前特捜部長ら「日誌」で全面的に争う姿勢
大阪地検特捜部の前部長らが部下だった検事の証拠隠滅を隠蔽した疑いで逮捕された事件で、最高検は2日、前部長の自宅などを家宅捜索し、裏付けを進めています。これに対し前部長らは、当時の部下とのやりとりを記した「業務日誌」などを材料に最高検と全面的に争う姿勢です。
最高検は大阪地検特捜部の前部長、大坪弘道容疑者が次席として勤務していた京都地検や、前副部長の佐賀元明容疑者の所属していた神戸地検に加え、それそれの自宅を捜索しました。
大坪前部長と佐賀前副部長は、主任検事の前田恒彦容疑者が証拠品のフロッピーディスクのデータを改ざんしたことを知りながら、それを隠蔽した疑いで1日、逮捕されました。
「(Q.取り調べに対しどう答えたか?)今、最高検の調査を受けてますので詳細はコメントできない。元上司としての監督責任は痛感しています」(大坪弘道前部長)
これまでの取材に対し大坪前部長は、「改ざんの認識は絶対にない。徹底抗戦する」。佐賀前副部長は「逮捕はおかしい」、「供述だけであれば村木さんの時と同じだ」と全面的に争う考えを示しています。
根拠の1つが、佐賀前副部長の「業務日誌」。JNNが入手したこの日誌には、データ書き換え問題の経緯が詳しく記されています。「1月30日、明石駅で新快速を待っていると女性検事から電話あり。『お話があります』」(業務日誌より)
日誌の内容を再現すると、こうなります。1月30日、土曜日にもかかわらず、呼び出された佐賀前副部長。執務室には、女性検事を含む3人の検事が待っていました。
「『前田検事はフロッピーディスクのデータを改ざんした』と聞きました。すぐに公表すべきです。公表しなければ、私は検事を辞職します」(女性検事!K
これに対し、前副部長は・・・。
「前田から話を聞く前に公表なんてできないだろう」(佐賀前副部長)
前田検事は当時、民主党の小沢前幹事長の秘書が逮捕された西松事件の応援で、東京地検に出張中でした。さらにこの当時、厚労省の村木厚子さんの裁判は始まったばかり。データ書き換えを公表すれば、裁判を続けることが困難となるため、地検内部では公表に対し、消極的だったというのです。
「きょう公表するのは村木公判はもとより、前田検事が応援中の東京の事件にも影響し、ひいては特捜組織を瓦解する」(佐賀前副部長の日誌)
2月1日午後4時半。前副部長は、東京の前田検事に電話。ここから最高検の調べと、副部長らの主張が大きく食い違ってきます。前田検事は「副部長に改ざんを報告した」と供述しているのに対し、日誌では前田検事の説明はこうなっています。
「パソコンの操作を間違えて、フロッピーのデータを書き換えてしまった可能性がある。(同僚に)『データを変えているかもしれない』と冗談で話した。そのことが誤解を生んでいるかもしれない」(佐賀前副部長の日誌)
翌日の夕方、玉井英章前次席検事への報告がなされました。最高検の調べでは、大坪前部長は「今回はミステイクでいく」と事前に指示。「問題ありません」と改ざんを隠蔽したとされるのに対し、前副部長の日誌では報告内容が異なっています。
「女性検事が『証拠の改ざんを公表しろ』と言い出し、トラブルになっている。前田検事に電話で聞いたところ、『操作を誤ってデータを書き換えた可能性がある』と説明している。ただ、フロッピーはもう返却してしまったので、調べようがない」(日誌より再現した「次席検事への報告」)
この報告を聞き、前次席検事はこう怒ったとされます。
「検事総長が西松事件でピリピリしている時に、女性検事は何てことを言い出すんだ」(佐賀前副部長の日誌)
逮捕直前の取材に大坪前部長は、「副部長の日誌という証拠もある」「来るなら来いだ」と自信を見せていました。今後、最高検が事件をどう立証していくのか注目されます。(02日17:06)