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きょうのコラム「時鐘」 2010年10月3日
手錠のまま逃走した男が富山市内で捕まった記事を読んでいて、若いころ見たアメリカ映画「手錠のまゝの脱獄」を思い出した
同じ日の紙面に、その「手錠のまゝの脱獄」の主役トニー・カーティス氏(85)の訃報があった。隣には名作「俺たちに明日はない」の監督、アーサー・ペン氏(88)の訃報が並んでいた。かつてのニューシネマの旗手も高齢だった ご冥福を祈ると言えば、うそ臭くなる。正直なところ、新聞を読む楽しみはこんな偶然に出会うことにある。古い記憶と今が突然結びつく、そこが面白いのである。高倉健の出世作「網走番外地」の第一作も、米国の手錠のままの脱獄パターンをまねた映画だった 20代、30代の青春期に築いた財産で、その後の長い人生を生きていくのが映画スターだった。今の日本では「映画スター」という言葉は死語に近い。テレビタレントはいてもスターはいない。夢を売る商売が成り立たない 「俺たちに明日はない」と叫びたいのは、不況と就職難に苦しむ日本の若者だろう。が、朝の来ない夜はない。人の一生が長くなった分だけ青春期の試練も延びたと思いたい。 |