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中国:日本人取り調べ フジタの3人釈放、1人は拘束続く 「違反認め始末書」

 【北京・浦松丈二】中国河北省石家荘市当局に取り調べを受けていた建設会社「フジタ」社員ら4人について、中国国営・新華社通信は30日、4人のうち3人が釈放されたと報じた。法律違反を認め、反省する内容の始末書を提出したという。日本の外務省も釈放の事実を確認した。

 釈放された3人はフジタ国際事業部建設部次長、佐々木善郎さん(44)、営業本部営業統括第5部次長、橋本博貴さん(39)、現地法人社員、井口準一さん(59)とみられる。

 4人のうち現地法人に出向している高橋定さん(57)は釈放されておらず、引き続き取り調べを受けている。

 中国当局は3人が釈放後、取り調べ中の扱いなど中国側を批判することを警戒し、高橋さん1人を留め置いた可能性がある。

 北京の日本大使館によると、丹羽宇一郎駐中国大使が30日午前9時(日本時間同10時)、中国外務省で胡正躍次官補と会談した。胡次官補はフジタ社員ら4人のうち3人を釈放すると通告。3人が違法活動を認め始末書を提出したことを理由とした。

 丹羽大使からは、中国側が引き続き取り調べている高橋さんの身柄の安全確保やアクセスの確保、人道的観点からの迅速な処理を改めて求めたという。

 4人は旧日本軍の遺棄化学兵器の処理事業の建設予定地を視察中、同省内の軍事管理区域に侵入して「軍事目標」をビデオ撮影した疑いで20日から同省石家荘市当局に取り調べられていた。翌21日午前に高橋さんから「救命(助けて)」というメールが現地法人社員に送られて以降、連絡が取れなくなった。

 北京の日本大使館は24日未明、中国政府から23日夜に4人が取り調べを受けていることを知らされたと発表した。日本大使館は25日、29日の2度にわたり、石家荘市内のホテルで領事面会を行っていた。

 ◇日本の出方、見極めか

 【北京・成沢健一】「フジタ」社員ら4人のうち3人が30日に釈放された背景には、尖閣諸島付近での衝突事件で悪化した日中関係の修復に向け、中国側が軟化の姿勢を見せ始めていることと関連があるとみられる。ただ、残る1人の釈放の見通しは不明で、中国側が日本側の出方を慎重に見極めている模様だ。

 事件で逮捕・拘置されていた中国人船長が24日に釈放された後も中国政府は謝罪と賠償を日本政府に求めるなど強硬な態度を崩していなかった。しかし、中国外務省の姜瑜副報道局長が28日の定例会見で「中国側は中日関係を重視している。日本が誠実かつ実務的な行動を取ることで、中日関係を安定的に発展させることができる」と関係修復に向けた期待感を示していた。

 中国政府は衝突事件と4人の取り調べとの関連を否定しているが、日中関係筋は3人の釈放について「船長釈放を受けた措置であることは確実。1人を残したのも、船員14人を先に帰国させ、船長の拘置を続けた日本側の措置に対抗したものと見える」と指摘する。

 一方、中国政府関係者は「船長の釈放後も前原(誠司)外相らの強硬な発言が目立ち、中国側としても修復に向けて動きにくい雰囲気がある」と漏らす。衝突事件との関連を否定している以上、中国側が残る1人の釈放をカードとして露骨に日本をけん制することはないとみられるが、今後の関係修復に向けた両政府の動きが釈放の見通しに影を落とす可能性はありそうだ。

 ◇早期解決求める--前原外相

 前原誠司外相は30日の衆院予算委員会で、「釈放は事実。どういう要件で『居住監視』になったのかも明確ではなく、もう一人が残されているので早期解決をしっかり求めていきたい」と語った。

毎日新聞 2010年9月30日 東京夕刊

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