからずっと魔法訓練を続けていた。
といっても数ヶ月程度だがかなり成長したと思う。
そして、分かった事だが、ここは犯罪組織所属の研究施設であり
いろいろとやばい事をやっているらしい。人造魔導師作るぐらいだしな。
だが、この時の俺は魔法に夢中でそんな事は全く気にしていなかった。



「ファイア」

俺は無数の赤い魔法の弾を先輩に飛ばす。
先輩とは俺にずっと魔法を教えてくれている魔導師のことだ。
名前はクラウディア・ガンツ。23歳。男。
たまたま前世? の俺と同じ年だった。
最初は師匠と呼んでいたが気持ち悪いと言われ今では先輩と呼んでいる。
先輩と言われるのも何故か嫌がってはいるが。
魔導師ランクはAランクぐらいだろうか。俺もAランクぐらいらしいが。
ちなみに一度も模擬戦で勝ったことはない。
いつも、かなりの手加減をされている。
いつかは勝ってみたい。ある意味憧れの存在である。

先輩が魔法弾を防御している間に

「ソニック」

足に魔力を込め高速で移動し、先輩に攻撃する。
ちまちま突きと斬りで、なるべく小さく攻撃する。
大振りだと全て避けられ、攻撃されるからだ。
隙を与えないよう連続して攻撃していたが全て受け流され、
先輩が大降りの剣撃をしてきた。
何とか受け流し素早く斬りつける。
しかし、予想されてたのか剣撃を軽く受け止め、前蹴りを繰り出す。

「ぐぇっ」

少し飛ばされ俺はすぐに後方に移動する。

先輩は魔法弾を放ってくる。
全てをギリギリ避ける。しかし、魔法弾をコントロールし誘導してくる。

「ガード」

何とか防御をして耐える。
そこへ、高速で飛んできた先輩の剣撃を受ける。

「くっ、ガード」

魔法壁が砕ける。すぐに上方へ移動し思い切りハンマーで振りかぶる。
先輩は後方に素早く移動した。
俺はそれを追いかけるように地面ギリギリに低空飛行をする。
追いついたところでなぎ払うように攻撃をする。
避けられた。どこだ!? 上か。下か--って下は地面か。
右か左か。いない。
そして、後ろから衝撃を受けた。

「ぐへぇっ」

めちゃくちゃ吹っ飛ばされた。もう動けない。今回も負けか。
息を切らしながら何とか立ち上がる。

「はぁー。はぁー。どうでしたか。今日の動きは?」

「一言で言うと一つ覚えのバカだな。もっと大胆に攻撃しろ」

先輩は少し笑いながらそう言った。

「いや、大振りだと全部避けられるじゃないですか」

「でも、お前は瞬間魔力が高いというか。一撃が強いから
お前の思いっきりの攻撃を食らったら俺でもかなりやばい。
これでも毎回ヒヤヒヤしてる。それにお前のデバイスは打撃向きだ。
もっと大胆に攻撃しろ」

