--中国のレアアース(希土類)輸出停止問題は、日本企業に大きな衝撃を与えた。
「ハイテク製品に不可欠な原材料が調達できなくなるというリスクを痛感した。最近になって通関手続きも改善の兆候が出てきたようだが、経済産業省としても事態を十分に把握しきれない面があった。リスク回避のため、調達先の分散化や代替材料の技術開発、備蓄といった総合対策を1日に策定。できる対策から補正予算で要求したい」
--貿易の自由化などを促す「経済連携協定(EPA)」交渉が、国内農業関係者の反発もあり、なかなか進んでいない。
「農水、経産両省の副大臣クラスで検討チームを作り、農家に理解されるEPAを目指したい。鹿野道彦農相も『守る農業から攻めの農業にする』と言っている。安全・安心でおいしい日本の農産物を積極的に輸出し、攻めの農業に転換する必要がある」
--法人税率引き下げへの取り組みは。
「税収減への懸念もあるが、新成長戦略やEPAの推進と法人税率引き下げの相乗効果で経済活動が活発化すれば、税収の自然増も期待できる」
--地球温暖化対策をどう進めるか。
「温室効果ガスの25%削減には、各国が同じように取り組むという前提条件がある。日本だけ守っても、温暖化対策としては意味がないからだ。また、現実的に実行できることが大事なので、企業からもよく話を聞いていきたい」
--新成長戦略をどうやって実現するのか。
「例えば、医療ビザの新設が考えられる。進んだ日本の医療を受けたいという海外からのニーズは大きいが、現行制度で患者は観光用など短期ビザをとって入国しなくてはならない。長期入院の場合は、延長手続きが必要になる。治療のための長期滞在を認める医療ビザがあれば多くの患者が訪れ、医療ビジネスの拡大につながる。新たな視点で経済を立て直したい」【聞き手・立山清也】
--事業仕分け第3弾で行う国の特別会計仕分けの意義は。
「情報公開がほとんどされてなかった特別会計への国民の不信が高い。まず公開し、国民と情報を共有する。既得権益化してないか。特別会計のお金によって公益法人など天下り団体が温存されてないか。積立金や余剰金が適切か。こんな視点で仕分けをやる」
--無駄遣いについての公務員とのギャップを感じるか。
「過去の仕分けで廃止判定だったのが、看板が変わって同じ内容で生き返る『ゾンビ的』なものもある。無駄ではない、と信じてるのかもしれない。抵抗は当然あるが、『もっと効率的なやり方がある』という助言だと思ってもらいたい」
--沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件の対応は適切か。
「菅内閣の一員として当然ベストだったと思うが、より国民に納得してもらえるやり方があったなら学習する。それぞれの立場があるが、今回は司法判断も政府対応も含め、このやり方しかできなかったのではないか」
--新たに公務員制度改革担当になった。
「縦割りの弊害を取り除くため、幹部人事を一元化し、一度風穴を開ける必要がある。来年の通常国会で公務員関連法案を出す方向だ。片山善博総務相らと議論したい」
--菅直人首相は公務員給与で人事院勧告による減額以上の追加削減を目指す立場だ。
「国民の公務員への厳しいまなざしは無視できないが、現行制度では人勧は尊重する。マニフェストで約束した公務員改革や総人件費の2割削減は4年間かけ、労働基本権の付与も含めて抜本改革をするもの。短期的にすべて結果を出すのは難しいし、乱暴だ。残り3年間で全力でやる」
--「強い女性」と思われている。
「事業仕分けで与えた印象だろうが、それがプレッシャーで弱いことが言えない。結構きついが、甘んじて受け止めるしかない」【聞き手・青木純】
毎日新聞 2010年10月2日 東京朝刊