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史上最悪の醜態 [雑感]


人間は完璧ではないから、いろんな間違いをする。

恥ずかしいことをしてしまう。

私はこの頃、週に一度くらいのペースで職場で泣き喚いていた。


その日は朝から上手く進んでいた。

こんな私でも、会社のことを考えている。
うちのオフィスの足りない部分、弱いところ。
改善していくべきと思う慣習。
そういうことも考えてはいるのである。

一旦オフィスの外に出て、それを美丈夫に伝えた。

一日はまだスムースに進んでいた。



ここから先のトラブルを、というよりも自分の言動を、私はここに記す勇気が無い。
記すためには思い出さなければならない。

そうして思い出す行為が、そして思い出されてくる情景の数々が、
あまりにも私には恥ずかしい。


美丈夫と○○さんが、仕事の話をしていた。
そう。仕事の話だ

途中、○○さんが笑った。


それがきっかけだった。


私は花にやる水を汲みに席を立った。
とにかくその場にいたくなかった。
頭には完全に血が上っていた。

部屋のドア、廊下に出るドアを、立て続けに渾身の力を込めて叩き付けた。
あまりの音と振動に自分でもびっくりした。

血が上りきった頭でオフィスのドアを開けると、○○さんがあきれはてたような顔で
私を凝視していた。

私は震える声で、「○○さん、お願いだから仕事中に笑い声たてるのやめて! 」と言った。
前回私が怒鳴りつけたときには、彼女はだまったままだった。

しかし先日は違った。

「だって・・笑い声って・・そんなにひどものですか?」
「Shoさんだって、ボスと話していて笑ったりするときありますよね?
それはいいんですか?」

する側の人間にはわからないのだ。
すべからくそうだ。
それがどんなに他の人間の神経を苛立たせるかわからないんだ。

私は大声で喚きながら彼女のすぐ側に行き、座る彼女を見下ろして
鬼のような ―そう、鬼婆のような顔と表情で彼女をにらみつけて怒鳴る。

「じゃあ、それはいつからですか?」
「前にいた△△さんは、いいんですか?」
「やっぱり前にいた◇◇さんは、いいんですか?」

○ ○さんの質問に、鬼婆と化した私は吐き捨てるように答える。

どっちともさんざん喧嘩したわよ!

「じゃあShoさんは、いつもいつもそうやって他の女の人と自分を比べてるんですか?」

私は心の中で思う。

そうだよ!
それが私の人生を、こんなにも生きづらくさせているんだよ!

心の中で思うが、それを口に出すことは出来ない。
そんな惨めな自分を、美丈夫の横で言えない。

自分より一回りも年下の、見栄えのいい、誰にでも優しく接する青年にのぼせ上がり
ちょっと優しくされたら勘違いして舞い上がり、
その人が他の女の人と接していると、仕事の話なのに狂ったように嫉妬して
顔をゆがめて怒声を上げている―

それがその時の私だ。

その理由を私は言うことが出来ない。
そんな惨めなことを、その青年の目の前でいうことなんか出来ない。

言えないけれど、○○さんも、当の美丈夫も、部屋の中にいるスタッフも皆気づいている。
惨めな中年女のヒステリーを知っている。

まるで映画の中のチンピラみたいな言い方で、口汚く私は○○さんを罵り続ける。

その時の自分がどんなに醜い姿なのかは、頭のどこかでわかっていた。
でも歯止めが利かなかった。


「じゃあ辞めた方がいいということですね。
 はい。わかりました。
 それも含めて検討させていただきます」

分は完全に彼女にあった。
私はただの、嫉妬に狂った惨めな醜い中年女だった。


私はやっぱりあの日、完全におかしかったと思う。

「美丈夫さんも誰にでも優しくするの止めて!
優しくするんだったら最後まで責任もって!」
美丈夫の背中に怒鳴り声を投げつけた。

○○さんの元に再度近づき、私の手術跡を見せようとした。
「おいで。何にもしないから。
 見せてあげる。どういう胸になってるか。
 自分のすぐ側に、健康な女の人がいるっていうだけで、
 どれだけ辛いことかわかる?」

