2010年10月2日13時33分
復元された愛菩薩像の両腕部分。右手に矢、左手に弓を持っている。背景の白い紙には、影絵のように像の全身を描いた=京都府宇治市の平等院
国宝の金剛愛菩薩像。右腕のひじから先が欠損し、左手には何も持っていない=平等院提供
「仏教界のキューピッド」といわれる「菩薩(ぼさつ)像」の両腕の部分が復元され、世界遺産の平等院(京都府宇治市)で2日から公開された。長らく右腕が欠け、左腕は何も握っていない姿だったが、平等院は、平安時代のオリジナルは両腕で弓矢を射る格好だったと判断した。
平等院によると、52体ある雲中供養(うんちゅうくよう)菩薩像(国宝)の1体。背中にうっすら「愛」という墨書があり、密教の「金剛愛菩薩」とみられている。教えの中で悟りの妨げとなる煩悩を受け入れる心が悟りにつながると諭し、化身の「愛染明王」は縁結びの仏として知られる。
今回の調査で、愛菩薩像は明治時代に両腕がいったん修理されたことが判明したが、その後、何らかの原因で右腕のひじから先の部分が欠損したとみられている。平等院は、「腕の曲がる角度が不自然」という仏像彫刻家の見立てや3次元の画像解析などから、オリジナルは右腕に矢を、左腕に弓を持っていたと判断した。
神居文彰住職は「様々な調査をもとに復元を試み、平等院の美術を具体的に示すことができた」。来年1月14日まで境内の「ミュージアム鳳翔館」で展示される。大人600円など。問い合わせは平等院(0774・21・2861)へ。(合田禄)