そう言って先輩はまた少し笑った。

俺の一撃ってそんなに強かったのか!? てか俺も
結構考えて攻撃してるんだがなぁ。

「それよりそろそろ食堂でも行くか?」

「はい」

俺は結構自由な身になっていた。
さすがに外へは出してもらえないが、食堂にも行けるようになったし
他の魔導師や研究員とも結構仲良くなった。

食堂で飯を食べていると

「今日もコテンパンにされてきたか」

笑いながら研究員が隣に座ってきた。

「いつか倒しますよ」

「それは楽しみだな」

先輩は笑っている。
いつかマジで倒してやる。
もっと大胆に攻撃か…。少し戦い方を変えて見るかな。

「そういえば新しく魔導師が4人配属されるらしいぞ」

研究員の確かフレッチだったかな…。もう数ヶ月ここにいるのに
名前が全然覚えられん。

「本当か?フレッツ。女はいるのか?」

フレッツだったか。まぁ、そんなことはどうでもいい。
新しい仲間が来るのか。可愛い女の子いるかな。

「女の子2人と男2人だと」

「良かったな。F14」

先輩はニヤニヤしながら変態の顔で言ってきた。
実際、先輩は変態である。この前なんかゲフゲフン。
とそれはおいといて。

「何歳ですか?」

「全員お前と同じぐらいの年だよ」

何だ。俺と同じぐらいの年かよ。

「何だ?不満そうな顔して。年上の美女が良かったのか。
ホントにお前はドスケベだな」

確かに年上の美女が良かったが…。

「いや、違いますって。良かったですよ。友達も出来るかもしれない」

俺昔から友達いなかったもんな。別に性格が暗かったわけじゃないが…。
いや暗かったのかな。自分から行動しないで待ってるだけだったもんな。
大人になったらATフィールドずっと張ってたしな。

そういえば、全員同じ年という事は皆、俺と同じ人造魔導師かな。
でも、原作のフェイトみたいに可愛い子ならいいな。
てか、この世界にフェイトはいるのかな。時間軸もあるし。
ま、そんなことどうでもいいか。

いつものように先輩と訓練をする準備をしていると
先輩が4人の魔導師を連れてきた。

「これから全員一緒に訓練を行う」

全員同じぐらいの10歳ぐらいの年だった。俺と同じ人造魔導師だろうな。
それより驚いたのが魔導師の男2人が俺と全く同じ顔だったのだ。
俺は黒髪で2人は茶髪だったが…。
女の子2人は金髪で同じ顔だった。眼の色は赤い綺麗な瞳だった。結構可愛かった。
もしかしてフェイトのクローンか?
どっちにしろ実写版だし年下だし無理だな。
何が無理かって?それは…げふんげふん。
後で聞いた話だがどうやら本当にフェイトのクローンだったらしく、
他の2人は予想通り俺と同じオリジナルからのクローンだった。