ぐしゃぐしゃに泣きながら彼女の腕を掴んだ私の腕を、
彼女は嫌な顔をして、その顔を背けながら振りほどいた。

「私は普通にすることが優しさだと思って普通にしてました!」

そうだ。
あなたの言っていることは全てわかる。

全てわかるが、感受性が「過敏」な私からみれば、
あなたは「鈍感」に映るのだ。

普通とは、何も考えないことではなく、
熟考して相手の傷つくことを注意深く排除して接することだと、
過敏な私は思うし、他者に対してそうする。


私の中には小さな鬼か悪魔がいる。
そいつは暴れたくて仕方ないのだ。

何かの拍子で暴れだし、主である私のコントロールが及ばない。


席に戻っても私の気持ちは治まらず、のこのこ美丈夫の側に行き
「美丈夫さん、5分だけいいですか?」と、未練がましく外に出る。

目の前に困った顔で立っている美丈夫に心底同情しながら
私の態度は裏腹になる。
いい歳をした女が、涙をぼろぼろ流しながら
「私はおっぱい片方とったって、何にも変わらない、自信はなくならないって思ってたけど違った。私、自信全然なくなっちゃってる。
何で私だったんだろう?
何で○○さんじゃなかったんだろう?
子ども欲しいんでしょ?
私こども産めないもん!」

二日くらい前に、さりげなくした会話だった。
別に美丈夫は私に子どもを産んで欲しいと思っているわけもなく
私の妊娠機能とは全く関係ないことなのに、それは十分わかっているのに
私はおいおい泣き続ける。


席に戻って数時間泣き続け、ようやく少し落ち着いたところで考えてみた。

一つには、立て続けに3回手術をし、それは私の身体にかなりのダメージを与えていたのだ。自分では意識しなかったが、体力も、持久力も、免疫力も、あらゆる力が低下していたのだと思う。

そして又一つ。私は卵巣と子宮を取った。
つまりいきなり完全な更年期状態に突入させてしまった。
更年期そのものの様々なトラブルと、上記手術のダメージが、同時にやってきたのだろう。

別の側面。
おっぱいを片方取ったことは、私の自信を損なわせるものではなかった。
これはこれで厳然とした事実なのだ。
強がりでもない。
私はおっぱいをとる前も今も、子宮と卵巣をとる前も今も、
変わらぬ一人のShoという人間であり、その人間性はなんら変わっていない。
そして矛盾したことだが、それとともに、やはり何か決定的に
女としての自信がなくなったのかもしれない。

自慢に聞えたら本意ではないが、私は学生時代から「女っぽい」「色っぽい」とよく言われていた。そして「女っぽい」「色っぽい」といわれることが、どの褒め言葉よりも嬉しかった。
くだんの○○さんをはじめ、うちのオフィスに入ってくる女の人は、中性的な人が多かった。私は執念深くて底意地が悪くて男の人が大好きで、自分以外の女なんでどうでもよくて、「女」のエッセンスを固めて手足をつけたような人間なのだ。

そんな私が、女の象徴の部位を複数取った。

私は心底女であるからして、そういう部位を取られても尚、女なのである。

同じオフィスの中に、私より一回りも年下で、左右の乳房を持ち、まだ子どもを産める女がいる。それだけで神経が立ってくる。
そしてその女が、私の大好きな人と接している。
仕事の話だ。そんなことは百も承知だ。
でもどうして、そんなに楽しそうに話しているの。

あとはこの仕事を始めてからの我慢の積み重ねだ。
それがここにきて、少しずつほころびてき始めた。
私は新規のプロジェクトを担当したのだ。
その時にいた人は、もう美丈夫しか残っていない。
○ ○さんも、私の半分しか社歴は無い。
先輩たちの涙でできたフィールドに、彼女はいきなり立てたのだ。

私は案件のお披露目に、立ち会うことが許されなかった。
新しい受注を目指して、その日も営業をさせられていた。

「みんなでご飯食べてるって・・ そんな(大声出して怒らなきゃならないような)ことですか!?」

その場に居られた人にはわからないのだ。
そこに来るまでに、私がどれだけ努力したかなど、誰もしらない。
私以外の人達は、全員が関わる部分がある。
私は常に一人だ。

何の会社ですか?と言われ、詐欺ではない実在の会社だと信じてもらうところから始めた。
問われて答えられる実績も無かった。
そしてようやく一つのラインが出来上がった頃、全ては白紙になった。
あの時やめていても良かったのだ。

一昨年だったか退職した□□さんが、みんなで飲まないかと○○さんに連絡してきたそうだ。その話を私は人づてに聞いた。私以外の人は知っていた。

そのことをなじれば、
「だってまだ形にもなっていないのに・・」

ならどうして美丈夫さんにはいったの? 私以外の人には言ったの?

