[PR]天と地の2つの世界がひとつに!


BLOGOS

ちまたの旬な話題から、日本の未来像を問うテーマまで。


[ICON]リアリズムと防衛を学ぶ

自衛隊を出すばかりが防衛ではない

提供:リアリズムと防衛を学ぶ

22tweets

retweet

 こういった国境・沿岸警備隊は、国境紛争のときにまず矢面にたちます。最初から軍隊を投入すると角がたち、紛争が過熱化しやすいので、その前のワンクッションとしてこの種の警備隊が用いられます。それでどうしても解決できなければ軍隊の投入案が浮上してきますが、相手がまだ軍隊を出していないのであれば、できるだけ沿岸警備隊だけの収めたいところです。そうすれば事態が偶発的に戦争につながる可能性を低くできますし、相手への挑発が少なくて済むことから、穏やかに事態を収集できる可能性が残されます。相手が先に軍隊を出してくれば、国際世論に対して相手の方を悪者に見せることができます。

なぜ韓国は竹島に軍隊を置かないのか?



 例えば韓国と日本のあいだにある竹島問題です。これを韓国の立場からみてみましょう。韓国は竹島を不法占拠しています。日本が何を言ってこようが、竹島は韓国の威信にかけても絶対に譲れません。しかし、だからといって日本と紛争になるのもうまくありません。日本を決定的に追い込んで、自衛隊に防衛出動命令を出されるとマズいのです。

 そこで「軍隊は止めておいて、警備隊」という選択です。韓国は竹島の占領をより確かなものにするため、竹島に「独島警備隊」を配置して守りを固めています。この警備隊は韓国軍ではなく、韓国警察の所属です。といっても警備隊員たちはしっかり軍事訓練を受けています。軍隊で訓練を受けた後、軍から警察に出向した、という形です。だから実態としては軍事要員でも、建前は警察所属の警備隊です。

 なぜこんな面倒なことをするのでしょう。係争地域である竹島に軍隊を駐留させると、日本政府に「防衛出動」を発令する根拠を与えかねません。自国領だと主張している島に軍隊を置かれたのでは、いくら日本政府でも「これは侵略だ」と認定せざるを得ず、自衛隊を出して反撃してくるかもしれない、という恐れがあります。だからあえて軍ではなく警備隊を置き、「韓国としては、島は譲れないが、かといって戦争にまで事を荒立てるつもりは無い」というメッセージを日本側に送っていると捉えられます。

 竹島の例は警察所属の警備隊をつかって不法占領を強固にするケースなのであまり良い例ではありませんが、ともあれこのように「戦争勃発を防ぐため、軍ではなく警備隊を使う」というのは一般的な外交の知恵なのです。より一般的には、国境線付近はあまり軍隊を常駐させず、警察組織の警備隊のみにすることで、無用の緊張を避けるワンクッションとして用いられます。

尖閣沖事件は警察レベルの問題



 先月の尖閣沖事件について、さるテレビ番組では「尖閣諸島で日中の武力衝突か」などと物々しい解説をしたところもあったそうです。しかし少なくとも事件の場合、軍事マターの事態ではありませんでした。中国政府は口では色々と激しいことを言っていましたが、軍隊はろくに動かさず、尖閣沖に送ってくるのは漁船と漁業監視船のみでした。日本で言えば海上保安庁にあたる海警すら出てこなかったようです。このことから、中国側には事態を武力衝突まで持っていく意図は全くないことは一目瞭然でした。

 また日本政府の筋道論からいっても、明らかに防衛ではなく警察・司法が主に担当すべき事態でした。日本は「尖閣諸島は明確に日本の領土であり、領土問題は存在しない」という立場なのですから、その立場で終始一貫「領海内のことなのでわが国の司法で処理する」で通すのが筋というものです。

  ただし尖閣諸島で有事となれば、もちろん話は別です。軍艦を出して脅してくるなり、兵士を上陸させてくるようであれば、自衛隊が対処せねばなりません。また日米安保条約の速やかな履行をアメリカに迫るべきです。イザという時には不退転の決意を示さなければ、領土と国民の安全を守ることができません。将来的にはそういった尖閣諸島を巡る軍事対立や、最悪の場合、武力衝突が起こる可能性もあるでしょう。
123
[ICON]リアリズムと防衛を学ぶ

リアリズムと防衛を学ぶ

防衛ってそういうことだったのかブログ。「ちょっと興味はあるけど、よく知らない」という方向けに、分かり易くてライトな防衛ブログを目指してます。

コメントするにはログインが必要です
ログインしてください
投稿

BLOGOS on

ネットマガジン