「これからよろしく」

とりあえず挨拶をしておく。

「「よろしく」」

女の子2人は小さな声でそう言った。ちなみに男2人は無言だった。

「自己紹介も済んだし。とりあえず実力を測るために
全員で模擬戦でもするか」

今の自己紹介だったんですか!? てか、いきなり模擬戦ですか!?
そう言えば俺も最初いきなり戦わされたな。

「F14。それとG01。戦ってみろ」

G01(俺と同じ顔の奴)が先輩から渡されたデバイスをセットアップして準備を始めた。

マジですか…。

「どうした。F14」

「あ、はい」

とりあえず、やってみるか。
初めてだし、かわいそうだから軽くやるか。

結果は…。ギリギリ勝つことが出来た…。
マジで初めてかよ…。めちゃめちゃいい動きしてたぞ。
普通に臨機応変に魔法使ってたし。

「よし。もういいぞ。次はF14とG02」

「え? また俺ですか? 疲れて死にそうなんですけど…」

「お前なら大丈夫だろ。それでは始め」

マジですか。疲れてホントにやばいんですが。
もうあんまり魔力ないし。あんたは鬼ですか…。

その後G02(俺と同じ顔の奴)と戦った。
もちろん魔力が途中で切れてボコボコにやられました。

訓練を続けるうちに最初は皆無口で無愛想だったが
同じ境遇同士仲良くなろうと話しかけた努力か
次第に向こうから話しかけてきて笑い合うようになった。

それで俺はずっと思っていることがあった。
F14とかG01とかそんなので呼ばれるのはおかしいんじゃないかと。
とりあえず皆を集合させる。

「みんなー。ちょっと集まってくれないか」

集まったところで話を続ける。

「思ったんだがコード名が名前なんて嫌じゃないか。
俺は嫌だ。カッコいい名前が欲しい。みんなはどうだ?」

「欲しい…かな」

「欲しいかも」

「どちらかと言えば…」

「別に…」

素直じゃない奴もいるが放っておこう。

「それで俺はシオンって言う名前にする。何となくカッコいいだろ?」

俺は自信満々で言った。前世?の日本人のダサい名前もイヤだしな。

「いいんじゃない?」

「いや、俺がもっといい名前を付けてやる。エロナメ。ボロッカス。
とかどうだ?」

気付くと、いきなり、先輩が口を出してきて真面目な顔で言う。

「そんな変なのはイヤです。とりあえず先輩は黙ってて下さい」

こちらも真面目な顔で言い返す。

「お前明日覚えてろよ。5対1でボコボコにするからな」

腹が立ったのか不敵な笑みを残して先輩はどこかへ行ってしまった。
恐ろしい。あの人ならたぶんやるだろう。明日俺大丈夫かな。

「それで、欲しい名前とかある?」

「「「………」」」

「えっと、シオン? が付けてくれたら…」

明るいがちょっと抜けてるフェイトがそう言った。

「私も!」

ツンデレのフェイトがそう言った。

「俺も付けてくれ」

暗い寡黙な感じの俺(同じ顔のクローン)がそう言った。まぁ俺も暗いがな…。

うーーん。人の名前付けるって結構重要だよな。
少し悩んだが、よし決めた。

明るいがちょっと抜けてるフェイトは「カレン」、ツンデレなフェイトは
「カノン」、暗い俺は「レオン」という名前にした。

「みんな決まったがお前はどうするんだ?」

生意気だが実は優しい俺(同じ顔のクローン「はーとふるカフェ2回目」)に向かって聞いた。

「俺は自分で決める…。ボロッカスでいい」

「そうか…。とりあえずこれで全員名前が決まったな」

ボロッカスか。さっきの先輩のから取ったんだろうけど。
エロナメだったらやばかったな…。

名前で呼び合ってから俺達の距離は近づいた気がする。

「シオン」

「シオン呼んでるよ?」

「シオン!」

「シオン?」

何だよさっきからうるさいな。シオンって何だよ。

「「「お前だよ」」」

「あ、そうか。シオンか。で何?」

そうだった。俺の名前はシオンだった。
聞きなれないから自分の名前だって分からなかった。
もうシオンと呼ばれてから結構経った気はするが。

「はぁー。何で俺はシオンに負けることがあるんだろうな。
魔力は俺の方が高いのに。同じクローンなのに
何故か髪の色もスキルも違うし」

ボロッカスがいつものように負け惜しみを言ってくる。

「へっ? てか皆魔導師ランク同じじゃないの?」

「たぶんシオンが一番低いぞ」

「そうだったのか…。まぁ、大事なのは魔力の多さじゃないからな。
経験と、どう魔力を制御するか。それが重要なんだよ」

確かそんな事をクロノが言ってた気がする。

「シオンは瞬間的に魔力を爆発させる事ができるからね。
すぐ魔力なくなるけど…」

レオンは一言多いんだよな。あんまり喋らないくせに。

「そうだ。カレン。どうやったらスムーズに移動魔法使えるか
後で教えてくれないか?」

「私はカノン。眼が腐ってるんじゃないの」

「眼が腐ってるって…。いやー、同じ顔だからさ。
まぁカノンでいいや。後で教えて」

「まぁって…。カレンに聞きなさいよ!」

やばいな。ツンデレを怒らしてしまったな…。
そうだ。忘れてた。先輩に頼んでこれを買って貰ったんだった。

「そういえば、これを買ったんだった。はいっ。
できたら付けてくれるとありがたい」

そう言って俺は赤いヘアピンを渡した。
女の子にプレゼントをするなんて
初めてだったので意外と緊張した。

「あ、ありがとう。貰っておくわ」

少し赤くなりながらカノンはヘアピンを受け取った。

「後これはカレンに」

そう言ってカレンには黒いヘアピンを渡した。

さっそく付けて喜んでるみたいだから良かった。
よし、これで名前を間違えることはない。

「やるな。シオン」

先輩が笑みを浮かべている。

「そういえば、カレンさー」

「私はカノンだってーの!」






俺は皆で笑い合うこんな日常がずっと続いたらいいと思っていた。
この世界をそんなに悪くないと思い、昔の記憶を閉じ込め
忘れた振りをしてシオンとして生きようとしていた。

そんなことはありえないのに…。


感想掲示板 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.0025110244751 / キャッシュ効いてます^^