自分で叫び声を上げながら、なんと次元の低いことを喚いているのかと情けなくなる。
それでも絶叫がとめられなかった。
その輪の中に居られた人にはたいしたことでなくとも、
その輪に加われなかった人間にとっては、地団太を踏むほどに悔しく、悲しいことに羨ましいのだ。


その日の夜、皆が帰って残っていた美丈夫に謝る。

私にここまで絡まれて逃げないのもすごいなと、なんとも迷惑なことだがそのまま伝える。
「ベクトルが全く別だからねえ・・」と、○○さんと私のことを言い
改善策を探している。
改善策は無いんだよ。
私がそういうと、「でも又ああなったら困るでしょう?」
又ああなりそうになったら、今度は部屋を出るよ。物理的にその場から離れるよ、と、次の日私は思った。

誰にでも優しい、忍耐強い、穏やかな、昨日まではとてもいい関係になっていた美丈夫が
穏やかに、私の目を見て「嫉妬はしないでください。仕事の話をしているだけですから」と言った。
おそらくそれが、その日の狂態から返って来た一番胸に痛かった言葉だ。
「迷惑ですから」
「不愉快ですから」が、省略されているんだろうなと思った。
でも彼が一番言いたかったことは、「僕はShoさんの恋人でもないし、Shoさんのことを特別好きでもないんですから」なのではなかったのかと、そう思って悲しかった。


してしまったことは仕方が無い。
責任を取る、ということの意味が、いまだに私はよくわからないのだが
少なくとも自分のしたことの結果から逃げない、ということではないかと思う。

鬼婆の姿をさらし、映画の中のチンピラみたいな口調で口汚く何度も相手を罵り、
恫喝し、その次の日に職場になど行きたくは無かったが、でも自分のしたことの結果は受け止めなくてはいけないと思い、職場に行く。

私は「淡々と」は仕事が出来ない。
でも「もくもくと」なら出来る。
あの場所では困難であるが、それでも「もくもくと」なら、なんとか出来そうに思う。
なのでもくもくとすればよい。



本日一月ぶりに心療内科に行って、最近のひどい有様を告げた。

「私はよく穏やかだとか当たりが柔らかいとか言われますが、
自分の中にもう一人、ものすごく激しい人間が居るような気がします。
そちらの方が、本当の自分のような気がします」

女医先生は、「そうでしょうね」とお答えになる。
「多分とても激しい方なんだと思いますよ。
 それが飛び出してしまわないように、あえて穏やかにしているんだと思います」

私は統合失調症ではありませんか?

「それは違います。
 適応障害ですね」

お薬が変わった。

「まあ、根本的な解決にはなりませんけれども・・」
「他の人が幸せそうなのを見ていらいらするというのは、
ご自身は、お幸せじゃないということですか?」

そう、なのだろうか?

確かに、美丈夫が毎日ハグしてくれたり、主治医の先生と週に一度話しが出来ていたら
私はもっと穏やかで居られるかもしれない。
幸せとか不幸せとかは、私にはよくわからない。
辛いことがない=幸せ、とは思えないし
困難な状況=不幸せ、とも又思えない。


適応障害と指摘され、お薬が変わって(まだ飲んでいないが)
私は急に気が楽になった。
どうしてあんなに自分の怒りの感情が制御不能になるのか、わからなかったからだ。
いや、その理由は、自分の人間性の未熟さだと思っていたからだ。


このことで美丈夫が、私を気味悪く思っても、これ以上かかわるのはよそうと思ったとしても、それは仕方が無いと思う。
そういう姿を、一度や二度ではなく晒した。
結果的に巻き込んでしまった。
私が逆の立場であれば、口もきかなくなるかもしれない。

先のことは何一つわからないから、なので美丈夫とのことも、考えなくてよいのだ。

きっと可愛らしい想い人はいるのだろうから、私は友達になれればいい。

友達なら、おじいさんとおばあさんになっても、ともに話をして笑いあうことができる。
互いの幸せを、喜ぶことができる。
私の数少ない友達になってくれたら嬉しい。



私はたまらなく惨めで、みっともなかった。

でも、遅かれ早かれおこってしまったことだと思う。
私の精神も肉体も、もうパンパンだった。

なんというか―

今更ながら、人生にはいろんなことがあるなと思う。
長いような短いような人生は、実は一晩の夢の中なのではないか、とも思う。
浦島太郎が竜宮城で過ごしたような不思議な時間の流れ。

