リニア中央新幹線のルートなどを検討する国土交通省交通政策審議会の家田仁鉄道部会長(東大工学部教授)は29日、小委員会後の記者会見で、JR東海が望むCルートの南アルプスを貫く長大トンネル計画について、「技術的な問題はクリア(解消)されている」との見解を示した。
10月の次回会合で、諏訪・伊那谷回りのBルート、Cルートそれぞれの費用対効果や地域への影響などの分析結果が報告され、小委員会はルート選定に向けた本格論議を始める予定。Cルートの大きな課題が解消したとする家田部会長の見解は、論議に影響を与える可能性がある。
ただ、沿線地域などでは安全性や環境面で南アトンネルへの懸念が根強いほか、「費用さえかければ今の技術ならできるだろうが、それがどのくらいになるのか精査が必要だ」(白鳥孝伊那市長)との意見もあり、より丁寧な検証を求める声も上がりそうだ。
同日の会合では、整備新幹線を建設している鉄道・運輸機構が、北陸新幹線のルート検討で1975年ごろに候補に挙がった北アルプスを貫き、長野と富山を直線的に結ぶルートと、南アトンネルを技術面で比べた考察を報告。
南アトンネルは「大量の湧(ゆう)水や地圧が想定され、技術的に困難なことが予想されるが、掘削方法や水抜きボーリングなどの技術も相当進んできた。(工事は)可能と思う」と説明。北アは火山地域などのため「現在でも施工は厳しい」とした。
一方、同省鉄道局は、中央新幹線計画に関し8月下旬まで実施した意見公募の主な意見をまとめた資料を提示。個人、団体合わせて793件で、このうち長野県は沿線都府県で最多の556件だった。
ルート関連では「Cルートを選定すべきだ」が463件(うち県内453件)、「Bルートを選定すべきだ」は37件で、すべてが県内からだった。「飯田地域に駅を設置すべきだ」は94件。
意見公募の結果について家田部会長は「(件数が)多い意見が大事だとは全く思っていない」とした。