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2010-10-02 冤罪を生む土壌

_ 「 てっちん 」 冤罪を生む土壌

大阪地検特捜部主任検事の前田恒彦容疑者の押収資料改ざん事件をめぐって、最高検が昨日、前特捜部長大坪弘道容疑者と前副部長佐賀元明容疑者を犯人隠避の疑いで逮捕した。新聞でもテレビでも事件の報道が詳しくされているので説明は省く。要は冤罪(えんざい)をでっち上げ、それを組織ぐるみでかばったというのが今回の事件のようだ。

古くから検察や警察の捜査は冤罪を生むと言われていた。それは取調室に容疑者だけを入れ、よってたかって調べるのだからほんのわずかではあろうが、罪に陥れられた人もいるのだろう。その取り調べは、厳しいもののようだ。記者をやっていた時代に取り調べを受けた何人かの人たちの話を聞いたことがある。選挙違反に問われたある町議は延長を含めて20日間拘留されて警察にぎっちり絞られた。その取り調べはひと言ひと言の矛盾を追及され、証拠集めをされ、怒鳴られ、すかされたという。「つめの垢(あか)を焼けた針でつつきだされるような感じ。心理的な拷問だった」と振り返っていた。釈放されてからも町議は心に異常を来たし1カ月ほど家から出られなくなった。もちろん有罪で町議を辞職した。

検察に収賄事件で事情聴取された中年の女性は、検事に会った途端、「2階から見ていたが、肩をすぼめて庁舎に入って来た。間違いなくやっとるんだろう」と1発かまされたという。容疑のなにかも告げられないうちにこんなことを言われて震え上がったという。そのあとはこれをやったろう、あれをやったろうと攻め立てられた。さらに人間関係でもあることないこと言われた。「やってもいないことを聞かれても答えようがなかった」と朝から頑張った。夕方になって少し落ち着いてきたので「検事さん、この調べは人権侵害もいいところですよね」と具体的な事実を2、3列挙して反撃した。これで調べは終わった。この女性も1週間ほどだれにも会いたくなく自宅の一室に閉じこもった。私などが、もし取り調べを受けたら2、3日ももてないうちに自供するだろう。

今言っているのは検察や警察を非難しているのではない。検察や警察も犯罪を摘発するのに必死なのだ。そのために取り調べは苛烈(かれつ)なるということだ。一歩あやまてば、冤罪にもつながる。取調室の可視化をどこまでするかなどもう一度考えるべき時が来ているのは間違いない。

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