泣いたり笑ったり、求めたり憎んだり慌しいが
実はこれは全て一晩の、夢の中の出来事なのかもしれないと、
それならば恥ずかしさもずいぶん少なくなると、
そんなふうにも思うのである。



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スー

客観的に見れば、職場で一気にストレス解消という感じです。
他の人は、家族があるから、それを家族に対してやっているのです。
規模(?)の大小はありますけど。
でも、やっぱり、職場でやってはまずいですよね。
あやっまておかないと。
適応障害という病気であっても、
爆発を受け止めてくれる職場のみんなに、
感謝しないと、
いけないような気がします。
えらそうなことをいってしまって、すみません。
こういうの、老婆心とかいうんでしたっけ。

by スー (2009-10-04 12:57) 

Sho

(^-^)スーさん
nice!とコメントを、ありがとうございます。
今までは、謝っていたのです。
でも今回、○○さんには謝りたくないのです。
コメントをいただいてから、ずっと考えていました。
今までは、一方的に私が爆発していたわけですが、
今回彼女とは「喧嘩」だったと思います。
あまりつまびらかには出来ませんが、「積年の思い」がやっぱりあって。
すみません。
ご助言いただいたこと、ありがたく思っております。
すみません。

by Sho (2009-10-04 16:17) 

chuva

ご無沙汰です。ずっと遠くから拝見させていただいております。

私はshoさんとは真逆で、周りから男っぽいとばかり言われます(笑)
母子家庭ということもあってか、女らしくしてたら世間からなめられる、
と思い込んで育ったもので、”男っぽい”というのは一種の褒め言葉に聞こえた時期もありました。
理系だし、ガテンな仕事だし、きっと男勝りで豪放磊落に見えるんでしょう。

でも、社会に出ると否応が無しに要求されるんですよね、
いわゆる”女らしさ”を。

確かに女の子らしい雰囲気が少ないのでしょうけど、あまりにも女性扱いされないと悲しくなるんです。
私にも女性らしいところがあるのに、繊細なところがあるのに・・・。

それで気づいたんです。どんなに足掻いても私の中の”女”は消えることが無いんだ、と。それは子宮を取っても乳房を取っても消えることは決して無いんだろう。

と、まあ半分愚痴になりましたが。
私は背伸びをしない自分らしい”女らしさ”を大切に受け止めていこうと思うこのごろです。

shoさん。私はまっすぐなあなたが大好きです。
うまい言葉が見つかりませんが、私はいろんなことにぶつかることを恐れず、自分と向き合うことから逃げない人が好きです。
どうかご自愛だけはお忘れなく。
by chuva (2009-10-04 22:39) 

Sho

(^-^)chuvaさん
お久しぶりです。ずっと見ていてくださったとのこと、本当に嬉しくありがたかったです。
>どんなに足掻いても私の中の”女”は消えることが無いんだ
その通りだと思います。
何を摘出しても、歳をとっても、”女”は永遠だと思います。
私は頼もしい女の人は好きですよ。
>私にも女性らしいところがあるのに、繊細なところがあるのに・・・
そうですよ。
そしてきっと気が付いている方はいらっしゃると思います。

>私はまっすぐなあなたが大好きです
本当にありがとうございます。
今の私に、一番嬉しいお言葉です。
どうぞchuvaさんも、お体をお大切に。
ご多幸をお祈りしています。
by Sho (2009-10-04 23:06) 

noel

読んで涙が流れました。
私には、情けないですけどShoさんに出来るアドバイスなんてないです。

感情の吐き出しからがきっと不器用なんだと思います。
それは恋愛が絡んでいるから余計でしょうね。
何もなければ、苛立つことも少ないでしょうし。

どうかShoさんがこれ以上傷つくことがありませんように。
by noel (2009-10-06 23:22) 

Sho

(^-^)noelさん
このコメントをいただいたことで十分です。
本当にありがたく、うれしかったです。
お薬が変わって、ずいぶん楽になりました。
すぐ惚れてしまうんですね(苦笑)
本当に、ありがとうございます。
by Sho (2009-10-07 07:48) 

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