2010年10月3日5時45分
中国への海外視察後に提出された「視察研修報告書」。視察概要には「2008年6月19日定例会質問会議録参照」とあるだけだ(画像の一部を修整しました)
三重県桑名市の市議2人が、中国の世界遺産巡りなど、旅行会社が主催する海外観光のパッケージツアーに参加し、料金は海外視察の名目で政務調査費を充てていたことが、朝日新聞の取材でわかった。報告書はいずれもA4判の紙1枚で、視察内容に触れず、感想だけを記したケースもあった。市議の一人は「海外視察」の目的について「現場に立つこと」と説明している。専門家からは「観光と思われても仕方がない」との指摘がある。
朝日新聞が、桑名市の全市議について2005〜09年度分の政務調査費に関する資料を市に情報公開請求して明らかになった。
会派「清流クラブ」の男性市議(52)は07年度から毎年1回、一般向けの団体旅行で世界遺産を訪れ、3回計約41万円を政調費で支払った。
07年は「悠々釜山・慶州3日間」(料金4万9800円)に参加し、韓国の海印寺などを訪れた。08年は「北京世界遺産づくしの旅5日間」(同9万2750円)で中国の万里の長城などを訪問。09年はポーランドのアウシュビッツ強制収容所や作曲家ショパンゆかりの教会などを巡るツアー(同27万3515円)に参加した。食事を含めてほぼすべて団体行動だった。
この市議が市議会事務局に提出した報告書はA4判1枚で、「(市議会の)会議録参照」との記載と旅行日程を書いただけだった。会議録の該当部分には、07年の場合、帰国後の一般質問で「桑名市における世界遺産登録推進施策はないのか」と質問。当時の市長公室長は「対象になるものはない」と答弁した。
市議は朝日新聞の取材に対し、文書で回答。「『世界遺産だから』との理由で訪問したのではない」「(現地で)説明を受けることが主ではなく『現場に立つこと』が目的のすべて」と答えた。